○泉參議院
專門調査員 お許しを得まして、私より青年補導法の各條につきまして、簡單にご
説明申し上げます。
第一條はこの
法律の
目的を掲げたものでありますが、罪を犯した青年に対して適切なる補導を施し、これを正常なる社会人として再生させるということが、本法の
目的とな
つております。ねらいますところは、第三條にその処遇の模樣を書いてあるのでありますが、青年について五年以下の懲役または禁錮の刑に処するのを相当と認めた場合に、犯罪の原因、その者の性質、能力、経歴等を
考慮いたしまして、実刑を処することが不適当であると
裁判所が認めた場合には、刑の言渡しにかえまして、判決で青年補導所に入所を命ずることにいたしたのであります。從來の保護処分は、すべて判決以前の手続きでありますが、本法ではこれを判決手続きとして、
裁判所が審理の結果保護処分をやるというところが、非常に目新しいことにな
つております。その判決には、五年以下の範囲で入所の期間をきめることにな
つております。ここに青年と申しますのは、第二條に十八歳以上二十六歳未満ということに限定したわけであります。
少年法との
関係は、今度の
改正案で二十歳に相な
つておりますが、前の
少年法では十八歳までとな
つておりましたので、十八歳ということにしたのでありますが、十八歳から二十歳までは新しい
少年法でもやれるし、これでもやれるということに相
つております。
第四條は判決以前にかりに入所をさせることができるという
規定をおいたのでありますが、これはその補導処分をすることが適当であるかどうかということを、事前によく
調査するために、
裁判所が職権で、または警察の申立によ
つて、被告人を九十日を越えない期間、かりに補導所に入所を命ずることができる。そうしてよく補導所長あるいは職員に見てもらいまして、その結果を参考
意見として
裁判所に提出させるというふうにしてあるのであります。この仮の入所処分は判決をすることによ
つてその効力を失うということにしてあります。
第
五條は、上訴の不利益変更禁止の
規定との
関係を書いたものであります。御案内のように、今度の
刑事訴訟法でも、
控訴審または上告審では、原審より重い刑を言い渡すことはできないというふうにな
つておりますが、さてこの補導所に入所するという処分は、新しい処分でありまして、判決との
関係で、いずれがと重いかということが
問題になりますので、実は補導所入所は、刑ではないのでありますけれども、やはり重い軽いということを書いた方がよかろうというので第
五條で実刑よりは軽いのだ。つまり懲役または禁錮よりも軽い。しかし罰金よりは重い。そして執行猶予の言渡し等は、軽い重いがないということにいたしまして、上訴した場合に一審で補導所入所を命じた者について、第二審で執行猶予をすることは差支えない。しかし一審で、補導所入所を命じた者を、二審で実刑を課することはできないというふうに、その軽い重いをここに書いたのであります。第二項は職務の執行について、
刑事訴訟法の刑の執行に関する
規定を準用したのであります。
第六條は時効の
規定をおいたのでありますが、これはまた刑の時効ではありませんので、当然刑法の
規定がかぶ
つてまいりませんから、そこで刑法の時効に関する
規定を、ここへ準用いたしまして、本法の時効は「これを五年とする。」ということにしたわけであります。
第七條は判決によ
つて入所を命ぜられた者が、その後に
裁判所によ
つて禁錮以上の刑の言渡しを受けて、これを執行するようなことに
なつた場合には、先に言渡された入所の処分は、そのときをもちまして終了する。併せて執行することはしない。つまり懲役刑あるいは禁錮刑の方を執行することによ
つて、入所の方はそれでやめてしまうということにしたのであります。
第八條は入所者が逃走した場合には、刑法の逃走罪をも
つて論ずるので、そこでこれは補導所長の請求を待
つて論ずるということにしたのであります。
第二章は青年補導所の組織
権限等について書いたのでありますが、補導所は、三條四條の
規定、あるいはまた別に
法律でも
つて青年補導所に入所を命ずるという者ができた場合に、それらのものを収容するところであるということを書きました。他の
法律と申しますのは、今のところは他の
法律は一つも出ておらぬのでありますが、
將來あるいは家庭
裁判所などで、十八歳から二十歳までの者について、そういう処分が行われるというようなことにでもなりますれば、さしあたりこの
規定が活きてくると思います。
第十條は「補導所は、これを國立とし、主務大臣がこれを管理する。」これは法務総裁が主務大臣になることにな
つております。
第十二條は、「補導所に所長以下必要な職員を置く、職員について必要な事項は、政令でこれを定める。」と書きました。
第十二條は、補導所の
運営については
民主的な
処置を考えまして、重要な事項を審議するために、補導所ごとに青年補導所
運営委員会を置くことにいたしまして、
委員は五人で、これは主務大臣がこれを命ずることにな
つております。
なお十三條で、この
法律で定めてあるもののほかは、
委員会について必要な事項は政令できめるということにいたしました。
第三章は、補導及び、処遇の実際であります。
第十四條では、在所者の補導は、必要な教養を施し、勤勉で規律ある
生活の下に、主としてその適正に應じた職業の補導を通じて、正常な社会人として再生させるというふうなことをもくろんでおるのであります。本法の眼目としては、職業の補導を通じて、正常な社会人として再生させるというところにねらいがあるのであります。なお十
五條で男と女とは各別々に収容する。
それから十六條、「所長以下の職員は、常に在所者の心身の状況に注意し、これが保護のため必要な手段を講じなければならない。」というふうに
規定をいたしました。
十七條で、この補導
運営委員会は、少くとも三月に一回、補導所を査察して補導所の
運営、及び補導の状況について、主務大臣に報告しなければならぬといたしました。この
規定を置きませんと、ややもすれば補導
運営委員会が、名のみになるおそれがありますので、三月に一回は必ず見てまわれということを書いたわけであります。
十八條は、
委員会は補導所の
運営及び補導に関する必要な事項について、所長に勧告しなければならぬということを書きました。
第十九條は、在所者を所定の作業に從事させ、そうしてこの從事する作業については、給與金を支給するということを書きました。
第二十條は、所長は、在職者に対し、命令の定めるところによ
つて、面会、通信、金品の授受、図書の閲覧等について、必要な
制限を加えることができるとして所長の
権限を書いたのであります。
第二十一條では、「所長は在所者の所持する金品を領置し又は保護者若しくは適当な者にその保管を委託することができる。」所長はこの場合には、善良なる管理者の注意をも
つてしなければならぬというふうに書きました。
第二十二條では、所長は
運営委員会の議を経て成績の優良な在所者に対して賞遇を與えることができる。その種類及び方法は命令できめることにいたしました。
第二十三條は、所長は紀律に違反した在所者に対して
委員会の議を経まして懲戒を行うことができる。この懲戒は訓戒を加えることと、
一定期間賞遇の授受を減少し、または停止するかまたは
一定期間独居して謹愼させる。但しその期間は三十日を超えることができないとして、
憲法の
人権保護
規定に鑑みまして、懲戒はこれ以外の方法では絶対にすることができないということを掲げました。
第二十四條は、在所者が逃走した場合は、補導所の職員は、いつでもこれを連れもどすことができる。必要ある場合には、
裁判所に逮捕状を求めることができるということを書いたのであります。
第二十
五條は、この
法律または他の
法律できめるもののほか、在所者の処遇その他について必要な事項は、命令できめることにいたしました。
第二十六條は、所長は
委員会の議を経て、また主務大臣の許可を受けて、在所者の処遇に関する細則をきめなければならぬということにいたしました。
本法は今年の十二月三十一日までにこれを施行するのでありますが、その
施行期日は政令できめるということにいたしたわけであります。
以上のような次第であります。宜しく御審議のほどお願いいたします。