○兼子
政府委員 ただ今
議題となりました商法の一部を
改正する
法律案につきまして提案の
理由を御
説明申し上げます。
現行商法は、株式会社及び株式合資会社について、主として資金調達等の会社経理政策上の必要と、零細株主の便宜等に基きまして、株金分割拂の
制度、すなわち株金はこれを分割して会社の設立又は資本増加の際に、第一回拂込としてその四分の一以上を拂い込むをも
つて足りるものとし、残額は会社の成立した後、または資本増加の効力を生じた後、必要に應じて拂い込ませることができるものとする
制度をと
つておるのであります。ところでこの株金分割拂
制度については、経済社会の実際に行はれている情況をみまするに、その利便よりもむしろ多くの弊害が生じておるのでありまして、未拂込株金の拂込義務の遲滯より生ずる催告、
強制執行、失権手続等、分割拂より生ずる手続上の煩瑣は、まことにわずらわしく、自已資本の充実は空名に帰する場合が多く、殊に恐慌もしくは会社破産の場合における株金の徴收は、まつたく不能と
なつて、会社債権者に多大の損害を加える
実情にありまするのみならず、増資によりまして、拂込額を異にする二種の株式を生じたとき、その拂込額のいかんにかかわらず、議決権を等しくする
関係上、増資新株によ
つて、会社を支配するがごとき不公平を生ずる等の弊害があり、さらに未拂込株式は、投機の
対象となり易く、証券取引の
見地からも決して好ましいものではないのであります。しかのみならず、現在のインフレーシヨン下においては、貨幤價値の下落によりまして、
現実にはほとんど株金分割拂の実数はなく、また現在主要な会社は多くその株金は全額拂込済でありまして、分割拂の
制度を廃しましても、さしたる影響はないと
考えられるのであります。よ
つて政府は株式分割拂の
制度を廃止しまして、如上の弊害を一掃し、会社の資本計算を簡易ならしめ、会社の信用を高め、外資導入の一助たらしめたいと
考えるのであります。以下、本
改正案の重要な諸点について、簡單に御
説明申し上げます。
まず第一は、ただいま申し上げました
通り株式分割拂
制度を廃して株金一時拂
制度を採用し、これに関する第百七十條第一項及び第百七十七條第一項に必要な
改正を加えました。なおその他この
改正により不必要と
なつた
規定の削除、字句の訂正等、條文の整理をいたしました。本
法律案の條文の多くはこれに関するものであります。
第二は、從來株式の金額は一株五十円を下ることを得ないものとしていたのを、一株二十円を下ることができないことに改めました。これは株金分割拂の
制度を廃止した結果、少額投資者の投資を困難にする虞れがありますので、一株の金額を少額にし、株式を民主化する趣旨であります。第二百二條第二項の
改正規定がこれであります。
第三は、経過
規定であります。まずこの
法律施行の際、すでに発行せられている株金金額の拂込の完了していない株式に関するものでありますが、それらにつきましてはこの
法律施行後も旧法を適用することといたしました。しかしこのような株式については、將來長く未拂込のまま残存させることは、この
改正の趣旨に副いませんので、この
法律施行の日から二年の内にこれらの株式を株金金額拂込済のものとかるため、会社の選択によ
つて未徴收の株金の拂込をなさしめるか、あるいは未拂込の部分について資本を減少する等、適当な
措置を講ぜしめることといたしました。もし、二年内に会社が右の
措置を講じなかつた場合にこれをどう
措置するかは、今後の経済情勢の推移をよく檢討し、後に申し述べますように、会社の資本の新しい在り方について、根本的な研究を要しますので、その
処置は適当な機会に、別に
法律の御制定を願うことにいたしました。またこの
法律施行前行われた設立または資本増加の際引受のあつた株式で、一時に全額を拂い込ませないものについても、右と同様な
措置をとることといたしました外、二、三の必要な経過
規定を設けてあります。なお、この
改正により前に申し述べました從來の株金分割拂
制度の利点が失われることとなりますので、会社の資本構成について、経済界の
実情に即した新らしい
制度が要求せらるるわけでありまして、この点につきましては米國などに行われておりますいわゆる授権資本制の採用等も
考慮いたす必要があろうかと存じます、
政府は目下鋭意成案を得べく研究準備中でございます。以上が本
法律案の大要であります。
次に
有限会社法等の一部を
改正する
法律案の提案
理由を申し上げます。
今回
政府におきまして株式会社及び株式合資会社の株式について、從來認められておりました株金分割拂の
制度を廃止し、新に株金は全額を一度に拂込むものとする
制度を採用するため、商法の一部を
改正する
法律を立案いたしまして、これを國会に提出し、御
審議を願うこととなりましたが、これに伴い、有限会社法及び非訟
事件手続法に準用又は引用せられております商法の
規定中、
改正を必要とするものを生じましたので、これを整理しようとするのが、この
法律案の
目的であります。なおその結果必要と
考えられます若干の経過
規定も設けてございます。
何とぞ
愼重御審議の上、速やかに可決せられるようお願い申し上げます。