○野木政府委員 ただいまの調書の点について御
説明申し上げます。調書の点につきましては、今度の案におきましては、第四十九條ないし五十一條におきまして、
現行法にないところの新しい
規定を設けておりまして、調書の正確性を担保しておる次第であります。しこうしてこのような
規定を設けましたのは、もとよりこういう
規定を置くことによりまして第一審の
手続が正確に行われることを担保する面もありますが、いま一つの大きな面といたしましては、控訴審行動とも関連してくるのでありまして、控訴審を今度のような
制度にいたしますと、一層一審公判調書の正確性というものは、強く要求せられるようになるわけであります。それで、まず第四十九條におきましては、今までなか
つた権利を
被告人に与えまして、
被告人に弁護人がないときは、公判調書を
被告人も閲覧することができる。読むことができないとき、もしくは盲人であるというような場合には公判調書の朗読を求めることができる。そういう
規定を置いてある次第であります。しかし本案におきましては、三年を超える
事件につきましては、弁護人があることにな
つておりますので、第四十九條は、それ以外の
事件であ
つて、しかも私選弁護人がない場合、そういう場合がここにはい
つてくるものであります。なお弁護人の公判調書閲覧権等につきましては、
現行法と同じように、第四十條に「弁護人は、公判の提起後は、
裁判所において、訴訟に関する書類及び証拠物を閲覧し、且つ騰与することができる。」という
規定によ
つて、当然四十九條に相当することはできることにな
つておる次第であります。次に、公判調書は、理想的に言えば、即日にも整理せられるのが理想であり、少くとも次の公判日期までには整理できるということにしたいと思うのでありますが、なかなか現実の問題として、そこまでも
つていくわけにはいきませんし、また將來におきましても、かりに
原則としてはそういうふうに
なつたとしても、例外の場合もありますので、第五十條におきまして、公判調書が次回の公判期日までに整理されなか
つたときは、
裁判所書記は弁護人などの請求によ
つて、その証人の供述の要旨を告げなければならない。こういう
規定を置き、さらに同條の第二項におきまして
被告人及び弁護人が出頭なくして開廷した公判期日の公判調書、たとえば五千円以下の罰金などに当る
事件、こういうような場合におきましては、
被告人弁護人は、前回の公判期日の樣樣を知らなくては、その権利を十分主張することができませんので、第五十條第二項の
規定によりまして、「
裁判所書記は、次回の公判期日において又はその期日までに、出頭した
被告人又は弁護人に前回の公判期日における審理に関する重要な
事項を告げなければならない。」こういうことにいたしまして、不出頭の
被告人、弁護人の保護をはか
つておるわけであります。なおさらに第五十一條の
規定を設けまして、公判調書が完成した後におきましても、あるいはその記載に誤りがある場合があり、または重要な点において脱漏がある場合がある。そういうことがありますので、そういう場合を慮りまして、
檢察官、
被告人または弁護人は公判調書の記事の正確性について異議を申立てることができる。異議の申立があ
つたときは、その異議の申立があ
つたこと及び、どういう異議の申立があ
つたか、そういう内容も調書をつく
つて整えておかなければならない。こういうことにな
つておる次第であります。これが結局この控訴のところの原記録に現われた事実という点に響いてくるのでありまして、こういうような
手続によ
つて、この控訴の非常に嚴重にな
つておるような点も、
被告人並びに弁護人側において第一審において精力を集中しまして、できる限りの主張をし、また証拠調べの請求等をしておけば、それを二審に至
つても援用し主張することができることにな
つておりますので、運用においては、さほど苛酷になるようなことはないものと信じておる次第であります。