運営者
Bitlet
姉妹サービス
kokalog - 国会
yonalog - 47都道府県議会
nisalog - 東京23区議会
serelog - 政令指定都市議会
hokkaidolog - 北海道内市区町村議会
aomorilog - 青森県内市区町村議会
iwatelog - 岩手県内市区町村議会
miyagilog - 宮城県内市区町村議会
akitalog - 秋田県内市区町村議会
yamagatalog - 山形県内市区町村議会
fukushimalog - 福島県内市区町村議会
ibarakilog - 茨城県内市区町村議会
tochigilog - 栃木県内市区町村議会
gunmalog - 群馬県内市区町村議会
saitamalog - 埼玉県内市区町村議会
chibalog - 千葉県内市区町村議会
tokyolog - 東京都内市区町村議会
kanagawalog - 神奈川県内市区町村議会
nigatalog - 新潟県内市区町村議会
toyamalog - 富山県内市区町村議会
ishikawalog - 石川県内市区町村議会
fukuilog - 福井県内市区町村議会
yamanashilog - 山梨県内市区町村議会
naganolog - 長野県内市区町村議会
gifulog - 岐阜県内市区町村議会
sizuokalog - 静岡県内市区町村議会
aichilog - 愛知県内市区町村議会
mielog - 三重県内市区町村議会
shigalog - 滋賀県内市区町村議会
kyotolog - 京都府内市区町村議会
osakalog - 大阪府内市区町村議会
hyogolog - 兵庫県内市区町村議会
naralog - 奈良県内市区町村議会
wakayamalog - 和歌山県内市区町村議会
tottorilog - 鳥取県内市区町村議会
shimanelog - 島根県内市区町村議会
okayamalog - 岡山県内市区町村議会
hiroshimalog - 広島県内市区町村議会
yamaguchilog - 山口県内市区町村議会
tokushimalog - 徳島県内市区町村議会
kagawalog - 香川県内市区町村議会
ehimelog - 愛媛県内市区町村議会
kochilog - 高知県内市区町村議会
fukuokalog - 福岡県内市区町村議会
sagalog - 佐賀県内市区町村議会
nagasakilog - 長崎県内市区町村議会
kumamotolog - 熊本県内市区町村議会
oitalog - 大分県内市区町村議会
miyazakilog - 宮崎県内市区町村議会
kagoshimalog - 鹿児島県内市区町村議会
okinawalog - 沖縄県内市区町村議会
使い方
FAQ
このサイトについて
|
login
×
kokalog - 国会議事録検索
1948-05-27 第2回国会 衆議院 司法委員会 第21号
公式Web版
会議録情報
0
昭和二十三年五月二十七日(木曜日) 午前十一時二分
開議
出席委員
委員長
井伊
誠一君
理事
鍛冶 良作君
理事
石川金次郎
君
岡井藤志郎
君 大村 清一君 佐瀬 昌三君 花村 四郎君 松木 宏君
明禮輝三郎
君 池谷 信一君 石井
繁丸
君 猪俣 浩三君 榊原 千代君
中村
俊夫君
中村
又一君 大島 多藏君
北浦圭太郎
君
出席國務大臣
國 務 大 臣 鈴木 義男君
出席政府委員
法務政務次官
松永 義雄君
委員外
の
出席者
參議院司法委員
長
伊藤
修君
參議院專門調査
員 泉
芳政
君
專門調査員
村 教三君
專門調査員
小木 貞一君
—————————————
五月二十六日
刑事訴訟法
を改正する
法律案
(
内閣提出
)(第 六九号) の
審査
を本
委員会
に付託された。
—————————————
本日の
会議
に付した
事件
裁判官
の
報酬等
に関する
法律案
(
内閣提出
)( 第五一号)
檢察官
の
俸給等
に関する
法律案
(
内閣提出
)( 第五二号)
人身保護法案
(
参議院送付
)(
予第四号
)
—————————————
井伊誠一
1
○
井伊
委員長
会議
を開きます。
人身保護法案
を議題といたします。 本案については一應提案の
説明
を承
つて
おりますが、その後
参議院
において改正を見たということでありますので、この点の
説明
を兼ね、さらに敷衍して
内容
の
説明
を伺うことにいたします。
伊藤修
2
○
伊藤参議院司法委員長
さきに
提案理由
として御
説明
申し上げておいたつもりでありますが、本日は一般に関しまして少し敷衍しておきたいと思います。
人身保護法
は、
憲法
の保障する
基本的人権
の中の最も重要な、
身体
の自由の
保護
を表現するために、
身体
の自由を
不法
に奪われ、または制限された者に対して、
刑事訴訟法
の
普通手続
をまたないで、
人身保護命令
をも
つて
、より実効的に、より簡便に、より迅速に、これを
救済
する
目的
をも
つて
、何人にも容易に利用し得る
手続方法
を
規定
したものであります。これを端的に言えば、
身体
の自由に対する
不法拘束
のあつた場合の急場を救うために、
裁判所
に「かけこみ訴え」をする
非常手続
を
規定
したものであります。 それ
ゆえ
に
身体
の
自由拘束
に対する
刑事訴訟法
の
救済手続
(たとえば
勾留
に対する
上訴
)が、事実上効果を收め得ないと思われる場合、または急速に間に合わない場合に、
本法
の
手続
が用いられるのであ
つて
、
刑事訴訟法
の
普通手続
に対する
非常例外的措置
であります。從
つて
合法的に行われた
刑事訴訟
上の
逮捕勾留
その他の
手続
を否定したり、これを妨げるべきものでないのであります。 次に、
本法
の
手続
と
刑事訴訟
の
手続
とは、その
適用範囲
を異にする部面があります。すなわち
刑事訴訟法
は、
犯罪
あることを前提として行われる
刑事事件
に関する
手続
でありますが、
本法
は必ずしも
刑事事件
のみに関するものではないのであります。
犯罪
には
関係
なく、また
犯罪
があるとしても、それが
刑事事件
として、取上げられる前に、たとえば從前の
行政檢束
のような
行政取締処分
によ
つて
、
不法
な
身体
の
自由拘束
があれば、これを排除して、被
拘束者
を
救済
することをも、その
目的
としているのであります。 また
本法
は
公権力
によ
つて
、
身体
の自由が
侵害
された場合に限らず、私力すなわち
個人
または
團体
の力によ
つて
、
身体
の自由が
侵害
された場合、たとえば
法律
上の正当な
手続
によらないで、
精神病院
または
私宅監置室
に監置したり、
未成年者
をその
監護権
のない者が
懲戒場
に入れたり、
坑夫
を
監獄部屋
に入れて
労役
に服させたり、その他
政爭関係
、
選挙
の
関係
、
労働爭議等
の
関係
から、
反対側
の要人を抑留したり、
軟禁
したりする場合等にも、その
不法
な
自由侵害
を
現実
に排除して、
被害者
を
救済
するために、
本法
が適用されるのであります。 また
刑事訴訟法
は、警察官または
檢察官
の手で
犯罪
の捜査をなし、
檢察官
の
公訴提起
によ
つて手続
が進行されるのであるが、
本法
の
手続
は、
身体
の自由を
侵害
された者、またはその
親族
、
友人
、その他
関係者等
、だれでもが、
裁判所
に対して、
不法
な
自由拘束
を排除してその
救済
を求めるものであるから、
私人
の訴えによ
つて手続
が進行するのであります。すなわち
私人訴追
であ
つて
、公の
訴追
によ
つて
行われるものではないのであります。 以上御
説明
申し上げた
通り
、
本法
による
身体
の自由の
保護救済
の
手続
は、その
本質
において、
刑事訴訟
とは異なるのであ
つて
、
本法
は、
民法
上の
私権
たる
身体
の
自由——民法
七百十條に対する
侵害
を、
現実
に排除することを
目的
として、
私権保護
の
請求
を行使する
手続
と見るべきであります。すなわち
民法
第七百十條は、
身体
の自由が
侵害
された事後において、その
損害賠償
の
請求
を
規定
しているが、
本法
は
身体
の自由に対する
現実
の
侵害
を排除して、
被害者
を
救済
する途を與えたものであるから、
私権保護
の
請求
について、新しい途を開いたものと信ずるのであります。そしてこの
私権保護
の
請求
は、
被害者
または
関係者
が原告の
立場
に立
つて
裁判所
に訴え、
侵害者
たる
拘束
が被告の
立場
に立
つて
答弁して、
裁判所
が取調べの上、
不法
な
自由侵害
が行われているか否かを判断するのであるから、
米國
のある州では特殊の
民事訴訟
の性格を有するものとしているのであります。
本法
は、
英國
の
法制
において「ヘイビアス・コオパス」の
手続
、すなわち「
身柄
を差出す
手続
」として、一六七九年に発布された
人身保護律
にならつたものであります。すなわちこの
法律
は
人身
を
不法
に拘禁した者に対して、被
拘束者
の
身柄
をただちに
裁判所
に
提出
し、かつ拘禁の
理由
を明瞭にせよという
命令
、いわゆる
人身保護令状
の
手続
を定めたもので、
人権
の
尊重保護
を主眼とする
民主主義憲法
の裏書をなすものであります。 この
人身保護令状
の
手続
は、
アメリカ
の
独立戰爭当
時にすでに確立された
制度
とな
つて
いて、一七八七年九月制定の
アメリカ合衆國憲法
においても「
身体
の
自由保護令状
の
特権
」として認められているのであります。 それ
ゆえ
に、この
人身保護令状
に関する
法制
は、
英米法系
の國に固有ののであ
つて
、
大陸法
には存在しない
制度
であります。
日本國
新
憲法
は、
民主主義憲法
として、
基本的人権
の
尊重保護
をその中核とするものであ
つて
、殊に人の
身体
の自由を
保護
することをきわめて重要視して、これに対する
侵害
を排除して、
被害者
に
救済
を與える
趣旨
から、第十三條、第三十
一條
、及び第三十四
條等
の
規定
を設けているのであ
つて
、新
憲法
の実施とともに、これらの
規定
の
趣旨
を十分発揮し得るような
立法
を必要とするのであります。殊に第三十四
條後段
は、如実に
人身保護
の
方法
を指示しているのであるから、この
規定
の
趣旨
を十分に実現し得るような
法律
を制定することが要請されているのであ
つて
、
本法
はこの要請にこたえて立案されたものであります。
ゆえ
に
本法
は新
憲法
の直接
附属法
として、必須かつ不可欠の
立法
であることを、特に御留意願いたいと存ずる次第であります。 以上一般的御
説明
を申し上げまして、各
逐條
に対しましては
專門調査員
より御
説明
申し上げることにいたしたいと存じます。
泉芳政
3
○
泉参議院專門調査員
便宜私より
本法
案の
逐條
について御
説明
申し上げたいと思います。 第
一條
でありまするが、この
法律
は
憲法
の保障する
身体
の自由に対する
不法侵害
を排除して、簡便な
方法
で
被害者
を
現実
に、かつ迅速に
救済
することを
目的
とする、
非常例外
的な
措置
を
規定
した
法律
であ
つて
、
本條
はその
適用範囲
を明らかにしたものであります。この
法律
によ
つて救済
の
対象
となるものは、現に
身体
の自由を
拘束
されている者でありまして、その
自由拘束
が
法律
上正当の
手続
によらないで、
不法
に行われた場合に、この
法律
が適用されるのであります。「自由を
拘束
される」と申しまするのは、
身体
の自由が
侵害
されるすべての場合を包含するのでありまして、
逮捕
、監禁、抑留、抑制、
拘束
、
軟禁
等々、いやしくも
身体
の自を奪われ、または制限される、いかなる場合をも含める
趣旨
であるのであります。
拘束
という
文句
は、この廣い
意味
を表わす
言葉
として用いたのでございます。そうして
拘束
されておるかどうかということは、事実問題として決せられるわけであります、「
法律
上正当な
手続
によらないで」というのは、
身体
の
拘束
が
法規
に定める
手続
に從わないことであります。
拘束
が
実体法
上正当であるかどうかということは問わないのであります。
從つて拘束
が
犯罪
に基くかどうか、有罪であるか無罪であるかというようなことには
関係
ないのであ
つて
、たとえば
犯罪
を構成していない場合でも、
適法
な
勾留状
で
拘束
されているという場合には、
人身保護
の
請求
は棄却されることになるのであります。これに反して
勾留状
に形式的の欠点があれば、たとい
犯罪
が成立しておりましても、
人身保護
の
請求
は認められることになるのであります。 それでありますから、
法律
上正当な
手続
ということの
要件
は、
拘束
が形式的に
法規
の根拠に基いておるということ、それから
拘束
が
法律
の定める
手続
、方式に從
つて
おるということ、三番目に、
拘束
がその
権限
のある者によ
つて
行われておるということなどでありまして、この
要件
を欠くときには
手続
上
不法
ということに相なるのであります。「
法律
上正当な
手続
によらないで」というのは、その
意味
であ
つて
、相当廣い
意味
をも
つて
おるのであります。それでありまするから、
犯罪嫌疑
によ
つて刑事事件
として
拘束
された場上におきましても、
拘束
、すなわち
逮捕
、
勾留
が
刑事訴訟法
の
規定
に基く
令状
によらないような場合、また
令状
がその方式、
要件
を具えていないような場合、及び
令状
が
権限
ある
裁判官
によ
つて
発せられないような場合には、いずれも
不法
な
拘束
となるのであります。 次に
不法
な
拘束
から
現実
に免れしめて、
身体
の自由を完全に回復せしめることがすなわち
救済
であるのであります。
非常救済
と称せられるわけであります。この
救済
を求めることが
人身保護
の
請求
でありまして、この
請求
は
憲法
によ
つて
與えられ、保障されました権利であります。
特権
と称せられておるところのものであります。この権利の
本質
は、
身体
の自由、すなわち
私権
の
保護
を
請求
する、
私権保護
の
請求権
の一種にほかならないことは、先ほど申し上げた
通り
であります。
本條
に「
救済
を
請求
する」として、「
請求
」という文字を使
つて
おるのは、右の
理由
からであります。また
憲法
第三十四條の後段に「要求があれば」という
文句
があるのでありますが、この
人身保護
の
請求
として現われたわけであります。
本法
によ
つて救済
の
対象
となる
不法
な
拘束
には、
公権力
による場合と、箇人の私の力による場合とがあるわけであります。すなわち第一は
刑事事件
または
行政事件
に関して、
公権力
による
不法拘束
であります。たとえば
司法官権
の正当な
令状
がなくして
逮捕
または
拘留
しておる場合、
拘留
の原因が消滅したにかかわらず、
拘留
を取消さないで継続しておる場合、
拘留
の
更新決定
の
手続
をしないで
拘留
を継続しておる場合等があげられるわけであります。 第二は
個人
の資力または
私的團体
による
不法拘束
であります。たとえば
政爭関係
、
選挙関係
、あるいは
労働爭議等
の
関係
から
反対派
の人物を抑留したり、
軟禁
その他の
方法
で
身体
の自由を奪い、または制限する場合、あるいは
精神病者
でない者を
精神病者
として、病院または私宅の
監置室
に監置しておるような場合、
未成年者
に対する
監護権
のない者が
未成年者
を
懲戒場
に入れておるような場合、あるいは
坑夫
をいわゆる
監獄部屋
に收容して、
労役
に服せしめておるというような場合に生ずるわけであります。
身体
の自由に対する
不法
な
侵害
があつたときに、被
拘束者本人
みずからが
現実
の
侵害
を排除するために
救済
を
請求
するということは、事実上非常に困難な問題であります。かつ速やかに
救済
をなす必要があるということから
被害者
の
親族
、
友人
、
隣人等
、何人でも被
拘束者
のために、
裁判所
に
救済
を求めることができるということにしたのであります。これは
本人
の
代理人
としてなすのではなくして、
本人
のために独立して自己の名をも
つて
するのでありまして、
本人
の
救済
が簡便かつ迅速に実現されることを期待したわけであります。 次に第二條について御
説明
申し上げます。第
一條
に
規定
した
身体
の自由を
不法
に
拘束
された者が、
救済
を求める
請求
、すなわち
人身保護
の
請求
は、
弁護士
を
代理人
としてすることを
原則
としたのであります。
人身保護
の
請求
は、実際においてかなり
濫用
されはしないかということをおそれるのでありまして、少くとも
本法施行
の当初におきましては、相当
濫用
のおそれあるものと考えられます。そこで正当な
刑事訴訟
の
手続
が妨げられるようなことがあ
つて
はならない。
米國
の判例によりますと、戰爭のために徴用された者の父親が、苦役のためにむすこが監禁されたのは
不法
だということで、
人身保護令状
の
請求
をしたというような例もあるというふうに聞き及んでおりますので、この
人身保護
の
令状
、すなわち
命令
の
手続
は、強力な効果的なものでありますから、これが
濫用
を防止するために、
拘束
が
不法
であるかどうかということについて、
法律
上並びに事実上の判断の能力を有する者、あるいは責任ある者というような
趣旨
から、
弁護士
を
代理人
として
人身保護
の
請求
をなすべきものとしたものであります。しかしながら特別の
事情
がある場合には、
弁護士
を
代理人
としないで
請求者
がみずから
裁判所
に
請求
することも、
例外
として許すということであります。特別の
事情
とは、たとえば
請求者
の
所在地
に
弁護士
がいないとか、あるいは
弁護士
を依頼する資力がないとか、急迫であ
つて弁護士
を依頼する余裕がないという場合を言うのであります。 第三條に移ります。
本條
は
人身保護請求
の
管轄裁判所
を
規定
したものでありまして、
憲法
の三十四
條後段
の
規定
に基く
人身保護
の
請求
は、
身体
に対する
不法
な
拘束
が、
公権力
または強大な
私人
もしくは
私人團体
の力で行われ、
下級裁判所
の手にのらないというような場合もありますし、またこの
請求
は全國的に統一して処理されねばならぬと同時に、その
濫用
を防ぐべきであるというような
理由
から、その
管轄
を
最高裁判所
の專属とすべきものであるというような強い意見もあるのであります。これはまた一面
英國
の沿革によりますと、
人身保護令状
は王の
特権
に属する
令状
であ
つて
、また
非常例外
の
救済手段
として
王座裁判所
、詳しく言えば
最高裁判所
の中の
高等裁判所
の
王座部
を構成する
裁判官
の
管轄
に属しているのであります。しかしながら
英國
のように
人身保護請求事件
が、一年間に十数件に過ぎないという
國柄
と違いまして、
民主主義憲法
のもとに出発した現在のわが國では、
本法施行
とともに、
相当数
の
請求事件
が提起されるものと思います。またそれのみならず
人身保護命令
の
手続
は、簡便かつ迅速に行われることがその使命でありますから、これらの点に鑑みまして、
地方裁判所
及び
高等裁判所
、もちろんこれはそれぞれの支部を含むわけでありますが、その
裁判所
をも
つて
人身保護
の
請求
を受付ける
初審裁判所
としたわけであります。しからば
最高裁判所
は何ら
裁判権
がないかというと、そうではありません。
最高裁判所
は、
人身保護
の
命令
の
手続
については
監督権
を有するものといたしまして、かつ必要に應じてみずから審理をする
権限
を有するという建前をと
つて
、初審として
人身保護
の
請求
を受理する
管轄権
はありませんけれども、
下級審
である
地方裁判所
または
高等裁判所
に係属する
事件
をいつでも
引取つて
、みずから処理し得る
権限
を有するものとしたのであります。これは第十九條にそのむねの
規定
をおきました。なお
最高裁判所
の
上訴管轄
については、第十八條に
規定
しているわけであります。 右申しましたごとく、
人身保護請求
の
管轄裁判所
は、
地方裁判所
と
高等裁判所
と競合しているのでありますから、
請求者
は任意に
管轄権
のあるいずれの
裁判所
にも
請求
することができるのであります。そうして
裁判所
の
土地管轄
は、
原則
として被
拘束者
の
所在地
を基本として定められるのでありますが、その
人身保護
の
請求
にあた
つて
被
拘束者
の所在が不明であるような場合には、
管轄裁判所
がきまらないことになりますから、その欠陷を防ぐとともに、
人身保護命令
の
手続
が簡便かつ迅速を旨とするという
趣旨
に鑑みまして、当初は被
拘束者
その他の
関係者
の
所在地
を
管轄
すというふうに
規定
したのでありますが、どうもこの
関係者
というような
言葉
が、少し明瞭を欠くというように考えられましたので、
参議院
において第一次
修正
を考えました際に、この点は、被
拘束者
または
拘束者
の
所在地
を
管轄
すというふうに改めたいと考えたのであります。さようにいたしまして、この土地の
管轄
は、かなり
自由廣汎
なものとな
つて
いるのであります。 次に
人身保護
の
請求
は書面をも
つて
するので通例でありますけれども、
請求者
が無筆であるような場合、あるいは
司法書士
も存在しないなどの場合も考えまして、
裁判所
に出頭して口頭で
請求
することを得るということにしたのであります。この場合には
裁判所
は
請求
の
趣旨
、その
理由等
、
請求
の
要件
を聽き取
つて調書
を作成するのであります。これらの
手続規定
は
最高裁判所
の規則によ
つて
定められることにな
つて
おります。 次に第四條でありますが、「
請求書
には、
請求
の
趣旨
及び
理由殊
に知れている
拘束者並び
に
拘束
の
場所
を開示し、且つ必要な
疏明資料
を提供することを要する。」というふうに
規定
されたのでありますが、その後いわゆる当事者の
表示
とでも申しましようか、被
拘束者
及び
拘束者
というようなものを、まず記載することが適当であろうというので、この点はお手もとに差上げました
人身保護法案
中
修正案
に書きました
通り
「
請求書
には
拘束者
及び被
拘束者
を
表示
し」ということを附け加えることにいたしております。
本條
は
人身保護
の
請求
の
要件
を
規定
しておるのであります。
人身保護
の
要件
は、
人身保護
の
請求
の開示と
疏明資料
の提供であります。
請求書
の
記載要件
は、今申し上げました
修正案
と原案と参酌をお願いいたしまして、まず
拘束者
及び被
拘束者
の
表示
、それから
請求
の
趣旨
、
請求
の
理由
、殊にその知れておる
拘束
の場合などの
表示
であります。
請求
の
趣旨
は、御承知のように
拘束者
に対して
人身保護命令
を発給して被
拘束者
の釈放を求めるという
申立
を言うのであります。
請求
の
理由
と申しますのは、
請求
の
趣旨
の原因たる事実、すなわち
拘束
が
不法
であることの事実
関係
を言うのであります。
從つて拘束
された日時、
拘束
された
方法
、経過的な
事情
、
拘束者
には
拘束
の
権限
がないということ、殊に正式の
令状
によらないということなどを含んでおるわけであります。知れておる
拘束
の
場所
というのは、これに関連しまして
拘束者
もまた、だれであるかということがわからないような場合も考えられるのでありますから、その
拘束者
が何人であるか、また
拘束
の
場所
がどこであるか、それが知れておるときには、当然
請求
の
理由
の中の記載されるわけでありまするが、それが不明である場合も少くないのでありまするから、かような場合にはこれらの
表示
がないからとい
つて
、
請求
が不
適法
となるのではないのであります。しかしこれらのことは
請求
の
理由
のうちの重要なることでありますから、確定的に明らかでないような場合でも、大体推定し得るような
拘束者
または
拘束
の
場所
を記載すべきものと考えます。
請求
を受けた
裁判所
は、これを調査する手がかりとするために必要があるからであります。それらがまつたく不明の場合には、
請求書
にその旨を記することが適当であろうと思います。
人身保護請求
の
要件
といたしましては、以上の
要件
を
表示
した
請求書
を提出するか、または
口頭陳述
をするとともに、必要な
疏明資料
を提供することを要するのであります。この必要な
疏明資料
と申しまするのは、
請求
の
理由
を疏明するに足る資料でありまして、すなわち
不法拘束
の事実、その
方法
、
経過的事情
などを疏明するのでありますから、資料としましては
関係者
の
陳述書
、
証明書
その他の文書、あるいは名刺、写眞というような類のものであります。
口頭陳述
による場合には、
請求
の際に
裁判所
に出頭した
関係人
の
陳述
もまた
疏明資料
となるというふうに考えております。 次に第五條に移ります。第五條は「
裁判所
は、
請求
がその
要件
又は必要な疏明を欠いているときは、
決定
をも
つて
これを却下することができる」という
規定
であります。
人身保護
の
請求
を受けた
裁判所
は、
請求
の
要件
である
請求書
または
口頭陳述
の
要件
を欠き、または必要な
疏明資料
の提出がないときには、
請求
を却下することができるのであります。すなわち不
適法
として却下するのであります。この却下をするかどうかということは、
受理裁判所
の
自由裁量
によるのでありますが、
請求書
または
疏明資料
が不完全であるからとい
つて
、ただちに却下すべきものではないのであ
つて
、必要に應じて補正せしめることが適当であります。この
人身保護令
の
手続
は
非常例外
的な
措置
であ
つて
、迅速かつ簡便に、何人でも容易に利用し得ることを
目的
とするものでありますから、一應は
適法
としてこれを認容するという建前をも
つて
処理することが必要であります。ただ
請求
の
理由自体
で
拘束
が
不法
でないことが明白である、あるいは
請求
が
濫用
であるというような心証を得た場合、または補正を命じてもこれに應じないという場合には、却下すべきであろうと考えるのであります。その不
適法
で却下しますという場合につきましては、抗告その他の不服の
方法
は認められていないのであります。ある
管轄裁判所
で却下された場合に、他の
管轄裁判所
にさらに
請求
することは、これを許すべきものと解釈しておるのであります。これがすなわち再
審査
の
請求
とでも申しましようか、この再
審査
の
請求
を許すためには、却下の
決定
をただちに確定せしめることなく、
権限
のある
裁判所
に、いつでも繰返えし
請求
し得るものとするのでありまして、この
請求
の反覆を許すということは、弱者を
保護
するという
趣旨
から、沿革上認められておるのであります。この場合に一事不再理の
原則
は適用されないのであります。
英米法
では右と同樣に、
権限
のあるすべての
裁判官
に申し立て得るという仕組みにな
つて
おるのであります。結局
人身保護
の精神を徹底せしめるという
趣旨
から出ておるのであります。 次に第六條であります。「第
一條
の
請求
を受けた
裁判所
は、
申立
に因り又は
職権
をも
つて
、適当と認める他の
管轄裁判所
に
事件
を移送することができる。」この條文を
参議院
における第二次
修正
で「
申立
に因り又は
職権
をも
つて
」というのは、少し不明確であるから「
請求者
の
申立
に因り」と、
請求者
という文字を附け加えるということに考えられております、これは同じような
内容
の
事件
が、あちこちに提起されたという場合に、それをある一箇所に固めて処理することを適当とするような場合とかあるいは
事件
の性質上、ある地方の
裁判所
ではこれをすることが適当でないということも考えられますので、そうした場合には、
請求者
の
申立
により、または
裁判所
の
職権
で他の適当な
管轄裁判所
に移送するということを
規定
したわけであります。 第七條は「
裁判所
は、前二條の場を合除く外、
審問期日
における取調の準備のために、直ちに
拘束者
、
請求代理人
並びに
関係者
の
陳述
を聽いて、
拘束
の事由その他の事項について、必要な調査をすることができる、前項の
準備調査
は、部員をしてこれをさせることができる。」という
規定
でありますが、このうち第一項の「
関係者
の
陳述
を聽いて」という
関係者
というのは、
参議院
おきまして「その他
事件係者
」というふうに改めました。また第二項の「部員」とありますのも、「
会議体
の
構成員
」というふうに改めております。
本條
は
人身保護
の
命令
を発するかどうかということを決する、
準備調査
に関する
規定
であります。
人身保護
の
請求
を受けた
裁判所
が、この
請求
を不
適法
として却下するか、または他の適当な
管轄裁判所
に移送する場合のほかは、
請求
が
理由
があるかどうかを審理するために、
審問期日
を開くかどうか、
人身保護命令
を発給するかどうかということを
決定
せねばならないのでありますが、
請求書
の記載、
疏明資料
だけでは、右の
決定
をするに不十分である場合が相当多かろうと思います。殊に
請求書
の記載等では
拘束者
が不明であるか、
拘束者
は知れているがその所在が不明であるという場合には、
人身保護命令
を発することが事実上できないわけであります。かような場合には
拘束者
が何人であるか、その所在並びに
拘束
の
場所
はどこであるかを、取調べる必要があるのであります。また
人身保護命令
発給の
手続
をするかどうかを決するために、
拘束
の事由、すなわち
拘束
の原因、事実、その
方法
、その
法規
的根拠、その
手続
方式等についても、ある程度の取調をする必要があるのであります。これらの必要事項の取調をいたしますのには、
拘束者
、
請求者
の
代理人
、または
請求者
本人
の
陳述
を聽くのでありますが、必要があればその他の
関係者
の
陳述
をも聽くべきであろうと思います。この取調の結果は、後日の
審査
期日における取調の準備となるのであります。 右の
準備調査
は、
受理裁判所
の
会議体
の
構成員
たる部員、すなわち
言葉
を換えますと、受命判事をしてさせることもできるということにしたのであります。
準備調査
は
民事訴訟
の準備
手続
に類似するものでありまして、非公開で
職権
主義によ
つて
行われるのであります。その
方法
、
手続
については、
最高裁判所
の規制をも
つて
適当に定める
趣旨
であります。
準備調査
は前に申しましたように、
審問期日
における取調の準備として、
拘束
の事由すなわち
拘束
の原因、事実、
方法
等を調査するのでありますが、
拘束
が
法律
上正当の
手続
によらない
不法
なものであるかどうかを、終局に
決定
し得るまで、徹底的に調査するのではないのでありまして、
審問期日
を開くために、
拘束者
に
人身保護命令
を発する必要があるかどうかということを決し得る程度に、
拘束
の事由を調査するのであります。すなわち調査の結果、
人身保護命令
を発する必要がないまでに、
請求
の
理由
がないということが明白であるときには、
決定
をも
つて
請求
を棄却することになるのであります。これが第九條に
規定
してあることであります。この棄却
決定
をなす場合のほかは、
人身保護
の
命令
を発することになるのであります。それは第十條の第一項にあります。それでありますから
準備調査
は、
人身保護
の
請求
が
要件
を具備して
適法
であ
つて
も、ただちに
人身保護
の
命令
を発しないで、
審問期日
を開いて取調をなす必要の有無を決するために、
拘束
の事由に関する一應の調査として行われるのであります。從
つて
人身保護
の
請求
に対して、
人身保護
の
命令
を発することに、ある程度のブレーキを加え、制限を與えるという作用をすることに相なります。だから
請求
がその
要件
を完全に具備し、
疏明資料
も一應整
つて
いるという場合には、
準備調査
は必ずしもその必要がない場合もあるのであります。從
つて
裁判所
はその
自由裁量
によ
つて
、この
準備調査
を省略して、ただちに第十條の
審問期日
を定めて、
人身保護命令
を発することもできるのであります。 要しまするに
準備調査
は、一面においては
審問期日
の準備調べでありますが、他面においては
人身保護命令
がきわめて実効的であるだけに、これを発することを愼重にいたしまして、かつ当事者に
濫用
されることを防ぎますとともに、また
刑事訴訟
の
手続
を防げることのないようにする
趣旨
で設けられたもので、
人身保護命令
発給の橋渡しの作用をなすのでありますから、これらの点を考慮に入れて、
準備調査
を省略すべきか否かということが決せらるべきであると思うのであります。 次に第八條であります。第八條の原案は
参議院
の
修正
で大分直すことにいたしております。原案はお手もとにございますから、朗読を省略いたしまして、訂正の点を申し上げますと、「條件として、
弁護士
の保証の下に、又は保証金を立てさせ若しくは立てさせないで、一時釈放」ということを全部これを削
つて
、
弁護士
の保証ということをやめたわけであります。それで原案を訂正して
修正案
を申し上げますと「
裁判所
は、必要があると認めるときは、第十四條の判決をする前に、
決定
をも
つて
、仮りに、被
拘束者
を
拘束
から免れしめるために、何時でも呼出して應じて出頭することを誓約させ、その他適当と認める條件を附して被
拘束者
を釈放し、その他適当な処分をすることができる。」というふうにいたしました。そうして第二項を附け加えまして、「前項の被
拘束者
が呼出に應じて出頭しないときは、勾引することができる。」というふうに改めたのであります。
本條
は仮釈放に関する
規定
でありますが、
裁判所
が
人身保護
の
請求
を受理しまして、
請求書
、
疏明資料
を
審査
した上、
準備調査
を行
つて
、
審問期日
を定めて、
人身保護命令
の発給の
手続
をして最終の判決をなすまでには、相当の日時を要すると考えられますので、その間に
不法
と認められるような
拘束
を継続することは、
人身保護
の
目的
を没却することになると考えられます。また
拘束者
が被
拘束者
を遠隔の地に移動させたり、または隠したりするようなおそれがあるときに、
審問期日
に出頭せしむるために、被
拘束者
の
身柄
を適当に押えておく必要もあるのであります。そこでさしあたり一時的に被
拘束者
を
拘束
から免れしめるために、何時でも
裁判所
の呼出に應じて出頭するということを誓約させまして、その他適当な條件を附して、一時的にこの
拘束者
から被
拘束者
を釈放し、または特定人の監督のもとに置くということなど、適当の処分をすることができるということにしたのであります。 次に第二項を加えましたまは、さように制約をさせまして、一時釈放した被
拘束者
が、呼出に應じて出てこないような場合には、これは
手続
としてはどうしても勾引せざるを得ないのであります。提案当初におきましては、その不出頭の場合における勾引などは、
裁判所
の規則をも
つて
まか
なつ
たらという考えをも
つて
おつたのでありますが、事いやしくも
基本的人権
に関するようなことになりますので、これはやはり
本法
の中に
規定
した方が適当であろうというので、第二項を附け加えたわけであります。 次に第九條であります。「第九條
準備調査
の結果、
請求
の
理由
のないことが明白なときは、
裁判所
は審問
手続
を経ずに、
決定
をも
つて
請求
を棄却する。 前條の処分をしたときは、
裁判所
は前項の場合に、被
拘束者
を出頭せしめて
拘束者
に引渡す。」ということに相な
つて
おります。これは
準備調査
の結果、
請求
を棄却する場合に関する
規定
であります。
裁判所
が第七條の
準備調査
をした結果、
人身保護
の
請求
の原因である
拘束
は
不法
ではない。正当の
理由
に基くということが明らかとなり、
請求
はその
理由
がないということが明白に
なつ
たときには、
裁判所
は
審問期日
を定めて、
人身保護命令
書発給その他審問
手続
を経ないで、
決定
をも
つて
請求
を棄却するのであります。右の
請求
棄却
決定
をなす場合には、
請求
の
理由
のないことが明白の場合に、たとえば
裁判所
の正当な公式な
令状
に基いて
勾留
されておることが判明した場合等で、
請求
の
理由
がないことが必ずしも明白でない場合、すなわち疑いのある場合には、
請求
を棄却することができないのであります。
請求
が不
適法
でない限りは、一應
人身保護命令
を発することが建前とな
つて
おりまするが、この
準備調査
をするのは、
人身保護
の
請求
の
濫用
を防いで、まつたく
理由
のない
請求
を棄却し、
事件
をふるい落すということが一つの
目的
でありまして、詳細な取調べは
審問期日
の取調べに讓られることにな
つて
おります。
準備調査
の結果、
請求
が棄却されたときには、この第八條によ
つて
一時的な釈放処分をされておる被
拘束者
は、これを
裁判所
に呼出しまして、出頭せしめた上、
拘束者
に引渡すのでありますが、その呼出しに應じないときには、第八條の第二項を適用して、これを勾引してその
身柄
を
拘束者
に引渡すということに相なるのであります。なお
本條
によ
つて
請求
が棄却されたときには、
請求者
は、先ほど申しました第五條の不
適法
として却下された場合と同樣に、他の
管轄裁判所
に、その
事件
について再び
審査
を求めるために、同樣な
手続
をするということができると解釈しております。つまりここにもまた一時不再理は適用がないという考えであります。 次に第十條であります。第十條がこの
手続
における根幹をなす審問
手続
の
規定
であります。
修正
の結果、この十條の「前條の場合を除く外」というのは、「第五條又は前條第一項の場合を除く外」というふうに改められることになりました。「
裁判所
は一定の日時及び
場所
を指定し、審問のために
請求者
又はその
代理人
、被
拘束者
及び
拘束者
を召喚する。
拘束者
に対しては、被
拘束者
を前項指定の日時、
場所
に出頭させることを命ずると共に、前項の
審問期日
までに
拘束
の日時、
場所
及びその事由について、答弁書を提出することを命ずる。 前項の
命令
書には、
拘束者
が
命令
に服さないときは、勾引し又は
命令
に服するまで
勾留
することがある旨及び遅延一日について、五百円以下の過料に処することがある旨を附記する。
命令
書の送達と
審問期日
との間には、三日の期間をおかなければならない。」その次にい
つて
多少
修正
をいたしまして、「
審問期日
は、第
一條
の
請求
のあつた日から一週間以内にこれを開かなければならない。」ということを挿入いたしました。そうして但書に続きますが、「但し、特別の
事情
があるときは、期間は各々これを短縮又は伸長することができる。」というふうに改めてあります。九條で御
説明
いたしましたように、
準備調査
の結果、
裁判所
が
人身保護
の
請求
を
理由
ないものとして棄却する。それから第五條によ
つて
却下する。それらの場合を除きましては
審問期日
を定め、
関係者
を召喚して、いわゆる
人身保護命令
書の発給及び審問
手続
を行うのであります。この
命令
書の発給及び審問の
手続
は、この
法律
の核心をなすものであります。
本條
はこの
手続
を
規定
したものであります。まず
審問期日
の指定及び当事者の呼出しでありますが、
審問期日
の指定は、
裁判所
において審問する日時
場所
を定めてこれをするのであります。その日時
場所
に
人身保護
の
請求者
、
本人
またはその
代理人
たる
弁護士
、被
拘束者
及び
拘束者
を呼出すために、それぞれ召喚状を発するのであります。召喚状の樣式は
最高裁判所
の規則に讓ることにしております。二番目の
人身保護命令
書の発給でありますが、右の召喚状とともに
拘束者
に対していわゆる
人身保護命令
書を発するのであ
つて
、この
命令
書をも
つて
被
拘束者
を
審問期日
に出頭させること、つまり被
拘束者
の
身柄
を差出すことを命ずる。そうして
審問期日
までに被
拘束者
を
拘束
した期日、場合並びに
拘束
の事由を開示した答弁書を提出すべきことを命ずるのであります。右の
命令
書にはもし
拘束者
が
命令
に服從しないで、被
拘束者
を出頭せしめず、または答弁書を提出しないときには、勾引し、または
命令
に服するまで
勾留
することがある旨、及び遅延一日について五百円以下の過料に処することがある旨を附記せねばならないのであります。この附記に書きますところの制裁は、
審問期日
に、右
命令
に違背したことが判明した場合に科せられるということの警告であ
つて
、
命令
に服從すべきことの間接強制となるのであります。この裁判はいわゆる法廷侮辱罪の性質を有するものでありますが、法廷侮辱罪の
規定
のないわが國では、民事罰、もしくは秩序罰と見るべきものであ
つて
、その
手続
は
最高裁判所
の規則で定めるつもりであります。
人身保護命令
書は
拘束者
に送達するのでありますが、その送達と
審問期日
との間には、少くもと三日の期間を置かなくてはならないということにしております。この三日の期間を置くことは、答弁書をつくる準備のために與えられたのでありまして、三日以上幾日の期間を置いても差支えないという
趣旨
ではありません。答弁書の送達後、なるべく早い時期に
審問期日
が開かれることが要求せられますので、
修正案
中におきまして、第
一條
の
請求
のあつた日から、一週間以内にこれを開かなければならないというふうに
規定
をいたしました。なおこれらの期間は
拘束者
、または被
拘束者
の
所在地
と
裁判所
との距離、交通の
関係
など特別の
事情
も考慮に入れまして、これを短縮しまたは伸長することができるということにしたのであります。なおこの
人身保護命令
書の送達の
手続
は、
最高裁判所
の規則で定めることにしております。 次に第十
一條
でありますが、「前條の
命令
は、
拘束
に関する
令状
を発した
裁判所
及び
檢察官
に、これを通告することを要する。」第二項、「前項の
裁判所
の
裁判官
及び
檢察官
は、
審問期日
に立会うことができる」という
規定
であります。察判所は
刑事事件
について
拘束
に関する
令状
、すなわち
逮捕
状、
拘留
状などを発して、これによ
つて
被
拘束者
が
身体
の
拘束
を受けるような場合には、前條の
人身保護命令
書を発した
裁判所
は、右の
拘束
令状
を発しました
裁判官
の属する
裁判所
、及びその
令状
を
請求
したと否とにかかわらず、その
事件
を取扱つた、または現に取扱
つて
いるところの
檢察官
に対して、
審問期日
及び
人身保護命令
書をも
つて
定めた事項を通告せねばならないということにしております。右
命令
書によ
つて
被
拘束者
を出頭せしめる
手続
は、
拘束
令状
の発給に関與した
裁判所
、または
檢察官
に
関係
なく行われるのでありますから、この
裁判所
及び
檢察官
に対しては右の旨を通知いたしまして、
審問期日
に立会う機会を與えておるのであります。申すまでもなく、
拘束
の
理由等
について意見を述べることの機会を得ぜしめるわけであります。なおこれによ
つて
、その
審問期日
の審理において、
拘束
令状
の発給が形式的に、また
手続
上合法であるかどうかということの判断を正確にすることができると思うのであります。 次に第十二條であります。「
審問期日
における取調は、被
拘束者
及び弁護人の出席する公開の法廷において、これを行う。弁護人のないときは、
裁判所
は
弁護士
の中から、これを選任せねばならない。」その次に第三項といたしまして次のように
修正
することにいたしております。それは「前項の弁護人は旅費、日当、宿泊料及び報酬を
請求
することができる」ということを新しく附け加えております。十二條は、
審問期日
における取調に、被
拘束者本人
及びその弁護人が出席せねばならないことにしております。それは被
拘束者
の
立場
からその弁明、意見を十分に聽くためであります。また取調を公開の法廷で行うものとしたのは、被
拘束者
の利益のために、公明正大にことを運ぶ
趣旨
であります。これは
憲法
第三十四
條後段
の
趣旨
にこたえるものであ
つて
、
人身保護命令
書の
手続
として最も重要な
要件
であります。なお
審問期日
は延期することなく、迅速に運ばれなければならないのでありますから、この
手続
は他の
事件
に優先して進めなければならないのであ
つて
、続行の必要があれば連日開廷せらるべきものと考えられます。この点について
アメリカ
の法典には、当事者が特に要求しない限り、
人身保護命令
書に対して答弁後五日以内に審理しなければならないことにな
つて
おります。
審問期日
に被
拘束者
の弁護人を依頼していないときには、
裁判所
は
弁護士
の中から弁護人として適当なものを選任せねばならないことにしております。この弁護人は
刑事訴訟
手続
の國選弁護人と同性質のものであります。選任の
方法
については、これまた
最高裁判所
の規則できめることを予定しております。なおその弁護人に対しては旅費、日当、宿泊料、
報酬等
を支給することはもとよりでありますが、これも
本法
ではつきり
規定
することにいたしました。
審問期日
に出席すべき当事者は、被
拘束者本人
、その弁護人のほか、
拘束者
、
請求者
及びその
代理人
等であります。
拘束
令状
を発した
裁判所
の
裁判官
、
檢察官
は立会うことができるのでありますが、これは当事者として出席することを要するという
意味
ではございません。 次に第十三條、「
審問期日
においては、
請求
の
趣旨
、その
理由
及び
拘束者
の答弁を聽いた上、証拠資料の取調行をう。」
本條
は、
審問期日
における取調の順序
方法
を
規定
したのであります。
審問期日
の
手続
としては、まず
人身保護
の
請求者
が、
請求書
に基いて
請求
の
趣旨
及び
請求
の
理由
を
陳述
し、これに対して
拘束者
が、
拘束
の事由を明らかにするために、答弁書に基いて
陳述
する。そうして
審問期日
の取調のために
準備調査
が行われている場合には、これの調査の結果を
陳述
しまたは援用することができる。また
審問期日
には被
拘束者
及びその弁護人も出席して、被
拘束者
の利益のために、弁明あるいは意見の
陳述
をなし得ることは当然でありますが、
審問期日
には
拘束
令状
を発した
裁判所
の
裁判官
、
檢察官
も立会
つて
、
拘束
に関して意見を述べることができるわけであります。從
つて
審度期日における
手続
は、利害
関係
を有する多数当事者間において行われる特殊の訴訟
手続
ということになるのであります。しかしながら
審問期日
における取調の中心は、
拘束
の事由があるかどうかということを判断するのであ
つて
、主たる当事者はやはり
請求者
と
拘束者
である。殊に
憲法
第三十四
條後段
の
趣旨
に
從つて拘束
の事由を開示せしめる点にかか
つて
おります。かくし各当事者の主張、弁明、意見の
陳述
があつた上で証拠資料の取調が行われ、当事者の
申立
により、または
職権
をも
つて
証人の尋問、書証の提出、その他必要に應じて鑑定、檢証等も行われるのであります。証拠調が終
つて
、
請求者
と
拘束者
の間に、
拘束
の
手続
が
不法
であるか、合法であるかという点について弁論が行われまして、その結果によ
つて
裁判所
が判決するということになります。
審問期日
は必ずしも一日で終るわけでありませんが、これを継続する間、判決に至るまで、
拘束者
が出頭せしめまして被
拘束者
の
身柄
というものは、これは
裁判所
の支配のもとに留置されておかなければならないのであります。どういう
方法
で留置されるかということは、これは
最高裁判所
のルールできめることにしております。たとえば被疑者または未決の被告人を收容する拘置所、あるいはもよりの警察署の留置場等を借りるということになると考えております。 次に第十四條であります。「
裁判所
審問の結果、
請求
を
理由
なしとするときは、判決をも
つて
これを棄却し、被
拘束者
を
拘束者
に引渡す。
請求
理由
ありとするときは、判決をも
つて
被
拘束者
を直ちに釈放する。」これは
審問期日
において第十三條に從
つて
審問した結果、
裁判所
が
人身保護
の
請求者
のなした
請求
が、
理由
がない。すなわち
拘束
は合法であ
つて
、
手続
上何ら
不法
の点がないと判断したときには、判決をも
つて
これを棄却する。
從つて拘束
者が
審問期日
に
裁判所
に出頭せしめた被
拘束者
の
身柄
は、これを
拘束者
に引渡すのであります。その引渡しは
裁判所
が事実行為をも
つて
現実
の引渡しをな献すのでありまして、檢事の手を経てやるものではありません。この棄却判決に対しては、
請求者
またはその
代理人
から、
最高裁判所
に上訴することができることにな
つて
おります。これは十八條に
規定
しておるのであります。
審問期日
において審問の結果、
裁判所
が
請求者
の
理由
がある。すなわち被
拘束者
に対する
拘束
が
不法
であ
つて
、正当な
理由
によらない
拘束
であると判断したときには、判決をもつた
請求者
を釈放するのであります。この判決の執行として、
裁判所
は判決の確定を待たないで、ただちに事実行為をも
つて
被
拘束者
を
現実
に釈放してしまうのであります。この釈放の判決に対しては、
拘束者
から不服の
申立
として上訴をすることができるのであります。しかしながら被釈放者に
犯罪
があるかどうかということは別問題でありますから、被釈放者に対して公訴が提起されておるときは、被釈放者といえども被告人として
犯罪
の有無について
裁判所
の判決を受けねばならないことはもちろんであります。この場合にこの釈放者に対して
勾留状
が発せられておるときは、その
勾留状
による
拘束
が
不法
であるとして釈放したのであるから、その
勾留状
は釈放判決によ
つて
その効力を失うものと解釈せねばなりません。釈放の判決は、右の
勾留状
による
拘束
を
不法
としてその効力を奪えという
趣旨
だからであります。その後有罪の判決があれば、その判決によ
つて
再び
拘束
されることになるのは当然であります。 次に十五條でありますが、十五條には原案の十五條以下を
一條
ずつ繰下げまして、新しく十五條として
一條
挿入することにいたしました。それは「第五條、第九條第一項及び前條の裁判において、
拘束者
又は
請求者
に対して、
手続
に要した費用の全部又は一部を負担させることができる。」 つまり費用負担の
原則
をここに設けたわけであります、從
つて
、今度はこの原案の十五條、つまり新しく十六條となるわけでありますが、これは
拘束者
が第十條第二項に
規定
する人心
保護
命令
書をも
つて
拘束者
に対してなした
命令
、すなわち
審問期日
には
拘束者
を出頭させること並びに
審問期日
までに、
拘束
の日時
場所
、及びその事由についての答弁書を提出することの
命令
に違背して應じないときには、
裁判所
は勾引状をも
つて
拘束者
を勾引し、または
命令
に服するまで
勾留
すること、及び
命令
に違背して日数によ
つて
一日について五百円以下の割合の過料に処することができるということを
規定
した條文であります。 次に、原案の第十六條でありますが、これは新しく十七條と相なります。これは「被
拘束者
から弁護人を依頼する旨の申出があつたときは、
拘束者
は遅滯なくその旨を、被
拘束者
の指定する
弁護士
に通知しなければならない。 被
拘束者
が
弁護士
を指定しないか、又は指定した
弁護士
に事故があるときは、前項の通知は被
拘束者
の
所在地
の
弁護士
会にこれをする。」という
規定
であります。
審問期日
における取調は、被
拘束者
よりその弁護人の出席する法廷で行われるのであ
つて
、弁護人を被
拘束者
が選任しないときには、
裁判所
が
職権
で弁護人を選定することを要するのであります。これは十二條に
規定
がございます。だから右
裁判所
の選任するいわゆる國選弁護人を附するよりも、なるべく被
拘束者本人
が選任する弁護人を立会わしめることが適当である。それでありますから、
本條
で被
拘束者
から弁護人を依頼する申出があつたときには、
拘束者
は遅滯なく被
拘束者
の指定する
弁護士
に通知しなければならないこととしたのであります。 被
拘束者
が
弁護士
を指定しないか、まつは指当した
弁護士
が旅行中とか、あるいは病氣とかいうような事故があるときには、その通知は被
拘束者
の
所在地
の
弁護士
会にすることとしたのであります。右の通知を受けた
弁護士
会は、会則その他適当な
方法
で、右の依頼に應ずる
弁護士
を定めて
拘束者
に回答し、被
拘束者
から依頼を受けしめることになるのであります。
弁護士
会の会則に右の通知に対処する
規定
のないときには、
最高裁判所
の規則でも
つて
、適当な
方法
が定められることと考えております。 次に原案の第十七條、新しくは十八條になります。「第
一條
の
請求
を受けた
裁判所
又は移送を受けた
裁判所
は、直ちに
事件
を
最高裁判所
に通知し、且つ
事件
処理の経過並びに結果を同
裁判所
に報告することを要する。」これは先ほど申し上げましたように、
最高裁判所
が本件についても
下級裁判所
に対する
監督権
などの行使を、ここに如実に
規定
したものであり、またこれによ
つて
、その
事件
の審理経過などが手にとるようにわかるので、必要に應じて
最高裁判所
その
事件
を、みずから処理するために取上げることができることのよすがとしたのであります。 次に、原案第十八條、改め十九條でありますが、「
下級裁判所
の判決に対しては、三日内に
最高裁判所
に上訴することができる。」
本法
でも上訴の
制度
を認めまして、結局一審は
地方裁判所
または
高等裁判所
ということになりますが、二審はあげて
最高裁判所
ですることにしております。なお上訴に関するこまかい
規定
は、
最高裁判所
の方で
規定
することを予定しております。
請求書
も被
拘束者
も、両方ともそれぞれ自己に不利益な判決に対しては上訴ができるわけであります。 次に、原案の第十九條、今度は二十條になります。「
最高裁判所
は、特に必要があると認めるときは、
下級裁判所
に係属する
事件
が、如何なる程度にあるを問わず、これを送致せしめて、みずから処理することができる。 前項の場合において、
最高裁判所
は
下級裁判所
のなした裁判及び処分を取消し又は変更することができる。」ということにいたしました。
下級裁判所
から
地方裁判所
または
高等裁判所
において判決の言渡しがあるまでは、
最高裁判所
はいつでもこれを取上げて、みずから処理することができるという非常に強力な
規定
をおいたわけであります。 次に、原案の第二十條、これは改め二十
一條
でありますが、「
最高裁判所
は、
請求
、審問、裁判その他の
手続
について、必要な規則を定めることができる。」と書いてありますが、この原案も
参議院
における
修正
によりまして、「
最高裁判所
は、
請求
、審問、裁判その他の事項について」というふうに改めまして、單なる
手続
だけでなしに、相当廣範囲に
本法
運用の上に必要な規則を、
最高裁判所
が定め得ることをここに
規定
したわけであります。 次に、原案第二十
一條
、今度改め二十二條であります。「被
拘束
物を移動、藏匿、隠避しその他この
法律
による
救済
を妨げる行為をした者若しくは第十條第二項の答弁書に、ことさら虚偽の記載をした者は、二年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。」というように、
本法
の運用を妨げる者は、この
規定
に該当する限り、かなり重い刑をも
つて
処罰されることになります。 以上、非常に雜駁な
説明
でありましたが、御清聽を煩わしましてありがとうございました。何とぞ愼重審議を願いまして、御可決あらんことを願います。 ちよつと附加えておきますが、
参議院
で原案ができました後に、いろいろ檢討いたしまして、第一次
修正
を行つたわけであります。これはお手許に配付しておりますガリ版刷の「
人身保護法案
中
修正案
」四條、七條、八條、九條、十
一條
、十二條、十四條、それから十五條を新しく入れまして、十六條以下を繰下げ、なお二十條の中にも多少の
修正
をいたしました。その後また再檢討の結果、第
一條
、第三條、第六條について若干の
修正
をただいま
関係
方面と折衝中でありますが、先ほども申しましたように、第三條は「被
拘束者
その他
関係者
」とありますのを、「被
拘束者
又は
拘束者
」と直しますし、それから第六條のところは「
申立
に因り又は
職権
をも
つて
」というのを、「
請求者
の
申立
に因り又は
職権
をも
つて
」と改めました。それから第
一條
の方はかなり困難な折衝があろうと思いますが、まだ十分熟しておりませんので、第
一條
の
修正
は、いずれ
関係
方面との折衝が終りましてから申し上げたいと思います。御了承を願います。
井伊誠一
4
○
井伊
委員長
本案については、時間の都合上質疑は次会にいたすことにいたします。 それでは午後一時半まで休憩いたします。 午後零時二十二分休憩 ————◇————— 午後三時五十一分
開議
井伊誠一
5
○
井伊
委員長
休憩前に引続き
会議
を開きます。
裁判官
の
報酬等
に関する
法律案
及び
檢察官
の
俸給等
に関する
法律案
の両案を一括議題といたします。両案については連日御協議を煩わしてまいりましたが、本日ようやく意見がまとまつた段階に到達いたしましたので、一應質疑を終了いたしたいと存じますので、この際総括的に補充質問がありますれば御発言願います。
鍛冶良作
6
○鍛冶委員 法務総裁にお伺いしたいと思います。両
法案
を比較檢討いたしますと、
裁判官
は、他の官吏に比較して特別優位の地位に置くべきものであるという
建前
をも
つて
、立案せられたものと考えるのであります。これはわれわれももちろん賛成するところでありますが、これを実際に現わすということにおいては、その前提として
裁判官
の採用
制度
を、根本的に解決することが必要でないかと考えるのであります。今日
最高裁判所
の
裁判官
に対して、何人も異論なく優位の地位を認めるということも、ひとえに採用
制度
が特別の
制度
であるが
ゆえ
であります。そのほかの判檢事並びに法務廳の官吏等に至りましては、その出発を一緒にしているものでありまして、同一の年限を経ているものを、單に現われたる結果のみにおいて特別の地位に置くことになりますと、ほかの官吏の方からは、理論がどうであろうと実際においておもしろからぬ考えを持たれることがあると考えますので、まず採用
制度
を改めるということを前提とすべきものと考えまするが、法務総裁においていかなる御見解をも
つて
おられるか、まずその点をお尋ねいたします。
鈴木義男
7
○鈴木國務大臣 ただいま鍛冶議員の御質問はごもつともでありまして、政府といたしましても、新
憲法
においては、
裁判官
を他の官吏に比して優位の地位に置いていることは疑がないのでありますから、そういう
精神
を生かして
制度
を考えなければならぬということを考えているのであります。そのためには任用の
制度
から改正しなければ徹底しないということは仰せの
通り
であります。從
つて
この任用
制度
をいかに改正すべきかということについて、十分愼重に考慮いたすつもりであります、但しこれは政府だけで決し得る問題とは考えませんので、
最高裁判所
等とも御協議をいたしまして、十分合理的にして妥当なる
制度
を確立したい、できるだけ速やかにこれを提案するように努力いたすつもりであります。
鍛冶良作
8
○鍛冶委員 抽象論としてはまことに結構でありますが、具体的にわれわれの希望を申し上げますと、これは今に始まつた議論ではありませんので、多年主張せられてきた議論でありますが、
裁判官
を特別優位の地位におくというこの
原則
は、要するに
英米法
における
裁判官
の採用と同一のものであらんければならぬ。この前提から出ておるものと思うのであります。從いましてわれわれはまず第一番に、多年の主張から、今の司法修習生の一元化を主張してまいつたのでありますが、これはようやく一元化いたしましたけれども、この修習生からまず
裁判官
なり檢事なりをと
つて
いて、残りのものを
弁護士
にするというこの
制度
が、すでに私は根本的に
欠陷
があるものと考えるのであります。從いまして司法試驗を受けますと、
裁判官
になり
檢察官
になる。このプールをつくるところとなる。まずこれを考えてすべて
弁護士
にしておく。そのうちからまず五年経つたら成績優秀な者を檢事として採用し、さらに十年経つた後に
裁判官
に採用する。また五年経
つて
檢事にな
つて
、それが辞めたらまた元へ戻
つて弁護士
になる、一旦判事にな
つて
も、これが辞めたらまた
弁護士
にな
つて
、そうしてさらにあらためて後成績優秀な者をここから救い上げる。これがもつとも理想的でもあるし、またそうせざれば
裁判官
というものの特別の優位の地位が認められない。かように考えておるのでありますが、法務総裁のただいまのお考えでは、これに御賛成でありましようか。いかがでありますか。
鈴木義男
9
○鈴木國務大臣 私
個人
としては鍛冶議員の御意見至極賛成であります。但し政府としてはそれも一つの参考意見として愼重に考慮いたしまして、立案をいたしたいと思います。政府としてはただいまのような御提案も、十分考慮の中に入れて、將來の
制度
を考えていく。かようにお答えしておきます。
鍛冶良作
10
○鍛冶委員 なおほかの問題でありますが、この両
法案
を見ますると、超過勤務手当というものをなくすることに立案せられておるのであります。そこでわれわれはなくしなければならぬ
事情
があるならば、あえて固執もいたしませんが、せつかく優遇せられたように出ておりましても、ほかの官吏が超過勤務において相当の收入がある。しかるに
裁判官
及び
檢察官
において、これを貰わないで本俸だけはよろしいのだが、オーバー勤務を入れるならばかえ
つて
優遇にならぬとか、もしくはそれほどの優遇でないということになりますと、有名無実に終ると思うのであります。この点についてわれわれ大藏省当局に、他の官吏の超過勤務手当をどのように出しておるかを明確に資格を求めたのでありますが、遺憾ながら出ておりません。從
つて
本日ここできめることに相当躊躇するのでありますけれども、一應もし法務総裁において他の官廳の
事情
をお知りならば、その点をお聽かせ願いたいし、なおまたお知りでないならば、これではたして他の官吏よりも優遇にな
つて
おるものかどうか。また優遇にあらざれば——そういうことはないと思いますが、その点をまず第一の前提としてお伺いいたしたいと思います。
鈴木義男
11
○鈴木國務大臣 超過勤務手当の問題は大切でありますから、これを立案するにつきまして大藏当局とも協議いたしまして
資料
の
提出
を求るたのでありますが、実際わが國の公務員の超過勤務手当というものは非常にまちまちでありまして、画一的な統計のようなものをも
つて
、ただちにお示しできるようには簡單でないのであります。そのためにごく大まかな観察しかできなかつたのでありまして、もう少しこれが正確にできるような
資料
を、速やかに整えたいとは考えますが、何しろ実際に行われておる慣例が非常にまちまちなのであります。しかしごく大体の観測におきましては、一般の官吏に比して超過勤務手当を入れても、比較する官吏との種類によ
つて
も違いますが、なお三、四割、五割くらいまで高い給料に相なる。こういう結論を得て提案をいたした次第であります。
鍛冶良作
12
○鍛冶委員 以上の質問に基きまして結論を申し上げます。多少の
修正
はいたすかもしれませんが、本
委員会
においては大体において御提案の
趣旨
をのむつもりであります。從いましてこれをのみますについては、
裁判官
の採用
方法
について根本的の改革あるものということを條件としてのむのでありますから、ただいま法務総裁の仰せられたお
言葉
のような改革を、至急でき得るだけ早くや
つて
もらうことを條件とし、第二は、オーヴアー勤務手当につきましては、他の官廳と比較して優遇でないというような事実が現われた場合は、ただちに本俸と両方を改正せられまして、
裁判官
及び
檢察官
に対する優遇の案を立てていただく。この二点を條件としてお願いいたしたい。これは私は本
委員会
の代表の
意味
で申し上げるわれであります。
井伊誠一
13
○
井伊
委員長
この際
委員長
のもとに、各党の共同提案になる
裁判官
の
報酬等
に関する
法律案
に対する
修正案
が提案されておりますので、これを読み上げます。
裁判官
の
報酬等
に関する
法律案
の一部を次のように
修正
する別表中 東京
高等裁判所
長官 一万八千円その別の
高等裁判所
長官 一万七千円とあるを、東京
高等裁判所
長官 一万九千円その別の
高等裁判所
長官 一万八千円と改める。 この
修正案
に対する提案の
説明
を願います。佐瀬昌三君。
佐瀬昌三
14
○佐瀬委員 私はただいま
委員長
の御朗読に
なつ
た各党共同提案にかかる
裁判官
の
報酬等
に関する
法律案
の
修正
について、簡單にその提案の
理由
を
説明
いたします。そもそも当
委員会
において
審査
中の
裁判官
の
報酬等
に関する
法律案
並及に
檢察官
の
俸給等
に関する
法律案
は、司法官たる
裁判官
の新
憲法
下における地位の優位を確認し、これに伴つた相当の報酬を給與するため、また
檢察官
についてはこれに準する地位に鑑みて、同樣一般官吏よりは異つた優遇を與える
趣旨
のもとに、この二
法案
が政府から提案されたように承知しておるのでありますが、その
趣旨
を貫徹するため、私はこの
修正
を必要と認めるものであります。現有通貨の不安定、経済社会生活の動搖等、諸般の
事情
を考慮いたしまして、現段階において與えられた報酬給與の水準は、この原案をも
つて
あるいは満足しなければならないかとも思われるのでありますが、特に
裁判官
の報酬については、東京
高等裁判所
長官及びその他の
高等裁判所
長官に対する原案の報酬をも
つて
したのでは、その
趣旨
が徹底されない憾みがありますので、私はこの点についてのみ、國家財政上許された範囲のものであると信じますが
ゆえ
に、この
修正
を提案する次第であります。各委員におかれましても何とぞ御質問あらんことを切に希望する次第であります。
井伊誠一
15
○
井伊
委員長
それでは両案を一括して討論に付します。
石井繁丸
16
○石井委員 社会党を代表いたしまして意見を申し上げます。 社会党といたしましては檢査官に
俸給等
に関する
法律案
は原案に賛成をいたし、
裁判官
の
報酬等
に関する
法律案
については
修正案
に賛成いたします。
中村俊夫
17
○
中村
(俊)委員 私は民主党を代表いたしましてただいま御提案の
修正案
に賛成いたします。
松木宏
18
○松木委員 民主自由党を代表いたしまして、ただいまの
修正案
に賛成の意を表します。
大島多藏
19
○大島(多)委員
裁判官
と
檢察官
の報酬並びに俸給に関しましては、わが党におきましても相当論議がありまして、必ずしま意見の一致を見なかつたのであります。しかしただいまの各派共同提案になる
修正案
は、両者の主張の均衝をはなはだしく失することもなく、かつ新
憲法
に
規定
されておる
裁判官
優位の
精神
にも副うことになり、まことに妥当なるものと考えまして、ここに國民協同党を代表いたしまして、ただいまの
修正案
並びにその
修正
を除いたほかの部分に対する政府の原案に、賛意を表する者であります。
井伊誠一
20
○
井伊
委員長
北浦圭太郎
君。
北浦圭太郎
21
○北浦委員 私は判事と檢事とによ
つて
待遇を異にするということは根本的に反対であります。殊に地域的俸給ということをこのごろ聽きますが、いかにもこれは東京あたりに住んでおる判事、檢事と、田舎に住んでおる判事、檢事とは、もちろん区別しなければいけない。そこで東京におる判事と檢事とを区別するということは、これは
憲法
的にも、法理的にも、今日のところでは何らの根拠がない。しかし鍛冶君の質問があり、鈴木総裁の御答弁を拜聽いたしますと、特に今後は判事に限
つて
、檢事よりも優位なる報酬を受くるべく任用その他の
制度
をかえるのだ、こういうお
言葉
でありますから、このお
言葉
に信頼いたしまして、
修正案
並びに原案に対して賛成いたします。
井伊誠一
22
○
井伊
委員長
これにて質疑及び討論は終局いたしました。 これより採決をいたします。採決は各案各別に行います。最初に
裁判官
の
報酬等
に関する
法律案
について採決いたします。 まず共同提案になる
修正案
について採決いたします。提案のごとく
修正
するに賛成の諸君の御起立を願います。 〔総員起立〕
井伊誠一
23
○
井伊
委員長
起立総員。よ
つて
満場一致をも
つて
提案のごとく
修正
するに決しました。 次にただいま
修正
に決しました部分を除いては、原案の
通り
決するに賛成の諸君の御起立を願います。 〔総員起立〕
井伊誠一
24
○
井伊
委員長
起立総員。よ
つて
本案は滿場一致をも
つて
提案のごとく
修正
可決せられました。 次に
檢察官
の
俸給等
に関する
法律案
について採決いたします。本案については政府原案の
通り
決するに賛成の諸君の御起立を願います。 〔総員起立〕
井伊誠一
25
○
井伊
委員長
起立総員。よ
つて
本案は全会一致をも
つて
原案の
通り
可決せられました。 それでは本日の
会議
はこれをも
つて
閉じます。 午後四時十三分散会