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1948-04-13 第2回国会 衆議院 司法委員会 第12号
公式Web版
会議録情報
0
昭和二十三年四月十三日(火曜日) 午前十一時二十一分
開議
出席委員
委員長
松永
義雄君 理事
石川金次郎
君 佐瀬 昌三君 花村 四郎君 松木 宏君
明禮輝三郎
君 井伊 誠一君 池谷 信一君 榊原 千代君
山中日露史
君
中村
俊夫君
中村
又一君 八並 達雄君 吉田 安君
北浦圭太郎
君
出席政府委員
訟 務 長 官
奧野
健一君
委員外
の
出席者
專門調査員
村 教三君
專門調査員
小木 貞一君 ――
―――――――――――
四月九日
戸籍手数料
の額を定める
法律案
(
内閣提出
)( 第三八号) の
審査
を本
委員会
に付託された。 四月八日
鹿兒島市
に
高等裁判所支部設置
に関する
陳情書
(第一四六号) を本
委員会
に送付された。 ――
―――――――――――
本日の
会議
に付した
事件
軽犯罪法案
(
内閣提出
)(第一三号)
民事訴訟法
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提
出)(第三三号) ――
―――――――――――
松永義雄
1
○
松永委員長
会議
を開きます。
民事訴訟法
の一部を
改正
する
法律案
について
審査
を進めます。議案の
審査
を進める
ため
、この際さらに敷衍して
政府
より
説明
を願います。
奧野健一
2
○
奧野政府委員
大体
民事訴訟法
の
改正
につきましては、この前に
提案理由
の御
説明
をいたしました際に、大体触れたのでありますが、なお詳しく
改正
の
要点
についてお話申し上げたいと存じます。御
承知
のように、
憲法
及び
裁判所法
の
制定
によりまして、
從來
の
民事訴訟法
のうちで、どうしても一應
改正
しなければならない点を
民事訴訟法
に関する
應急措置法
で、一
應つなぎ
をつけておるのでありますが、この
應急措置法
が、本年の七月十五日に
効力
を失いますので、大体
應急措置法
に盛
つて
あります点を、この
從來
の
民事訴訟法典
の中に織りこむというのが
改正
の第一の主眼であります。なおそのほかに、だんだんと
審査
を進めてまい
つた
途中におきまして、
関係法面等
からいろいろな示唆、
意見
が出ましたので、そういうものも中に織りこんで
規定
いたしておるわけであります。あらかじめ御了解を願
つて
おかなければならないと存じますことは、御
承知
のように、
憲法
によりまして、
訴訟手続
に関しては、
最高裁判所
が
ルール
をつくる
権限
を與えられましたので、
ルール
に
規定
すべき
事項
と、
法律
をも
つて
規定
すべき
事項
との
関係
ということが、非常に問題になるのでありまして、ある極端な
学説
では、
訴訟手続
に関すること、特に
民事訴訟
に関する
手続
については、すべて
最高裁判所
の
ルール
によ
つて
規定
すべきもので、
法律
で
規定
することは、
憲法違反
であるという説もあるわけであります。あるいはまた
國民
の
権利義務
に直接重大な
関係
のあるものは、やはり
唯一
の
立法機関
である
國会
の
制定
する
法律
できめる。その以下においてこまかいと申しますか、実際のプラクチスに関するような
事柄
は、
ルール
で
規定
すべきものであるというように、その
ルール
と
法律
との
関係
というものについては、非常に問題があるのでありまして、この点はだんだんと実際の
訴訟
が慣習的に進んでいくに
從つて
、
最高裁判所等
の考えもだんだん固ま
つて
き、あるいは
学説
、そうい
つた
ものも、だんだん進んでまいるので、その上であら
ため
て
法律
で定むべき
事項
と、
ルール
できめるべき
事項
というようなことについて、
最高裁判所
なり、
國会
なり、あるいは
行政廳
たる
法務廳等
におきまして、よく研究の上できめていきたいというふうに考えているのでありまして、今回は
從來
の
民事訴訟法
について所要の
改正
を加えて、
ルール
との
関係
については、ほとんど考慮を
拂つて
ないという
関係
にな
つて
おりますので、御了承願いたいと思います。 そこでまず第一に
憲法
及び
裁判所法
の
制定
に伴いまして必要な
條文
の
整備
をいたしました。たとえば軍人、軍属というような
規定
をはずしたり、あるいはまた民法の
改正
に
伴つて
、戸主、家族ということがなく
なつ
たり、あるいは妻というのを
配偶者
にかえるとい
つた
ような、
條文
の
整備
を機械的にいたしたことが、第一点であります。 次に御
承知
のように、
裁判所法
におきましては、
最下級
の
裁判所
を
簡易裁判所
として、その上に
地方裁判所
がある。ところが
地方裁判所
は
從來
は三人で
会議制
にな
つて
お
つたの
を、
裁判所法
では一人制も認め、
会議制
も認めるのいう
制度
にな
つて
おります。そこでさらにまた
簡易裁判所
の
事件
の
上告
は
高等裁判所
が行う。
地方裁判所
から出た
上告
は
最高裁判所
が行う。殊にまた
最高裁判所
は、
違憲審査
についての
最終審
であるというふうな
関係
から、必要な
改正
を行わなければならないということに
なつ
たわけであります。そこで
簡易裁判所
につきましては、
從來
の
区裁判所
のやり方よりは、さらに簡易迅速に
審理
、
裁判
のできるように、
特別規定
を設けたのであります。これは三百五十二條以下がその
條文
に当
つて
おります。
從來
の
区裁判所
よりも、なお簡易なる
手続
で、迅速に行い得るようにいたしたのであります。 それから
地方裁判所
は、先ほど申しましたように、單独制と
会議制
の
二つ
の種類のものを認めることになりましたので、たとえば
從來地方裁判所
はすべて
準備手続
がやれることにな
つて
おりまして、
準備手続
には、
受命判事
がこれに当るということにな
つて
おりますが、一人制の場合について考えてみますと、一人でやるのに
準備手続
ということは無
意味
でありますので、
準備手続
をやるのは三人の
会議制
の場合だけに限り、一人制でやる場合には、
準備手続
はやらないということにな
つて
おります。これが二百四十九條の
改正
であります。 それから
上訴
の
関係
につきましては、これは大体
應急措置法
にも
規定
いたしておりますが、
簡易裁判所
の
事件
は、
控訴
が
地方裁判所
、そして
上告
が
高等裁判所
にな
つて
おります。しかしながら、
上告
のうちでも、それが
憲法違反
の問題を含んでおる場合におきましては、この
高等裁判所
の
上告
の
判決
に対して、さらに
違憲審査
の
ため
に、
最高裁判所
に
特別上告
ができるということにいたしてお
つて
、
憲法
におきまして
最高裁判所
が
違憲審査
の
最終審
であるという趣旨を表わしたのが三百九十三條から四百九條ノ三というふうな
規定
で、いわゆる
上告制度
に関する
裁判所法
の
改正
に附随した
規定
であります。この点は大体
應急措置法
をそのまま組入れたわけであります。 それから次に
証人
、
鑑定人等
の
証拠調べ
について、
当事者
に直接
訊問
を認めた、いわゆる
クロス・エクザミネーシヨン
の
制度
を取入れる、これが二百九十四條であります。この点は
應急措置法
にはなか
つたの
でありますが、要するに今までのように
裁判所
の方がみずから進んで
証人
を
訊問
するというのではなくて、
原告
で申請した
証人
は、まず
原告
の方で
訊問
をいたしまして、さらに
被告
の方でこれに対して
反対訊問
を行う。しかし
被告
からも申請せるものは、
被告
の方で先に
訊問
して、しかる後に
原告側
で
クロス・エクザミネーシヨン
をやる。そのあとで
裁判所
の方で、必要と思う
訊問
をするというような形式にいたして、
從來
のようにまず
裁判所
が
訊問
をするという
制度
をやめたわけであります。これが二百九十四條であります。 われわれとして初めに
改正
の必要なものとして
規定
をいたしておりましたのは、大体以上のような諸点であ
つたの
でありますが、それが
関係方面
との
いろいろ審査
の結果、さらにいろいろな
意見
が出まして、そのうちでいろいろ
話合
いの結果
整備
されて、以下数点にわた
つて
新しく
改正
の
ため
に取入れた点があるわけでありまして、この点はむしろ初めにこちらの方で予想していなか
つた
点であります。 その第一は、先ほど言いましたように、
当事者
の方で
証人等
を
訊問
して、
裁判所
はむしろ
行司
というふうな立場で、むしろ
当事者
が相撲をと
つて
行司
が判断するというような
建前
にな
つて
おりまして、
行司
の方から進んで
職権
で
取調べ
るというふうな
建前
でないことになりました
関係
から、
裁判所
の方で
職権
で
証拠調べ
をするという
制度
をやめることにな
つたの
でありまして、二百六十
一條削除
というのがそれであります。
從來
は
当事者
の出した
証拠
で、
裁判所
の心証を得られない場合には、
裁判所
が
職権
でも
つて
証拠調べ
ができるということにな
つて
おりましたのを削除して、すべて
証拠
は
当事者
の方から提出して、
当事者
の
責任
において
立証
を盡す、それが足りないからとい
つて
、
裁判所
の方でみずから進んで
証拠調べ
をするということは、あたかも
当事者
の一方の方に援助を與えるかのごとき感を懷かれて適当でないということで、それが不十分である点は、その不十分な
立証
をした
当事者
の
負担
と
責任
においてやればいいのであ
つて
、
裁判所
の方でそこまで干渉がましいことはすべきではなかろうということで、
職権取調べ
の
規定
の二十六十
一條
を削除いたしました。ただ
民事訴訟
であるとか、
行政訴訟
の特例におきましては、これはやや趣きを異にしまして、公益に
関係
するところが相当多いのでありますから、
民事訴訟
と
行政訴訟
におきましては、
職権
で
証拠調べ
をなし得る途を開いておりますが、しかし一般の
民事訴訟法
につきましては、二百六十
一條
を削除いたしたわけであります。 それからややそれと似通
つた
ことで、直接
審理主義
を徹低せしめたことであります。
從來裁判所
の
判事
が更送いたしました際は、すでに調べた
証人等
をもう一遍呼ぶということではなく、
当事者
の方で今までの
訴訟
の経過を報告すれば、いわゆる
更新
というふうな
手続
で、もう一遍
取調べ
をやらないで進めてい
つて
、いわゆる
書面審理
ということになりましよう。
調書等
によ
つて
判断していくことにな
つて
おりましたが、これもやはり直接
審理主義
を徹低いたしますと、みずから調べないで
判決
をすることは適当ではないということで、本來から言えば、全部
判事
みずから
取調べ
たものでなれければ
裁判
の
資料
にできないということを徹低しますと、
判事
が送るたびに、もい一遍全部やり直すということが
理想
であると思うのであります。しかしそれではいろいろな
裁判官
の人事の更送等における現状から見まして適当でないということで、いろいろ
話合
の結果、やや折衷的なことでありますが、百八十
七條
というのがそれでありまして、單独の
裁判官
の更送のあ
つた
場合、
從前訊問
をした
証人
について、
当事者
の方からもう一遍さらに
訊問
してもらいたいという
要求
があれば、
裁判所
は必ず
訊問
をしなければならない。もちろん
当事者
の方から申出がなれれば、しなくて、
從來
通りに
更新
の
手続
でいいのでありますが、
当事者
の方から
要求
があれば必ず
訊問
する。また
会議体
においては過半数の
判事
が更送した場合に、やはり
從前訊問
した
証人
をもう一遍
訊問
してもらいたいと言えば調べなれればならないということにして、直接
取調べ主義
を徹低したのであります。ほんとうを言えば、先ほど申したように、すべて再
訊問
することが
理想
でありましようけれど、
当事者
の方から
訊問
してもらいたいという
要求
があれば、
訊問
しなければならないという程度に折衷的な
規定
を設けたわけであります。 同じようなことが
証拠保全
の場合、すなわち三百五十
一條
ノ二というのを説けて、
証拠保全
であらかじめ
訊問
をしてお
つた
場合に、
証人
が
本案
のときに死んでおれば、もはやふたたび
訊問
はできない。その
証拠保全
の取調が
効力
をもつことになりますが、もう一度
本案
でも喚べるとしいうことになればその場合に
口頭弁論
でもう一遍調べてもらいたいということを申出た場合に、必ず
裁判所
はもう一度調べなければならない。これはやはり
口頭弁論
で直接に
訊問
する
主義
を重んずるということで、こういう
規定
を設けたわけであります。 なお
公示送達
によ
つて呼出
を受けたような場合、
公示送達
は往々にして本人の知らない場合が多いので、こういう者に対しての保護ということを考えたわけであります。たとえば
公示送達
を受けた者が來ないからとい
つて
、すぐ百四十條を適用して、欠席のままで自白したものとみなして
裁判
をすることは、やや穏当を欠くということで、こういう場合には、百四十條によ
つて
、來ないからとい
つて
、ただちに自白したものとみなすというふうな
規定
を適用しないということにして、その場合は出てきた方で、すべて一應証明をしなければならないということにいたしたわけであります。 それからまたこれはやや小さな問題でありますが、
訴訟記録
の
閲覧等
につきまして、
從來利害関係
の疏明がなければ、
当事者
以外は
閲覧
ができないことにな
つて
お
つたの
を、百五十
一條
という
規定
を設けて、これを大体何人も
閲覧
ができることにいたしまして、いやしくも
訴訟手続
は
公開
であるということ、及び
訴訟
がどういうふうにな
つて
おるかということは、
國民
が
審査
の対象にもなるというようなことから、
公開主議
を徹低すると、
公開主議
の
記録
である
調書
も、やはり何人も見ることができるようにすべきではないかということで、
訴訟記録
の
閲覧
にも、
公開性
を拡張したのが、百五十
一條
であります。 次に
裁判所
の
権威
を保持する
ため
に、
証人等
が
裁判所
の
呼出
があ
つて
も出てこないという場合に、現在のようなわずかな
科料
の
制裁
があるだけでは、むしろ
裁判所
の
権威
が保持されないということで、二百七十
七條
ノ二という
規定
を設けまして、
証人
が正当な事由なくして出頭しないときは
拘留
または
科料
に処すという、
拘留
の
刑罰
を科し得ることにいたしたのであります。これは
英米等
におきましては、
裁判所
の
呼出
に應じないというのは、
法廷侮辱
として拘束、罰金、あるいはその両方を併科することもできることにな
つて
おるそうでありまして、こういう点を考慮いたしまして、やはり拘束できるし、
拘留
、
科料
に処し得るという途を開いたわけであります。 次に
訴訟遅延
の
目的
の
ため
にのみ
控訴
するとい
つた
ような場合に、いわゆる
上訴
の
濫用
を避けて、併せて無益な
事件
の輻湊を避けて、
上級裁判所
の
負担
の軽減をはかる
ため
に、そういう場合には相当思い切
つた制裁
を加えるべきであるということからいたしまして、三百八十四條ノ二という
規定
を設けたのであります。すなわち
控訴人
が
訴訟
の完結を遅延せしめる
目的
のみをも
つて
控訴
を提起したるものと
認むるときには
、
控訴
を棄却する場合に、それと同時に
控訴状
に貼用しておる
印紙
の
金額
の十倍以下の
金銭
の
納付
を命ずることを得という
規定
を設けたのであります。この
金銭納付
は、
國庫
に納入を命ずるわけでありますが、
控訴棄却
と同時に
控訴印紙
の
金額
の十倍以下の
金銭納付
を
一つ
の罰則的な
意味
で命ずることにいたしまして、悪意の
上訴
の
濫用
を防止する。これに類するような
事柄
は
アメリカ等
にも大分あるようでありまして、あるいは
訴訟費用
の三倍の
負担
を命じてはどうかというようないろいろな
議論
もあり、あるいはそれが
ため
に要した
弁護士
の
費用
を
訴訟費用
の
負担
の一部にして、相手方に
負担
せしめるというようないろいろないき方があるようでありますが、
訴訟費用
の三倍というふうなことになると、
訴訟費用
の
確定決定
を待
つて
初めてきま
つた
りなんかして、なかなか
手続
上めんどうでありますので、
控訴状
に貼るべき
印紙
の十倍以下ということに
なつ
たわけであります。 さらに
從來決定
にあたりましては、
決定
に対しての抗告があ
つた
場合は
裁判所
は再度の
考案
ということを認めまして、それを更正することができることにな
つて
おります。ところが
判決
におきましては、
判決
は愼重なる
口頭弁論
を経てやりますので、單なる字句の
計算違い等
の
更正決定
、あるいは脱漏があ
つた
補充判決
は認めておりますが、根本的に
変更
することを認めていないのであります。しかしながら
判決
といえども、やはり神ならぬ
判事
のやることでありますから、思い違いとか、あるいは
法律
上の
誤解等
によ
つて
、
しまつた
というようなことがあるのでありまして、そういう場合に、むしろみずから
変更
し得る途を認めることが、やはり
裁判所
の威信を高めるゆえんであるということで、再度の
考案
を認め、
判決
につきましても、その誤りを訂正する途を開いたのであります。これが百九十三條ノ二というのであります。
判決
が法令に違反したことを発見したときは、
裁判所
はその言渡し後一週間内に
限り変更
の
判決
をなすことができるという途を開いたわけであります。これは同時に、
上告裁判所
においてもそういうことが考えられるので、同じような
規定
を四百九條ノ四というので認めてあります。これはただやや
建前
を違えまして、
上告裁判所
の
判決
に対して、
異議
を申し立てることができることにして、それが十日の期間内に
異議
を申し立てる。
異議
が
理由
があるときに、初めて
上告裁判所
が、みずからや
つて判決
の
変更
の
判決
をすることができることにいたしたのが、四百九條の四以降の
規定
であります。 最後に、
差押禁止
の
範囲
は、現在では一年に三百円以上の給料をとる人について、その
超過
の半分まで
差押
ができることにな
つて
おりますが、これは現在の
貨幣價値等
を考えて、不適当でありますので、六百十
八條
の二項及び六百十
八條
の二という
規定
によりまして、これを改めました。しかしながら、一年の
年收
のどこまでを
生活
の
最低限度
として保護して、それ以上の
差押
を許すかという
金額
を確定することは、こういう
通貨
の安定を欠く状態では、なかなかむずかしいので、割合で一年間に受くべき総額の四分の三を
超過
する部分に
限つて
これを
差押
えることができる。しかしながら、まだうんと金があるというような人については、さらにその
超過分
二分の一に達するまでが
差押
えることができるという途を開くと同時に、一方たとえ四分の三を
超過
する分の
差押
えでも、これが
ため
に窮迫に
陷つて生活
ができないという場合は、逆にこれを緩和する途を六百十
八條
の二で開いたわけであります。これらは要するに現在の
通貨事情等
に鑑みて、
差押
の
範囲
を適当に改めてものであります。大体以上が今度の
民事訴訟法
の
改正
の
要点
であります。
中村俊夫
3
○
中村
(俊)
委員
ただいまからお尋ねいたします点は、むしろこれは
政府
の
見解
として本廳総裁によ
つて
伺うことの方が妥当ではないかと思
つて
おるのでありますけれども、今
政府委員
の御
説明
の冒頭に触れられましたので、
奥野政府委員
の個人の
見解
でも結構ですから、ひ
とつ
お答え願いたいと思います。それは
憲法
七十
七條
の
解釈
なのであります。実は私もこの七十
七條
につきましては、非常に疑問をもちましたし、こういうようないわゆる
ルール
・メーキングパワーというものが
最高裁判所
に與えられたのは、画期的な
憲法條章
であります。從いまして、私も二、三
資料
を集めてみたのでありますけれども、未だにその
結論
を得ていないのでありますが、
憲法
第七十
七條
には「
最高裁判所
は、
訴訟
に関する
手続
、
弁護士
、
裁判所
の
内部規律
及び
司法事務処理
に関する
事項
について、
規則
を定める
権限
を有する。」こう記載されておるのであります。ただいまの
奥野政府委員
の御
説明
によると、この
憲法
の
規則
という文字は、
ちようど法律
、
政令
、
規則
と
從來軽重
のある場合と同じような御
解釈
の上に立
つて
いられるのではないかとうかがわれるのでございます。この点も私は未だ
結論
を得ていないのでございまするけれども、いやしくも
憲法
にかくのごとき画期的な
條章
が入れられてある以上、この
規則
という
言葉
を、しかく軽い
意味
の
規則
と
解釈
することが妥当であるかどうかという点に、多大の疑問をも
つて
いるのでございます。最近出ております二、三の著書の
学者
の
見解
が、ほとんど全部違
つて
おります。ある
学者
は、やはり
奥野政府委員
と同じく、この
規則
というものを軽い
意味
に
解釈
をしている人もありますし、またこれを
法律
と同樣にみなすべきものだとの
解釈
をしておる人もありますし、さらにまたこの問題については、
最高裁判所
の最後の審判によ
つて
決するのだという
見解
も表示されているのでございます。從いまして、この第七十
七條
の
訴訟
に関する
手続
というものが、どこまで
最高裁判所
の
権限
として含まれるものであるか。さらにまた現在
弁護士法案
が小
委員会
によ
つて審議
されつつありますが、この
弁護士
に関する
規則
というものも、はたして
最高裁判所
は
弁護士法
と同一の性質の
規則
を出しているのではないか。そうすると今
司法小委員会
で審議されている
弁護士法
というものがこれと抵触する。その結果あるいはいずれが妥当であるかという点が
最高裁判所
の審判を受けるべきものであるか。あるいは
憲法
第七十
七條
の
解釈
を、ある一部の
学者
の解するがごとくに、
規則
を
法律
なりと解して妥当なりという
見解
に從えば、この
弁護士法
は、議会においてわれわれの手によ
つて審議
を進めていけないのではないかという根本的な疑問が私にあるのであります。從いまして、今ここに出されておりまする
民事訴訟法
の一部の
改正
に関する点、さらにまた近く出さるべき
刑事訴訟法
の
改正
に関する点につきましても、きわめて重大なる問題があると思いまするので、
奥野政府委員
は、この
憲法
第七十
七條
を、いかように
解釈
されておられるかの
見解
を承りたいのであります。
奧野健一
4
○
奧野政府委員
お
言葉
もありましたので、私一廳個人としての
見解
を申し上げて御参考に供したいと思います。 御
承知
のように、この
憲法
では
國会
が
最高
の
唯一
の
立法機関
であるという
建前
をと
つて
おりますが、ただそのもとにおいて、
法律
のほかに
政令
あるいは
規則
というものを認めておるのでありまして、しかして
規則
の
制定
というものを認めておりますが、ただいま御指摘の七十
七條
の
最高裁判所
の
規則制定権
と同時に、
憲法
五十
八條
第二項は「両議院は、各々その他の
手続
及び
内部
の
規律
に関する
規則
を定め、」とな
つて
おりまして、
規則制定権
を認めているのは、この
二つ
だろうと考えます。それでこれはやはり
一つ
の
立法
ではあろうと考えますが、そういう
憲法
全体を考えてみますと、やはり
國会
の定める
法律
というものが、
唯一最高
のものであ
つて
、そのもとにおいて、やはりこういう
規則
をおのおのの
裁判所
の
訴訟
の
手続
、あるいは
國会
の議事の
規則
というプラクテイスに関する
事柄
について、おのおの
規則制定権
を認めておるというふうに考えます。ただ
訴訟
の
手続
につきましても、
人権
に非常に
関係
のある三十
一條等
によりますと、
刑罰
を科したり何かする
手続
は、同じ
訴訟手続
でも
法律
できめるべきであるというような点を見ますと、
訴訟手続
は
裁判所
の
内部
の
手続
であるけれども、しかしこれが
人権
に直接
関係
のあるものは、やはりむしろ
法律
で定めることが適当であるのではなかろうか。でありますから、その
議論
を進めていきますと、
從來
のように、
民事訴訟
をすべて
法律
できめるということも、これは可能であると考えます。しかしながら、
他方司法
の
独立自律性
と言うか、
裁判所
の
内部
の
そういつた手続
について、特に
憲法
七十
七條
で
ルール
をつくる
権限
を認めておるのでありますから、いくら
法律
が優位でありからとい
つて
、すべての点まで
法律
でつくりまして、
規則
でつくるべき
余地
をなからしめるということは、やはり
憲法
の七十
七條
の
精神
に合致しないものであろうと思うのであります。そこで非常に基本的なもの、あるいは
基本人権
に影響の弱いものは、むしろ
法律
でやるべきで、それ以下の実際の
手続
に関する
事柄
は、
規則
でやることが最も時宜に適しており、また
憲法
の
精神
に合するのではなかろうかというふうに考えておりますが、これは先ほど申しましたように、
訴訟手続
については、ただちに
憲法
から委任されておる
規則
のみによ
つて
つくるべきで、
法律
でつくることは
違憲
であるという説もありますし、また
ルール
と
法律
は同等の力をもつもので、
後法
は前法を覆えすというような
議論
で、
法律
できめたものでも、後で
ルール
できめれば、
ルール
の方が優先するという
議論
もありますが、それはおのおのいたちごつこにな
つて
果てることがないので、それもどうかと考えております。
といつて法律
で全部をつく
つて規則
でつくる
余地
なからしめるということも、やはり
憲法
の
精神
に適しないと思いますので、先ほど申しましたような
重要大綱
の点は
法律
で定め、実際の
手続
については、むしろ
規則
に讓る。
規則
の方は、
法律
のように
憲法自身
に議決の
方等
がきま
つて
いるものと比べると、その定め
方等
については、何ら
規定
はないのでありますから、そういう
意味
からいきましても、やはり
規則
の方が自由に
変更
し得る、
固定性
が少い。実際の便宜に適する
ため
に設けている
規定
だと考えますので、そういう
意味
で一面においては
法律
の方が優位であるが、他面
規則
の方で実際の便宜と運用に適するような
ルール
をつくるということが、
憲法
の
精神
からい
つて
望ましいというふうに考えておるわけでありまして、結局先ほど申しましたように、
立法機関
、それから
裁判所
等において、その間十分実際の経驗に照らして、どの部分を
法律
にし、どの部分を
規則
に讓るということを話し合
つて
定めるということが望ましいのではないかというように考えております。
松永義雄
5
○
松永委員長
それでは午後一時まで休憩いたします。 午後零時四分休憩 ————◇————— 午後一時四十一分
開議
松永義雄
6
○
松永委員長
休憩前に引続き
会議
を開きます。 軽犯罪法を議題として、その
審査
を進めます。
本案
について各党の共党提案になる修正案と、佐瀬
委員
、鍛冶
委員
提案の修正案が提出されております。各修正案について提案者の
説明
を願います。
石川金次郎
君。
石川金次郎
7
○石川
委員
軽犯罪法の一部を次の通りに修正いたしますように、修正案を提出いたします。 本修正案は、社会党、民主党、民主自由党、
國民
協同党の四党よりなる修正案でありまして、第三條の次に次の通り加えます。「第四條この
法律
の通用にあた
つて
は、
國民
の権利を不当に侵害しないように留意し、その本來の
目的
を逸脱して他の
目的
の
ため
にこれを
濫用
するようなことがあ
つて
はならない。」附則中「公布の日から起算して三十日を経過した日」を「昭和二十三年五月二日」と改める。以上は修正案であります。 この修正案を提出いたしました
理由
は、軽犯罪法の前身であります警察犯処罰令が、
從來
應々にいたしまして、その本來の
目的
を越えまして、犯罪捜査の
ため
に利用せられ、
國民
の権利を不当に侵害するかのごとき状態であ
つたの
であります。殊に正当な労働運動、正当な農民運動を拘束し、抑圧しておりましたということは、顯著な事実であります。もしかくのごときことがございますと、軽犯罪法の
目的
を逸脱して、いたずらに権利を官憲によ
つて
濫用
されるという結果に相なりますので、第四條において明確にこの
法律
の適用にあたりましては、
國民
の権利を侵害しないように、また本來の
目的
を逸脱いたしまして、他の
目的
の
ため
に
濫用
せられないようにという
規定
を示そうとしたものであります。 以上がこの修正案の
理由
でございまして、御賛成を得たいと思います。
松永義雄
8
○
松永委員長
佐瀬
委員
佐瀬昌三
9
○佐瀬
委員
私は原案の第
一條
第十六号について、同僚の鍛冶良作君とともに、次の修正案を提出したいのであります。「虚構または誇大に人の犯罪事実を流布して、人心をまどわしめ、または人に迷惑をかけた者」それから、なお同條第二十九号についても、同樣、次のごとく修正する案を提出いたしたいのであります。他人の身体に対して害を加えることを共謀した者の中で、そのたれかが予備行為をした場合における共謀者というのであります。簡單にこの一点に対する修正案の
理由
を申し述べて、各位の御賛同を得たいと思
つて
おるのであります。 第一点の第
一條
第十六号については、現在の世相に鑑み、とかく政治的意図をも
つて
人を陷れんが
ため
に、虚構または誘大にわたるその人の犯罪事実を流布して、人心を惑乱せしめ、あるいは特定の個人に迷惑をかけることがきわめて多いのであります。原案によりましては、ある程度さようなことも処罰し、または予防し得ることも期待できるのでありますけれども、かくのごとき修正案によらずんば、その
目的
は十分に貫徹できないと考える次第であります。しかも特にこのような修正案を提案する
理由
は、か
つて
戰時中に刑法の一部
改正
として、人心惑乱罪というものが
規定
され、相当その社会的機能を発揮したこともあ
つたの
でありますけれども、これはあまりにも戰時色が濃厚であ
つた
ため
に、その後廃止されたやに記憶しておるのであります。
從つて
さような観点とはやや異なるものがあるのではあり立すけれども、日本の平和的文化國家を建設する上においても、やはり同樣な
制裁
規定
は、この軽犯罪法の程度において、新たな観点をも加えて成立せしめておくということが、最も
立法
の歴史的な経過から見ても、妥当ではないかと考えるがゆえに、あえてこの修正案を提案するゆえんであります。 第二点の第
一條
第二十九号に関する修正案は、これは別に原案と内容的にまたその適用の目標において異なるものがあるのではないのでありますが、いかにも原案の文章が難澁でありまして、われわれ専門家の立場から見るならば、納得できる共犯理論を盛りこんであるものではあると理解し得るのでありますけれども、法は單に專門家、國家為政家の法にあらずして、
國民
の日常知りかつ行い得る法でなければ、今後の成文法として機能を全うし得ないと考えるがゆえに、
國民
大衆を読んだただちにわかり得るような内容的にこれを改訂していくということが、
立法
技術上必要であると考え、その点から原案を本修正案のごとく訂正することが、最も至当であると考えるがゆえに、この提案をいたす次第であります。各位の御賛同あらんことを切に望む次第であります。
松永義雄
10
○
松永委員長
本案
は討論に付します。石川
委員
。
石川金次郎
11
○石川
委員
社会党を代表いたしまして申し上げます。民主自由党の鍛冶
委員
によ
つて
提案せられました修正案に反対いたします。社会党、民主党、民主自由党並びに
國民
協同党の四党によ
つて
提出されました共同修正案に賛成いたします。共同提案による修正案を除きました部分の原案に対しましては賛成いたしまい。以上申し上げます。
松永義雄
12
○
松永委員長
中村
又一君
中村又一
13
○
中村
(又)
委員
ただいま佐瀬
委員
より趣旨弁明に相なりました修正案に対しましては、私は民主党を代表して反対する者であります。さらに石川
委員
より御
説明
の各派共同提案にかかりまする修正案を認めまして、原案賛成であります。
松永義雄
14
○
松永委員長
松木宏君
松木宏
15
○松木
委員
私は佐瀬君の修正案並びに共同提案に対して、その趣旨に賛成を表するものであります。
松永義雄
16
○
松永委員長
これより採決します。まず佐瀬
委員
、鍛冶
委員
の提案になる修正案について採決いたします。提案のごとく修正するに賛成の諸君の御起立を願います。 〔賛成者起立〕
松永義雄
17
○
松永委員長
起立少数。よ
つて
この修正案は、少数をも
つて
否決されました。 次に各党共同提案による修正案について採決いたします。この修正案のごとく修正するに賛成の諸君の御起立を願います。 〔賛成者起立〕
松永義雄
18
○
松永委員長
起立総員。よ
つて
全会一致をも
つて
各党共同提案の修正案のごとく修正するに決しました。 次にただいま修正に決しました部分以外については、原案のごとく決するに賛成の諸君の御起立を願います。 〔賛成者起立〕
松永義雄
19
○
松永委員長
起立多数。よ
つて
修正に決した分を除いては、多数をも
つて
原案のごとく決しました。よ
つて
本案
は多数をも
つて
各党共同提案のごとく修正議決いたしました。 —————————————
松永義雄
20
○
松永委員長
次に
民事訴訟法
の一部を
改正
する
法律案
を議題とし
審査
を進めます。佐瀬
委員
佐瀬昌三
21
○佐瀬
委員
民事訴訟法
の一部を
改正
する
法律案
については、
政府委員
の御
説明
によ
つて
、私も理解することを得たのでありますが、なお若干の疑問を有しますがゆえに、以下数点にわた
つて
質疑をいたしたいと思うのであります。 全体的にこの案を見まして考えられることは、いわゆる
民事訴訟法
における
職権
主義
と
当事者
主義
、あるいは処分
主義
との
関係
でありますが、
民事訴訟法
上の基本原則としての
職権
主義
を否定して、
当事者
主義
すなわち処分
主義
に
決定
することは、新
憲法
及び新
裁判
法上、思想的に一致した行き方であるかとも考えられるのでありますが、しかし一面
裁判
は、正しく
当事者
の
権利義務
を質して、最も普遍的に妥当な
裁判
をすることでなければ、われわれ
國民
の
生活
秩序の保全ができないのであります。
從つて
全面的に
職権
主義
の後退をはかるということは、か
つて
の
民事訴訟法
の
改正
経過にみましても、いささか当を失するのではないかというふうにも考えられるのでありますが、この点に対する
政府委員
の御所見を承
つて
おきたいと思います。 〔速記中止〕
松永義雄
22
○
松永委員長
速記を始めてください。
奧野健一
23
○
奧野政府委員
ただいまの御
意見
ごもつともであります。要するに
民事訴訟
というものは、結局私権の爭いに関する解決でありますので、原則的な
建前
といたしましては、
当事者
主義
、あるいは処分
主義
という
建前
が正当であろうかと思うのであります。ただ私権の
関係
でありますが、同時にどういう
裁判
になるかということは、社会一般の秩序あるいは公益にも
関係
するところがありますので、眞実発見というふうな
建前
からいたしまして、どの程度の
職権
主義
を加味するかということが、大きな問題であろうと思います。そこで古い
民事訴訟法
におきましては、全然
職権
主義
を加味してなか
つたの
でありますが、御
承知
のように、先般の
民事訴訟法
の
改正
においては、二百十六條で
職権
主義
というものを、
当事者
の
立証
ではどうしても心証が得られない場合には、
職権
主義
を発動して、
裁判所
みずから
職権
で
証拠調べ
をすることができることにしてお
つたの
であります。しかしながら、さらによく考えてみると、要するにやはり私権
関係
において
当事者
の処分
主義
を認めて、いわゆる和解あるいは認諾、自白というものを認めておるにもかかわらず、その場合に
裁判所
みずから進んで
証拠調べ
をすることは、むしろどうしても
当事者
の一方の
ため
に援助するという結果になり、あるいは
裁判所
みずから進んで調べていくことになると、その間ある予断を抱くかのごとき誤解を招く場合もありますので、やはり
民事訴訟
の本來の使命、あるいは本來の性格に返りまして、今回は
立証
責任
を盡さない者はその者が不利益を
負担
すべきものであ
つて
、
裁判所
の方から進んで
当事者
の一方の
ため
に
証拠調べ
をするような結果にならないようにいたしたわけで、二百六十
一條
を削
つたの
でありますが、もちろん人事
訴訟
でありますとか、行政
事件
の特例におきましては、やはりこれは同時に公益的な色彩も濃厚でありますので、こういうものについては、
職権
主義
を依然として認めておるのであります。ただここに一言附け加えたいと思いますことは、
從來
のごとく
当事者
訊間という
制度
はやはり残
つて
おりまして、この
制度
は
職権
で
当事者
を呼んで聽くことができるという
制度
を残しております。ただ
証人
とか、鑑定人とい
つた
ものの純粹の
証拠
の申出という点について、
裁判所
の
職権
主義
化ということを今回やめたのであります。いろいろその点は
議論
の
余地
もあることと思いますが、昔に返
つて
、純粹の
当事者
主義
を採用したわけであります。
佐瀬昌三
24
○佐瀬
委員
証人
の
訊問
について、いろいろ
クロス・エクザミネーシヨン
の採用は、
改正
案とな
つて
現われておるわけでありまするが、その趣旨は、私どもは納得し得るものがあるのであります。ただそれによ
つた
場合に、憂うべき点は、
訴訟手続
が自然長引いてしまうというような結果を惹起しないかという点であります。この点はいかがでありましようか。
奧野健一
25
○
奧野政府委員
この点も新しい試みでありまして、將來どういうふうにこれが利用されていくかということは、やや予想がつかないのでありますが、これをうまく利用してい
つて
、英米法的な
訴訟
の
手続
の実効をあげることができるか、あるいはこれをまずく行いますと、今お説のように、いろいろかえ
つて
長引く憂いもないではないと考えます。そこで二百九十四條の新案におきましては、その点も考慮いたしまして、たとえば
当事者
の
訊問
が重復
訊問
に当る場合とか、あるいは爭点に
関係
のないことを
訊問
する場合、その他特に必要ありと認める場合、たとえば誘導
訊問
に陷るとい
つた
ようなときには、いつでも
裁判
長の方でこれを制限していくことができるという途も開いてありますので、
裁判
長あるいは
当事者
の
弁護士
等の協力を十分得で、うまく法廷を指導していくならば、御心配のようなことは起らないで済むことと考えております。
佐瀬昌三
26
○佐瀬
委員
いわゆる
訴訟
指揮権というものが認められるのか、またその
範囲
はどうかという点について、所見を承
つて
おきたてと思います。
奧野健一
27
○
奧野政府委員
これは
当事者
主義
といいますか、あるいは
クロス・エクザミネーシヨン
の
主義
を採用することにいたしても、やはり
裁判
長の
訴訟
の指揮権は失わないつもりでありまして、たとえば百二十六條等はそのまま残
つて
おるわれで、今後とも
裁判
長の
訴訟
の指揮権は、依然存続するという考えであります。
佐瀬昌三
28
○佐瀬
委員
上
訴訟
の
濫用
を阻止する
ため
の
規定
を設けようという御趣旨も、一應もつともと考えるのであります。しかしその制限の者方が運用のいかんによ
つて
は、かえ
つて
個人の権益の伸張を妨害するということになり、
從つて
民事訴訟法
上の、しかも
改正
法によ
つて
より濃厚にな
つて
きたところの
当事者
主義
、処分
主義
という原則に違反するという結果になりはしないかということも、一應懸念される点でありますが、この点はいかがでありましようか。
奧野健一
29
○
奧野政府委員
その点もごもつともな点でありますが、この
改正
法のねらいは、三百八十四條ノ二で、いわゆる
訴訟
の解決を遅延せしめる
目的
のみをも
つて
控訴
を提起したものと認むるときというので、
訴訟遅延
の
目的
のみをも
つて
控訴
することは、非常にまれな場合で、ほんとうに
控訴
によ
つて
自分の権利を伸張しようという意思をも
つて
やる場合には、これに該当しないので、明らかに
訴訟
を遅延せしむる
目的
のみをも
つて
控訴
したと認められる場合に
限つて
、三百八十四條ノ二の
規定
が発動するわけで、おそらく正当な
控訴
については、全然この適用がないのみでなく、今度は三百六十條の
改正
を行いまして、
控訴
をなさないという合意等につきましても、
從來
のように
判決
がある前に
控訴
をしないということを、あらかじめ合意することもできたのでありますが、今度は
控訴
権が発生してから、初めて
控訴
をしないという旨の合意を許されることになりまして、こういう点につきましても、やはり
控訴
し得る権利ということを、十分に、かえ
つて
從來
よりも厚く保護しておりまして、そういう
意味
においての権利の伸張の途というものを、ごうも制限してないということを御了承願いたいと思います。 〔
委員長
退席、石川
委員長
代理着席〕
佐瀬昌三
30
○佐瀬
委員
上訴
の
濫用
防止という趣旨を貫徹せんとするならば、同時に
訴訟
提起の段階において、いわゆる濫訴の幣を阻止するという措置も講じていく方が適当でないかと思うのでありますが、この点はいかがでありますか。
奧野健一
31
○
奧野政府委員
実はその点も問題になりまして、
控訴
の
濫用
、同時に初めからの訴えの提起についての濫訴についても、十分
議論
をいたして、
関係方面
でも、その点についての示唆もあ
つたの
でありますが、この点は非常にむずかしい問題で、殊に
憲法
において
裁判所
に訴える、訴権を保護している
関係
から、第一審からこれが濫訴であるとい
つて
制限することについては、よほど愼重を期さなければならないので、これは
上訴
の場合と比べて、特に愼重を要する点でありますので、そういう点にも十分考慮した結果、一審の訴えの提起については、三百八十四條ノ二のような設定を、結局置かないことにいたしたわけであります。
佐瀬昌三
32
○佐瀬
委員
差押
えについて債務者の
生活
状態を顧慮した
制度
を徹底するという趣旨で、
改正
案が練られた点があるように拜承したのでありますが、この点は新
憲法
において、
國民
の健康にして最低文化
生活
を営む権利、いわゆる
生活
権の保障という点から見れば、まさに当然でありますが、同時にまた最近の傾向である
権利義務
の観念が混乱して、誤
つた
民主
主義
のもとに、義務の観念が非常に稀薄になりつつあるという点、
從つて
われわれの法的秩序は、ややもすると混乱に陷るというような実情を考えてみますると、この
差押
え問題も、よほど愼重に
立法
する必要があると思うのでありますが、その辺の原案に対する考慮は、どういうふうにな
つて
お
つた
かということを承
つて
おきたいと思います。
奧野健一
33
○
奧野政府委員
その点も非常に考慮をめぐらしまして、現在の
年收
三百円以上の分についての
差押
えを許らということになりますと、
差押
えをする
範囲
が多くなりすぎまして、
生活
に非常な窮迫を及ぼすおそれがありますので、
本案
におきましては、総額四分の三を
超過
する部分に
限つて
差押
えができるということにして、いわゆる最低
生活
の保障ということを企図したわけであります。しかしながら、ただいまお話のように、そういうことでは、一向
生活
の状態に何らの不利益を及ぼさないだけの資産をも
つて
いるようなものについては、やはり権利の伸張という保護を、十分債権者の
ため
に與えてやる必要があると考えまして、そういう
差押
えによ
つて
、
生活
上の窮迫の状態に陷るおそれのない場合には、さらに四分の三を
超過
する、その二分の一に達するものは
差押
えることができるという最低
生活
の保障、一方債権者の権利の保護ということを、両々相考慮して、両方の利益の調和をはかるというのが、六百十
八條
の二項の
改正
の趣旨であります。
佐瀬昌三
34
○佐瀬
委員
民事訴訟法
そのものの問題ではありませんが、同時に考えなければならない問題としてお尋ねしておきたいのでありますが、調停
制度
については、いかようにお考えにな
つて
おられるかという点であります。
奧野健一
35
○
奧野政府委員
調停
制度
は、相当効果をあげているのでありまして、
從來
いろいろな調停がありまして、戰時借家調停、人事調停、
金銭
調停というように、いろいろありまして、区々にわかれておりますので、これを統一するというふうな氣運もあ
つたの
でありましたが、先年家事審判所の
制定
によ
つて
、少くとも家事
関係
の家庭の紛爭については、家事審判所の專管に属するようになりましたので、現在調停全般について統一するということが、やや困難の状態にな
つて
おりますが、やはり
訴訟
、
民事訴訟
と相ま
つて
、調停によ
つて
具体的な妥当な紛議の解決をはか
つて
いくということは、今後としても非常に実益のあることであろうと考えますので、
民事訴訟法
と同時に調停についても、さらにくふうを凝らして、両々相ま
つて
民事の紛爭の解決に当りたいというふうに考えております。
佐瀬昌三
36
○佐瀬
委員
なお協事
訴訟
法についても、若干お尋ねしたい問題があるのでありますが、本
会議
も始ま
つて
おりますので、私は本日この程度で打切
つて
おきたいと思います。
石川金次郎
37
○石川
委員長
代理 本日はこれにて散会いたします。 午後二時三十一分散会