○川北
参考人 ただいまお尋ねの点でございますが、お説の
通り今回の物價賃金の改訂というものは、非常に大きな
影響を財政の遂行の上に、あるいは産業金融の上に、さらに進んではインフレの進行の上に、重大なる
影響を及ぼすと私
どもも
考えておりまして、重大なる関心をも
つておるわけであります。これに対して現在すでに御
承知の
通り金融逼迫、これの主たる原因がただいま御指摘のございましたように二十二年度の税徴收の
関係、
從つて政府の
資金引上げの
関係でございます。
從つて現在は農村方面でも非常な
資金逼迫の状態であります。
一般のやみ物價が頭を打ちます程度に、過剰購買力というものが非常に減退しておる状態であります。これを要するに金融逼迫の状態、預金のごときもその情勢を反映いたしまして、四月以降非常に延びが惡い。四月はほとんど三月末に比ベまして三、四十億円と思
つておりますが、その程度の増加にしかな
つていない。五月になりましてようやく二十二年度の税の
関係が一段落いたしました
関係で、ややこれが
政府散布超過に轉じました。同時に預金も若干の増加を示しまして、おそらく百三十億程度であつたかと思いますが、
ちよつと正確に
数字は覚えておりません。百億程度の増加を見たのであります。しかしこれは從來の二百億見当の毎月の預金の増加から比べますと、きわめて微々たるものであります。
從つて金融機関の預金が増加いたしませんために、
資金を出しますことに非常に消極的である。また最近は中間安定あるいは中間安定をもたらすための、安定恐慌というような
考え方が、どことなく支配しておりまして、おそらく
金融機関がやや前途に対するそういう懸念のために、警戒的にな
つておるという点もあると思います。
從つて産業
資金の供給、産業
資金の金融難というものが引続いて解消していないという状態なのであります。この間に処しまして
日本銀行の金融
政策といたしましては、いつも申すことでございますが、インフレをチエツクする見地において、金融を
一般にゆるめるという方針はどうしとも取り得ない。ただそれが玉石混淆にならないように、重点的に
再建に必要な
資金、指定生産のために、あるいは配給ルートに乘
つておりますもの、あるいは輸出産業、こういつたものに対する重点的金融ということを今日まで
考えておりまして、すでにいろいろな手を打
つておるのであります。しかしなかなか金融が樂になるという感じは産業界には容易に來ない。特にそこで問題になりますのは、今回の物價改訂であります。この物價改訂がうまくいきますかどうか。特にうまくいきませんために、
インフレーシヨンがこれを契機として一段進行するということになりますと、金融逼迫の感じは一層強くなると
考えなければならない。これは手放しの
資金の供給放出をいたしません限り、
インフレーシヨンが進めば進むほど金融
資金難を感じてくるのは、これは常道であるのであります。
從つて今回の物價改訂がうまくいきませんで
インフレーシヨンになるということは、この産業界の
資金難は放
つておけば当然一層急迫するという見地から言いましても、この
インフレーシヨンの進行はさせたくない。それから技術的に申すと、この物價改訂をやりますと、ここにいわゆる時期的なずれができまして、産業会社にありましてはまず
運轉資金を必要とする。それが製品にな
つて收入するには数箇月の
期間がある。また
金融機関といたしましても、物價改訂の直後すでに所要
資金は原材料の仕入
資金として、大きな
資金の需要を産業界から受けますが、預金の面はまだ物價改訂がただちに響いて増加してこない。こういうふうな物價改訂による
資金的ずれというものが昨年の七月にもございました。約三箇月間これが続きましたが、今年も
ちようどこの七、八、九という第二・四半期には、そういう状態がある程度起
つてくると思
つておるのであります。その
期間が過ぎますれば、物價改訂が会社の支出にも響きますと同時に、收入の面にも響きまして、
金融機関の貸出にも響きますが、同時に預金も自動的に殖えてまいりまして、預金と貸出とが大体
バランスを得る。トントンになるという状態を復活いたします。その
期間にずれがございます。その間放
つておきますと、ただいま御指摘のような金融の逼迫を一層強めるということになります。その間常道になりますまでの時期的ずれとして、
資金の環流が十分でありません。その段階に
通貨も膨脹いたします。しかしこれがうまく成功いたしますれば、その数箇月を過ぎますれば預金と貸出が
バランスし、会社の收入が
バランスし、
通貨も元の位置に戻
つてまいります。膨脹もこの数箇月で止
つて、あとは元に戻るという状態が期待される。これは今回の物價と賃金の改訂がうまくいきました場合で、もしこれが惡循環になり、物價の改訂に應じて、主としてこれは賃金の改訂がそのまま維持できるかどうかという問題、物價と
通貨の惡環境を來さないで済むかどうかという問題でございます。もしこれが済まないといたしますと、そこにいわゆる單純な時期的ずれでなく、毎月新しい、また会社としては赤字、
一般の現象といたしましてはインフレ的な
資金の需要というものが、再び起
つてくるわけであります。今日まで約半年、大体
通貨も物價も横這いいたしましたが、その状態がこれを機会に情勢の変化を來してくる。こういうふうに思うのであります。この
意味におきましても、今回の物價改訂、賃金の改訂がうまくいきますことを私
どもは念願してやまないのであります。この物價改訂の、先ほど申しました時期的ずれに対する金融
政策といたしましては、
市中銀行に対してもそういうふうに勧奬していきたいと思いますし、
日本銀行自体も、その間の所要
資金は、新規の貸出しが増加いたし、あるいは新規
通貨が膨脹いたしましても、これを供給するつもりでございます。そういたしませんと、必要な事業の生産が上り、あるいは
取引が止るという事態になりますので、
日本銀行としては、
市中銀行の預金の不足によ
つて、必要な
資金が賄えない場合には、その不足
資金を
日本銀行の貸出しによ
つて十分賄
つていく方針をと
つております。ただ
日本銀行と
市中銀行との
関係を密にいたしませんと、
銀行といたしましては、
資金がないがゆえをも
つて、すぐ窓口で
資金が供給できないと言
つて、断られる場合が実はあるのであります。
資金の性質によ
つては、
日本銀行までも
つてきてもらえば、預金がなければ
資金を供給して、その
銀行に貸出しをなし得る場合にも、ただその連絡が密でございませんと、
銀行の窓口限りで
資金の供給が断わられてしまう場合が、実は今日もございます。内輪話を申しますと、
銀行の方も預金が集まりません。窮屈でございます。また赤字の出ておる金社等に対しては、金融を自衞上締めておる場合もあります。
從つてわくの
関係とか、あるいは
日本銀行が非常にやかましいということで、おそらく断わられている会社が
相当あるらしく、私
どももそういう会社から直接話を聽くことがあります。しかしながら出すべき
資金がございましたならば、
金融機関に預金が集まらない場合でも、
資金がない場合でも、
日本銀行としてはこれを見ていくというために、御
承知のように、すでに一年前から
日本銀行には融資斡旋部というものを設けて、そういう場合には
取引銀行と会社と一緒に
日本銀行においでを願
つて、三者で相談して、必要な
資金は供給していく。またその
方法といたしましては、各種の手形、御
承知の
通り貿易手形、スタンプ手形、工業手形、復金の保障の手形、公團手形というような、各種の手形制度を設けており、またこの春から農業手形を設けまして、手形制度によ
つて資金の弁別をする。何かわからない
資金ぐりの融通手形ではなく、
資金の必要がはつきりわかるように手形に載せる。同時に手形
信用の程度を併せ目的といたしまして、そういう
方法で、必要なる
資金は
日本銀行としてはできるだけ供給することに努めておるわけであります。しかしながら、
日本銀行としては、実際は全般的に非常に樂になるまで、全面的に金融の手をゆるめることは、インフレ防止の見地からできませんので、窮屈感は依然残
つておる。これはある程度やむを得ない。そういたしませんと、インフレの高進を進めるばかりであると思いますので、そういう点は先ほど申しましたように、
市中銀行と
日本銀行、産業会社、三者一体にな
つて必要な
資金は供給する。こういう線は動かないのでございますので、具体的に、もしこういう会社で、こういう
資金がいるのだが、どこの
銀行からも出ないということでもございましたならば、今の線に沿
つて御相談を願えれば、必ず必要な
資金の供給はできるものと私は信じております。当面の物價改訂に対しましても、今日まで約一年間融資斡旋部等を設けて、そういう方針を促進しておりますから、一層それを活用していくべきだと
考えております。
從つてこの物價改訂によ
つて、生産に大きな
支障を及ぼすことのないように、私
どもは努力いたしたいと
考えております。