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伊原政府委員 公債の
利拂停止とか
利下げ等の問題につきましては、過般
大藏臣からも
政府からもしばしば申し上げました
通り、ただいまのところ
政府としてはそういうことを実施いたすという考えはございません。從いまして、ただいまのお尋ねに対しましても、こういうことを実施するという
意味ではなく、考え得る
方法としては、どういうことがあるかということの御判断の参考という
意味で申し上げたいと思います。
ただいま申し上げましたように、
公債の
利子をかりに
打切つたと
仮定をいたしますと、
金融機関がほとんど全部をも
つておりまするので、從いまして、この
損失というものが何かで賄われなければならない。
結論から申しますと、どうしても第一
封鎖預金の
利子を拂わないというようなことで、これをカバーするほかはないと思うのでありますが、そのほかにもし考えるとすれば
——考え得ると言いますか、理論的に考えるといたしますれば、まず第一には
金融機関の
利子でも
つて補填をさしたらどうかということが考えられております。第二の
方法として、
金融機関の
積立金とか
資本金で、負担させたらどうかということも考え得ると思います。第三には
新聞に出ておりますように、第二
封鎖預金の
残りでやつたらどうかということもあります。第四には
金融機関の
貸出の
金利を上げたら、どうかというようなことも言われておるようであります。それから第五に
預金の
利子の停止によ
つてカバーしたらどうか、こういうことであります。ただいまのは理論的に申し上げたのでありますが、実際的におきましても、
金融機関の
利益をも
つて補填するということは、
御存じの
通り金融機関は、ただいまのところでは
利益は非常に少いのみならず、欠損の
金融機関が非常に多いのでありまして、これはまつたく不可能であると思います。
それから第二の
積立金とか
資本金でカバーしたらどうだということにつきましては、これも
御存じであると思いますが、
金融機関の
積立金とか拂込金はただいまのところ
積立金は十億
程度、それから
拂込資本金は
総額六十二億
程度ございますけれども、これは
御存じのように、
企業再建整備法並びに
金融機関再建整備法によりまして、最近の
整備によ
つて積立金並びに
資本金はほとんど飛んでしまう。そうして
戰時補償の
打切りに充当することに相な
つておりまするので、
金融機関の
自己資本で負わせるということは、当然理論的にもおかしいのみならず、
数字的にも出てまいらないという
状態にな
つております。
それから
さつき新聞に出ております第三の、第二
封鎖預金の
元本でどうかしたらいいじやないかという問題といたしましては、これも
結論として不可能と言いますか、不穏当であると思うのでありまして、
御存じのように技術的に申しますと、
金融機関の
再建整備に関連をいたしまして、すでに第二
封鎖預金のうち、第一
封鎖に振り替えたものも
相当ございまするし、それから
一般に拂戻しを行
つておるものもございます。それから理窟から申しましても、いわゆる
軍事補償の
打切りによりまして、
預金者に対する
犠牲をすでに負わせておるのでございますから、なお
残つた第二
封鎖を云々するということは、これは新しくまた第二
封鎖の
所有者だけに課税するといいますか、新しい
犠牲を負わせるということでございますので、その点がすでに非常な
損失をこうむつた
封鎖預金の
所有者に対して、この際また新たなる
犠牲を加えるという問題になるかと思うのであります。
それから第四の
貸出の
貸出利率を上げてそれで賄つたらどうかという点でございますが、これはすでに
貸出の
利率も
相当上
つており、そうしてこれだけの
損失をカバーいたしますためには、
貸出の
利率をとんでもなく高く上げなければならないので、それでは
物價政策とか
産業政策として、
金利をうんと上げるということは、望ましくないということになると思うのであります。從いまして、理論的にも実際的にも、ただいま申し上げました
四つでありますが、これは問題にならないのであります。
第五の、
從つて第一
封鎖預金の
利子を
支拂わないことによ
つて、これを埋めるかという問題が残るだけでありますが、これも
結論から申しますと、第一
封鎖預金は
数字的に申しますと、いろいろな
仮定をおかなければ、
数字が出てまいりませんけれども、第一
封鎖預金につきましては、今年の一月十五日から、
御存じのように
政府の
支拂いは全部新円拙いといたしました。それから
貸出につきましても、ほとんど全部が新
円拂いとなりましたので、今後新しい第一
封鎖預金というものはもう生れてこない。それでは今ある
封鎖預金はどのくらいかと申しますと、これも
推定でございますが、昨年の九月末現在におきまして、一千三十五億
程度ございます。このほかに第二
封鎖の生
残りで、第一
封鎖にまわされるのが、これも
数字がはつきりいたしませんが、五十億前後あるかと思うのであります。ところがその昨年の九月末現在、千三十五憾ありました第一
封鎖預金も、私どもの見透しでは、今年の三月末には非
戰災者特別税を拂うとか、ただいま申しましたように新しい
封鎖預金は、今後できないという觀点から申しますと、今年の三月末ぐらいには八百億前後くらいに、減るのではないかと思うのであります。ところがそれでは二十三年度はどうかと申しますと、今年の三月末が八百億前後といたしましても、ただいま申しましたように、一方において新しい
封鎖預金が出てこない。そうして片方においてどんどん減る。その減り方が從來と違いまして、
相当急激に減
つておりますので、毎月五十億
程度ずつ減ると
仮定いたしますと、來年の三月末には、これも二百億を割るくらいの
数字になるのではないかと思うのであります。そういたしますと、その残高から申しますと、非常に少くなりまして、
結論におきましてこの第一
封鎖預金の
利子の限度において、
國債の
利子の
打切りをすると
仮定をいたしました場合におきましても、その
金額は、これも計算によ
つていろいろ違いますけれども、十億前後ではないかというふうに、
推定いたされるのであります。これは繰返して申し上げますが、
國債の
利子打切りをやつた方がよいというのでもなく、やるという意思でも全然ない。数学的に申しますと、十億前後ぐらいしか出ないであろう。しかも附加えさしていただきますと、これに対しましてはいろいろな問題があるのでありまして、
預金の
利子を削
つてしまうということは、
元本を削ると同じでありますから、
國債の
元本の
評價の問題、これが非常に下
つてくるという問題とそれから
金融機関再建整備法で、すでにもうこの三月末には
整備を終ろうとしておる。それに対して新
勘定に
移つた國債をどういうふうに処理するか。それから
國債をよけいも
つてお
つて、第一
封鎖預金を少ししかも
つていない
金融機関、よけい
封鎖預金の方があ
つて、
國債の少い
金融機関というものが、
國債の
利子打切りによ
つてこうむる
損失と、
預金の
利子打切りによ
つて生ずる
利益との
調整、ある
金融機関には金を
補償し、ある
金融機関からは金をとるという
調整が非常にむつかしい。そのほか
國債から生ずる
利子すなわち
國債所得に対してだけこういうことをしまして、
あと地代であるとか、家賃であるとか、配当であるとか、そういうものの
資産所得に対しては、何もしない場合には、その権衡の問題、その他いろいろむずかしい問題があるという点は御了承願いたいと思います。