○竹谷
委員 今日は時間もございませんから、私は二つの点について、ごく簡單に御
質問いたします。
第一点は、ただいま田中君から熱烈な御
意見をまじえた御
質問がございました。それに関連するものでありますが、私もこの荒廃した國土を急速に建設する、それからまた從來
日本の資本主義経済におきまして無
政府状態で発達をして、むちやくちやな
状態にあるこの
日本産業の分布、経済発達の状況というようなものを、この際是正をして、そうして狭い國土ではあるが、まだ未開発の資源等を十分に活用し得る余地がある。そうしてこの総合的な
國土計画によ
つてこれを開発いたしますならば、八千万、あるいはそれ以上の人口をゆたかに養
つていくことができるようにすることは、不可能ではないと私は確信をするものであります。こうした
意味合いから長年の懸案であ
つた建設省が、いよいよ小さいながらも発足するような芽生えをここに見ますことは御同慶にたえません。つきましては
建設省は
將來、今田中君の御
意見がありましたように、大
建設省として発達をし、なおかつ私の申し上げるような、そうした総合的な
計画的の
國土計画を立案して、眞に
日本國民がゆたかな生活をするような、こうした経済條件を整えるような方向に向
つて努力する意思があるかどうか。この問題について
大臣の所見を承
つておきたい。いろいろ詳しく申し上げなくても私の意向はおわかりと思いますから、この
程度にいたします。
第二は
建設省は、
政府の行わんとする土木
建築その他建設
事業一般を受持つ重要な
官廳であります。この
官廳の大部分の
仕事は、
自分で直接工事をやる場合もありまするが、土木
建築請負業者に請負わせて
仕事をすることに相なると思うのであります。ところが
日本の土木
建築業界というものは、昔ながらの腐敗、堕落した特殊の封建的な制度でありまして、この新憲法下におきましては許さるべき制度ではないと思う。私はか
つて北海道廳に勤めてお
つたことがありますが、当時監獄部屋というものがあ
つて、ここに働く土工すなわちたこ人夫と称せられるものは、約二万人、
昭和の初めに不景氣な
時代に二万人もお
つたのであります。これらの
人間は今の監獄部屋において、監獄と申しますが普通の監獄より——当時まだ改善されない刑務所よりも、はるかに劣等な待遇を受げて、十八時間の労働をして、そうして半年間血を絞り、肉を削り取られてふうふらの、もう立
つて歩けないような
状態にな
つて、監獄部屋から解放されたときには、一文なしである。そうして多数の者はそのまま行路病人として病院に收容される。もしくはそのまま行倒れにな
つて疎え死んでしまう。一部の頑強なものは都会に出て、強窃盗を働く。こうして北海道のあらゆる罪悪が、渡り鳥のように冬の間に南へ向けて、青函海峡を渡
つて本土へ來る。そうして町をどんどんと南下して來る。これが各地でいろいろな大きな社会問題を起したのであります。これに対して私は当時僭越であ
つたけれども、監獄部屋廃止問題を取上げて、土建業者と鬪
つた。しこで当時における北海道の土建業の内容について、相当メスを入れて研究をしたのであります。一例をあげますと、たとえば十万円で工事を請け負はせる。そのときに指名入札人が來ておりますと、それに一割を出面賃、顔出し賃として拂わなければならぬ。一遍顔出しをすると千円ずつ請負業者は所得がある。十万円で受け取
つて九万円でやる。九万円でやるべきものを今度は
自分の番頭に七万円で請け負わす。その番頭はいくつかに割
つて、その下請けに渡す。こういうことになりますから、十万円でやらなければならない工事を、五万円で執行しなければならぬ。そうなりますから末端の請負業者は、監獄部屋の人夫を使
つてこれを酷使、虐待して、その労働搾取によ
つて補う、またその
地方から、米麦を借りる、借りたものを支拂わぬで踏み倒してしまう、その
地方から足らない人夫の供給を受ける、村長などに話しこみ、その労銀も拂わぬ、そうして工事の
費用を大部分受け取
つたまま、どこかえ逃亡してしまう、工事は未完成である、地元の町村長は、労力を供給したのに拂
つてもらえぬ、米麦供給者も拂
つてもらえぬ、監獄部屋の人夫は行倒れの
状態にな
つて解雇される、こういう
状態であ
つたのであります。さようにして金が請負師に不当にはいる。國庫をごまかして大きい請負金額をとり、労働者あるいは地元の農民、その他の
関係者に迷惑をかけて、その利益が政治資金とな
つて現われて、今問題とな
つておるような事態を引起す。当時北海道では土建業者の團体から政民両党へ、選挙ごとに何百万円の金を出すといわれた。事実かどうか知りませんが、そういうことがあ
つたのを見ましても、
日本の土建業者の革正ということが、
日本の政治そのものを粛正する
意味合いから
言つても、重大な問題であるということがわかるのであります。さようにいたしまして、その当時の
日本全國のにとは私は知りませんが、少くとも北海道について
考えますならば、土建業者の金力が北海道政を支配してお
つた、こう
言つても過言ではなかろうと思うのであります。かような請負制度の腐敗、堕落、封建制というものを完全に拂拭しなければならぬ。この請負制度を改善するのでなければ、せつかく
建設省をつくりましても何ら
意味をなさないと思うのであります。この請負制度の改善に関して、
建設省としてはいかなる方策をも
つておられるか、それを伺いたい。また近ごろ土建
事業執行の技術的能力は、当時に比べてはるかに向上したとは思います。しかしながら
人間の労力に依存することが非常に多い。非常に非科学的な、非技術的な、非動力的な工事をやる。そのために労働者の悪い待遇及び酷使、虐待が行われるのでありまして、しかしてまた工事そのものが適正、妥当、完全にいかない。こういう点から土建業者はもつと高い知識と技能と機械力を利用して完全な、しかも
人間の労力をあまり搾取せぬで待遇を相当よくして能率の上るような“そうした技術的、知能的、経営の合理化というようなこども
考えなければ、厖大な
日本建設の
予算というものの大部分が、変な腐敗の金として使われる。もしくは厖大な金を注ぎ込んだにかかわらず、りつぱな工事ができない。そうして労働者のほか、たくさんの人々に非常な深刻な苦しみを加える。こういうことになるのでありますから、
建設省がせつかく発足します以上、この土木請負業界における請負制度の改善、経営の合理化、また近代的な工事執行の
方法を採用して、明るい土建業というものが成り立つように、そうして
國民の膏血を絞
つた税金によ
つて支拂われるこの國家建設
事業というものが、最少の
費用で最大の能率を上げるようにも
つていかなければならないと思うのであります。これに関しましていかように
一松國務大臣は
考え、またいかなる信念をも
つてこの
建設省を発足して、國家再建の大建設
事業をやるところの方途について所信をも
つておられるか。特に土木請負業に関する指導を、今後いかようにや
つていくか。それに関する御所信を承りたいと思う次第であります。