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中村訴追委員長 裁判官彈劾法は、昨年の十一月二十日
法律第百三十七号で
公布されております。当時二十回近くもの御会合のもとに、熱心なる御
審議の結果成立いたしたものでございます。当時の
速記録を見てみますると、結局この
法案の中に実際運用に際して
不備欠陥の
法制が発見された場合は、
改正の機会があるというような
意味合の言葉も述べられておりますが、いよいよ運用いたしてみますると、一部の
改正を御
同意願わなければならない点なども考えられるのでございます。
まず第一に、第五条の
改正をお願いしてみたいと思うのでありますが、それは第八項中の「
國会の
閉会中その
職務を行う場合は」という
文句を削るという
意見でございます。要するに
手当の問題でありまするが、この
手当は
開会、
閉会中の
区別を設けないで、規則の中にありまする
相当額の
手当を受けることができる点に
改正を施してみたいと存じます。そこでこの
閉会中に
職務を行うた場合はというような
意味合に
なつておりますけれども、この
訴追委員会は、
閉会中といえども
原則として
仕事をしてまいらなければならぬことと考えなければなりません。それはこの
制度が
國民全体の利益のために設けられておる点でありまするから、
議会が
閉会したからとい
つて、この
訴追委員会が休会するわけにはまいらぬのであります。一年を通じて
事務局も附置されており、この
機構は
閉会、
開会の
区別なく、もちろん年中活動する
機構としてこれを運用してまいらなければならぬと考えております。また全国の
裁判官に対する絶えざる
実情の
調査を施すとしましても、わずかの人数で
開会、
閉会等の
区別によ
つて緩慢な
仕事を行うていくわけにはいかない。しかして
裁判所に対する
制度でありますから、
裁判所が年中裁判を行うております。その
職務の上におきましても第
二條に掲げられておるような
事柄が、
裁判官に適せざる事実として発見された場合に、
彈劾裁判所の
訴追機関が動くのでありますから、
従つて國民の訴願に対しましては、年中窓口を開けておくことは当然だと思います。またさらにわれわれの目的といたしましては、この
訴追委員会が年中
仕事をするような
事柄が起らないようにと希望いたすのでありますが、この
制度を十分活用せられる
制度にしていきたいという見地から、
議会閉会中云々という
文句は削
つていただくことが適当だと考えまして、これをお願いしたようなわけであります。
最後に一言つけ加えさせていただきます。
手当と申しましても今までの一万円を二万円にしたのでありますが、それを月割にしますると千何百円
程度の金額に
なつておりますから、実費の
弁当代という
程度でありまして、この
條項の削除をお願いするわけであります。
その次は第
七條の
改正であります。これは
事務局の
関係でありまして、今まで
事務局には
書記長及び
書記を置くように
なつておりましたが、今回少しく拡張いたしまして、
事務局長という
制度にいたしまして、現在の
定員の二倍を予算の上でも
認められてまいりましたので、これを拡充いたしたいと存じます。
事務局と申しますると、なかなか大きな
機構のように考えられますが、
参事二名、
主事二名を置くことになるのでございます。
事務機構の完璧を期する上におきましても、
一つの
独立機関の
機構の
建前からいたしましても、わずかながら専門的なる
事務局と、それに対する
職員をも
つておることは必要であります。過日この
訴追委員会で取調べをや
つてみたのでありますが、なかなか
人手を借りてその
仕事をやることになりますると、容易にそれができないのであります。たとえば
速記者の問題の如き、
訴追委員会は
議会とは別個の
機関であるから
訴追委員会に
速記に行く必要はないのだ。行くならば
訴追委員会から
速記料は払うべきものであるというような
建前でありました。そのために
速記を抜きまして、不便ながら
書記を一人
使つて昨日の大
会議の
速記をやつたというような状況に相
なつております。どうしてもある
程度必要なる
最小限度の人員だけは
一つお
認めをいただきたいというのがこの
事務局を設ける大きな点であります。
それから
訴追期間の
延長の点でありますが、
裁判官を罷免する
訴追の
手続をとる上におきまして、罷免をなすべき事実が発生してから三年間経過いたしますと、
訴追することはできないのであります。ところが十日か十五日で
訴追のなし得る期限が切れるという場合に、
議会が
解散に
なつたり、あるいは任期が満了いたしたというような場合におきましては、どういう大きな事実を発見いたしましてもその
裁判官に対しては
訴追ができなく
なつてしまうのであります。そういう場合には、次に新しい
当選者によ
つて委員が選ばれますまで、空白を埋める
制度といたしまして
訴追期間の時効の
延長をしていただきたいというのがこの点であります。
さらに第四点といたしましては
訴追請求の
義務の追加であります。これはお手もとに
勧告案が差上げてありますから、すでに御
審議願つたと考えておりますが、たまたま私どもの考えとこの
勧告案が一致しております。そこでこれは
一つぜひお
認めを願いたいと存じます。実例をお訴えしますと最近一番困りました問題は、浜松の判事がいよいよ
訴追するところの
事由が生れるというような場合に、そのときはすでに
辞職願を出してしま
つており、もう
辞職の
許可書は明日でも発行できるという状態の場合であります。この
辞職願が
許可されてしまいますと、どんな大きな
訴追の
事由がありましても、
許可に
なつた直後からは
訴追の
手続はできなく
なつてしまうのであります。そこでこういう点を非常に心配いたしておりましたが、
訴追義務を
裁判所長官に負わせるということになりますと、この難点が解決されることになります。
それから皆さんに御研究を願い、御注意を喚起しておきたいことは、罰則の点であります。それは
訴追委員会の
証人出頭、
記録の
提出の要求という場合に、
証人が理由なく出頭せず、
記録の
提出をしない、あるいは
虚偽の
記録を
提出したものに対して、わずかに一千円以下の過料に
なつております。しかるに
議院における
証人の
宣誓及証言等に関する
法律案によりますと、
宣誓書に
虚偽の陳述をなした場合には十年以下の
徴役になり、証言を拒んだ者は一年以下の禁錮または一万円以下の罰金ということに
なつております。この点は不均衡に
なつているという感じがしますので、これは将来の問題として御研究願いたいと思うのであります。
これは
全員一致の案でありますから、その点御了承願いまして御同情あるお取上げを願いたいと思います。