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工藤委員 私は
総理大臣に対して、わからぬ点を御釈明願いたい。この問題をなぜわれわれは
かくまで力こぶを入れるかということは、単なる
捜査上の手続でなく、これの根底に横たわ
つておるところの問題は、かなり重大だと思う。なぜ重大であるかというと、第一回
國会が終るその夜、にわかに隠匿物資の問題について、最も強化せる調査機関をつくれということの
要求であります。しかしてそのことに
関係があるかどうかしりませんけれ
ども、
司法大臣は
職務上閣議に報告した。その中の一節に、三十有余名の
國会議員はいずれも隠匿物資に
関係あ
つて、ある閣僚はこれを地方遊説にまで利用しておる。これらのものがいわゆる新党に合流すべく運動中であるけれ
ども、これらがやられたならば新党は成り立たぬじやないかということを今の
内閣の副総理の地位にある人が言
つておる。してみると原君に対する問題は、単にその片鱗を示すにすぎないのではないか。はたして片鱗であ
つて、まだ奥があるといたしますれば、これはわが國の
憲法政治の上に重大なる問題をもつ。
從つてこの問題は単なる
檢察官憲の
捜査上の手続のみによ
つて、私はこれを理解することはできない。三十有余名は、現在この
衆議院を構成しておるところの
相当の数でありますから、私
どもはこの問題は、政治問題として取扱わねばならぬ部面が
相当あると思う。ここにおいて
総理大臣は
行政府の最高機関として、かように政治界が複難怪奇なるときにあた
つて、一微々たる
檢察官憲がかようなることを言
つてきたからとい
つて、これをうのみにしてやるとは、私は信ぜられない。
相当なる調査をしたでしよう。いろいろ手を盡したでしよう。片山君はこの
内閣の首班でもあり、政党の首領でもあり、しかして法律家でもあるが、この
國家の統治機関に対して、きわめて大なる影響を與えるところの政治問題であります。われわれの
考えるところによれば、政治問題であるということは、
総理大臣自身の地位からも
考え得るでありましようが、おそらくは単なる檢察上の問題でなく、
総理大臣としては、廣く眼界を日本全國に及ぼし、あるいは
國家の統治機関の全部に及ぼし、種々なる方面からこれに対して檢討したものと私は
考える。しかりとすれば、私はこの
司法大臣が
要求してきたものを
総理大臣はこれを取上げて、総理の名において
國家の最高機関であるところの
衆議院議長にこれを
要求したのでありますから、この結果については、あらかじめ
考えるところがなければならぬと私は信じておりますので、この点はやはりいろいろな
方法によ
つて究明したいのです。私
どもは原君一個の問題として
考えるべく、あまりに政界の裏面に複雑怪奇なる重要な
案件が横たわ
つておると思うから、特に
総理大臣の御
出席を願
つた。
そこで私はお問い申し上げだいのは、片山総理ともあろう方が、殊に行政部の
責任は
内閣全体の共通の
責任であるということは、
憲法上うた
つてある。一微々たる
檢察廳の
要求であるけれ
ども、その結果というものが、
内閣の
責任において
相当考慮しなければならぬことになる。
裁判所の
責任は、
裁判所でやるのであ
つて、これはその
通りですけれ
ども、少くとも裁判官の手に行かないまでに、
檢察官憲は、やはりあなたを通じて
司法大臣がこれを監督指揮することができる。その
司法大臣は、すなわち
内閣の一閣僚、
從つてこれを統率するものは
総理大臣であります。この
意味において、かりに裁判の結果いかんによ
つて考えるまでもなく、
檢察当局者の
とつた処置は、決してわれわれを満足せしむることができないような場合になりますれば、一党の総裁であり、
総理大臣であり、法律家であるというあなたとしては、
憲法に定められたところの
責任の共通をも
考えにならなければならぬから、微々たる
檢察官の
要求、あるいは閣僚の一人たる
司法大臣の
要求をうのみにするとは思わない。殊に法律家の
立場に立
つたら、一層この点について深刻なる御檢討をなされたと思います。あなたとしては、言うまでもなく事犯の
内容にはい
つて、この点ならば
逃亡の憂いはないけれ
ども、
証拠を
湮滅するかもしらぬというその事実が、必ずやあなたの認識のうちにはい
つてこなければならぬと思います。そうすれば
逃亡するおそれがないと、先刻
司法大臣も言明したのですが、
証拠湮滅について、どうしても現在この
憲法上の大
原則を侵してまで、これをやらなければならぬという勇敢なるあなたの
態度に対しては、先刻申し上げましたように、政治上のいろいろ複雑なる今日において、
相当私は
責任があると思います。ゆえに
証拠湮滅のおそれありとしたならば、その
証拠湮滅についてこういう懸念があるから、ここにこれを
逮捕して、
議員を拘束して
調べなければならぬということは、あなたの頭の中に判然とあるべきはずだと思います。そこで私は、しからばどういう点で
証拠湮滅のおそれがあるかどうか、これをあなたに伺いたいのです。もしあなたが
相当なる用意をも
つてこれをお
調べに
なつた結果、これを発動したものであるとしたならば、
証拠湮滅のおそれがあるという点について、詳しいことは、われわれはその職員でありませんからお願いしませんけれ
ども、大体われわれ常識的な
程度においても
判断のできることを、あなたの
総理大臣としての行政の地位、共通な
責任ありというこの地位から、私はこの
機会にあなたのその認識の
程度をここで発表していただきたい。特にこの点を確かめて、この問題に対する
態度をきめたいと思います。