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栗栖國務大臣 この前堀越副
長官が参りますときに、私上るはずでございましたが、よんどころない所用で
司令部の方へ行
つておりまして、実は上ることができなかつたのであります。そうして速記のその他を見まして、なお副
長官がただいま
安本に設けております
為替、
外資導入に関する
委員会を
中心としての
事情を御
説明、お答え申しておるのでありますが、そういう結果、自然実際的に、殊にただいま
お尋ねのような
個人の
関係の
外資導入が、
民間の
外資導入のことにつきまして、実際的に問題となり得る点その他について一應申し添えまして、補足をいたしておくことがいいのではないか、こういうように
考えて上
つたような次第でございます。
そこで本格的な
外資導入ということと、こういう
インフレーシヨン下におきまして
日本の
経済を救うために、そうしてこの危機を突破するために資するための一種の
外資導入ということは、
民間外資導入のうちにおいても、これを区別して
考えないといかぬと思うのであります。本格的な多
資導入ということになりますと、インベストメント、本格的な
投資でありまして、それは副
長官も申しましたように、
経済の安定、
労働の安定、あるいは
為替の安定、その他の諸
條件を具備しなければならぬことは、申すまでもないのであります。これはひとり
日本に対してのみならず、
ヨーロツパあるいは
世界各國に対しましても、こういう変動の時期におきましては本格的な
投資、
外資導入というようなことは、なかなか行われないような現状にあるのであります。
為替の問題にいたしましても、
為替の
安定資金の設定とかいうようなことが、昨年の春ごろまでは
ヨーロツパにおいてもいろいろ言われておつたのでありますが、現在においてはそういう問題よりも、
世界が政治的に、社会的に、
経済的に非常に大きな変化をいたしつつあるのでありまして、その結果もう叫ばれなくな
つておるのであります。そういう
関係から見ましても本格的な
投資ということは、相当
経済の安定、
日本の
経済復興の状況が大体固ま
つてから後でないといかぬと思うのであります。
民間のものにつきましてはそう思われるのであります。しかしわれわれが今
考えておりますのは、そういう本格的な
外資導入が國際信義を守るという原則の上に礎かれ、そうしてはいることはもちろんわれわれは非常に希望するところでありまして、今回
政府において設けました
経済復興計画の
委員会におきましては、もちろんそういうものも懇請を予定し、援助を予定しておるわけであります。しかしさしあたりの現在の危機において、これを切拔けるための
民間外資導入等を
考えますと、單にそういうものでなしに、非常な必要があるのであります。たとえば工場その他につきましては現存いたしておりましても、現材料がはい
つてこないために活動ができないというようなものはあるのであります。それからさらに機械その他のものも少しく取換えるならば、非常な
生産の増強ができるというようなものもあるのであります。そこでそういうようなこちらの急場に應ずるために、さらに海外、殊に米國の事業家等でこの混乱を前提として、一種特別な信用の供與といいますか、
外資導入をするということがもちろん
考えられる。
日本の
民間と向うの
民間との間にいろいろ話が進められておるのであります。そういう点ではわれわれは相当の期待をかけ、また
政府といたしましてもその筋と十分連絡をし
斡旋その他をいたしておるのであります。これは單に
研究の時代であるとか、あるいは基礎的の
方法を考慮する時代であるというのではなしに、もう実際問題にはい
つておる次第でございます。そこでその形はいろいろあるのでありますが、これは
一つはいわゆる委託加工の
形式ではいる場合が想定されるのであります。これはあるいは仕上信用制度と申しまして、皆さんも御案内のことと思いますが、欧州第一次大戰のあとにおいてはその制度が相当称えられ、
日本におきましても正金銀行、
日本銀行、興業銀行、市中銀行等においてこれを
考えておつたのであります。これは今日われわれが言う委託加工と大体近いものであると思うのであります。これはどういう形ではいるかと申しますと、これは原料を
日本の工場との間に特約をいたしまして、そうして原料を
日本に持
つてくるのであります。その原料を
日本に持
つてまいりまして、それを加工するのでありまして、できた商品中で一部は
日本の消費に向け、相当大きな部分は再び海外へと持ち帰るわけであります。その間に加工賃、あるいは國内の留保分というようなものが
日本の
経済復興に潤うことに相なるわけであります。昨年の八月十五日の貿易再開にあたりまして、いわゆる回轉資金、リボルビング・フアンドが設定されまして、そうして原料その他綿花の輸入のための資金設定が行われたのであります、今回六千万ドルの資金設定ができたのであります。これはやや違いますが、この仕上信用制度、あるいは委託加工制度というものに似たものであるわけであります。ただ原料を持
つてきたものを、そのまま製品を持
つて帰る場合には、純粹の委託加工になるのであります。原料を入れ、また製品は海外へ輸出しますが、その輸出先が違う場合には、仕上信用制度というものになると思うのであります。こういうような制度は現下の状況において、たとえば一年なら一年というのを見越しまして、契約をいたし、加工をするということが
考えられるのでありまして、そういう場合には一種の原料を持
つてきて、それを形づくるわけでありますから、仕上信用すなわち外資の信用の設定、外資の導入がそこに一種の形において、しかも短い動く間を捕えて適宜に処理する形においてできるわけであります。それからさらにそのほかにはこういうものもあるのであります。その原料品その他を國内に賣りました場合に、一部の円貨ができるわけであります。その円貨のできることによ
つて、その事業会社に対する株式会社の取得その他についての予約をしよう、こういうなことも問題にな
つておるのであります。それからもう
一つの形は、たとえば衣料のごときものとか、その他につきましては海外に輸出します。その予約の輸出契約をするのであります。その反面の問題として代金を
日本に渡すということが
考えられるのであります。しかしこれを外貨で渡すということはなかなかむずかしいのであります。そこで他の必要
物資を輸入の形で渡すというようなことも用談が行われておるのであります。そういうような形があるわけであります。またあるものにつきましては食糧とかあるいはアルコールの原料等を入れる、
日本からさらに建築資材その他のものを出すというようなことも予約しまして、いわゆるバーターによ
つてやるということも
考えられるのであります。こういうようなものが現在話が進んでおりますところのもので、これについてはもちろん
政府において、殊に
安本の
委員会においても十分考究する必要もあり、その筋とも十分の連絡をと
つていかなければ
最後のことになりませんけれ
ども、しかしそういうようなプロビシヨナルな
外資導入が現に話に上り、実際の交渉にまでい
つておるということは、ここで申し上げたいと思うのであります。
それからその次に企業再建整備、
経済力の集中排除、そういうようなものの作用が大体一巡いたしますと、
日本の有力なる事業会社に
投資をいたしたい。しかし
投資をいたすにつきましては、なお相当の
為替問題その他に時間もかかるのであります。期間の時期を限
つて投資をする。その代り
投資をする場合には増資その他も会社は
考える、こういう予約のような約束をいたしまして、そうして原料その他を
日本に入れていくというような形も現われておるのであります。それからさらに戰前におきましても、ただいま
高瀬委員もお話になりましたが、神戸
方面のゴム会社であるとか、あるいは東京その他の
方面の電氣器具の工場であるとか、そういうような所へ彈前から
日本に相当
投資をいたしておつたのであります。あるいは彈爭中敵産管理の
形式で管理されてお
つて、それをポツダム宣言に基く勅令によ
つて返還するという場合の問題として、さらに從來の
投資を確保し、將來さらに
投資を続けていく、こういうような相談がさらに進んでおるのでありまして、こういうようなものも一体どの程度話が進み、これが
政府としてその筋と連絡のもとにやるかということについては、なおいろいろ考究すべき問題がありますけれ
ども、そういうような実際問題が起
つておるのであります。
政府はその間に処して、國家的にこの
日本経濟再建に資するものについて十分考慮を拂い、その実現を期しますとともに、それ以上はやはり國際信義というか、國際信用を十分維持することを約し、そうして対外
投資についてはその元本のみならず、果実と利益についても相当確保をいたしまして、心配をなからしめて、そうしてこの
投資その他を促進するというようなことも
考えておるのであります。
なおただいま
安本には
委員会がございますが、これは國内の行政機構として設けたものでありますから、廣く專門家の知識、あるいは
民間團体の知識等をも頂載する
意味において
政府の機構とは別に
諮問委員会のようなもの、あるいは懇談会のようなものを設けて、さらにこれを促進していこうと思うのであります。ただいま承りますと、本
委員会にも小
委員会ができることと思います。これは單に
研究という
意味ではもちろんなしに、そういう実際
方面の、あるいは
諮問委員会、
安本にありますところの外資の
委員会、そういうものと密接に御連絡を願
つて、この危機切抜けのための
外資導入等を十分促進していただきますならば、この上ないことと思う次第であります。これにつきましては法律問題であるとか、
経済問題であるとか、あるいは会社の信用、あるいは企業再建整備を促進する必要とか、その他の問題が相当あるのでございますが、これはまた
お尋ねがあれば別に申し上げたいと思
つております。
それで
民間外資導入が非常な悲観的な
意味にとられるという
意味じやなしに、こういう現在の
動きつつある再建の途上、発足のときにあるものについても、われわれはその
事情の許す範囲において
外資導入を期待し、さらに本格的に
経済が立直れば、本格的な
投資の
形式の
外資導入を期待する、こういうようにいたしたいと思いのであります。
最後に
外資導入は單に連合軍の好意、殊に米國の援助を期待するというだけでなしに、受入態勢として十分の整備をしていく、速やかなる企業再建整備を完了する、経営の合理化する、労資の協調を回復する、こういうようなことをいたすことが先決であるということも併せて申し上げたいと思います。