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高瀬委員 ただいまの総理の御答辯では、共産党員に対しては何ら積極的な処置をとる
意思はないという御見解のようでありますが、私
どもといたしましては、イギリスの
政府がと
つておりますように、何もこれをまねるという
意味でなく、
日本の再建に有害なる分子を積極的に排除する必要があるという見地から、國家の公企業に從事している者、すなわち鉄道であるとか、あるいは逓信事業であるとか、そういう事業の中にはい
つている共産党員は、とにかくも私は排除すべきだという固い見解をも
つておりますが、その点は未だ言明する時期にあらずと総理がおつしやられますので、この点はこの辺にして打切りいたしておきます。ただ私としては、ぜひこういうふうな國家の公務員には共産党員を排除すべし、それを一刻も早く
日本の
政府において決心し実現されんことを
希望いたしまして、質疑を打切ります。
それではその次に、実は追放の問題でありますが、これは一見
外務委員会には何ら
関係のない國内問題であるように受取られますが、私は外務
委員としてさようには考えておりません。少くとも
日本の眞の民主化を達成するためには、この
日本の軍國主義者あるいはフアツシヨ、あらゆる反動的な分子を
日本から一掃いたして、眞に世界の文化國家として國際的信用の高い、文化のにおいの高い
日本をつくるということがわれわれの責務であると考えます。從
つてこの公職追放の問題が非常に民主的に明朗に行われなければ、
日本の國際的信用の維持、あるいは
日本の眞の民主化が達成されないということは、私から申し上げるまでもないことであると存じます。過去においても数回にわた
つてこの追放の問題はきびしくこの
國会において論議されたことは、総理も御
承知の通りであります。しかるにこの自然休会中に私が一驚を喫しましたことは、河上丈太郎氏の追放問題であります。特にお断わりいたしますが、私は資格審査
委員会の権能がどうであるとか、あるいは構成がどうであるとか、あるいは法的に総理大臣といかなる
関係にあるとか、あるいはこの審査の
内容が総理に何ら
関係のないものであるとか、そういう些末な、いわゆる鈴木法務総裁でなければ答弁のできないようなことを芦田総理に伺うつもりはありません。そういうことは私
どもにと
つてはどうでもよいことなのであります。從
つてこの河上氏追放の問題を通して私が非常に遺憾に思
つております点は、一回
政府が非該当なりと決定して、しかも七日の官報においてこれを公示いたしまして、なお後に至りまして苫米地官房
長官の談話をも
つて、十三日に非該当が取消され、追放が確認したということを
政府は発表いたしております。とにかく私はこの問題を通して非常に
日本の民主化というものが、何らかの政略によ
つて行われているのではないかという暗影を世界に投げかけたことは、総理大臣も御否定にならないと思うのであります。しかも
日本の現
政府の責任と創意において一回決定しました点がとにかく取消されたということについて、非常に疑義をだれでももつわけであります、しかもこの苫米地
長官房
長官の談話をちよつと読み上げてみますと、
政府は河上氏の追放確定について十三日附の総司令部の覚書を受取
つた。追放の
理由として推薦
議員、翼賛会総務、翼政会の発起人であ
つたことがあげられている。河上氏の追放確定はいろいろ影響があると思うが、なお政界の大物で訴願中の者について
政府は諸般の手続を進め、愼重に審査を続けている、こういうことが過ちなければ、これが苫米地官房
長官の十三日に発表した談話であります。從
つて私は、
政府側として訴願
委員会で非該当の
理由としてあげたものには、河上氏は当選以來一貫して社会運動に盡してきたという点、二番目に推薦
議員に
なつたときでも、党議にいやいやながら服したので、本人の
意思ではなか
つた、それから河上氏はキリスト教社会主義者として軍國主義には終始反対してきた、こういう
理由のようでありますが、だれしも考えますことは、翼賛会総務であるとか、推薦
議員であるとか、あるいは翼政会の発起人ということは、いかなる
理由があ
つてもこれは追放のわく内にはいるものでありまして、どういう
根拠をも
つて訴願
委員会がかくのごとき人を非該当にしたか、これは前に
政府があげた三つの
理由と対比しまして、非常に重大なる追放に値する條項であります。こういうような点について、
政府がしかも責任をも
つて七日に官報で非該当を発表したということは、明らかにこれはG・H・Qの了解を得て
政府がや
つたことであると思いますので、私は郷里に当時おりましたが非常に驚いたのであります。一度決定したものを今度はノーと言うのでありますから、故意に政略的に河上氏を一回復活させて、実は
政府は大いに努力したがだめだ
つたのだという、だれかの陰謀だという人もあります。そういう点は私は政治家として取り上げませんし、信用いたしませんが、そういう風説すら出ているのであります。しかも私の解釈で言いますと、いわゆるこの訴願
委員会なるものは五月の十日に解体しております。残るのは結局手続問題だけであろうと思うのであります。それ以外には何ら残されたものはない。しかるにこの官房
長官の声明によりますと、河上氏の追放確定はいろいろの影響があると思うが、
——一体どういう影響があるのか、これが私にはわからない。なお政界の大物で訴願中の者については、
政府の諸般の手続を進めているという。大物であろうが小物であろうが、追放という名目についてはひとしい取扱いを受くべきもので、官房
長官のこの言説というものは、非常に非民主的にものであると私は考えざるを得ないのであります。政界大物の中で訴願中の者については、
政府は諸般の手続を進め愼重審査をしていると言いますが、
政府はもうそんな立場にないのであります。訴願
委員会は解除されて、手続の問題だけが残
つているのに、諸般の手続を進めて愼重審議している。訴願
委員会が解体されたのは五月十日で、官房
長官の声明は十三日、こういうことになりますと、一体何が何だか私にはわからないのであります。こういうような点について世間では実に不可解な
感じをも
つている。しかもこの追放の発表というものとG・H・QのO・Kというものは、私の見解によりますれば不可分のものであろうと存じます。全然不可分のものでなければ、
政府が官報にまで発表して、そういうようなことをするはずがないのであります。非該当ということを言う立場に
政府は占領治下において毛頭ないと私は了解いたします。從
つて一体この追放問題について、私は法理上の手続はどうでもよいのでありますから、総理大臣としての率直な御見解と今後の方針を伺いたいのであります。特に私が附け加えたいことは、今後訴願
委員会もない、資格審理
委員会もない、こういうことになりますと、もし実質的にこの問題が起りました場合には、一にかか
つてだれを追放するか、だれを追放しないかということは、ま
つたく
政府の掌中にあるわけでありまして、結局これは將來
日本の政治のどろ合戰が始まる
一つのきつかけになるというので、非常に私はこれを重大視するのみならず、
日本民主化のために、國際的信用のために、これについては総理のはつきりした見解を伺
つておきたい。うかがいますと何かかなり政界の苫米地さんの大物という中には━━私はその風説を信じませんが━━楢橋渡氏とか、あるいは
河合良成氏であるとか、あるいは犬養健氏であるとか、あるいは社会党の杉山元治郎氏とか、河野密氏とか、二百余名に及ぶ追放解除の申請をしたということを聞いております。私はその事実を知りませんし、ただ風説を取上げて申すのは、はなはだ総理大臣に対しては失礼でありますが、そういうことが巷間傳わ
つております。しかしてこれらの人たちが嚴重な資格審査
委員会を経て追放されて、しかも訴願した。そうすると、訴願
委員会においては、二百名にもあまる追放を解除したということになると、一体どつちが権威があるのか、どつちも権威がないではないか。資格審査
委員会しかり、訴願
委員会またしかり。そうすると、
日本の追放は実にうやむやのうちに行われておるという結論に到達するわけでありまして、非常に私
どもとしては重大なる関心をもたざるを得ないのであります。たいへんに長くなりましたが、この点について総理の率直なる御
意見を拜聽いたしたいと思います。