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1948-05-18 第2回国会 衆議院 外務委員会 第5号
公式Web版
会議録情報
0
昭和二十三年五月十八日(火曜日) 午前十時三十一分
開議
出席委員
委員長
安東
義良君
理事
加藤シヅエ
君
理事
細川
隆元
君 菊池 義郎君
佐々木盛雄
君 竹尾 弌君 仲内 憲治君 猪俣 浩三君
戸叶
里子君 馬場 秀夫君 和田 敏明君
小澤專七郎
君
園田
直君
唐木田藤五郎
君 多賀 安郎君 高瀬 傳君
花月
純誠君
出席政府委員
外務事務官
與謝野
秀君
委員外
の
出席者
外務事務官
高野 藤吉君
厚生事務官
高木 玄君
專門調査員
佐藤 敏人君
專門調査員
村瀬 忠夫君 四月六日
委員綱島正興
君、
鈴木強平
君及び長野重
右ェ門
君が
委員
辞任した。 同月同日
花月
純誠君、
園田直
君及び
山下春江
君が
議長
の
指名
で
委員
に補欠選任された。 同月十三日
委員岡田春夫
君辞任につき、その補欠として田 中織之進君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。 ――
―――――――――――
四月十五日
在外
同
胞引揚促進
の
請願外
三十六件(
並木芳雄
君
紹介
)(第四五六号) 五月十一日
在外
同
胞引揚促進
の
請願
(
河合義一
君
紹介
)( 第六六四号) の審査を本
委員会
に付託された。 四月八日
在外
同
胞引揚促進
に関する
陳情書外
一件 (第 九二号) 民族の
差別待遇反対
に関する
陳情書
(第一〇七号)
外資導入
に関する
陳情書
(第一六七 号) 五月十日
在外
同
胞引揚促進
に関する
陳情書
(第二〇六号) 同(第二四四号) 同 (第二五八号) を本
委員会
に送付された。 ――
―――――――――――
本日の
会議
に付した
事件
最近の
國際情勢
に関する
説明聽取
ソ連領
からの
復員促進
に関する
請願
(
小川原政
信君
紹介
)(第一九一号)
在外
同
胞引揚促進
の
請願外
三十六件(
並木芳雄
君
紹介
)(第四五六号)
在外
同
胞引揚促進
に関する
陳情書外
八件 (第八一号)
在外
同
胞引揚促進
に関する
陳情書外
一件 (第 九二号)
在外
同
胞引揚促進
に関する
陳情書
(第二〇六号) 同(第二四四号) 同 (第二五八号) ――
―――――――――――
安東義良
1
○
安東委員長
ただいまより
会議
を開きます。
國際情勢
について外務省の
情報部長與謝野
君より
説明
を聽取いたしたいと思います。
與謝野秀
2
○
與謝野政府委員
今年の一月の末に本
委員会
におきまして、当時の
國際情勢
につきまして概括的なことを御説明申し上げました。その後の
國際情勢
につきまして御参考までに概括的なことを御説明申し上げたいと存じます。別に特に変
つた
資料はあるわけでもございませんので、御
承知
のことが多かろうかと思うのであります。大体今日の
國際情勢
の大きな問題はいずれも
アメリカ
と
ソヴイエト
との
関係
ということに帰するものが多いのでありまして、
米ソ関係
ということを中心として最近の情勢についてお話申し方げたいと思います。 実は昨年
以來
いわゆる
マーシヤル・プラン
、
アメリカ
の
欧州復興援助計画
、また
ソヴイエト
のいわゆる
國際共産党情報機関
の設置というようなことがございまして、
米ソ
の対立ということは
ヨーロツパ
でも漸次
はつきり
してまい
つたの
でありますが、
ドイツ
との
講和條
約の問題をめぐりまして、昨年十二月の
ロンドン会議
が決裂をいたしまして
以來
、漸次
米ソ
の
関係
はさらに惡化してまい
つた
ようにみられてお
つたの
でございますが、今年の一月、二月になりますといろいろこまかな問題で
米ソ
間に紛爭があ
つたの
でございます。たとえば
北アフリカ
の
飛行場
の使用に関して、
ソヴイエト
は
アメリカ
は條約違反であるというようなことを
言つて抗議
を申込んだ
事件
もございましたし、また一月の末に
アメリカ
の軍艦が
イタリー
に入港したのに対して、
ソヴイエト
は
イタリー
との
講和條
約の違反であるというようなことを
言つて抗議
した
事件
もありました。また
イラン
という所は
ソヴイエト
にと
つて
は相当重要な所でありまして、その
イラン
におきまして
アメリカ
の
軍事使節
が活躍しているということについて、
イラン政府
にたびたび
抗議
を行うばかりでなく、
アメリカ
に対しても
ソヴイエト
は
抗議
を申込んだというような
事件
もあ
つたの
であります。その他東洋におきましても、日本海、
黄海等
におきまする
ソヴイエト
の艦船の行動を
アメリカ
の飛行機が偵察しているというようなことに関して
ソヴイエト
は
抗議
を申込んだ。その他
ヨーロツパ
の
占領地域
におきまして両軍が接触している部面、特にベルリンにおきましては毎日のように小さな
事件
が頻発してお
つたの
でありますが、特に
米ソ関係
が急に惡化してまい
つた
というのは今年二月の末以来のことでありまして、これは
ヨーロツパ
におきましては
チエコ
の政変、及び
ソヴイエト
の
フインランド
に対する進出、また東洋におきましては時を同じくして
朝鮮
の事態というものが
はつきり
としてまい
つた
ために、
米ソ
の
関係
は急に惡化してまい
つた
ように思われるのであります。
チエコ
スロバキヤはいわゆる鉄のカーテンの中に必ずしも含まれておらなか
つた
わけでありますが、今年の二月に
チエコ
の
共産党
がまだ大多数を
議会
で占めているのではないのでありますが、
内務大臣
の要職を
共産党員
が占めて、それによ
つて
一種のクーデタを行いまして遂に内閣を乘つ取り、
チエコ
の
共産化
に成功したわけであります。この
事件
のめに
チエコ
の
外務大臣
が自殺するというような
事件
が、ありまして、
アメリカ
の輿論に対して非常なセンセーションを與えた。またときを同じくして二月の末に
スターリン首相
が
フインランド
に対して、
ソヴイエト
が
ルーマニア
やハンガリーなどとの間に結んだ
相互援助條
約に似たものの締結を提議いたしまして、
ソヴイエト
が
北の方
に出てきたという印象を與えました。これもまた
アメリカ
の輿論には非常な影響を與えたのであります。そこで
アメリカ
が最も心配いたしましたのは、御
承知
の
通り
四月十八日に行われることにな
つて
お
つたイタリー
の総
選挙
でありまして、つまり
チエコ
の
共産党
が内閣を乘つ取
つた
ばかりに
チエコ
全体が
ソヴイエト
の
勢力下
に帰して
しまつた
、これと同じことが
イタリー
で起れば、つまり
イタリー
の総
選挙
で
共産党
が大多数を占めれば、
イタリー全土
が
ソヴイエト
の傘下に收められる、こういう危險があることにな
つて
まいりましたために、
アメリカ
としては
イタリー
の
共産化
を防ぐということにあらゆる手を盡すということにな
つて
まい
つたの
でありまして、これがとりもなおさず
米ソ
の
関係
が非常に緊張したように思われた一つの原因だ
つたの
であります。
アメリカ政府
では三月中旬に
トルーマン大統領
が声明を発し、
マーシヤル長官
も声明を発したのでありますが、特に
トルーマン大統領
は
議会
に
特別教書
を送りまして、
ソヴイエト
の
対外政策
を非常に強く攻撃いたしまして、
米國
のとるべき措置として、
マーシヤル・プラン
による
欧州復興援助計画
を至急立法化する、また一般の
軍事訓練法
を制定する、また
選拔徴兵法
というものを一時的に制定する、同時に当時ヨーロッパで成立いたしました
イギリス
、
フランス
、
ベルギー
、
オランダ
、
ルクセンブルグ
五箇國
の同盟を全面的に支持する、こういうことを述べて、
ソヴイエト
の
ヨーロツパ
の西の方に対する進出に対しては強くこれを反対するという態度を明らかにするとともに、
米國
内の輿論に訴えたわけであります。同時に
イタリー
の
共産化
を防ぐ手段といたしまして、
アメリカ政府
は
ソヴイエト
に対して
トリエスト
を
イタリー
に返還してやろう、こういうことも提議したのでありまして、御
承知
のように昨年できました
イタリー
と
連合國
との間の條約によりまして、
トリエスト
のステータスというものは
はつきり
ときま
つて
おるのであります。
トリエスト
の憲法まで條約の
附属文
とな
つて
おるくらいに、
イタリー
から取り上げられた
トリエスト
の地位というものは
連合國
間にきま
つて
おるのでありますが、
アメリカ
はこれも
イタリア
に返そうではないかという提議をして、
イタリア
の輿論を自分の方にひきつけよう。また
イタリア
がもし
共産化
したならば
マーシヤル・プラン
による
イタリア
への
援助
ということはやめるというようなことも
アメリカ
は声明して
イタリア
の
共産化
を防ぐべく努力をしたのであります。その他傳えられるところによりますと、
アメリカ
にたくさんおりまする
イタリア
の移民を通じて、その縁故の者にいろいろ
共産化
を防ぐ運動をしたというようなことも傳えられておるのでありまするが、
イタリア
の
選挙
は去る四日十八日行われまして、御
承知
の
通り共産党
はあまり進出できなか
つたの
であります。
上院下院
を通じまして
投票数
のそれぞれ三〇%、三一%程度に止ま
つたの
でありまして、大体
イタリア
の政局というものも一時安定した形にな
つて
おります。しかしながら
選挙
の結果を詳細に見ますと、やはり
イタリア
の
共産党
の得票というものは約八百万あるのでありまして、また
イタリア
の
共産党員
にな
つて
おる者が二百数十万ということが傳えられているのでありまして、
選挙
の結果政権を握るということはできなか
つたの
でありまするが、ともかく八百万の得票を得ているということは、やはり
イタリア
における
共産党
の潜勢力というものは相当強いものである。
從つてイタリア
の
共産化
について
アメリカ
のみならず西欧の諸國というものは非常な関心をも
つて
おるということがうかがわれるわけであります。また
北の方フインランド
に対する
ソヴイエト
の進出につきましては、
フインランド
の
政府
は非常な苦境に立ちまして、長い
間ソヴイエト側
と
交渉
を重ねまして、結局
ソヴイエト側
も
フインランド
の立場を考慮いたしまして、
ルーマニア
、ブルガリアその他の國と結んだ
相互援助條
約とはなはだ性質の違
つた
非常に穏健な
相互援助條
約と申しますか、
フインランド
の立場を考慮した
相互援助條
約を締結したのであります。たとえば
フインランド
の出兵の義務というものは、
フインランド
の土地が侵されない限り、そういう義務はないという点において、ほかの諸國との結ばれました條約とは
大分性質
を異にしているわけであります。 なお
米ソ関係
の惡化いたしました一つの原因は、西において
チエツコ
問題、
フインランド
問題が起
つた
と時期を同じくして
朝鮮
の問題が起
つた
、つまり
朝鮮
は今年の三月の末に
國際連合
の指導のもとに
南北朝鮮
を通ずる総
選挙
を
行つて独立政府
をつくることが昨年の
國際連合
の総会できま
つて
お
つたの
でございますが、
國際連合
の
委員
が今年の一月
以來朝鮮
へ参りましていろいろ調査をいたします際に、
ソヴイエト側
は北緯三十八度以北にこの
國際連合
の
委員
を入れないのでありまして、結局
國際連合
の企画した
南北朝鮮
を通ずる総
選挙
というものは実行不可能になり、
國際連合
の
委員長
が
中間報告
のために
アメリカ
に帰りますと、
アメリカ
の
飛行場
へ着いたところで
受取つたニユース
は、
北朝鮮
に
独立民主政府
ができた。しかもその
政府
は二十五万の
常備軍
と申しますか、兵力を養成しても
つて
いる。こういう
ニユース
だ
つたの
でありまして、あたかも
チエツコ
の問題が起きていた当時でありますから、同じようなやり口でまた
朝鮮
にもこれが起
つた
ということで、
アメリカ
は
ソヴイエト
というものの出方について非常な
警戒心
をもち、輿論も硬化したように思われるのであります。 その後
イタリア
の総
選挙
が済みまして
以來
、
米ソ
の
関係
というものは多少小康を得た形になりまして、
イギリス
の主導のもとに目下
西ヨーロツパ
の
五箇國
、
イギリス
、
フランス
、
オランダ
、
ベルギー
、
ルクセンブルグ
という
五箇國
の同盟ができまして、これがいろいろ会合を行い、また
アメリカ
の
援助
を要請しているのでありますが、
イタリア
の総
選挙以來
これらの動きもそれほど緊張したものとは見られないで今日に及んでまい
つたの
であります。專門家の言うところによりますと、今年の五月一日のメーデーにおける
ソヴイエト側
と申しますか、
共産党
のスローガンというようなものも昨年と比べますと、
大分米英
に対して協調的なことにな
つて
いるというようなことも
言つて
いるのでありまして、やや小康を得たように見られてお
つたの
でありますが、
アメリカ政府
は五月の初めにモスコーに駐在する
スミス大使
を通じまして
アメリカ
の
米ソ関係
に対する見解というものを申し入れ、これを
ソヴイエト
がこの五月十日に発表したことは御
承知
の
通り
であります。
アメリカ
は
スミス大使
を通じて
ソヴイエト政府
に送りました
覚書
の中で、
アメリカ
が現在の
外交政策
を今後も実行していく、また
アメリカ
の今日と
つて
いる
強硬政策
というものは、國内における
選挙
というようなものでは影響されない、同時に
アメリカ
の経済がいずれパニツクがくるというようなことを言う者があるが、何らそういう心配はないのであ
つて
、結局
アメリカ
と
ソヴイエト
との
関係
というものが惡化している現在の状態というものは、
ソヴイエト
が
東ヨーロツパ
の
隣國
に圧力を加えていることが原因とな
つて
招來されているのである。しかしながら
アメリカ
としては
ソヴイエト
に対して何らこれを損う意図はも
つて
おらないのであるから、両
國関係
の改善の途は開いているというような趣旨を
覚書
として申し入れたのであります。これに対して
ソヴイエト側
は、五月九日に
アメリカ
と
ソヴイエト
の
交渉
を開始して両國の關係を改善しようという
アメリカ側
の提案には同意する、しかしながら現在の
米ソ関係
が惡くな
つて
いる。それは
ソヴイエト
の行動の結果だという
アメリカ側
の見解には
ソヴイエト
としては同意できない。
ソヴイエト
は今後とも東欧諸國との
関係
を一層強化していく方針である。
アメリカ
の方はソ連をめぐるいろいろな所に基地を得ているが、これは自衞上の方策とは見られないじやないかというようなことを語りまして、しかもその両國の
話合い
というものが極祕の
話合い
であ
つた
にもかかわらず、
ソヴイエト側
は外交上の慣例を無視いたしまして、一方的にこれを発表いたしたのであります。発表いたしたばかりでなく、
ソヴイエト
の國内においても非常に宣傳をいたしまして、
アメリカ側
があたかもひざを屈して
ソヴイエト側
に
米ソ関係
の改善を申し入れてきた、こういう印象を國内に與え、同時に今日
西欧國家
間の同盟をつくり、
アメリカ
の
援助
を得て
西ヨーロツパ
と
ソヴイエト
と対抗しようとしております
イギリス
、
フランス
その他の諸國に対して、
アメリカ
は
自分たち
を拔きにして
ソヴイエト
にこういう話をもちかけている、けしからぬという疑心暗鬼を起させるような結果になりまして、
アメリカ側
としても、この
ソヴイエト側
が
米ソ関係
に関する
覚書
を発表したことに関して、またさらに声明を出すというようなことが今繰返されております。また
アメリカ
の
覚書
をよく見ましても、今ただちに
米ソ関係
を改善するための
國際会議
ないし
首脳者
の会談を提議しているというようなことはないのでありますが、
ソヴイエト側
がそういうふうにと
つて
発表したという点を、非常に意外としているのでありまして、ただいまのところこの
覚書
の交換によ
つて
、ただちに
米ソ関係
が打開されるというような形勢にはなく、むしろちよつとこの
交渉
も一頓坐を來して
しまつた
。こういう形にな
つて
いるのであります。しかしながらいずれにしても
アメリカ
の
当局者
が、
ソヴイエト側
に対して自分の國の
外交政策
なり見解なりを率直に傳えると同時に、
米ソ関係
の打開のとびらは開かれているということを申し傳えたわけでありますから、今日
チエツコ
の
事件以來アメリカ議会
において陸軍や空軍の
拡張案
が討議されているのでありますし、その他いろいろ
米ソ関係
の緊迫を傳える材料が多いのでありますが、両國の
首脳者
間には、さらにいろいろな折衝も行われる途が残
つて
いるのではないかと考えられるのであります。
國際情勢
の一切の問題はいずれも
米ソ関係
に帰することができるのでありますが、これを離れて具体的に個々の問題について少し申し上げますと、先ほど申し上げました
朝鮮
の問題でありますが、
朝鮮
は
國際連合
の当初の予定であ
つた
三月に
南北朝鮮
を通ずる
選挙
を行うということが実行できなか
つたの
でありまして、その後
極東委員会
その他においてもいろいろ問題が討議されたのでありますが、結局五月十日に
南朝鮮
だけで
選挙
を行うということをきめまして、御
承知
のように、十日に
選挙
が行われたのであります。この
選挙
には
共産党
、右翼の一部その他の反対がございまして、済州島その他各地において
テロ行為等
もあ
つた模樣
でありますが、結局
アメリカ
の
ホツヂ司令官
も発表しておりますように、満足すべき状態でこの
選挙
が
終つた模樣
であります。
選挙
の結果につきましてはまだ公式に発表されておらないのでありますが、
大韓独立促成國民会
、
李承晩
氏の率いるこの会が五十六名、
韓國民主党
が二十八名、その他の小会派二十九名、無所属が八十二名というような結果にな
つて
いるということが傳えられています。また
南北朝鮮
間のいろいろの
交渉
につきましても、
新聞等
に傳えられるいろいろな問題がありまして、この
選挙
に先だちまして
南鮮
の一部
政治家
と
北鮮
の
政治家
との間に
会議
があ
つた
りしたこともあるのでありますが、今日さしあたり問題にな
つて
いるのは、
北朝鮮
から
南朝鮮
への
電力
の
供給
の問題であります。
北朝鮮
は前から
南朝鮮
に対する
電力
の
供給
を断つということを
言つて
いたのでありますが、この十四日の正午にいよいよ
南朝鮮
に対する
電力
に
供給
を断つということを通告したのであります。
アメリカ側
でも、前からこういう問題がございましたために、準備を進めておりまして、
発電設備
をも
つた
船を控えさせておりまして、
南鮮
に対する
電力供給
が断たれた一時間後にはもう
公共施設
への
供給
には差支えない程度に
電力
を
供給
している。こういうことが今さしあたりの問題にな
つて
いるのでありますが、これは
南朝鮮
から
北朝鮮
に対する
電力
に対する
支拂いが
、
アメリカ側
がドルで支拂うと言うのに対して、
北鮮側
では施設その他に要する現物で支拂
つて
くれということでもめている。また
アメリカ側
が
ソヴイエト
とこの問題を直接
交渉
をしようとするのに対して、
ソヴイエト側
はいわゆる
北鮮側
には
人民共和國
の
政府
があるからそれと
交渉
してくれというふうなことを
言つて
、なかなか
交渉
がめんどうにな
つて
いるということがいわれているのであります。 次に
ヨーロツパ
におきまして、
ドイツ
が
ソヴイエト
の
占領下
と
英米佛
の
占領下
に両分されておることは御
承知
の
通り
でありますが、昨年十二月の
ロンドン会議以來
、
ドイツ
との
講和條
約の問題が当分
望み薄
にな
つて
きた現在、どういうかつこうで個々の統治が行われているかということを簡單に申し上げますと、去る四月二十日から
ロンドン
におきまして
英米佛
の三國が
ドイツ
の
占領地域
をどうするかということにつきまして非公開の
会議
を開いております。この
会議
でいかなることが討議されたかまだ詳しくわか
つて
いないのでありますが、この
会議
には
ベルギー
、
オランダ
、
ルクセンブルグ——つまり英佛
と
西欧同盟
をつく
つて
おる國もオブザーバーとして参加しておるのであります。今後
ヨーロツパ
の
復興
について、
西ドイツ
と
東ドイツ
とを統一した
國家
をつくるという方向にも
つて
いくのを一時断念して、
西ドイツ
だけの形で
ヨーロツパ
の
復興
に参加さしていくということが、今日
英米佛
が考えておる大体の方向ではないかと傳えられておるのであります。
イギリス
の
ロバートソン軍政官
が最近、
ドイツ
は
ドイツ
全部の統一は当分期待できないから、
西ドイツ
は
東ドイツ
と遊離した形において一つの
國家
の形態ができることに
ドイツ人
は満足しなくてはならぬと語
つて
おる点でもうかがわれるのであります。これに対して
ソヴイエト側
は
ソヴイエト側
で、また
東ドイツ
の
占領地域
を強化し、
政策
を強化するとともに、
ドイツ人
の民心の把握ということをいろいろ考えておる
模樣
でありまして、
從來資本家
、地主その他いろいろ
企業等
を取上げたのでありますが、これも今後は行わない、個人の財産をとらない、
國有化
は從來や
つた
以外はもう行わないというようなことを
ドイツ人
に宣言しまして、
東ドイツ
だけで投票を
行つて一つ
の
政府
をつくるというような
政策
に出ておる
模樣
であります。これは
西ドイツ
の方におきまして、最近
西ドイツ
だけを一丸とした総
選挙
を
行つて
、首府をフランクフルト・アン・マインにおき、
西ドイツ政府
をつくることに対抗して、
東ドイツ
の方でまた
ソヴイエト
が
東ドイツ政府
をつくり、
西ドイツ
をなるべくそれにひきつけよう
——ちようど朝鮮
において
ソヴイエト
が
北鮮
の
政府
をつくり、これが
南鮮
に非常な力で働きかけておる。それと同じ方法でも
つて
東ドイツ政府
をつくり、
西ドイツ
をなるべくひきつけよう、こういう
政策
に出ておることが傳えられておりますが、まだこれについては詳細なことはわか
つて
いない形であります。 次に中國の問題を簡單に申し上げます。中國では
國民大会
が今年の三月末に行われまして、
蒋介石
氏は自分は
総統
になることを辞退するということを申し出たのでありますが、
総統
の権限を相当拡大いたしまして、
蒋介石
氏も遂に
選挙
されるということを承諾しましたために、大多数をも
つて
総統
に
選挙
されたのでありますが、続いて行われました副
総統
の問題につきましていろいろ紛糾がありまして、
國民党
の主流が
孫科
氏を推したのでありますが、
孫科
氏と
李宗仁
、程潜、この三氏の得票が非常に接近いたしまして、三回副
総統選挙
をや
つて
もなおきまらなか
つた
。その間に
國民党内部
にいろいろなグループの
策動等
がありまして、
孫科
氏も辞退をする。
李宗仁
氏も辞退をするというようなことがあ
つて
、一時どうなるかといわれていたのでありますが、結局
李宗仁
氏が副
総統
に
選挙
されまして、
國民党
の主流の支持のもとに立
つて
いる
孫科
氏を破
つた
ということは、やはり
國民党内
でいろいろな対立があることを示しているといわれているのであります。 なお
中共軍
と
國民政府軍
との戰況につきましては、さきに一月にも申し上げておいたのでありますが、今日では満州の九九%が
中共軍
に押えられて
しまつたの
であります。最近は長春が攻撃されておりますし、奉天も圧迫されております。また中國の本土の方では河北、大同、
張家口
、
山東方面
にも
中共軍
の勢力が非常に殖えてまいりました。延安もすでに四月二十一日に
國民政府軍
が撤退した、結局
國民政府軍
は
黄河以南
において防禦する、こういうような態勢にな
つて
おるということが傳えられているのでありますが、同時に
蒋介石
氏は今後六箇月以内に華北から
中共軍
を追拂
つて
みせるという声明を
行つて
いるのでありますが、いろいろ困難のあることはすでに御
承知
の
通り
であります。 また
アメリカ
に対しましていろいろな
ミツシヨン等
が参りまして、
國民政府
に対する
援助
を懇請してお
つた模樣
でありますが、
アメリカ
は四億六千三百万ドルという借款を
議会
で可決いたしまして、これを中國の
援助
のために充てることにな
つたの
でありますが、
國民政府
としては目下最も必要なのは、
アメリカ政府
の
軍事的援助
でありまして、この
軍事的援助
については
アメリカ
の
トルーマン大統領
もこれを行わないということは
言つて
おらないのでありまして、その
可能性
は示しているのでありますが、この四億六千万ドルの借款の場合においても、
経済援助
ということだけを
言つて
いるのでありまして、中國としてはなお一層の
援助
を得るために努力をしておるのではないかというふうに傳えられてるのであります。 なお
アメリカ
におきましては、御
承知
のように
ボゴタ
におきまして三月
以來汎米会議
が開かれてお
つたの
でありますが、時を同じくして
ボゴタ
におきまして暴動が起りましたために、この
会議
が一時中絶されまして、四月の十四日からもう一遍この
会議
が再開されたのであります。議題の一番おもな問題でありましたラテン・
アメリカ
に対する
経済援助
問題につきましては、結局今年の末ごろにブエノス・アイレスで
経済会議
を開催して細目の討議を行う、今回の
会議
では單に基本的の問題の審議に止めるということで
終つたよう
であります。そのほか
米州機構憲章
というものの採択が行われたのでありますが、從來の
汎米連合
というものを再組織しまして、
國際連合憲章
のわく内における西半球の
地域的機構
の確立ということを目的とした一つのチヤーターが採択された
模樣
であります。 大体去る一月
以來
の
國際情勢
のおもなる問題はこの程度でありまして、まだこまかい点は多々ございますが、これは省略いたしまして、最後に対日
講和條
約の問題はどうな
つて
いるかということを簡單に申し上げたいと思います。対日
講和條
約の問題は、一月に本
委員会
で御説明申し上げました
通り
に、手続上の問題のために
連合國
側で意見が一致しない、その上に対独
講和條
約の問題が昨年末の
ロンドン会議
で決裂してしまいまして、それ
以來
公に
連合國
側の
交渉
の材料になることはなく、今日に及んで
しまつたの
であります。その間に
米國
の対日経済自立を
援助
するという
政策
が着々実行されてまい
つた
ことは、御説明するまでもなく御
承知
の
通り
でありまして、これが対日講和が遅れている一面を現わしているものであるという印象をもたれてお
つたの
でありますが、最近二、三この対日
講和條
約問題が取上げられた例がありまして、その第一は中國であります。中國におきましては、四月中旬に、
國民大会
が対日講和に対する
政府
への勧告というものを決議して、
政府
に建言いたしたのでありますが、中國としてはやはり從來
通り
、
アメリカ
、
ソヴイエト
、
イギリス
中國の四大國が拒否権をも
つた
講和
会議
でなければいかぬという、この方式を堅持する。また講和
会議
の
会議
地としては中國でやるべきである、こういうことを主張しておるのでありますが、その他に條約の内容といたしまして、天皇制を廃止する、工業水準を一九二八年から三〇年くらいに止めておく、賠償の総額の五〇%は中國がもらうべきだ、また今後五十箇年間日本を連合軍が管理すべきだ、また
連合國
側はこの
講和條
約をつく
つた
、後に條約実施の保証を相当嚴重にと
つて
おかなくてはならぬ、こういうようなことを
國民大会
の外交
委員会
が採択し、同時に
國民大会
もこれを採択し、
政府
に建言したのでありますが、
政府
当局の方はまたこれは別でありまして、四月十四日に王外交部長はその外交演説におきまして、日本の軍國主義再興に対する一つの防止の保証があれば、今日
アメリカ
が
行つて
いる対日経済
復興
政策
に反対しない、こういうことを声明しておりますし、また
アメリカ
の
政策
に対しまして、その他の
國民政府
首脳部の態度も協調的に
なつ
たということが傳えられているのであります。また昨年の末に
蒋介石
氏も、日本に対して行き過ぎた
警戒心
をもつことは不可であるということを訓戒しているのでありまして、最近の中國と
ソヴイエト
の
関係
、
國民政府
と
中共軍
の
関係
というものから、中國の
アメリカ
に対する接近の空氣が濃くな
つて
いるということが傳えられておりますために、
政府
当局の対日態度と申しますか、
アメリカ
の対日経済
政策
に対する批判の態度ないし
講和條
約に対する態度というものも、
國民大会
で決議されたようなこういうものとは、また別の方向に向
つて
いるというふうに思われるのであります。また
イギリス
では先月の十二日に
議会
におきまして、一体対日
講和條
約はどうな
つて
いるのかという質問が出まして、
イギリス
の外務次官は、日本との
講和條
約の問題については、一切の問題について英連邦の各國間で緊密な連絡をと
つて
いる、また
アメリカ
とも緊密な連絡をと
つて
いるのだが、今日のところ、日本の武装解除、非軍事化というものは満足すべき状態にあると思うというようなことを答弁しているのであります。それから濠州におきましては、
外務大臣
のエヴアツト氏は最近下院におきまして、大國間の一般的な危惧が除去されたならば、日本との早い講和ということも適当であろうが、ただまだ十分信用のおけないうちにあまり早く日本の再武装を行わせるようなことを
アメリカ
当局が考えていたならば、これは濠州にと
つて
重大問題だ。日本は東洋の経済的な工場になる権利は與えられても、兵器廠になるような権利は許してはいかぬというような非常に警告的な演説をしておりますし、また
講和條
約の内容についても、日本の生活水準は日本が侵略して荒した太平洋諸國の水準より高くてはいかぬというようなことを述べておる
模樣
であります。最近
ヨーロツパ
連合の討議のために
ロンドン
で
会議
が行われておりますが、その
会議
の後に引続いて対日講和の問題について非公式に話合わなければならぬということが外電等に傳えられておるのでありますが、これも未だ
はつきり
したことはわか
つて
おらないのでありまして、その他においては日本の
講和條
約締結が促進されるというような氣運は今日のところ見受けられない、こういう状況であります。はなはだ簡單でございましたが、一應御説明といたします。
馬場秀夫
3
○馬場
委員
ちよ
つとお伺いしますが、
米ソ
貿易の何か数字がわか
つて
おりましたら……。
與謝野秀
4
○
與謝野政府委員
今日係官を連れてまい
つて
おらないものですから、数字をも
つて
まい
つて
おらないのです。高野事務官は別の問題で出席しております。
馬場秀夫
5
○馬場
委員
数字でなくて、最近の傾向はどうですか、あまり政治の方ばかりでなくて、
米ソ
貿易の問題について……。
與謝野秀
6
○
與謝野政府委員
統計をも
つて
この次の機会に
説明
いたします。
安東義良
7
○
安東委員長
では特に御質問がございませんでしたならば
請願
に移りたいと思います。 —————————————
安東義良
8
○
安東委員長
ソ連領
からの
復員促進
に関する
請願
、第一九一号、
在外
同
胞引揚促進
の
請願
、第四五六号、前者は
紹介
議員は
小川原政
信君、後者は
並木芳雄
君でありますが、いずれも今までこの
委員会
で審議いたしました
請願
と同趣旨のものでありますから、内容は省かせていただきたいと思います。ただ今までわれわれの
委員会
におきまして、これらの
請願
を採択し、
政府
側におきましても十分
努力
をいたされたにかかわらず、最近の報道によりますと、
ソ連
地区にはなお六十九万二千余名、
中共軍
の支配下の満州において六万五千余名の
在外
同胞があるということははなはだ遺憾にたえない次第でありまして、われわれはさらに
努力
を新たにしてこれらの同胞の帰還を一日も速かならしめるようにいたしたいと存じます。 なおこれに関連いたしまして、同じ趣旨の陳情が出ております。陳情第八一号、第九二号、第二〇六号、二四四号、二五八号がそれであります。これらのものはいずれも採択するに御異議ありませんか。
安東義良
9
○
安東委員長
つきましては、これらに関連いたしまして、最近の
情勢
について
政府
当局の
説明
を聽取いたしたいと思います。
説明
員外務省引揚課長高野藤吉君。
高野藤吉
10
○高野
説明
員
ソ連領
からの引揚問題について最近の経緯を
簡單
に御
説明
申し上げたいと思います。 先刻來御
承知
の
通り
、
ソ連領
からの引揚げは昨年の十一月から中断されまして、大体四月一日から再開される予定でございましたが、四月に入りましても、
ソ連
から何らの通報がまい
つて
おりませず、四月一ぱいは結局再開の運びに至りませんでした。それで五月から再開されるという通報が四月十二日にまいりました。遅れた理由といたしましては、氣候の状況及び技術的な問題によ
つて
一月遅れ、五月から再開されるという通報がございまして、御
承知
の
通り
、五月から樺太及びシベリア地区からそれぞれ現在引揚げ続行中でございます。その間
政府
側といたしまして、司令部に折衝連絡いたしまして、早く引揚げが開始されるように連絡してお
つたの
ですが、逐に一月遅れた次第でございました。現在におきましては、御
承知
の
通り
、五月中の引揚予定は四万五千五百、六月中の配船の予定はまだついておりませんが、大体
米ソ
協定に基き五万ずつの人員はずつと引揚げてくるものと思
つて
おります。しかし
政府
側といたしましても、また司令部側といたしましても、五万では、現在残
つて
いるシベリア及び樺太地区の総計約七十万の人員を本年一ぱいに引揚げを完了することはできないということで、その毎月の引揚人員の増加について
努力
いたしております。御案内の
通り
、昨年十一月シーボルト
議長
が対日
理事
会で提案をいたしました。しかしこれに対してはソ側からは何らの回答もございません。また一週間ばかり前、新聞ですでに御案内かと存じますが、十四日に司令部の引揚係のアンダーソン中佐が内外の新聞記者を集めまして、プレス・コンフアランスをいたしまして、その際に
アメリカ
司令部側の態度といたしまして、こちら側には昨年シーボルト
議長
が提案した
通り
、現在月に十六万だけ返す準備がいつでもある、これに対してソ側と折衝しているが、なかなからちがあかないというようなプレス、コンフアランスがございました。日本
政府
といたしましても、今後ともこの毎月の五万の割当をもつと殖やすように、そして少くとも本年一ぱいには全部
ソ連
地区の引揚げを完了いたしたいと始終
努力
し、また司令部にお願いしていきたいと存じている次第であります。以上
簡單
でございますが、大体の概要を御報告申し上げます。
安東義良
11
○
安東委員長
同じく
説明
の
厚生事務官
引揚援護院の高木玄君。
高木玄
12
○高木
説明
員 引揚者の援護の状況につきまして概略御
説明
申し上げます。 引揚者が引揚船によりまして港にはい
つて
きまして、上陸してから一應の落着先に帰られるまでの援護を應急援護、引揚者がそれぞれの家に帰られましてからのいろいろなおせわを定着援護とわけて呼んでおりますが、まず應急援護の概要について
簡單
申にし上げます。 現在引揚者を受ける港に地方引揚援護局という役所ができております。御
承知
の
通り
、樺太からの引揚者は函館の援護局、シベリアの引揚者は舞鶴の援護局、大陸の方面は佐世保の援護局に現在それぞれはい
つて
おります。援護局にはいられますと、まず最初に檢疫処置を済ませまして、檢疫処置の済んだ引揚者は一應宿舎に落着いていただきます。檢疫処置の中には全員に対してばい毒檢診、結核檢診を実施しております。その際ばい毒なり結核なり相当注意ずべき状況でありましたならば、すぐさま注意しまして檢疫病院に收容するなり、あるいはそこで全治しない方はもよりの國立病院、療養所に移して全治するまでおせわしております。そのほか帰郷するまで差支えのないような病人、軽症患者でございましたら、局内の病院に入れまして治療を加え、重症患者でございましたら、これもやはり國立病院、國立療養所に送
つて
全治するまでおせわをしております。收容所にはい
つた
引揚者には、いろいろな援護の手続が加えられますが、まず引揚者は、殊に終戰後三年経ちました今日、非常に惨めな状況で帰
つて
こられ、今回の引揚げにおきましても、シベリアの引揚者はもうほとんど無一物、小さなふろしきを
一つ
というような状況で帰
つて
きておられます。とりあえず全部の方々に帽子からくつに至るまで、新品の被服類を二十点ばかり給與しております。舞鶴の援護局におきましては、上陸されましてから、すぐ引揚者をおふろに入れまして、その際向うから着てきた被服類を全部脱がして、ふろから出てくる者をふんどしから洋服、帽子、全部新品にその場で着かえていただくようにしております、そのほか嗜好品、菓子、タバコの類を支給いたしております。それから持帰り金の交換、持帰り金の全然ない方には、應急援護金として、とりあえず帰郷なされるまでの帰郷雜費といたしまして、一人当り四百五十円支給いたしております。そのほか局内にあります間、引揚証明書の交付とか、あるいは軍人でありましたら復員手続とか、その他所要の手続をしていただきます。とりあえずお家の方に無事に帰
つた
という知らせをされるために、三十字まで至急電報が無料で打てるようにしてあります。理髪についても相当額國費で補助して、非常に廉價に全員が理髪できるような設備もできております。こういうふうにいたしまして、一應向うから非常に汚れた服で惨めな状況で帰
つて
こられた引揚者がある
程度
こざつぱりした状況にな
つて
お帰りになることができるように、できるだけのおせわをしております。お帰りになるときは無賃乘車券を渡しまして、それぞれ行先まで無賃でお帰りになられるようにせわしております。そのほか列車内では特別に医療班を組織いたしまして、もし列車内で急病人が出た場合には應急の措置を講ずる手配を進めております。主要駅には、たとえば青森駅だとか、東舞鶴駅あるいは東京の上野駅、こうい
つた
所には主要駅援護と申しまして、引揚げた方々が休憩なさる場所とか、いろいろ相談案内する場所を設けてありまして、またお茶とか粉みそをここには特別に配りまして、引揚者がお休みの間いろいろおねぎらいするようにしてあります。こうして引揚者がそれぞれ郷里に帰られるわけでありますが、何と申しましても無一物で永年内地から遮断されてお
つたの
でほとんど内地に何ら縁故もないし、また起ち上るための手掛りになるものもないという非常に惨めな状況でありますので、私どももといたしましてもできるだけ手厚い援護をやりまして一刻も早く再起していただくようにや
つて
おります。現在引揚援護院で特に定着援護と銘う
つて
や
つて
おりますことは生業資金の貸付、これは昨年の九日から実施してまいりまして、今日まで約十八億円に近い國費が出ております。これは庶民金庫を通じて貸出すのでありまして、一人当り七千円の割当で貸しております。引揚者は多年海外におりまして異邦人の間に伍して生活してこられたので、多くが生活力と申しますか、知識、経験、技能をも
つて
おられ、本來的の意味での生活困窮者でなく、境遇の激変によ
つて
たまたま身を落したという人たちでございますから、再起のためのきつかけさえ與えれば十分に起ち上る能力があるのでありまして、この生業資金が引揚者援護の核心だと私ども考えております。このほか最近
復興
金融全庫の方から特別融資一億円に限
つて
引揚者に貸出すような措置も講じてあります。それから引揚げた方々がとりあえずのいろいろな家財道具に困らぬように、應急家財、なべ、かまとい
つた
厨房用品を五百円の範囲内で無償で差上げております。何と申しましても引揚者は非常に惨めなものでございますが、一般困窮者というわく内での援護でございますので、非常に至らぬ点があるのははなはだ遺憾でありますが、一般困窮者援護のわく内でもできるだけ引揚者の実情に應ずるよう実施の面において手心を加えるように
努力
しております。 最近問題にな
つて
おります事項を申し上げますと、今度樺太から引揚げてこられた第一船の千歳丸がこの五日に入港したのでありますが、無縁故者が非常に多いのであります。
從來
樺太方面の引揚げに非常に無縁故者が多いので、昨年とりあえず三万人分の無縁故者の收容
施設
を北海道、東北六縣にいたしましたが、そのときは大体それまでの状況では樺太引揚げの一六・五%が無縁故者であるという計算で三万人分を準備しておりまして、今度の引揚げが始まります前に一万五千人分余裕がありまして、引揚げの無縁故率がこの
程度
であ
つた
ら大丈夫であろうと思
つて
おりましたが、第一船の千歳丸では最初八〇%の無縁故者があると傳えられて私ども愕然としたのでありますが、その後判明したところでは正確には四一%の無縁故者であります。千歳丸は農業に從事してお
つた
方ばかりでございまして、明治の時代に向うへ
行つて
すでに向うで二世、三世というような、ほとんど内地の縁の切れていた人たちで、殊にそうい
つた
事情で無縁故者が多か
つたの
ではないかと思
つて
おりましたが、第二船の白龍丸、続いてはいりました新興丸もやはり三〇%上まわる無縁故率であります。そこでただいまこれらの無縁故者の收容
施設
の設置について緊急に対策を立てまして、
関係
方面と折衝をいたしております。これがただいまの引揚援護についての当面の非常に大きな問題として、私どもが
努力
いたしておることでございます。はなはだ
簡單
でございますが、大体以上申し上げた
通り
であります。
馬場秀夫
13
○馬場
委員
二点お尋ねしたいと思います。
一つ
は、二冬を越しておるので大体身体が慣れておると思うのですが、昨年の引揚者に比較して、今度の引揚者はわずかですからわかりませんでしようが、今までに引揚げた方々の身体、あるいは残
つて
いる人の状況がおわかりになるかどうか。 もう
一つ
は、今帰
つて
きている人はどういう順序で帰
つて
きているか、
ちよ
つとぐあいが惡いかもしれませんが、何かヒントがあ
つた
らお聽かせ願いたいと思います。
高野藤吉
14
○高野
説明
員 第一の問題につきましては、私は函館に第一船を迎えに参りましたが、樺太方面の引揚者は今高木
説明
員から話があ
つた
ように、農民が多うございまして、農民はその職業の
性質
上、ほかの労働者とか、都会人に比較して終戰後あまり居を轉々とかえませんで、元
通り
におります。と同時に食糧もほかの職業と違
つて
惠まれておりまして、非常に健康
状態
、栄養
状態
は良好に見受けられました。農民以外におきましても、シベリアから引揚げてきた人の話を聽きますと、初めの年はいろいろ設備が不十分で、向うも慣れなか
つたの
で、食糧
状態
は惡か
つたの
でございますが、傾向的に漸次向うの設備がよくなり、組織が整
つて
まいりまして、非常に食糧はよくな
つて
いるように見えます。もちろん都市と辺鄙な土地、または寒い所とかいう地方的な差はございますが、傾向的にはそうであろうかと思います。殊に昨年末切符制度の廃止
以來
、物が出まわ
つた
関係
上、これも收容所にある
程度
響いていると一引揚者は
言つて
おりまして、だんだんよくな
つて
いるというふうに感知しております。 それから第二点の引揚げの標準と申しますか、順序と申しますか、これも
ちよ
つと機徴の点があると思います。また推測の
程度
で、
はつきり
いたしませんが、樺太地区におきましては、大体残
つて
おる者は労働力の利用できる者、または技術的に利用できる者が多く残されており、またそういう者が最後まで残るのではないか。帰る者は病人とか、老人とか、働き手がない女世帶とか、または家族ばかり多くて働き手が一人しかいないというような者が先に帰されているように見受けられます。それからシベリア地区でも、これは概括的には申されないが、やはり最近帰
つて
きた人の話を聽きますと、弱い者とか、年取
つた
者が多くて、ピンピンしている者、非常によく働ける者はあとまわしにな
つて
いると
自分
は思う、と
言つて
おりますが、大体そういうような傾向ではないかと考えております。
高木玄
15
○高木
説明
員 ただいまのお尋ねにつきましてお答えいたします。まず健康状況でございますが、引揚援護院に今までにはい
つて
おります情報では、今度の引揚げは樺太もシベリアも、ともに昨年までに比べて健康状況は非常にいいということにな
つて
おります。これはどういう理由か、
はつきり
しませんが、おそらくただいま高野
説明
員から話がありました
通り
、現地の状況が漸次好轉してきている証拠ではないかと見ております。 それから引揚げの順序でございますが、私どもただいま、この一箇月ないし、二箇月間、樺太引揚者全員につきまして特別に調査表を配
つて
、現地の残留者の生活状況、それから引揚見込みを調べる仕事を進めておりますので、その結果が出てきましたら
はつきり
すると思いますが、私どもの考えるところでは、
一つ
には樺太あたりでは向うの労力
政策
といいますか、向うで代替があ
つて
補充がきくようにな
つて
から漸次帰す。今度の集團的に引揚げてきました農業從事者の例を見ましても、コルホーズ農園に新しく
ソ連
から人がはい
つて
きて、向うからはみ出て帰
つて
きたという状況にな
つて
おりますので、樺太のように産業の割に労働力の少いところでは、そうい
つた
労力の点から必要不可欠の人は帰るのが遅くなるのではないか、代替がつき次第順序帰
つて
くるようになるのではないかと思
つて
おります。
仲内憲治
16
○仲内
委員
実は同じような質問をいたしたいと思
つて
お
つたの
ですが、最近の引揚者の談話として先日の新聞に報道されたのですが、シベリア方面に七十万残
つて
いるというお話だが、どう考えてもそうはいようがない、三十万ぐらいの犠牲者が出ているのではないかということが、一引揚者の談話として出ておりました。もちろんこれは権威のある報告とは言えないでありましようが、もしもこういうことが事実であるということでありますれば、
関係
者としても、國民としても非常に憂慮しなければならない問題であると思います。何かそういう話について特に調査せられ、あるいはその結果でもおわかりにな
つて
おることがあればお伺いいたしたいと思います。
高野藤吉
17
○高野
説明
員 今の御質問の記事は私も
ちよ
つと読みましたが、あの引揚者の数字の考え方は何か誤解があるようで、約六十九万ですが、
簡單
に七十万といたしまして、これは樺太とシベリアと両方含めてで、シベリア地区に四十九万、樺太に二十万であります。あの引揚者は、
自分
はシベリアには三十九万内外しかいないと
言つて
おりますが、大体四十九万として差が十万、その中には樺太の二十万を頭に入れてないから二十万余計におるわけであります。損耗率は、これはこの間アンダーソン中佐も申しておりましたが、推測であ
つて
、何ら正式なインフオーメーシヨンはございませんから、ここでいたずらに推測するのはどうかと思います。
花月純誠
18
○
花月
委員
ただいまの御
説明
でわかりました。
政府
の御
努力
に感謝いたしたいと思います。最近私どもの手もとに抑留されておる軍人の親からでありますが、
議会
は一体引揚げに対して何もやらぬのはどういうわけですかという手紙が來ておるのであります。それでわれわれに、もつと打つべき手があるのか。もつと熱意を示すと何とかできるのか。あるいは國民の
輿論
でも起すと非常に効果があるのか。それを伺いたい。そういうことをやらぬからできぬのならば、それをやらなければならぬと思います。 それから
政府
が連合軍の方へいろいろ連絡してくださ
つて
おりますが、連合軍の方に
交渉
せられるほかに、
政府
としていろいろや
つて
おるとおつしやいますが、どういうことをや
つて
おられるのか。 それからもう
一つ
、先般シベリアから引揚げてきた者から私ども報告を受けたのでありますが、これは極端なのでありまして、
簡單
に言いますと三分の二は死んでおるというのであります。私どもはそれを信用いたしておりませんけれども、引揚げて帰
つた
人の話を聽きますと、かなり非惨なことを申す人と、割合に樂だ
つた
ようなことを申す人がありますが、その辺が
政府
においておわかりにな
つて
おりますならば、一体どれを信用したらいいか、またどういう状況であるかということをお話願いたいと思います。一体どをれ信用したらいいか、またどういう状況であるかということをお話願いたいと思います。われわれは直接引揚げた人にいろいろ聽いたのでありますが、全部を信用しなくても、見てきた人の
説明
であれば一應重要な参考にしなければならぬ。それは非常に極端な
説明
をする人がありますので、その辺をおわかりにな
つて
おる点だけをお話願いたいと思います。
安東義良
19
○
安東委員長
ただいまの
花月
委員
の御質問中、初めの点でありますが、本問題に関する
議会
の活動につきましては、御
承知
の
通り
、衆議院としては、先ほども問題になりましたように、引揚げに関する
請願
は当
委員会
においてやり、
在外
同胞引揚げの特別
委員会
もあ
つて
、特に國内方面の援護問題について力を注いでおられるという状況であります。そしてやはりこの
委員会
を通じて國民の意思というものが、
議会
の本
議会
の採沢と相ま
つて
、
政府
にも、あるいはまたG・H・Qの方にも傳えられておるわけであります。國民の意思それ自身は
議会
を通じて表明せられておるのであります。 なおまだ國民的運動といたしましては、御
承知
の
通り
幾多の会合が行われておるということでありまするが、遺憾ながら未だ十分の実効があが
つて
いないというところに、われわれの非常に遺憾とするところがあるわけであります。なおその他の問題につきましては
政府
委員
から御答弁をしていただきたいと思います。
高野藤吉
20
○高野
説明
員 引揚促進に関して、
政府
として、司令部を通ずる以外に何かや
つて
おるかというような御質問だ
つた
と了解いたしましたが、御
承知
の
通り
、現在日本
政府
としては、司令部を通ずる以外に、日本における外國
政府
の代表とは
交渉
できないものでございまして、すべて司令部を通じて連絡いたしておる次第であります。ただそれ以外に、
政府
といたしましては、各引揚者團体からの司令部あての陳情、
請願
等のお取次ぎ、その他あらゆる面についていろいろお援けをしているということでございまして、本筋の引揚促進は、すべて司令部を通じてなされておるのでございます。 それから第二のシベリアにおける実際の状況はどうかということは、これは各個人の体驗で非常にまちまちでございまして、非常に非惨なことを言う人もいるし、また非常にのんきだ
つた
という人もおるようでございまして、それはどちらもほんとうであろうと思います。ただ個人の体驗または感情、ないしその土地、相手の係官なんかでいろいろの感情問題も加わ
つて
いるのじやないかと思いますので、概括的にい
つて
どういうふうに申し上げたらよろしいですか、
ちよ
つと困難でございますが、千差万別である。しかし先ほど申し上げたように漸次食糧も待遇も整備されてきているということは事実のようでございます。それから死亡率につきましても、先ほど申し上げたように推測を申し上げてはかえ
つて
いろいろ障害があるのじやないか、あらゆる方面で
ちよ
つとまずいことがあるのじやないかと思いますから、單なる推測はこういう席上では申し上げない方がいいのじやないかと私は思
つて
おります。
山下春江
21
○山下(春)
委員
ただいまの
花月
さんの世論を喚起したらどうかというような御意見でございましたが、それについての関連したことを
ちよ
つと申し上げたいと思います。昨年の十月私どもが引揚促進の歎願に対日
理事
会議
長のシーボルト氏の所に参りましたときに、シーボルト氏が、
アメリカ側
としては何ら法律上の権利はないけれども、人道上の問題としていくたびかこの
交渉
はしている、從
つて
今後においてなすべき手は、ただ日本の國民の方々がどうぞ
輿論
を喚起してなお熱心にこの運動を続けていただきたい。そういうことを申されておりました。從
つて
輿論
を喚起しながら私どもはどこまでも
努力
しなければならないと思
つて
おります。 それからもう
一つ
は、先ほど無縁故者に対しての
施設
が約三万人くらいを予定しておりましたが、続々着く船を見ますと、大体この無縁故者の数が予定していたよりも多い、從
つて
その
施設
を早く完備しなければならないというようなお話でありますが、ぜひとも早くその
施設
を完備していただきたいと思います。と申しますのは、私がこのごろ農村をまわ
つて
見ますと、いわゆる集團こじきというものが農村を非常に脅かしているそうです。そうしてその人たちの身元を調べてみますと、大抵引揚者で、相当のインテリも多いそうです。あるいは外語を出た人とか、あるいは高等学校を出た人で、しかも縁故のない人たちが集團こじきにな
つて
いるというようなことを聞いておりますので、一刻も早くそういうような設備を整えていただきたいということを要望いたしておきます。
佐々木盛雄
22
○佐々木(盛)
委員
関連した問題でありますが、最近新聞で、引揚の出迎えに
共産党
の諸君が出かけていきまして、いろいろ問題を起しておるようなことを聞くのでありますが、それらのことに関しまして何か情報とか詳しい眞相がわかりましたら承りたいと思います。
高野藤吉
23
○高野
説明
員 私詳細なことは関知しておりませんが、品川駅、あるいは最近では沼津あたりで、学生
同盟
と
共産党員
の衝突
事件
があ
つた
ということが新聞にも報道されております。現在では、そういう不祥事をなくすために、大体品川駅、上野駅も一切駅員が出迎えを入れないようにしておるようでござでますので、そういう問題は今後なくなると思います。学生
同盟
の諸君は沼津あたりから引揚列車に乘りこんで、ずつと上野駅までその間のいろいろなおせわに当
つて
おられるようでありまして、こうい
つた
引揚者、殊に長年外地におりました引揚者を迎えるという國民的なこうい
つた
感激に滿ちた問題を、政治的な問題といいますか、そうい
つた
偏
つた
方向
にも
つて
いくというのはよくないことと思いますが、とにかく最近では、引揚列車に対して上野駅、品川駅では出迎えを入れておりませんので、この問題は今後なくなるだろうと思います。
安東義良
24
○
安東委員長
それでは、大体御質問も盡きたと思いますから、これをも
つて
散会いたしたいと思いますが、次会は木曜日午前十時から南方ポンド地域との貿易問題並びに貿易手続の簡素化の問題を主として議題に供したいと思います。これをも
つて
散会いたします。 午前十一時五十一分散会 ————◇—————