○岡林
説明員 私、
復員局の業務部長であります。ただいま
委員長からお尋ねになりました点につきまして
お答えをいたします。
まず最初に
戰歿者の
措置がどう
なつておるか。すなわち
処遇の問題でありますが、ただいまお手もとにお配りしました資料、これは早急の間に整えましたので、
内容は不十分でありますが、それの二枚目の紙を
ちよつと見ていただきます。表題は上の方に積に公務災害時の旧
軍人軍属に対する補償と他の補償との比較一覧表というものがございます。それから一番左の
部分を見ていただきます。公務死亡の補償、公務上の不具癈疾の補償、公務傷病の療養補償、これが現在の旧
軍人軍属に対する
処遇であります。それを見ていただきますと、旧
軍人軍属に対しましては、現在遺骨埋葬費の三百十円というものが支給せられておるだけであります。その左の官吏、次に嘱託、雇員、傭人、工員、次は一般の
労働者、それからその下の方が一般人というふうにわけまして、これと比較対照いたしますと官吏は
恩給法というものがございます。それに対しましては旧軍属の中の判任文官の大
部分の者は一般の
恩給法の適用を受けます。傭人等はやはり雇員扶助令、傭人扶助令というものによ
つて遺族扶助料を受けます。それから
労働者の方は前には厚生年金保險法というものによ
つて遺族年金を出しておりました。以上によりました官吏、雇傭員、
労働者の
関係は、今後は昨年九月一日以後の者については
労働基準法によ
つて遺族補償及び葬祭料が受けられることに
なつております。ただ一般人の方には何にもないわけでありますが、これは生活困窮者に対しては生活保護法の適用があるという
改正になりました。総じて言いますと、
軍人軍属、殊に元の軍人一般が大体対象に
なつております。これを表わした表でございます。
戰歿者の
処遇につきましては、
恩給の廃止の
指令がございまして、扶助料がいただけなくな
つたのでありますが、一昨年厚生年金保險法の遺族年金というものを何とか差上げられるようにできないかというので研究いたしましたが、遂に
連合軍側の御了解を得ることができませんのでさたやみとなりました。結局現在
通り遺骨埋葬費の三百十円をいただけるだけでございます。
次の御
質問は
傷病恩給を現在受けている者の数及ば將來の見込数はどうかという問題でございますが、現在受けておる者の数につきましては、これは
恩給局の方で
調査をしていただきませんと、はつきりした
数字は私の方としてはつかめませんから、大体の私の観察を申し上げます。明治以來の
傷病者で
傷病恩給を現に受けている者は大体五万余ではないかと考えております。
恩給には年金の者と一時金の者とがありますが、この五万の者は現在年金を受けている者でありまして、そのほかに過去においてすでに一時金をもらつた
傷病者は二十八万余あるのでありまして、それを合せますと三十四万ぐらいの人員になります。それの金額を申しますと、結局現在もなお年金を引続いてもら
つている約五万五千ぐらいの者に対する金額でありますが、これは大体年に二千五百万円ぐらいいただいているのではないかと考えております。
次は今後の
見込みであります。これはいろいろ不明不定な因子がありますので、はつきりした
数字はつかめませんが、いろいろの資料等から臆測をいたしますと、陸海軍を合わせて大体五万人余あるのではないか。その五万人の中で年金をいただく
程度の者はどれくらいあるかと判断をいたしますと、まず二万人ぐらいで、
あと三万人ぐらいは一時金をいただく
程度のものではないかと判断をしております。この五万人の主力は今後復員を予想せられる。殊にソヴイエト
方面から帰
つてこられる者であります。そのほかに現在すでに郷里に帰
つておる者の中でも、
恩給を請求しない者が現在相等数残
つておるようであります。それはなぜかと申しますと、軍人の
恩給は廃止にな
つたのだ。
從つてもう
傷病恩給もないのだというような考えをも
つておる者、それからもう一つは、
恩給のあることは知
つておるけれ
ども、現在のような
傷病恩給のきわめて低いものを、わざわざめんどうな手続までして、金まで使
つて手続する必要はない。こう考えるものと二
通りあるようでありまして、これが相等数残
つております。いわゆる潜在受
恩給者と申しますか、そういう者を合わせました者が
相当多いようであります。そこでこれの金額はどれくらいになるかと想像しますと、年金
関係のものにつきましては大体一千万円くらいではないか。
從つて現在過去のもので現に年金を受取
つておる者が年に二千五百万円、今後の予想が約一千万円、計三千五百万円というものが、年金
関係の今後の金額ということになると考えております。そのほかに一時金をもろう者が、三万人くらいおると予想されるのであります。これが大体ただいま御
質問に対する御答弁であります。
その次は
傷病恩給の
指令の
内容という点に触れて申し上げます。これはただいま差上げました資料の中の、旧軍人の
傷病恩給増額問題研究資料の初めの一に書いてありますように、「旧
軍人軍属に対しては
昭和二十年十一月二十四百附
連合軍指令、「
恩給年金及利得に関する覚書」に基き、」これが基礎であります。
昭和二十一年二月一日の勅令第六十八号というものが制定されて、現在の
傷病恩給ができておるのであります。その
指令の
内容はどういうものか。その抜萃を次に書いてございます。それは次のような
恩給とか、あるいは利得を支給することを停止するというので、その中に(イ)として「軍隊勤務の理由によるもの」それの
恩給利得が停止に
なつております。「右は離職退職
手当金又は同種の賞與若くは
手当を含む」「但し」とその次に但書があります。「但し受給者の勤労能力を制限する肉体的不具癈疾に対する補償金は軍部以外の勤務により生じたる同
程度の肉体的不具癈疾に対する最低補償を越えざる率にて支給することを得」すなわち公務に基因しております不具癈疾者、
軍人軍属の不具癈疾者、それに対する補償はそれ以外のやはり勤務に基因をする不具癈疾者の受ける補償等の、最低補償を超えない
程度でや
つてよろしいということであります。それを先ほどの表について見ていただきますと、眞中の欄がそうであります。公務上の不具癈疾の補償としまして、旧
軍人軍属、これは勅令第六十八号の
傷病恩給を受けております。そうするとそれの対象となります官吏、雇傭人、
労働者、あるいは一般人という区分について申しますと、官吏は
恩給法による
傷病恩給を受ける。これはもちろん
軍人軍属などとは
程度は違います。雇傭人は雇傭人扶助令により障害扶助料を受けております。
労働者は厚生年金保險法の障害年金、傷害保險を受けております。そのうちで旧
軍人軍属の中の判任文官は、一般の官吏同様に
恩給法の適用を受けております。これはまつたく同様であります。それから雇傭人は
恩給を受ける資格がありませんので、雇傭人扶助令によ
つて扶助を受けております。それから旧軍人及び高等文官は、何に基礎をおいたかと申しますと、厚生年金はすなわち
労働者に対する厚生年金保險法のうちの、業務上で障害を受けた場合の年金、あるいは保險
手当金を対象として、
傷病恩給というものができたわけであります。そのことが逐次先ほどの御
質問の中の
傷病恩給の
内容という点に触れてまいります。これらの研究資料の中の二にそのことが書いてあります。二は細部の
説明は省略しますが、今申しましたように、勅令第六十八号、すなわち現在の
傷病恩給は前述の軍部以外の勤務上の障害補償を対象といたしまして、その当時すなわち一昨年の二月一日当時の厚生年金保險法という、保險の中の業務上の障害保險を基礎として定められております。その
関係は左表の
通りでありまして、
恩給額計算基礎の方法につきましては、厚生年金保險法は標準報酬引額というものがありまして、これが大体三十円から六百円の間に
なつております。それから旧軍人の方は仮定俸給というものがありまして、それぞれ兵から大將までの階級に分けて、本表のごとくにこしらえてあります。それから障害の
程度に應ずる乘月数というのが(2)に書いてありますが、これは両眼がつぶれたというような一番重い
程度の傷病、これが厚生年金保險法の方では第一級となり、
傷病恩給の方では特別項傷となりますが、それは八箇月であります。すなわち八箇月分とその前の基礎俸給とかけ合わせたものが、
恩給額の年額ということになります。
この表でごらんの
通りに、ほとんど厚生年金保險法と
傷病恩給の今のかける月数は同じであります。ではどうして同じであるのに
傷病恩給が少いかと申しますと、基礎の俸給が少いということに大体帰着するわけであります。
現在の
労働基準法によります災害補償法は、すべて
平均賃金を基礎としておりまして、
平均賃金は最近三箇月の間における実際の報酬の
平均額ということに
なつてまいります。現在の報酬月額というものは、厚生年金保險法の三十円から六百円という月額、あるいは兵の仮定俸給の八十円から五百円というものに対しては、まつたく比べものにならないというところに、大きな差異があるわけであります。そこで今の紙を開けていただきますと、次の紙に註として一例を書いておきましたが、
労働基準法による災害補償は、
平均賃金が現在の実報酬と
なつているから補償額は高額である。たとえば
平均賃金三十円、すなわち月收にすれば千五百円の
労働者が、業務上の災害で両眼盲に
なつた場合の障害補償額は一時拂いならば四万二百円、これを六箇年の分割拂いにいたしますと、年に七万二千円を受けられますけれ
ども、元兵の両眼盲の場合は年に六百四十円、現状はそうであります。これだけの違いがあるのであります。そこで
傷病恩給が非常に低額であるということにつきましては、それぞれの
関係方面で目下御檢討に
なつておるようでございます。四に書いてありますように、
傷病恩給の増額のためには、この決定の基準と
なつた厚生年金保險法の業務上の障害年金及び障害
手当を増額することが先行しなくてはならない。すなわち昨年八月三十一日以前、すなわち九月一日以後は、
労働基準法によりまして非常に高額な
手当が受けられますが、八月三十一日以前はそれが受けられないのでありますから、八月三十一日以前の業務上で障害を受けた
労働者及びその遺族に対して、現在支拂
つている低額の障害保險金を増額する必要がある。これができれば
傷病恩給の増額はそれに関連してできる可能性があると考えます。これは
恩給局の方もそういうお考えのように聞いております。そこでこの厚生年金法はどこがや
つておるかと申しますと、厚生省の保險局の方でや
つておるのでありまして、保險局の厚生年金課が主務のように承
つております。厚生年金課としてもこの厚学年金法の過去のものにさかのぼ
つての
改正という点について、ただいま御研究中のように聞いております。以上大体
傷病恩給の
関係につきましては私の方の答弁を終りたいと思います。
次の問題は、
終戰後の
傷病者の
処遇の問題をお尋ねであります。その点につきましては次の資料を見ていただきます。
終戰後のものも終戰前のものも、現在は同一に取扱
つておられると思います。すなわち死亡者につきましては、院族埋葬費の三百十円だけ。また
傷病者につきましては、治療費は原則として有料、また
傷病恩給は現在の低額の
傷病恩給をやるということに
なつております。そこでこれについてのいろいろ私
どもとして考えておりますことを御参考までにここで申し上げたいと思います。その第一は
連合軍の
指令、先ほど前の研究資料に書いてあります
指令でありますが、これは軍隊勤務の理由による者の
恩給が停止に
なつておるのであります。しかしながら
終戰後の軍人、軍属の状態を考えてみますと、なるほど軍人という身分は、殊にこの新憲法の施行まではも
つておる。また形も軍隊的の形を、向うの秩序維持の
関係あるいは
連合軍側の要求によ
つてそのままも
つております。しかしながらその勤務というものは、決して軍隊勤務ではないということははつきり言えると思います。
從つて終戰後の旧軍人、軍属の中で、死んだりあるいはけがしたり、病氣に
なつたものにつきましては、これの
恩給というものはこの
連合軍指令に直接
関係はないのではないか。すなわちこの
指令の対象外であるというようにも考えられるのであります。
次は向う側の抑留せられております間の勤務というものは、これは國家の再建あるいは生産の増強というような面から見ますと、直接的にこれに寄與はいたしておりませんけれ
ども、すべてこれは本人の自由意思からきたものではありません。また受けた災害、すなわち死んだりあるいはけがしたり、病氣に
なつたものにつきましても、これは本人としては不可抗力のものが大
部分であります。
從つてこれは勤務上の災害である、こう見てやるべきではないかと考えます。この点につきましては、現在の
傷病恩給が
傷病者に対して適用をせられております。特に
議会の方で
恩給局の方にいろいろ御要望に
なつた結果というように、私
どももありがたく感じておるのでありますが、すなわち
終戰後のこれらの
傷病者につきましては、公務起因、すなわちその原因は公務であるというように
恩給局としても認められて、公務
傷病恩給がわたるように
なつた次第でありますので、これは全般的に勤務上に起因をしておるということを
言つてもよいではないかと考えます。
それからこういう災害を受けた人に対する補償というものについて考えますと、將來あるいは講和
会議その他のときにおいて、損害賠償というような形式で取扱われるようになるかもしれませんけれ
ども、それはいつのことかわかりません。現に災害を受けた人は困る。またその家の遺族も現に困
つておるのであります。また思想的
方面から見ましても、いろいろと問題があるのではないかとも考えますので、國、
國民、
政府といたしましては、これをこのまま放
つておくということはまことに忍びないことではないかと考えるのであります。
次は身分的にこれを見ますと、軍人は新憲法施行まではあります。すなわち軍人としての公務員であります。また新憲法施行後においても、現在公務員の一つとして認められております。但し
恩給法というものからは軍人というものは除きましたために、現在
恩給法上の公務員ではないわけであります。そこでこれらの
処遇を何とか改善をしていただきたいというのが、私
どもの熱願するところであります。
その案としましては、まつたくの
意見試希でありますが、その一、二をあげてここに掲げておきまして、その第一は一般
恩給法を適用する案であります。これは先ほどから申しますように、
連合軍側の
指令の対象ではありませんので、これを公務員と認め、その死んだり、けがしたり、病氣に
なつたことを公務によるものと認めるならば、一般の
恩給法を適用しても差支えないではないかというようにも考えられるのであります。しかしながら現在の
恩給法の公務員の中からは除いておりますから、これに適用さすためには特別の法律が要ることになります。第二の案といたしましては、
労働基準法及び厚生年金保險法を適用させる案であります。これは
昭和二十二年すなわち昨年の九月一日以後、すなわち
労働基準法の施行以後につきましては、
労働基準法を基礎としてできました
政府職員に対する公務災害補償法を適用さしていただいたらどうだろうか、この点につきましては大藏省側、すなわち
政府側といたしましても、大体適用していいじやないかという考えのもとに進んでおりますが、まだ
連合軍の了解は得ておりませんので、これと折衝中であります。これを受けられるようになりますれば、
傷病者の
手当、すなわち傷害補償というものは格段とよくなりますのみならず、
死歿者に対しましては現在何もありませんけれ
ども、この遺族補償というものを受ければ、
平均賃金の一千日分を受けられることになるので、これはまつたく飛び拔けてよく
なつてくるわけであります。九月一日以後の分につきましてはそういう方法がありますが、それでは八月三十一日以前、すなわち
終戰後から昨年の八月三十一日までの間に傷病した者に対しましては何とか方法がないか、こう考えるのであります。これは公務員として適当な該当の法令がありませんので、やむを得ませんから一般の
傷病者に対する厚生年金保險法というものを、これに適用してもらつたらどうだろうか。先ほ
ども申し上げましたように、一昨年遺族の、死亡者に対する
恩給がなく
なつた場合に、厚生年金保險法を何とか適用してもらおうということを研究したけれ
ども、結局だめであつたことは先ほど申し上げましたが、これはいわゆる戰爭中の者に対するものでありまして、
終戰後の者については、先ほど來申しますように、別個の性格のものでありますから、これに厚生年金保險法を適用することは、筋合上間違いはないじやないか、こういうように考えるのであります。なお厚生年金保險法を直接適用できない場合におきましては、現在の勅令第六十八号、軍人
恩給、
傷病恩給を支給いたしますとともに、これを
改正いたしまして、
終戰後の公務死亡者に対する遺族扶助料を支給する途を何とか開いてもらう途はないか。こういうぐあいに考えた次第であります。これはまつたく私の試案でありまして、さらにいろいろ御檢討を
お願いしたいのでありますが、いずれにいたしましても終戰以後の
傷病者というものは、まつたく性格の別のものであるから、何らかの方法によ
つて見ていただくように、御
協力を願いたいと念願するものでございます。長くなりましたがこれで答弁を終ります。
最初の長い表がありますが、これは結局もう一つの表と照らし合わせていただきますとわかりますが、長い表の方はたとえば死んだ場合、あるいはけがした場合は、
一体どれぐらいのものをもらうようになるかという、細部の事項まで書いてあります。その点
あとでひまな時にでも見ていただけばありがたい仕合せと思います。