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高瀬委員 私は今回付議されました
國有鉄道運賃法案に対しまして、二つばから
修正意見を提出するものであります。
すなわち、第
一條第二項を
削除したいのであります。第
一條第二項には「前項の
運賃及び
料金は、左の
原則によ
つてこれを定める。」という
趣旨のもとに
四つの
條項があげられております。すなわち「公正妥当なものであること。」第二番目には「
原價を償うものであること。」第三番目には「
産業の発達に資すること。」第四番目には「
賃金及び
物價の安定に寄與すること。」この
四つであります。これらの
原則は、今回の
運賃値上げの
審議に際して種々
討論いたしましたが、私の見まするところでは、
國有鉄道が
國家によ
つて運営され、しかも
國家の
官吏によ
つて管理されておる以上、これらの
原則は当然の
原則であり
——ここにあげても何ら害はない
程度だから、あげてもいいではないかという議論もありましようが、私はこんなくだらない
原則をここにあげても、いわゆる羊頭を掲げて
狗肉を賣る式のものにな
つて、
法律としては全然必要がないという
建前のもとに、この
條文からこれを
削除することを
提案いたします。
鉄道が
國家の
官吏によ
つて、非常に注意深く、また行き届いて管理されておる以上、
運賃値上げの場合、あるいはその他のことについて、これらの四
原則がとられることは当然でありますから、
かくのごとき蛇足的な
條項は不必要なりと
考えます。
從つてこの
四つの
條項の
削除を
提案いたします。
なお第三條第一号中の
賃率でありますが、「一円二十五銭」とあるのを「七十銭」に、「九十銭」とあるのを「五十銭」に改めるわけであります。すなわちこれは
旅客二倍、
貨物三倍、
学生定期すえおき
——これは
運輸大臣の権限に属しておりますが、
学生定期はすえおき、それから
一般定期は一倍半、こういうような
値上率を私は提唱いたします。今回
提案せられましたこの
政府の三倍半という
原案に対しまして、その
態度の決定を一昨日まで見なか
つたのは、私
どものはなはだ遺憾とするところであります。三倍半については、私
どもは何ら合理的な
理由が発見できない。しかもそれに対するわれわれの
反対意見は、先ほど
自由党の
前田委員よりお話がありましたことくでありまして、私
どもは大体同じような
考えをも
つております。
從つてわれわれは、單なる
收支の
会計を合わすという
——独立採算制を支持するの余りに、
國民生活を圧迫し、
インフレを非常に高騰させ、また
勤労大衆の
実質賃金を削るがごとき傾向を助長する今回の
運賃値上げには、
賛成できないのであります。おそらく
政府提案のごとくでいけば、すでに怪しくな
つておる三千七百円
ベースは維持できない。また
独立採算制の
前提である
経営の
合理代、
経費の
節約のごときは、約十六回の
委員会において、
大臣、
政府委員よりわれわれは
説明を聽取いたしましたが、何ら納得すべき点がないのであります。しかも
かくのごとき重大な
法案が、一体閣議において
旅客、
貨物とも三倍半という決定を見たにかかわらず、一昨日までこれが
與党間において決定を見なか
つたということは、われわれはまことに意外とするところでありまして、昨日もこの
委員会において
討論終結を見るはずでありましたが、
與党の出席がないために、本日にもち越された。おそらくこの
運賃の決定が政治的に利用されるから、議会に付議するのは反対であるというのが、
運輸当局の腹でありましようが、絶対に
與党側さえはつきりしておれば、
かくのごとく時間を遷延し、六月十五日の
値上げ予定なのが、七月十五日も怪しいというような、
かくのごときくだらぬことは起きなか
つたろうと私は思うのであります。
從つて私
どもはこの
運賃値上げが遅延しましたことによ
つて生ずる
赤字は、
政府が当然考慮すべきものとして、私は
討論の基準には置いておらないのであります。なお
結論としまして、
國民は何ら
独立採算制のモルモツトになる必要はない。結局
独立採算制を維持するために、
國民がその犧牲になる必要はないということを重ねて強調いたします。
しかして私
どもは提出されました今回の総
予算、約四千億の
予算に対して、二割天引を
主張いたしております。それはそれによ
つて約七百二十億を
節約いたしまして、行政整理、あるいは官廳費の
節約、取引高税の廃止、あるいは
事業税の廃止、
所得税の軽減、
運賃の
修正、そういうような点をわれわれは
考えております。必要なる六・三制であるとか、災害復旧費とか、そういうものは
削除いたしませんが、総
予算のわくを縮めることによ
つて、約七百二十億の
経費の
節約を提唱いたします。
從つてこの
鉄道に対する財源の点について、一言触れたいと思いますが、本年度の
経費中おもなるものは人件費が三百四十九億、物件費が五百六十億、このうちに石炭費が二百四十六億、百七億が
物價改訂によ
つて二百四十六億になります。その他の
経費を加えますと、おもなる
経費だけで九百八十一億という巨額に上るわけであります。
從つて以上の、われわれの提唱いたしまする
旅客二倍、
貨物三倍、
学生定期券すえおき、
定期券一倍半という案によ
つて、
旅客、
貨物の総
收入を想定いたしますると、約六百三十五億になるのであります。この六百三十五億のうちその
收入と、総
経費の九百八十一億を差引いたしますと、
赤字が約三百四十六億に相なります。しかし
政府は百億この中に繰入れるという予定をしておりまするから、それを差引きまして二百四十六億、この二百四十六億の財源をわれわれは以下のような方法で求めたいと思います。すなわち
國有鉄道が非常に重大なる
國家の
産業組織であるに鑑みまして、石炭の面において
國有鉄道を重要
産業並に指定すべきであると
考えるのであります。すなわち特定の消費者たる重要
産業の石炭の消費者價格は、千円であります。しかし
國有鉄道が使用する石炭は三千百四十七円、これは
改訂による價格であります。
從つて國有鉄道も石炭の面において重要
産業並に指定されるならば、その差額は約百四十億に相なります。これは
鉄道が重要
産業に指定されることによ
つて、百四十億の財源を
節約することができます。なおこの
鉄道の九百八十億の
経費のうち、私は天引一〇%の
節約を提唱いたします。この中には行政整理その他を含むことはもちろんであります。そのほかに無賃乘車証の整理、あるいは構内営業、廣告
料金の合理的
増收策、または不用資材、施設物件、その他の特殊物件の拂下げというような積極的な方法によ
つて、約二十五億は十分
増收の見込みがあると思います。かようにいたしますると、いわゆる余
つてつりがまいります。そういうわけで、私は
かくのごとき財源を求めて、結局この
修正案を提出した次第であります。
なお最後に、別に私はくどいことを申しませんが、
運輸当局に特にお願いいたしたいのは、
貨物の点においても、
貨物の等級を全然改正せずに、
賃率を
審議しておる点が間違いなのでありまして、
昭和十五年に
貨物の等級を改正して以來、
運輸当局は何ら
貨物の
運賃等級をかえておりません。
從つてこの等級をかえることによ
つて——物價の高騰と
インフレの高進をにらみ合わせて、適当に
貨物の
賃率等級をかえるべきであろうという意見を
運輸省に提唱いたします。もちろん
サービスの改善、
経営の
合理化は、この際
独立採算制をとらんとする以上は、当然であろうと思います。
なお一つ、労働組合の協力でありますが、この
運賃の
値上げについて、労働組合は何らの興味をも
つておらないようであります。はなはだしきは先般労働組合の指導者によ
つて、全然
運賃改正の必要なしという
提案すらされておることは、
運輸当局の
承知されるところと
考えます。私はいくらつぢつまだけ合わしても、六十一万の
勤労大衆、いわゆる現場の諸君の協力がなくして、
國有鉄道の
赤字を一掃することはま
つたく不可能であろうと思います。こういう点について、たとえば労働組合が地区的にストライキができるとか、あるいはダイヤの改正についていろいろ意見があるとか、こういう点はわれわれは非常に遺憾とするところであります。どうぞそういう点につきましても、十分御注意あられんことを
希望いたします。
國民の
鉄道として、眞に正しい、いわゆる
國民に愛される
鉄道をつく
つていただきたいために、私は
かくのごとき
修正案を提出する次第であります。