○
岡田國務大臣 大体
佐伯さんのお述べにな
つておられますところは、
人件費、物件費その他の
経営費において、もつと節約しろというおねらいであろうと存ぜられます。御
説明くださいました一トン・キロあたりに対する
人員につきましては、なるほど施設等と比較いたしますと、若干多くな
つておろうと思います。私らもこの國営企業なるものが民営の企業、しかも大きさにおきまして、民営の私鉄などと比べまして、とても比較にならない、何十倍という大きな規模で
経営をしております國営の企業、これについては、何と監督をいたしましても、從業員の氣持も違い、
人員も多くなりますし、経費面においても多少膨脹するであろうことを否認しようとは
考えておりません。しかしながら、私らも事業
経営、企業
経営については、
相当に長年経驗を経てきておるものでございまして、
佐伯さんのおつしやるように、
業務量と從業員の数とは正比例して
考えてはいけな
いくらいのことは、私もわか
つておるつもりであります。それだからとい
つて、何も現在の國鉄の
経営の実態なるものが、一から百まで合理的であるということを申し上げようとはいたしておりません。整理すべきものは大いに整理いたし、また減される
人員は減す、そのためには配置の轉換もいたします。
経営の合理化も十分にや
つていかなければならぬと
考えております。それで國営の
鉄道は、ほかに比較するものが私鉄だけであるということでありますので、刺激される面が少いけれ
ども、私鉄に比較せよという
お話はよくわかるのであります。今後において大いに努力をいたしたいと存じておりますが、ただ経費の具体的節約、それから
人員の具体的減員という問題になりますと、
相当に事が複雜でございまして、予算の編成をあと数日に迫られておる現在といたしまして、その間にそれを完成するというように、簡單にはいきかねると思います。それには今日では、何と申しても
人員の
方面においては、労働
基準法を初め、労働
関係の法規に縛られる面もございます。また民主主義を高調さしておるただいまの社会
情勢から
考えて、芦田内閣ができます前の三党
政策協定においても、今日の
経済実態から
考えて、機械的の
人員整理はしないというような申合せもできておりまして、まず
人員整理をいたしますには、失業対策を考究しなければいけない面もあることは御
承知の
通りでございます。それからまた経費面においては、今回の予算編成にあた
つても、國の
財政がきわめて困難である実情をよくわれわれも弁えております。また大藏
当局も極力経費の節減を主張されて、物件費の面においても、重要
物資の平均七割ないし八割の高騰を予定しておりますが、
鉄道が使う物品につきましては、重要な物を一品々々檢討を加えまして、ある物は二割五分しか上らない、ある物は五割しか上らない、ある物は七割上るというふうに、これを精密に査定檢討を加えまして、平均の物件費は五割上りで査定を切り詰めてや
つております。それからまた
人員の面においても、しばしば御
説明を申し上げたように、労働
関係法規などの面、増送の面から要請せられます
人員のうち、予算編成にあた
つて約六万人近くを所要面から節減をいたしております。また石炭の面においても大体從來から石炭の消費節約の研究を続けてまい
つておりまして、これもできるだけ努力しております。本年度の石炭消費量においても、
相当切り詰めた計算をいたしておりますが、ただいまの石炭生産の現状から
考えると、五千四百カロリーを予定いたしておりましても、
数量的に石炭の供給がなかなかすかすかとまいりませんので、実際面においては、多少カロリーの低いものでもがまんをして受け取らなければならぬ実情も
予想されます。それで今までその面からも節減いたしておりますが、さらに今から大なる節減ということは、はなはだ困難であると
考えております。殊にただいまの
経済難局を乘り切るには、どうしても生産の飛躍的増強を策さなければ、インフレーシヨンは抑制かできなかろうと思
つておりますが、その生産を飛躍的に増強するために、輸送力を強化せねばならぬ。すなわち増送せねばならぬ。安本の計画によります石炭三千六百万トン生産にマツチするためには、年間一億三千万トンの
鉄道輸送量が要請せられております。しかしながらこの一億三千万トンを達成いたしますためには、ただいまの疲弊衰耗いたしておりまする説備に急速な
改良と補修が加えられ、また同時に少令車輛を補充いたす。もう
一つかんじんなことは、從來供給がほとんど問題にならないほど低位におかれておりました労務者の作業衣、軍手、地下たび、石鹸、また寒冷地帶における長ぐつというようなものの供給が
相当増加されなければなりませんこと、あるいはまた重労働者に対する食糧の増配がもう少し行われなければならぬこと等々の、いろいろたくさんの要素が、われわれ
鉄道当局の希望いたしておりまする
通りに達成されなければ、一億三千万トンの輸送完遂は困難であることが今
予想されておるのでございます。このときにあたりまして、今日まで予算編成期以來節減を加えてまいりました
人員と、並びに物件費その他の補修
改良費等の面におきまして、これ以上の大幅の節減を加えられることになりますと、私は経費節減という目的は達せられましても、インフレ克服という面から積極的な増送計画は実現できないことになるのではないか、そう
考えられますので、今日以後おきまして
鉄道企業に加えられまする大幅の経費節減は、これは角をためて牛を殺す結果になるのではないか、まことに困難であると私は
考えております。
もう
一つこのついでに御
説明申し上げておきたいのは、経費節減に関連してでございまするが、
佐伯さんも
鉄道経営につきましてはまことに深い知識と経驗をも
つておられます。ただいま
鉄道の外廓團体であります弘済会、交通公社など、これらに対して大きな整理をすれば、経費が生れてくるかのごとく世間の一部には
考えられておりますけれ
ども、これは
相当に誤解がある問題だと私は
考えております。今日交通公社を全廃いたしましたところで、あの施設寿において受けも
つてくれております
鉄道の宣傳、殊に切符の販賣まであれが扱
つております。あの
数量がないことになりますと、たちまち
鉄道職員の数を殖やし、切符を賣る窓口を増加しなければ行われないことになります。そこでとても
原則として交通公社を全廃するわけにはいかないのでございますが、もしかりに全廃いたしたといたしましても、差引き節減されます経費はごくわずかなものしか上
つてこない。十億とか五億とかいう大きなものは、とうてい残らないであろうことを
佐伯さんも十分御
承知くだす
つておることと思います。また引済会につきましては、引済会が一年中に收支をいたしております金額はわずかに二億四、五千万円でございます。これは引済会が駅賣りでありますとか、あるいは
鉄道のも
つております施設のうちガード下でありますとか、あるいは土地家屋の一部を貸しておるというようなものを
利用しまして営業をいたしておるのでありますが、これらのものの賃貸料も、今回の予算編成にあたりましては、
相当値上額を大幅に折りこみまして予算に編成をしております。そして引済会は、救済團体でございますから、
鉄道の殉職者あるいは殉職員の遺族、あるいは負傷者等で保護を加えなければならない者に保護を加えていきつつあるのでございますが、それらに対する國からの
補助金はわずかに百四、五十万円しか出しておらぬわけでありまして、あとは引済会が営業いたしました利益の中から出しておるということにな
つております。この引済会を全廃いたしましたところで、そこに浮いてまいります費用は、わずかのものにしかな
つてまいらないのでございます。こういう場合におきまして、今日のこの切迫いたしました時間内に、なお大幅の経費を節減しろというお声もあるやに承りますけれ
ども、かれこれ諸
情勢を
考えましてなかなか困難である。もう
一つは
國有鉄道がも
つております土地、家屋等が若干ございます。また戰時中に買い上げました私鉄もございますが、これらを処分いたせばいいじやないか、こういうお声もあるようでございます。一應ごもつともな
お話でございますが、土地、家屋等で処分のできるものはごくわずかでございます。これらのうち不用なものは、この際私たちも、処分できるものは処分しなければならぬと
考えております。これも大きな金額には上りません。しこうして今回予算面に組み入れておりまする雜
收入約九億何千万円の中には、それらのものの一部と、も
つておりまする不用資材の賣上げな
ども組みこんであります。私鉄の拂下げにつきましては、これがはたして今年度内にできるかできないかということは未定の問題でございます。これらの私鉄も、戰時中にはただいまの時價とは違いまして、戰時中における安い單價で評價がされまして戸慎 マ領大数の長い高いものでも、これを千五百万円とか一千万円とか、小さいキロ数のものになりましたら二百万、三百万というような額で買い上げておるのでございまして、本年度に十社あるいは五社を処分できたといたしましても、これとても大きな費目は見込まれないのであります。それよりも問題は、かようなものを賣却いたしますためには、その地方の産業
経済の実態、交通量、そうしてその引受けたいという会社が信用できるか、堅実なものであるか、不堅実な脆弱なものであるかの内容を檢討いたしますこと、それを拂い下げてから後に、はたして黒字の
経営ができていくものであろうかどうか、
赤字の
経営ということになりますと、成り立たないことに相なります。そういうようなこと、また評價の問題にいたしましても、これは
相当の方に御審議を願
つて決定されなければならぬ問題にも相なります。そういう複雜な
関係にありまする私鉄を、今、予算を編成いたします前に、その費目を三億とか五億とか賣
つて得ることを
予想して、予算に組み入れるということの絶対にできませんことは、
國民もまた
國会議員の
方々も、否定できないことであろうと私は
考えるのであります。かれこれいたしまして、われわれは今日まで
人員及び物件費の面におきまして、できるだけ努力して節減したのでありますが、しかしながら今日のこの困難な
経済界において、
國民生活の
負担の苦しい中において、大幅の
値上げをするのでありますから、これは皆さんの御説のごとく、
考えといたしましては、なお一層節減に努力を仕りまして、そうして
運賃負担を助けるという
方向には、できるだけの知惠を搾
つてやらなければならぬと
考えておりまして、今後大いになるつもりにしておりますが、さしあたりといたしまして、ただいま申し上げましたいろいろの要素の中から、若干の費目は
考えたいと存じまして、先般來から頻々は省内で調査をいたしつつあるのであります。その費目は、いずれ
國会において原案をお通しになる
——あるいはお通しにならなくて、何らかの修正意見をお出しになりまするか、そういうはつきりいたしました時分には、御要求によりまして申し上げたいと存じますが、今一部に言われておりまする三十億であるとか、あるいは物件費で五%であるなどとかいうような大きな費目を、今日の段階において出しまするということは、きわめて困難であると私は信じておりますので、一應御
説明を申し上げます。