○
栗山良夫君 私は
失業保險法案並びに
失業手当法案それぞれの原案に対しまして賛成をいたしたいと思うのであります。ただすでに予備審査或いは本審査の過程におきまして各
委員から極めて熱心なる御
研究の御発表があり、又
政府側からも眞摯な
説明、闡明がなされまして、本
法案に関する限り聊かの疑問の余地も残
つていないと私は確信をいたすものでありますけれ
ども、更に二、三の点につきまして意見を申述べたい、こう思うものであります。
その
一つは、先程山田
委員並びに
姫井委員から
社会保障制度の問題について言及をいたされました。今度の
失業保險並びに
手当法案によりますれば、勤労の意思能力を持
つておりまする者で、而もその職場を失つた人たちに
適用され、その人たちを
救済するのが目的でありまするけれ
ども、併しこの意思能力を持
つておる人と申しましてもその救い得る範意は極めて僅少なわけであります。例えて申しまするならば、先程から皆さん方で御指摘に相成りましたように、完全な
失業者でありましても、日雇或いは官業労働或いはその他の約二百万に及ぶところの
失業者は、この
保險法案の枠外に放置されることに相成
つておるのであります。更に先程穗積
委員から御提案になりましたところの
海外引揚者、数百万に及ぶところの
海外引揚者の勤労の意思能力を持
つておる人たちに対すめ
処置の問題、或いは働く力が欠けておりまするところの
老齢、
不具者、或いは病弱者、こういうような人々、更には子女を擁しまして働くにも働き得ないような立場にある未亡人の人々、こういう人々を
考えて見ますときに、この一片の
失業保險、
手当法案において満足せらるべきものでないことは、すでに山田
委員、
姫井委員、穗積
委員から縷々指摘された
通りでありまして、先程
厚生省の
保險局長は、廣汎な
社会保障制度の或る
答申案を
厚生大臣に
提出した。併しこれを
運用するためには三千億の
國家資金を要する、到底急速の実現は期せられないというようなお話がありまして、早急には実現困難のようなお話がございましたが、国家窮乏のときではございまするけれ
ども、やはり道義昂揚のためにも是非とも廣汎な
社会保障制度を一日も早く確立して頂きたい、こういうことを改めて希望をいたしたいのであります。
次にこの
失業保險、
手当法案はすでに明らかにな
つておりまするように、一年の間におきまして
支給される
金額は、
保險法で百八十日、
手当法で百二十日でございまして、本当に
失業者を救い得るのには誠に薄いと思うのであります。本当のその場つなぎ
法案であるとすら言わざるを得ないような立場にある。特に今後労働市場が縮小せられまして、
失業者の群が多くなればなる程、その感を深くして、再就職という問題が極めて困難になることを予測せられるので、危惧の念更に深まるのであります。松井
委員が先程この問題に言及せられまして、完全雇用の問題、更には公共
事業の設定の問題についても言及をされましたが、この
失業保險法案こそは、
失業者を
救済するところの
一つの網ができたわけでありまするけれ
ども、この網によ
つて失業者を沢山に包容するというのが目的ではなく、一人でも
失業者の数を減らしてそうしてその
失業者に対しては極めて手厚く補償して行くというのが本旨でなければならないのであります。どうしても現在國内におけるところの労働市場を経済的な再建の中に拡張いたしまして、そうして完全雇用の途を講じなければならないのであります。
失業保險の本当の目的は、結局過日通過いたしましたところの職業安定
法案の裏付けになるものでございまして、安定法こそ優先すべきもので、これによりまして
國民をすべて職場に配置する、この本筋の目的に向
つて労働省並びに
政府の
関係各省は全幅的な努力をせられるべきものであると、こういう
工合に
考えるのであります。
次にこの
保險法案、
手当法案が実施の曉に、果して成功するや否やということについては、山田
委員から過日相当突つ込んでの御
質疑がございましたが、この最も重点になりまするところは、やはり
保險金の
財源の問題であろうと思うのであります。先程主計局の第二
部長の
説明によりますると、九億六千万円の
予算を以ちまして本
年度は何とかや
つて行かれる、こういうようなお話がございました。併し
失業者の出る数というものは我かに
予想を許さないのでありまして、今後相当に沢山出るような傾向を持
つておるのでございますから、十二分の
措置を取られることが必要でありまして、特に私はこの際
労働大臣は先程もつと廣汎な
失業保險の
制度を作りたかつたのであるけれ
ども、
國家財政の限度というものがあるので、この辺に落ちついた、こういうことをいわれましたが、併しすでに
追加予算の
審議のときにも各
委員から殆ど口を一にして指摘されました点は、いわゆる
日本の財政の確立は、今のような大衆課税に重点を置いておるのでは、もう進歩の途はないのである、いわゆる新興大口所得者に対して徹底的な課税をしなければならない、こういうことが指摘されておりました。
政府の答弁はその必要性を認めながらいつもその所得の捕捉が困難であるというので、実現の雰囲氣が出て來ていないのでありますけれ
ども、私はただ捕捉ができないというような今までの
考え方をそのまま今後も延長するのでありませんで、今こそ具体的に、いかにしたならば新興大口所得者に対して徹底的な課税ができるか、こういうことを
政府が緊急に立案せられるべきものであると私は
考えるのであります。我々もその捕捉し難いところのいわゆる所得に対して捕捉し得るような方法についても、試案を持ち合せておるのであります。
考えれば必ず不可能なことではないと
考えます。そうしてそういうところから
國家財政の立直しを是非ともや
つて頂きたい、これは強く
政府に要望したいところであります。
更にこの
法案の取扱いのことについて、
運用の面でございますが、二、三申上げて置きたいのであります。それはこの
法案の民主的な而も敏速な運営を希望したいという一語に盡きるわけでありますから、特にこの
保險の処理に当られるところの現場の係官の人々は、その
計画が
保險の受給資格者の資格の認定とか、或いは実際に
保險金を
支給するところの
業務、こういう非常に重要な、而もどちらかと申しますと権力化し易いところの
國家行政をおやりになるわけであります。一歩を誤りますると從來の官憲の誤つた方便的な行政
措置が繰返されることが非常に危惧せられるのでありまして、この点は現場の係官をして最も民主的に、而も
失業の苦悩に追われておる人々に親しまれるような公僕としての態度を以て接せられるように指導教育をし、実績を挙げられんことを希望したいのであります。
その次に
失業保險委員会或いは
失業保險審査
委員会というようなものができまして、この運営の民主的な努力をされるわけでございますが、今度の
法案を見ましても、二十一條、二十二條二十四條には、この
委員会の活動の重要性が明記せられておるのであります。重要な事項につきましての意見を
労働大臣に申述べるというようなことが書かれておりまして、非常に重要な役目を持
つておるのでありまして、この
委員をお選びになるときには、十分に人を得られまして、そうしてこの
法案が目途しておりますような方向に十二分の活動のでき得るような
委員会、実質的な
内容を持つ
委員会たらしめて頂きたいということを特にお願をするのであります。ややもいたしまするとこのような
委員会は、
日本人は從來の古い
考え方からいたしまして、
運用が上手だとは申し得られないのであります。そうしてややもいたしますると、飾りもののような恰好に陷り易いのでありますが、今後は
委員会こそあらゆるごういつた行政機構の
中心にな
つて進み得るようなところまで引上げて行くために、十分に人を得るように努力をして頂きたい、そうして得ましたところの人を十二分に機能を発揮させ得るように
措置をして頂きたいと
考えるのであります。
次に
失業保險の審査官でございますが、これの詳細は
法律で以て決められることに相成
つておりまするが、この審査官の持
つておられるところの役割というものは、これは
一つの職権の審査でございまして、これも若し一歩誤りまするならば、從來の刑事的な、或いは特高的な動き方がないともいえないのでありまして、圧迫的な行動、或いは一方に偏するような
措置、こういうものがとられましては、甚だ
國民として心外でございますので、この点も十分に審査官の人選その他については注意をして頂きまして、本当の
國民の公僕として、
國民が信頼して相談し得るところの人を得るように御努力を切望して止まないのであります。
最後にすでにこの
法案は十月一日に施行せられるというようなことが流布せられまして、國内におけるところの
失業者の人々は一日千秋の思いでその施行を持
つておられることと思うのであります。やつと
審議も終り、いよいよ十一月一日から施行されることに相成ると思うのでございまするが、すでに現地においては準備万端、いつでも施行でき得るように
措置せられておるとも聞いております。願わくばこの年末を控えまして重要な時期でありまするので、緊急に
失業者の人々に
生活補給金として
失業手当金が渡されまするように、誠に労働行政の確立においては、いろいろな問題が山積しておりまして、現地の係官もおいそがしいところでありまするけれ
ども、十二分に
失業者救済の実を挙げて頂くというような意味で、十一月一日の施行を確実にお守り願えるように希望いたす次第であります。極めて雜駁で而も簡單でございましたが、以上意見を申述べて、賛成の言葉としたいと思います。