○
政府委員(
上山顯君)
失業保險法並に
手当法の
提案理由、それから大体の構想につきましては、
只今労働大臣から御
説明いたした
通りであります。それを若干補足いたしまして、各條の特に問題のありそうなところだけを選びまして
説明を加えたいと存じます。
先ず
失業保險法から申上げます。
第
一條の
法律の
目的は
只今説明いたした
通りでございまして、被
保險者が
失業しました場合に、
失業保險金を
支給いたしまして、その
生活の安定を図るという
目的を持
つておるのであります。
第
二條に
保險者の
規定がございます。御
承知かと存じますが、
健康保險におきましては、
政府が直接勧獎いたしておりますものの外に、大
工場等におきましては
自分で組合を作らせます。いわゆる
組合組織のものがありまして、
政府勧獎と
組合勧獎との二本立てに
なつております。ところが、この
失業保險におきましてはそれを全部
政府勧獎のみに一本立てにいたしたのであります。その
理由は
只今も
労働大臣の
説明にもあ
つたのでありますが、
一つには
失業保險という
保險は非常にリスクの多い
保險である、從いまして成るたけ廣い
範囲に危險分散をいたしますことがこの
保險の
趣旨の主なる
理由であります。もう
一つの
理由といたしましては、
失業保險は
失業という事由の発生によりまして、当然無條件に
保險金を
支給するのではありませずに、
失業者が
公共職業安定所に出頭いたしまして、先ず
求職の
申込をし、
公共職業安定所としましては極力
就職の
斡旋をする。どうしてもそれがない場合において初めて
失業保險金を
支給するということに
なつております。即ち
職業紹介機関の
運営と密接な
関係をも
つておるのでありますが、その
職業紹介機関が御
承知のように
原則として
國家の施設としましてできておりますので、そういう二つの
理由によりまして
保險者は單に
政府一本立てということに相成
つておるようなわけであります。
第三條に
失業の意義が
規定してございますが、特に
説明する必要はないかと思います。
第四條に
報酬のことの
規定がございますが、ここで特に申上げたいと存じます。これは現在
厚生年金、
健康保險におきましては、この
報酬の中には
家族手当を含んでないのでございますが、
失業保險といたしましては、
家族手当をも含むことに
考えております。これはいずれ
政令で決めるのでございますが、そういう予定で進んでおりますことが主な違いでございます。
第
五條といたしましては、他の
規定と同じように
標準報酬を使うということを
規定してございます。
第六條の中に被
保險者の
範囲が
規定してあるのでございます。第六條といたしましては、被
保險者がこの
法律の
規定によりまして当然被
保險者となる者の
範囲が
規定してあるのでございます。この
範囲といたしましては、
原則としましてここにいろいろ
事業が列記されておりますが、これらは
健康保險の
範囲と同じでございます。但し
文字の表現としましては後からできました
労働基準法の
文字が使
つてございます。但し
内容は
健康保險と同じということに
なつております。
そうして当然被
保險者の
範囲のところで私共が問題として檢討いたしました点は大体三つあるのでございます。
一つは
女子の労務につきましては、これを当然
適用するのがいいか、或いは
日本の
只今の
女子の
労働事情から
考えまして、後で出て参りますところの
任意包括被
保險者にする方がいいかという点が問題にな
つたのでございます。それでいろいろ研究したのでございますが、
結論といたしましては、
社会保險という
相互社会連帶の
考えに基いておるその本質に鑑みまして、もう
一つは
男女を区別するというのは新
憲法の精神から申しましても適当でないというような点を
考えまして、結局
結論といたしましては
男女の区別なく等しく当然被
保險者にいたした点でございます。
第二に問題になりました点は、國及び
地方公共團体に雇傭されておる者でございまして、これらの者は地位が安定しております。
失業の危險に曝されますことが比較的少いというようなこと、それから國及び
地方公共團体につきましては退職時の
給與につきましていろいろ
制度が設けられております。これらの点を
考えまして、果して
失業保險の被
保險者に入れるのがいいか、除外するのがいいのかという点についていろいろ檢討いたした次第でございます。それで
結論といたしましては、第六條の
規定によりまして國及び
地方公共團体に雇傭される者も当然被
保險者に入れることにいたしました。但し第七條におきまして國及び
地方公共團体に雇傭されます者が
離職しました場合の、
本人に
支給されます諸
給與の内客が、
実質上におきましてこれらの諸
給與は
失業保險と別の
制度でございまして、形式的には食い違いがございますが、
実質的に見まして
本法による
失業保險金の
給付と同等以上と
考えられます場合には、
失業保險の被
保險者から除外するということにいたしたのでございます。そうしてこれをどう扱うかということは結局
政令で決める問題でございまして、若し國及び
地方公共團体が
実質上
失業保險の
内容と同じような
制度ができますならば、これを除外して參りたいという
考えで研究をいたしております。
それから第三に問題になりました点は
船員でございまして、これは現在
船員につきましては、
健康保險、
厚生年金に相当いたしますものも
健康保險法、
厚生年金法によりませず、
船員保險法というもの一本で現在でや
つておるのでございます。それで
失業保險につきましても、先刻申上げたように成るたけ危險分散の
範囲を廣くするという
意味から申しますと、
船員の
失業保險についてもこの
失業保險法に包含いたす方がいいという
理窟もあるのでございますが、現在
船員については、
船員の
特殊性に鑑みまして、別個の
船員保險というものがあるわけでございますので、むしろ
船員の
特殊性ということを重く見まして、
船員保險の中でこの
失業保險をや
つて參りたい、かような
考えを以ちまして、後程第十條でそのことが書いてございますが、
船員保險の被
保險者につきましては
失業保險の被
保險者から除外いたすということに方針を決めましたような次第でございます。
以上が当然被
保險者についての
規定でございますが、第
八條には
任意包括保險者のことが
規定してございます。即ち
本法の
適用を受けます
事業以外の
事業に雇用されております者につきましては、当然その一人だけを切り離して被
保險者にすることはできませんが、その
事業に從事して雇用されております
從業員を包括しまして
失業保險の被
保險者とすることができる、かようにいたしておるのでございます。これは現在
健康保險、
厚生年金もこれと丁度同じの
規定ができておるのでございます。それで一人々々飛び出しても
任意加入というこさを認めなかつた
理由は、さようなことをいたしますと、結局整理されそうな男だけが
任意加入するということになりまして、いわゆる
保險で逆選択と申しておりますが、
保險といたしましては
趣旨に副わないという
意味で、全部
引括めてなら
任意加入できる、かようにいたしておるのでございます。
第
八條の二項に書いてあります二分の一以上の同意というようなことも、これも現在の他の
社会保險と同様でございます。ただ新らたに
規定を設けましたのは、第三項に被
保險者となるべき者の二分の一以上が希望しましたときは、
事業主としましては
認可の
申請をしなければならない、これも実際
運用としては大した必要はないじやないかという
理窟もあるのでございますが、はつきりいたしておく
意味で、希望すれば
雇用主は
認可の
申請をしなければならないということに
なつておるのでございます。
それから第十條に被
保險者から除外される者といたしまして、
日雇いの労務者でございますとか、
期間を定めて雇用されました
者等につきましては、一應これを被
保險者から除外するという
規定を設けてございます。担しそれらの者が引続いて
一定期間同一の
事業主に雇用されました場合には、その者はその
一定期間を超えましたときからは被
保險者にいたすということに
なつておるのでございます。これも現在
健康保險なり
厚生年金で、こういう
規定ができておるのでございまして、それに
倣つた次第でございますが、一口に申しますと
日雇いでございますとか、
期間の定めのあります者でも常傭されております者については、これを常傭と同じような被
保險者とするということでございます。細かいことを申しますといろいろ論議の点もございますが、大きな筋といたしましてはそういう
趣旨で
考えておるような次第でございます。
それから十
一條以下に、被
保險者資格の取得でございますとか、喪失でございますとか、被
保險者期間の
計算等の
規定がございますが、これも他の
社會保險法と大体同様でございます。技術的な
規定でございますから
説明は省略いたします。
それから第十
五條に被
保險者の
資格期間のことが
規定してございます。これは
只今大臣の
説明にもありましたように、
離職の日以前一年間に、通算して六ケ月以上被
保險者であることを
要件にいたしてあるのでございます。即ち必ずしも継続してでありますことは要しないのでありまして、断続してと申しますか、飛び飛びでも結構でございまして、結局通算して六ケ月以上被
保險者でありますことを
資格要件といたしておるのでございます。
それから第十六條にそういう
資格要件をかなえました、いわゆる
受給資格者が
失業保險金の
支給を受けますには、
公共職業安定所に出頭して
求職の
申込をして、
失業の
認定を受けなければならないということが
規定してあるのでございます。これがこの
生活保護法のごとき單なる
救濟制度とは非常に違
つておる点であります。決して單に
保險金、
手當金を
支給するということ自体が
目的じやないのでございます。即ち國の
就労斡旋機関と結びつきまして、飽くまでまず
仕事を見つける、どうしても
仕事がない場合に初めて
失業の
認定をして
保險金を渡すということに
考えておるのでございます。尚この
公共職業安定所に出頭する回数としましては
政令で決めることに
なつておりますが、
原則は一週間に二回ということに
考えております。担し
交通不便等の所でございましては、或いは一週間に一回とか、場合によりましては月に一回というようなことも
考えておりまするし、又
公共職業安定所の職員がこちらから出張して參りまして
失業の
認定をいたすというようなことも、交通不便の地については
考えております。
それから十七條は
給付の金額でありまして、これは
原則は
標準報酬の日額の百分の六十ということにいたしております。担し
報酬の多い者につきましては百分の四十まで減らすことができる。
報酬の
少い者につきましては
自分の八十まで増加をできるということにいたしておるのでございます。
それから十
八條に
受給期間という
規定がございまして、
先業保險の
給付を受けます
期間としましては一年間の
限度ということにいたしておるのでございます。一年間の
限度を設けました
趣旨は、
失業いたしましたが、一年間も二年間もちつとも
安定所へ出頭しませずに、その後初めてふらつと
安定所に出て來るというやうなことは、
失業保險の
趣旨から申しまして面白くないと思うのであります。現に
失業して困
つておるというわけなんでありますから、早速
安定所の方へ出頭して
認定を受ける。そうして
受給期間は一年間を
限度として整理をして参りたい、こういう
考えであります。
それから十九條に待期の
規定がありまして、これは他の
社會保險にも類似の
規定があるのでございますが、
安定所へ出頭いたしましても直ぐその日から
失業保險金を
支給するのぢやありませずに、十四日間というものは
失業保險金を
支給しないということに
なつておりまして、その間に
安定所としましてはいろいろ
本人の
資格等の審査ということもやりまするし、又その
期間にできるだけ
仕事を探して見まして、一一
失業保險金を短
期間だけ
支給する、こういうようなことをせずにや
つて参りたい、こういうふうにしておるのであります。
それから二十條は
給付日数の
規定でございまして、十
八條に
受給期間としましては一年間ということに決めたわけでありますが、その
期間内におきまして通算して百八十日分を超えてはこれを
支給しないということに
なつております。ですから、例えば一月一日に
失業いたしまして、
支給期間としましては本年一ばいであるわけでございます。その間に百八十日でありまして、初め継続して三ケ月
失業保險金を貰う、それから途中二月ばかり
仕事に就きまして、もう一遍
失業しまして又二月ばかり
失業保險金を貰うというようなこともできるわけであります。結局この一年の
期間内におきまして百八十日が
限度ということに
規定いたしたのであります。
それから第二十
一條に
給付の
制限の
規定でございます。これは
失業保險が、先刻から申上げておりますように、單なる
保險金の
給付じやないのでございまして、できるだけ
職業紹介の
機会を多くしまして、
就職を容易ならしめたいという
趣旨を持
つておりますので、
安定所が折角紹介しました
職業に正當の
理由がないにも拘らず、これを拒んだという場合には、一定の
期間を限りまして
失業保險金を
支給しない、かようにいたしておるのであります。即ち
期間を限りましての
給付の
制限でございます。而してこの拒み得る正當な
理由はどういうことにいたすかということにつきましては、結局
只今の
日本の
社会、
経済状態というようなことも
考えまして、一号以下に
規定いたしたのであります。
まず第一には、紹介されました
職業が
受給資格者の
能力から見て
不適當と認められるときということに
なつておるのでございます。この点は一番私たちが議論をし檢討を加えた点でございまして、
日本の
社会状態から申しますと
不適當、というような
言葉はいわば甘過ぎる、凡そ体力から見て堪えられる場合には全部
本人はそれを承諾しなければいかんじやないかというような意見もあ
つたのでございますが、とにかく
保險といたしましては、
保險料を拂つたわけでございまして、できるだけ
本人に適職を探してやりたいという
趣旨から申しますと、ただ堪えられるだけでは少し
嚴格過ぎるのじやないか、
本人の
能力から見て、これは
不適當だという場合にはやはり付けない方が宜かろうというようなことで、
能力から見て
不適當と認められましたときに拒み得るようにしたのであります。併しながら
能力から見て
不適當というのは必ずしも前
職通りということは
意味しないのであります。
外國の
立法令等には前
職通りでなければ拒み得るというような立法令もあるようでありまするし、又前の
給付より少しでも低い
給付のときに拒み得るというような例もあるようでありますが、それは
日本の
只今の
社会・
経済状態から見ては無理じやないか、でありますから、必ずしも前
職通りでなくても、又若干は前の
給與よりも低い
給與でありましても、結局客観的に見ましてそれは
本人に最もふさわしい
職業だ、
本人の
能力から見ればその
職業を果し得るという場合には、これを正當の
理由として拒み得ないことにいたしたのであります。
それから第二の点は住所居所を変更しなければならないような場合に、その変更が
只今の
日本の住宅事情から申しますと、そういう場合が多いかと思いますが、どうしても変更が困難であると認められます場合には拒み得るということにいたしたのであります。
それから三といたしましては「同一地域における同種の業務及び技能について行われる一般の
報酬水準に比べて、不当に低い」、前の
職業よりも若干低いという場合には状況如何によりましては止むを得ないと思うのでありますが、その業務及び技能について行われますところの一般の
報酬水準よりも不当に低い、こういう場合には拒んでも結構であるということに相成
つておるのでございます。
職業安定法の御
審議の際いろいろ御檢討願つたことに関聯いたしておるのでありますが、かように
保險法ではいたしておるのでございます。
その他正当の
理由があるときに拒み得るということにいたしております。それで
保險法として実際の
運用といたしまして一番問題になるのは、恐らくこの第二十
一條の
運用じやないかと存じております。この点私たちといたしましては、できるだけ具体的な事例を挙げまして、
一つの標準を作
つて第一線の
職業安定所には示したいと思
つておりまして、その
基準を作るにつきましては、後程出て参りますところの、
関係の
事業主なり
労働者の御参加を願います
失業保險委員会等に、十分お諮りをいたしまして、適当なる標準を作
つて参りたい、かような
考えであります。
それから二十
二條は、これも大体同じような
趣旨の
規定でございまして、自己の責に帰すべきような重大な
理由によ
つて解雇されたり、又何ら止むを得ない事由がないに拘わらず、
自分の都合で退職したいという場合も全然
失業保險金を
支給しないというのは、嚴格過ぎると思いまして、
一定期間だけは
支給しないということに相成
つておるのであります。
二十三條の詐欺その他不正の行爲、これは全く不都合の行爲でございますので、全然
保險金を
支給しないという
考え方で
規定されておるのでございます。
その他二十四條以下等の
規定は、大体他の
社会保險にも同じような
規定がございますし、なお
政令でいろいろ定めることでございますので、特に御
説明は必要ないかと存じます。
二十
八條、二十九條、三十條の辺まで
保險料の
負担のことが書いてございまして、一口に申しますと、
保險給付に要します
費用は、國が三分の一を
負担し、後の三分の一をそれぞれ被
保險者であります。
労働者及び被
保險者を雇
つております
事業主が
負担する、かように
なつておるのでございます。
尚、
失業の
保險事務の執行に要します経費は、第二十
八條二項に
規定してございますように、國が全部
負担することに
なつております。これを御参考のために他の
社会保險と比較いたしますると、
健康保險は
事務費の一部を國が負擔いたしまして、
給付については國は全然
負担しておりません。それから
厚生年金については
事務費を國が全部
負担いたしまして、
給付につきましては一般の
労働者の
厚生年金の
給付の一割、それから特に炭坑の坑内夫につきましては二割ということに
なつております。それらに比べまして
失業の
保險といたしましては、これは相当
事業主なり
労働者としましても
負担を重くするものでございまして、又
失業ということにつきましては、國が特に大きな責任…………という
言葉は或いは適当かどうか存じませんが、関心を感じておるものでございますので、特に
保險給付の三分の一を
國庫が
負担することに相成
つておるのでございます。
それから三十
一條に
保險料率の
規定がございます。これは
標準報酬に對しまして、被
保險者、
事業主がおのおの千分の十一ずつ
負担するということに
なつております。そうして
保險料率の算定といたしましては、
失業率でございますとか、
給付期間の
制限、その他いろいろな條件を檢討いたしまして、從來
社会保險制度調査会の研究等をも斟酌いたしまして、千分の十一ということに
保險料率を決めたような次第でございます。
それから第二項以下にやや細々とした
規定がございますが、これは一口に申しますと、
保險料率は丁度税率なんかと同じように、
法律で決めるという
原則を立てました。從いまして
保險料率の変更は、この
法律改正の手続をとるという
原則を
規定いたしておるのでございます。但し特に緊急の場合には、
社会保險、
失業保險委員会の意見を聞きまして、
労働大臣が取敢えず変更することができますが、この場合にも後の
國会に
提案いたしまして、御賛成を得なければならんという
趣旨の
規定が書いてあるのでございます。
それから三十
二條以下の
保險料納付の義務者でありますとか、
報酬からの
保險料控除でございますとか、その他督促の
規定も他の
社会保險と同樣でございますので、
説明を省略いたしたいと思います。
それから三十九條に
失業保險委員会の
規定がございまして、
失業保險事業の
運営に関します
重要事項を
審議いたしますために、
政府は
失業委員会を置きまして、被
保險者、
事業主を代表する者、それから公益を代表する者おのおの同数を以て組織いたしまして、十分
関係の方々の御意見を聞いて、民主的に
運用いたして参りたい、かような
考えでございます。
第四十條以下に
失業保險金の
支給等につきましての不服のあります者の審査の請求、訴願、訴訟の
規定がございますが、これも他の
社会保險と同樣でございまして、特に御
説明いたすこともないと思います。
雜則につきましても特に御
説明することはありません。
次に
失業手当法でございますが、これは
労働大臣から御
説明いたしましたように、又私も
只今補足して申上げましたように、
失業保險金の方では仮に十月一日から施行いたしまして、
保險料の徴收は十月分から始まりましても、
保險金の
支給が始まりますのは六ケ月という
資格期間の
関係上、來年四月以降になる、從いましてその間の繋ぎの
制度といたしまして、
失業保險金、本來といたしましては
資格がないに拘わらず國が特別の
負担を以ちまして
失業手当金を
支給して参りたい、かような
考えでできておるのでございます。
而してこの
失業手当法の
適用範囲でございますが、これも立案の過程におきましては、單に
失業保險の被
保險者に限定しませず、もつといわゆる
失業者全部の
失業手当を
適用したらどうかという意見もありまして、いろいろ檢討したのでございますが、財政上の
理由が主とした
理由でございます。尚
只今のような
日本の
社会、
経済状態からいたしますと、いわゆる
失業者全部に
失業手当を
支給するということにいたしましても、果してそう人が本当の
失業者であるかどうかということの
認定も非常に困難であるというような事実的のことも
考え合せまして、いろいろ檢討いたしました結果、結局
失業保險金の被
保險者と
範囲を同じようにする、
失業保險は被
保險者が六ケ月の間は
保險金を
支給できない、その缺陷を補いますために、繋ぎの
制度として
失業手当を
支給する、かような
考え方でできておるのでございます。
それで
失業手当金の
支給を受けられます該当者としては、「
離職の日まで継続して六箇月以上、
失業保險法に
規定する
事業所に雇用されたこと」ということを條件といたしておるのであります。即ち
失業保險法の被
保險者といたしましては、まだ一ケ月二ケ月にしか
なつていないという場合でありましても、とにかくどこかの
事業で、どこかの
失業保險法に
規定してあります
事業所で六ケ月以上雇用されておつたということを必要といたしておるのであります。而してこの場合は、
失業保險の場合と違いまして、継続して六ケ月以上ということにいたしましたのは、
失業者の
失業手当を受ける
資格のあります者の
範囲をはつきり掴みたいという
趣旨からいたして、かように
考えたような次第でございます。
それからこの
法律施行の日から
昭和二十三年三月三十日までの間において
離職をしたということに
なつておるのでございまして、これは三月三十日とありますのはミスプリントではございませずに、その
通りで正しいのでございまして、三月三十一日に
離職いたしました者は、先刻細かい
説明は省略いたしましたが、
失業保險法の方の
資格の喪失等の
規定の
関係からいたしまして、これらは六ケ月間の
資格を満了して
失業保險金を貰えるということになりますので、三月三十日までの間に
離職いたしましたことを條件としまして
失業手当金を
支給するということにいたしておるのでございます。そうしてこれらの
失業手当金を受けられます者につきましては、三月三十一日までの
失業手当金という名前で、これについては國の全額
負担ということで
支給をいたしまするし、その同じ人が四月一日以後につきましては
失業保險金というような名前で
支給をする。而してこの
失業保險金四月一日以後のものにつきましては、國の
負担は三分の一ということに
なつておるのでございます。即ち三月までの六ケ月間の
期間によりまして、
失業保險の特別会計としましては、相当の積立金もできておりますので、その後は國の特別の御厄介にならずにや
つて行こう、かような
趣旨でできておるのでございます。但しこの
失業手当金を受けます者が、四月一日以後におきまして受けます
失業保險金は、これは
失業保險法の特別の例外的な場合でございまして、
内容におきましては
失業手当金と全然同じ
内容のものでございます。從
つて後で申します
支給金額でございますとか
支給日数等も、
失業手当金の金額、日数がそのまま用いられるような
関係に
なつておるのでございます。
それで
失業手当につきましては、大体は
失業保險と同じでございますので、一々の
説明は省略いたしまして、変
つておる点だけを申上げますと、第
五條の
支給金額はこれは
保險の方は標準が百分の六十に
なつておりますのに対して、こちらは百分の五十五ということに
なつております。又最高は百分の七十五、一番低いところで百分の三十五、それぞれ
保險金よりも五%ずつ低いところで決ま
つておるのでございます。これは先刻來申しておりますように、本來の
失業保險の
受給資格をまだ満了していない人について、國が特別に手当を
支給いたすのでございますから、かような區別をいたしたのでございます。
それから待期も、第七條でございますが、一般が十四日に対して、これは三十日ということに
なつております。
それから一番大きな違いは第
八條でございまして、
保險金の方は百八十でございますが、こちらは百二十ということに
なつております。
それから第十條の
資格制限、十
一條の
支給の
制限につきましても、
保險の方は
一定期間のみの
支給制限でございますが、こちらは
一定期間というような
期間の
制限がなくて、無
制限に
支給制限されておりまして、これも若干減額に
なつております。それが大体の違いでございます。
それからもう
一つ、第十六條にございますように、
費用の
負担につきましては、三月末までの
失業手当金という名前のときには、
給付の全額を
國庫が
負担する、それから四月一日以後の
失業保險金という名前になりましてからは、一般の
失業保險金と同じように
給付の三分の一を
負担する、かようなことに相成
つておるのでございます。
以上を以ちまして御
説明を終ります。