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1947-09-25 第1回国会 参議院 労働委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    付託事件職業安定法案内閣送付) ○労働基準法適用除外規定設定に関  する陳情(第二百五十二号) ○失業手当法案内閣送付) ○失業保險法案内閣送付)   ————————————— 昭和二十二年九月二十五日(木曜日)    午前十一時十九分開会   —————————————   本日の会議に付した事件失業保險法案失業手当法案   —————————————
  2. 原虎一

    委員長原虎一君) それでは只今より委員会を開催いたします。本日は失業保險法案失業手当法案について政府当局説明を願うことにいたします。米窪大臣説明を求めます。
  3. 米窪滿亮

    國務大臣米窪滿亮君) 失業保險法並失業手当法の本院における予備審議に当りまして、その二法案提案趣旨を御説明申上げます。  失業保險法立案につきましては、昨年八月十五日、衆議院の生活保護法案委員会附帶決議におきまして、「失業保險の創設に前進すべし」という希望があつたのでございまして、政府におきましては、昨年の秋以來社会保險制度調査会において審議しました答申に基きまして、その調査立案の準備を進めて参つたのでございます。  然るに去る六月、現下経済危機突破の綜合的な対策といたしまして、経済緊急対策なるものが発表されました。その中に、失業手当並失業保險制度を実施することを政府は約束しまして、爾來立案を急いで参りました結果、ここに成案を得て、本國会失業手当法案と共に提出する運びとなつた次第でございます。  失業保險法制定目的は、この法案の第一條にはつきり書いてございます通り失業保險の被保險者である労働者失業いたしました場合に、失業保險金支給しまして、その生活の安定を図ろう、こういうことでございます。  思うに失業対策の理想としましては、完全雇用乃至完全就業を実現することが望ましいのでございまして、これがためにはあらゆる産業を振興して、これに労働力を吸收し、國民生活安定向上を図ることが必要でございます。又憲法第二十五條におきましても、國民が健康であつて、文化的であり、而も最低限度生活を営み得るように、國が社会福祉社会保障向上と増進に努めなければならないということを書いてあるわけでございます。政府は、これらの目的達成のために、一般経済再建のための施策と相俟つて職業紹介機関の効率的な運営を初めとしまして、公共事業或いは職業補導拡充等失業対策に鋭意努力いたしておりまするが、止むを得ずして出て來る失業者に対しまする恒久的な社会施設として、すでに欧米諸國におきましては永い歴史を持つております失業保險制度をここに創設することとした次第でございます。  而してこの失業保險制度社会保障の一環としてその重要な役割を持つものでございまするが、生活保護法のような、單なる社会救済救貧制度と根本的にその性格を異にするものでございまして、職業紹介機関運営密接不可分関係を持つことによりまして、失業者就業機会を與えようとする積極的な意味を持つておるものでございます。  次に本法案の各條章の概要を大体御説明申上げたいと思います。詳しいことは政府委員から説明いたさせます。  先ず本法案におきまして、保險料を徴收し、保險給付をなすなど、保險事業経営の主体である保險者には政府がこれに当ることといたしておりまするのは、この保險が危險分散が大きいということと、職業紹介組織などを考慮した次第でございます。  次に本保險適用範囲は、健康保險強制適用を受ける事業所に雇用される者を当然被保險者——他言葉でいえば強制保險者ともいいますが、そういう資格者といたしまして、当然適用を受ける事業所以外事業所に雇用される者につきましては、任意包括加入をなし得る途を開いたのでございます。併しながら、海上労働者である船員保險の被保險者につきましては、陸上労働者と異る特殊的な労働事情があるという点に鑑みまして、本保險の被保險者より除外したのでありまして、船員保險中にこれを吸收することといたしました。尚國や都道府縣、市町村等公共團体に雇用される者につきましては、それらの者が離職した場合における諸給與内容、例えば恩給、退職金等内容が、本法による保險給付内容を超えておると認められる場合には、これらの人たちは、被保險者から除外することにいたしました。  次に本法案の眼目でありまする失業保險金支給につきましては、六ケ月の資格期間及び離職後、定期的に公共職業安定所に出頭いたしまして失業認定を受けることを受給要件といたしまして、支給日数受給期間の一年間において通算して百八十日といたしましたのでございます。このことは現下離職就業の状況及び各國の失業保險の実情に照し合せまして決定いたしたのでございます。尚失業保險金の額は、標準報酬日額の百分の六十を平均の基準といたしまして、それよりも低額所得者には支給率の最高が百分の八十まで、これを漸次増して支給し、それよりも高額の所得者には、支給率最低百分の四十までを漸次減らして支給して、努めて最低生活の維持を図り、社会保險たるの実を全うしようとしたのでございます。  次に本保險運用に関する費用負担につきましては、被保險者である從業員及び被保險者を雇用する事業主は、おのおの標準報酬月額の千分の十一に相当する保險料負担することといたしました。尚、保險者である政府は、保險給付に要する費用の三分の一及び事務費の全額を支出をして、他方失業保險特別会計を設けまして、これらの收支に当らしめることといたしました。  次に本保險事業運営につきましては、事業主、労働省、公益を代表する者より成る失業保險委員会を設けまして、重要事項審議に当らしめ、そうして本保險を民主的に運営することといたしました。  最後に、保險給付に関する異議の申立てに関しましては、失業保險審査官並び失業保險審査会を設置いたしまして、簡易迅速に裁決を行うことにいたしました。  以上失業保險法大要を申上げたのでございまするが、会期極めて短かいとき、而も國会が相当期間休会であつたというようなことを御考慮の上、成るべく早く御審議の上御決定あらんことをお願い申上げる次第でございます。  次に失業手当法案提案理由を御説明申上げます。  只今説明申上げました通り失業問題に対する恒久的対策一つとして、本法案と共に失業保險法案を提出したのでございまするが、失業保險は、保險給付が開始されるまでの間に、最短六ケ月の期間を必要とするものでございます。然るにその間において、失業者の発生することが、今日の経済情勢から予見されまするので、この六ケ月の期間を、失業対策上これをなおざりにいたして置くことは許されません。何らかの措置が要請されるのでございまして、ここに失業保險法案の足らざるを補う意味におきまして、この失業手当法案なるものを提出いたした次第でございます。  從いまして、本法案失業保險法案の構成と密接な聯関を持つており、又その考え方も失業保險法案と同じでございます。ただ本法案失業保險法案と違うところは、本制度保險としての本來の資格期間を充してないのに拘わらず、國庫の特別の負担による給付であるという点でございまして、この点より失業保險法案に比べまして、受給要件給付額或いは給付制限等におきまして、多少窮屈である嚴重なる特別の規定を設けてあるのでございます。  以下本法案の主なる條項について御説明申上げます。  本法目的は第一條に明らかでありまする通り失業保險の被保險者を対象とするのでございまして、第二條においては失業手当金を受ける資格として、本法の施行の日から昭和二十三年三月三十日までの間に、即ち失業保險法による保險給付開始の直前までの間に職業から離れたということを資格要件として規定してあるのでございます。  次に失業手当支給につきましては、前に申上げた理由によつて失業保險法案に比べまして若干異なる規定が設けてあるのでございます。即ち支給金額につきましては、第五條におきまして、失業保險法保險給付額と比べまして若干低額となるように規定し、支給日数につきましては、第八條におきまして百二十日分と規定をし、又支給制限に関しましては、第十條及び第十一條におきまして、支給が全面的に停止されることを規定してあるのでございまして、いずれも失業保險法案のそれに該当する事項に比べまして、いささか嚴格となつておるのでございます。  以上失業手当法案大要につきまして、失業保險法案と比較しながら御説明申上げた次第であります。  ここで皆さんに特に私からして御注意を願いたい点は、この両法案を出すことによりまして、若しも一部の経営者の間に、そういう法名が出るならば当然いわゆる企業整備によつて馘首しても差支えないというような考えを起す者があるとすれば、これは非常なる誤りでありまして、政府といたしましてはそういう考えを極力修正するように努力するつもりでございます。  以上申上げたことによつて、両法案上程趣旨が御了解になつたと思います。何とぞ先程申上げたような事情によつて、愼重なる御審議は当然のことでございまするが、十月一日において一應施行することになつておりまする関係上、成るべく早く御採決あらんことを特にこの際お願いする次第であります。
  4. 原虎一

    委員長原虎一君) お諮りいたします。議事進行方法につきまして、今米窪大臣からの御説明に対する質問を直ちにいたしますか、法案の各條についての説明政府委員からやつて、それからにいたしましようか。法案の方を局長から説明するようにいたしましようか。
  5. 原虎一

    委員長原虎一君) それでは上山局長から法案各條についての説明を願いたいと思います。
  6. 上山顯

    政府委員上山顯君) 失業保險法並手当法提案理由、それから大体の構想につきましては、只今労働大臣から御説明いたした通りであります。それを若干補足いたしまして、各條の特に問題のありそうなところだけを選びまして説明を加えたいと存じます。  先ず失業保險法から申上げます。  第一條法律目的只今説明いたした通りでございまして、被保險者失業しました場合に、失業保險金支給いたしまして、その生活の安定を図るという目的を持つておるのであります。  第二條保險者規定がございます。御承知かと存じますが、健康保險におきましては、政府が直接勧獎いたしておりますものの外に、大工場等におきましては自分で組合を作らせます。いわゆる組合組織のものがありまして、政府勧獎組合勧獎との二本立てになつております。ところが、この失業保險におきましてはそれを全部政府勧獎のみに一本立てにいたしたのであります。その理由只今労働大臣説明にもあつたのでありますが、一つには失業保險という保險は非常にリスクの多い保險である、從いまして成るたけ廣い範囲に危險分散をいたしますことがこの保險趣旨の主なる理由であります。もう一つ理由といたしましては、失業保險失業という事由の発生によりまして、当然無條件に保險金支給するのではありませずに、失業者公共職業安定所に出頭いたしまして、先ず求職申込をし、公共職業安定所としましては極力就職斡旋をする。どうしてもそれがない場合において初めて失業保險金支給するということになつております。即ち職業紹介機関運営と密接な関係をもつておるのでありますが、その職業紹介機関が御承知のように原則として國家の施設としましてできておりますので、そういう二つの理由によりまして保險者は單に政府一本立てということに相成つておるようなわけであります。  第三條に失業の意義が規定してございますが、特に説明する必要はないかと思います。  第四條に報酬のことの規定がございますが、ここで特に申上げたいと存じます。これは現在厚生年金健康保險におきましては、この報酬の中には家族手当を含んでないのでございますが、失業保險といたしましては、家族手当をも含むことに考えております。これはいずれ政令で決めるのでございますが、そういう予定で進んでおりますことが主な違いでございます。  第五條といたしましては、他の規定と同じように標準報酬を使うということを規定してございます。  第六條の中に被保險者範囲規定してあるのでございます。第六條といたしましては、被保險者がこの法律規定によりまして当然被保險者となる者の範囲規定してあるのでございます。この範囲といたしましては、原則としましてここにいろいろ事業が列記されておりますが、これらは健康保險範囲と同じでございます。但し文字の表現としましては後からできました労働基準法文字が使つてございます。但し内容健康保險と同じということになつております。  そうして当然被保險者範囲のところで私共が問題として檢討いたしました点は大体三つあるのでございます。  一つ女子の労務につきましては、これを当然適用するのがいいか、或いは日本只今女子労働事情から考えまして、後で出て参りますところの任意包括保險者にする方がいいかという点が問題になつたのでございます。それでいろいろ研究したのでございますが、結論といたしましては、社会保險という相互社会連帶考えに基いておるその本質に鑑みまして、もう一つ男女を区別するというのは新憲法の精神から申しましても適当でないというような点を考えまして、結局結論といたしましては男女の区別なく等しく当然被保險者にいたした点でございます。  第二に問題になりました点は、國及び地方公共團体に雇傭されておる者でございまして、これらの者は地位が安定しております。失業の危險に曝されますことが比較的少いというようなこと、それから國及び地方公共團体につきましては退職時の給與につきましていろいろ制度が設けられております。これらの点を考えまして、果して失業保險の被保險者に入れるのがいいか、除外するのがいいのかという点についていろいろ檢討いたした次第でございます。それで結論といたしましては、第六條の規定によりまして國及び地方公共團体に雇傭される者も当然被保險者に入れることにいたしました。但し第七條におきまして國及び地方公共團体に雇傭されます者が離職しました場合の、本人支給されます諸給與の内客が、実質上におきましてこれらの諸給與失業保險と別の制度でございまして、形式的には食い違いがございますが、実質的に見まして本法による失業保險金給付と同等以上と考えられます場合には、失業保險の被保險者から除外するということにいたしたのでございます。そうしてこれをどう扱うかということは結局政令で決める問題でございまして、若し國及び地方公共團体実質失業保險内容と同じような制度ができますならば、これを除外して參りたいという考えで研究をいたしております。  それから第三に問題になりました点は船員でございまして、これは現在船員につきましては、健康保險厚生年金に相当いたしますものも健康保險法厚生年金法によりませず、船員保險法というもの一本で現在でやつておるのでございます。それで失業保險につきましても、先刻申上げたように成るたけ危險分散の範囲を廣くするという意味から申しますと、船員失業保險についてもこの失業保險法に包含いたす方がいいという理窟もあるのでございますが、現在船員については、船員特殊性に鑑みまして、別個の船員保險というものがあるわけでございますので、むしろ船員特殊性ということを重く見まして、船員保險の中でこの失業保險をやつて參りたい、かような考えを以ちまして、後程第十條でそのことが書いてございますが、船員保險の被保險者につきましては失業保險の被保險者から除外いたすということに方針を決めましたような次第でございます。  以上が当然被保險者についての規定でございますが、第八條には任意包括保險者のことが規定してございます。即ち本法適用を受けます事業以外の事業に雇用されております者につきましては、当然その一人だけを切り離して被保險者にすることはできませんが、その事業に從事して雇用されております從業員を包括しまして失業保險の被保險者とすることができる、かようにいたしておるのでございます。これは現在健康保險厚生年金もこれと丁度同じの規定ができておるのでございます。それで一人々々飛び出しても任意加入というこさを認めなかつた理由は、さようなことをいたしますと、結局整理されそうな男だけが任意加入するということになりまして、いわゆる保險で逆選択と申しておりますが、保險といたしましては趣旨に副わないという意味で、全部引括めてなら任意加入できる、かようにいたしておるのでございます。  第八條の二項に書いてあります二分の一以上の同意というようなことも、これも現在の他の社会保險と同様でございます。ただ新らたに規定を設けましたのは、第三項に被保險者となるべき者の二分の一以上が希望しましたときは、事業主としましては認可申請をしなければならない、これも実際運用としては大した必要はないじやないかという理窟もあるのでございますが、はつきりいたしておく意味で、希望すれば雇用主認可申請をしなければならないということになつておるのでございます。  それから第十條に被保險者から除外される者といたしまして、日雇いの労務者でございますとか、期間を定めて雇用されました者等につきましては、一應これを被保險者から除外するという規定を設けてございます。担しそれらの者が引続いて一定期間同一事業主に雇用されました場合には、その者はその一定期間を超えましたときからは被保險者にいたすということになつておるのでございます。これも現在健康保險なり厚生年金で、こういう規定ができておるのでございまして、それに倣つた次第でございますが、一口に申しますと日雇いでございますとか、期間の定めのあります者でも常傭されております者については、これを常傭と同じような被保險者とするということでございます。細かいことを申しますといろいろ論議の点もございますが、大きな筋といたしましてはそういう趣旨考えておるような次第でございます。  それから十一條以下に、被保險者資格の取得でございますとか、喪失でございますとか、被保險者期間の計算等規定がございますが、これも他の社會保險法と大体同様でございます。技術的な規定でございますから説明は省略いたします。  それから第十五條に被保險者資格期間のことが規定してございます。これは只今大臣説明にもありましたように、離職の日以前一年間に、通算して六ケ月以上被保險者であることを要件にいたしてあるのでございます。即ち必ずしも継続してでありますことは要しないのでありまして、断続してと申しますか、飛び飛びでも結構でございまして、結局通算して六ケ月以上被保險者でありますことを資格要件といたしておるのでございます。  それから第十六條にそういう資格要件をかなえました、いわゆる受給資格者失業保險金支給を受けますには、公共職業安定所に出頭して求職申込をして、失業認定を受けなければならないということが規定してあるのでございます。これがこの生活保護法のごとき單なる救濟制度とは非常に違つておる点であります。決して單に保險金手當金支給するということ自体が目的じやないのでございます。即ち國の就労斡旋機関と結びつきまして、飽くまでまず仕事を見つける、どうしても仕事がない場合に初めて失業認定をして保險金を渡すということに考えておるのでございます。尚この公共職業安定所に出頭する回数としましては政令で決めることになつておりますが、原則は一週間に二回ということに考えております。担し交通不便等の所でございましては、或いは一週間に一回とか、場合によりましては月に一回というようなことも考えておりまするし、又公共職業安定所の職員がこちらから出張して參りまして失業認定をいたすというようなことも、交通不便の地については考えております。  それから十七條は給付の金額でありまして、これは原則標準報酬の日額の百分の六十ということにいたしております。担し報酬の多い者につきましては百分の四十まで減らすことができる。報酬少い者につきましては自分の八十まで増加をできるということにいたしておるのでございます。  それから十八條受給期間という規定がございまして、先業保險給付を受けます期間としましては一年間の限度ということにいたしておるのでございます。一年間の限度を設けました趣旨は、失業いたしましたが、一年間も二年間もちつとも安定所へ出頭しませずに、その後初めてふらつと安定所に出て來るというやうなことは、失業保險趣旨から申しまして面白くないと思うのであります。現に失業して困つておるというわけなんでありますから、早速安定所の方へ出頭して認定を受ける。そうして受給期間は一年間を限度として整理をして参りたい、こういう考えであります。  それから十九條に待期の規定がありまして、これは他の社會保險にも類似の規定があるのでございますが、安定所へ出頭いたしましても直ぐその日から失業保險金支給するのぢやありませずに、十四日間というものは失業保險金支給しないということになつておりまして、その間に安定所としましてはいろいろ本人資格等の審査ということもやりまするし、又その期間にできるだけ仕事を探して見まして、一一失業保險金を短期間だけ支給する、こういうようなことをせずにやつて参りたい、こういうふうにしておるのであります。  それから二十條は給付日数規定でございまして、十八條受給期間としましては一年間ということに決めたわけでありますが、その期間内におきまして通算して百八十日分を超えてはこれを支給しないということになつております。ですから、例えば一月一日に失業いたしまして、支給期間としましては本年一ばいであるわけでございます。その間に百八十日でありまして、初め継続して三ケ月失業保險金を貰う、それから途中二月ばかり仕事に就きまして、もう一遍失業しまして又二月ばかり失業保險金を貰うというようなこともできるわけであります。結局この一年の期間内におきまして百八十日が限度ということに規定いたしたのであります。  それから第二十一條給付制限規定でございます。これは失業保險が、先刻から申上げておりますように、單なる保險金給付じやないのでございまして、できるだけ職業紹介機会を多くしまして、就職を容易ならしめたいという趣旨を持つておりますので、安定所が折角紹介しました職業に正當の理由がないにも拘らず、これを拒んだという場合には、一定の期間を限りまして失業保險金支給しない、かようにいたしておるのであります。即ち期間を限りましての給付制限でございます。而してこの拒み得る正當な理由はどういうことにいたすかということにつきましては、結局只今日本社会経済状態というようなことも考えまして、一号以下に規定いたしたのであります。  まず第一には、紹介されました職業受給資格者能力から見て不適當と認められるときということになつておるのでございます。この点は一番私たちが議論をし檢討を加えた点でございまして、日本社会状態から申しますと不適當、というような言葉はいわば甘過ぎる、凡そ体力から見て堪えられる場合には全部本人はそれを承諾しなければいかんじやないかというような意見もあつたのでございますが、とにかく保險といたしましては、保險料を拂つたわけでございまして、できるだけ本人に適職を探してやりたいという趣旨から申しますと、ただ堪えられるだけでは少し嚴格過ぎるのじやないか本人能力から見て、これは不適當だという場合にはやはり付けない方が宜かろうというようなことで、能力から見て不適當と認められましたときに拒み得るようにしたのであります。併しながら能力から見て不適當というのは必ずしも前職通りということは意味しないのであります。外國立法令等には前職通りでなければ拒み得るというような立法令もあるようでありまするし、又前の給付より少しでも低い給付のときに拒み得るというような例もあるようでありますが、それは日本只今社会経済状態から見ては無理じやないか、でありますから、必ずしも前職通りでなくても、又若干は前の給與よりも低い給與でありましても、結局客観的に見ましてそれは本人に最もふさわしい職業だ、本人能力から見ればその職業を果し得るという場合には、これを正當の理由として拒み得ないことにいたしたのであります。  それから第二の点は住所居所を変更しなければならないような場合に、その変更が只今日本の住宅事情から申しますと、そういう場合が多いかと思いますが、どうしても変更が困難であると認められます場合には拒み得るということにいたしたのであります。  それから三といたしましては「同一地域における同種の業務及び技能について行われる一般の報酬水準に比べて、不当に低い」、前の職業よりも若干低いという場合には状況如何によりましては止むを得ないと思うのでありますが、その業務及び技能について行われますところの一般の報酬水準よりも不当に低い、こういう場合には拒んでも結構であるということに相成つておるのでございます。職業安定法の御審議の際いろいろ御檢討願つたことに関聯いたしておるのでありますが、かように保險法ではいたしておるのでございます。  その他正当の理由があるときに拒み得るということにいたしております。それで保險法として実際の運用といたしまして一番問題になるのは、恐らくこの第二十一條運用じやないかと存じております。この点私たちといたしましては、できるだけ具体的な事例を挙げまして、一つの標準を作つて第一線の職業安定所には示したいと思つておりまして、その基準を作るにつきましては、後程出て参りますところの、関係事業主なり労働者の御参加を願います失業保險委員会等に、十分お諮りをいたしまして、適当なる標準を作つて参りたい、かような考えであります。  それから二十二條は、これも大体同じような趣旨規定でございまして、自己の責に帰すべきような重大な理由によつて解雇されたり、又何ら止むを得ない事由がないに拘わらず、自分の都合で退職したいという場合も全然失業保險金支給しないというのは、嚴格過ぎると思いまして、一定期間だけは支給しないということに相成つておるのであります。  二十三條の詐欺その他不正の行爲、これは全く不都合の行爲でございますので、全然保險金支給しないという考え方で規定されておるのでございます。  その他二十四條以下等の規定は、大体他の社会保險にも同じような規定がございますし、なお政令でいろいろ定めることでございますので、特に御説明は必要ないかと存じます。  二十八條、二十九條、三十條の辺まで保險料負担のことが書いてございまして、一口に申しますと、保險給付に要します費用は、國が三分の一を負担し、後の三分の一をそれぞれ被保險者であります。労働者及び被保險者を雇つております事業主負担する、かようになつておるのでございます。  尚、失業保險事務の執行に要します経費は、第二十八條二項に規定してございますように、國が全部負担することになつております。これを御参考のために他の社会保險と比較いたしますると、健康保險事務費の一部を國が負擔いたしまして、給付については國は全然負担しておりません。それから厚生年金については事務費を國が全部負担いたしまして、給付につきましては一般の労働者厚生年金給付の一割、それから特に炭坑の坑内夫につきましては二割ということになつております。それらに比べまして失業保險といたしましては、これは相当事業主なり労働者としましても負担を重くするものでございまして、又失業ということにつきましては、國が特に大きな責任…………という言葉は或いは適当かどうか存じませんが、関心を感じておるものでございますので、特に保險給付の三分の一を國庫負担することに相成つておるのでございます。  それから三十一條保險料率の規定がございます。これは標準報酬に對しまして、被保險者事業主がおのおの千分の十一ずつ負担するということになつております。そうして保險料率の算定といたしましては、失業率でございますとか、給付期間制限、その他いろいろな條件を檢討いたしまして、從來社会保險制度調査会の研究等をも斟酌いたしまして、千分の十一ということに保險料率を決めたような次第でございます。  それから第二項以下にやや細々とした規定がございますが、これは一口に申しますと、保險料率は丁度税率なんかと同じように、法律で決めるという原則を立てました。從いまして保險料率の変更は、この法律改正の手続をとるという原則規定いたしておるのでございます。但し特に緊急の場合には、社会保險失業保險委員会の意見を聞きまして、労働大臣が取敢えず変更することができますが、この場合にも後の國会提案いたしまして、御賛成を得なければならんという趣旨規定が書いてあるのでございます。  それから三十二條以下の保險料納付の義務者でありますとか、報酬からの保險料控除でございますとか、その他督促の規定も他の社会保險と同樣でございますので、説明を省略いたしたいと思います。  それから三十九條に失業保險委員会規定がございまして、失業保險事業運営に関します重要事項審議いたしますために、政府失業委員会を置きまして、被保險者事業主を代表する者、それから公益を代表する者おのおの同数を以て組織いたしまして、十分関係の方々の御意見を聞いて、民主的に運用いたして参りたい、かような考えでございます。  第四十條以下に失業保險金支給等につきましての不服のあります者の審査の請求、訴願、訴訟の規定がございますが、これも他の社会保險と同樣でございまして、特に御説明いたすこともないと思います。  雜則につきましても特に御説明することはありません。  次に失業手当法でございますが、これは労働大臣から御説明いたしましたように、又私も只今補足して申上げましたように、失業保險金の方では仮に十月一日から施行いたしまして、保險料の徴收は十月分から始まりましても、保險金支給が始まりますのは六ケ月という資格期間関係上、來年四月以降になる、從いましてその間の繋ぎの制度といたしまして、失業保險金、本來といたしましては資格がないに拘わらず國が特別の負担を以ちまして失業手当金支給して参りたい、かような考えでできておるのでございます。  而してこの失業手当法適用範囲でございますが、これも立案の過程におきましては、單に失業保險の被保險者に限定しませず、もつといわゆる失業者全部の失業手当適用したらどうかという意見もありまして、いろいろ檢討したのでございますが、財政上の理由が主とした理由でございます。尚只今のような日本社会経済状態からいたしますと、いわゆる失業者全部に失業手当支給するということにいたしましても、果してそう人が本当の失業者であるかどうかということの認定も非常に困難であるというような事実的のことも考え合せまして、いろいろ檢討いたしました結果、結局失業保險金の被保險者範囲を同じようにする、失業保險は被保險者が六ケ月の間は保險金支給できない、その缺陷を補いますために、繋ぎの制度として失業手当支給する、かような考え方でできておるのでございます。  それで失業手当金支給を受けられます該当者としては、「離職の日まで継続して六箇月以上、失業保險法規定する事業所に雇用されたこと」ということを條件といたしておるのであります。即ち失業保險法の被保險者といたしましては、まだ一ケ月二ケ月にしかなつていないという場合でありましても、とにかくどこかの事業で、どこかの失業保險法規定してあります事業所で六ケ月以上雇用されておつたということを必要といたしておるのであります。而してこの場合は、失業保險の場合と違いまして、継続して六ケ月以上ということにいたしましたのは、失業者失業手当を受ける資格のあります者の範囲をはつきり掴みたいという趣旨からいたして、かように考えたような次第でございます。  それからこの法律施行の日から昭和二十三年三月三十日までの間において離職をしたということになつておるのでございまして、これは三月三十日とありますのはミスプリントではございませずに、その通りで正しいのでございまして、三月三十一日に離職いたしました者は、先刻細かい説明は省略いたしましたが、失業保險法の方の資格の喪失等の規定関係からいたしまして、これらは六ケ月間の資格を満了して失業保險金を貰えるということになりますので、三月三十日までの間に離職いたしましたことを條件としまして失業手当金支給するということにいたしておるのでございます。そうしてこれらの失業手当金を受けられます者につきましては、三月三十一日までの失業手当金という名前で、これについては國の全額負担ということで支給をいたしまするし、その同じ人が四月一日以後につきましては失業保險金というような名前で支給をする。而してこの失業保險金四月一日以後のものにつきましては、國の負担は三分の一ということになつておるのでございます。即ち三月までの六ケ月間の期間によりまして、失業保險の特別会計としましては、相当の積立金もできておりますので、その後は國の特別の御厄介にならずにやつて行こう、かような趣旨でできておるのでございます。但しこの失業手当金を受けます者が、四月一日以後におきまして受けます失業保險金は、これは失業保險法の特別の例外的な場合でございまして、内容におきましては失業手当金と全然同じ内容のものでございます。從つて後で申します支給金額でございますとか支給日数等も、失業手当金の金額、日数がそのまま用いられるような関係なつておるのでございます。  それで失業手当につきましては、大体は失業保險と同じでございますので、一々の説明は省略いたしまして、変つておる点だけを申上げますと、第五條支給金額はこれは保險の方は標準が百分の六十になつておりますのに対して、こちらは百分の五十五ということになつております。又最高は百分の七十五、一番低いところで百分の三十五、それぞれ保險金よりも五%ずつ低いところで決まつておるのでございます。これは先刻來申しておりますように、本來の失業保險受給資格をまだ満了していない人について、國が特別に手当を支給いたすのでございますから、かような區別をいたしたのでございます。  それから待期も、第七條でございますが、一般が十四日に対して、これは三十日ということになつております。  それから一番大きな違いは第八條でございまして、保險金の方は百八十でございますが、こちらは百二十ということになつております。  それから第十條の資格制限、十一條支給制限につきましても、保險の方は一定期間のみの支給制限でございますが、こちらは一定期間というような期間制限がなくて、無制限支給制限されておりまして、これも若干減額になつております。それが大体の違いでございます。  それからもう一つ、第十六條にございますように、費用負担につきましては、三月末までの失業手当金という名前のときには、給付の全額を國庫負担する、それから四月一日以後の失業保險金という名前になりましてからは、一般の失業保險金と同じように給付の三分の一を負担する、かようなことに相成つておるのでございます。  以上を以ちまして御説明を終ります。
  7. 原虎一

    委員長原虎一君) 両法案説明は終りましたのですが、質疑でございますけれども、時間も十二時過ぎましたし、労働大臣がキレン労働課長に会うために、準備があるからといつて帰られましたので、本日はこの程度で打切りたいと思いますが、いかがでございましようか。
  8. 原虎一

    委員長原虎一君) それでは本日はこれで閉会いたします。    午後零時十一分散会   出席者は左の通り。    委員長     原  虎一君    理事            堀  末治君            小川 久義君    委員            赤松 常子君            天田 勝正君            植竹 春彦君            深川タマヱ君            奥 むめお君            竹下 豐次君            早川 愼一君            姫井 伊介君            岩間 正男君            紅露 みつ君   國務大臣    労 働 大 臣 米窪 滿亮君   政府委員    労働事務官    (職業安定局    長)      上山  顯君