○國務
大臣(一松定吉君) 服部委員の御
質問に関しまして、その御
質問の順序に
從つて私の所見を申上げて見たいのであります。先ず第一点は、青少年に対する禁酒法を制定するについての私の所見を訊されたのでありますが、私は青少年が酒を飲むことによ
つて害のあることはよく承知しております。故にこれらの点についてなるたけ飲まないようにして保健衛生の立場から、若しくは思想方面の立場からもこれらのことは飲むがいいか、飲まないがいいか、勿論飲まないがいい。私かように考えております。これらの問題に関しましては、服部委員御承知の如く、私が
昭和三年に代議士に出まして以來今日まで、どの議会にもどの議会にも、禁酒法の請願若しくは決議案、建議案それから法案というものが出て論議されたのではありまするが、一方においては、これに反対するところの手続がとられたことは、服部さんの御承知の
通りであります。私はそれらの両方の意見をよく拜聽もし、研究もして見たのでありまするが、今日
只今の私の考ではでは、これを法律を制定して取締るということは、私は必ずしも適当でない、かように私は考えておるのであります。むしろこういうことは、いわゆる家庭において、もしくは教育においてそういうようなことは、自然にこれは
惡いのだということを自分から了解をして、そうしてこれらの者に、酒をのまないようにするということの方か正しい遣り方ではないか、私かように考えておるのであります。若し体に害があるということであれば、害のあるものは悉くこれは法律をいて似て、取締らなければならんという結論になりましようが、この酒を飲むということが、害になるという場合もあ
つて、或学説によると、即ち酒は長寿のもとである、酒は百薬の長だという言葉も昔から言いふるされておることは御承知の
通りであります。問題は
程度の問題である。僅か酒を二三杯くらいのんで、ぽつと紅潮をさして、なんとなく非常に氣持がよく
なつたという
程度であるか、酒をのんで管を巻いて、そうして近所隣の人にめいわくをかけ、友人に助けられなければ歩行ができない。或いわ酒を沢山飲んで嘔吐をあげたり、人の頭をぶん殴るとか泣くとかいうようなことがあれば、これは盆がなくて害の多いことありまするが、ちよつと小さい杯に一、二杯くらい飲んだということで、必ずしも害があるということに、直ちに断定はできんのではなかろうか、かように甲論乙駁しておる。これらのことを法律で似て制約するということは、今少しく研究しなければならんのではないか。かように私は考えておるので、問題は
程度の問題、つまり
程度の如何を問はず酒を禁ずるということになりますと、煙草にしても同じこと、煙草にしても煙草を量を過ごすということになると、眩暈がする、痰が出る。それがために却て病氣を促進せしめるというようなことになる。併しほんの少しばかり飲むということは害がないという。こういうようにいろいろ飲む人と飲まない人とに議論をさしておれば議論は盡きないことであります。故に議員の中でも、いわゆる禁酒法に賛成する議員あり、禁酒法に反対する議員あり。こういうことは服部さんの御存知の
通りでありまして、これらのことは、これは私は法律で以て禁止するということよりも、いわゆる個人々々の精神の修養、教育という方面から、むしろその弊害のないような方面かに導くということが正しいのではないか。かように考えておるのでございますから、今私がこれらの法律案を出して、厚生省案として出して云々ということについては、
只今はそういう考えを持
つておりません。併しながらいわゆる國会の皆さまは、國家意思の最高機関にあらされる方でありますから、皆さま方が御提出にな
つて、皆さまが御審議の上、そうしてこれが法案となれば、勿論厚生省は皆さまの御意思を尊重して、これらの法律の施行に当らなければなりませんが、それらのことは
政府がするということより、むしろ立法府であるこの國会において、そういう御提案にな
つて、御審議相成るということであれば、私共はそのいわゆる高論卓説をよく拜聽いたしまして、國会の意思に
從つて行動いたしたい。かように私は考えておるのであります。どうかさように御
了承賜りたいのであります。
玄米食の問題、これ亦同じく衆議院におきましては、服部委員が衆議院議員でおありに
なつたときに、常にこれを御主張になりまして、衆議院の中に玄米食を試食する会まで服部議員は御開催相成りまして、私共はその試食会に出て、そうして舌鼓を打
つて成る程うまいなあと言
つて、大いに賛成の意思を表したこともありました。そのときには、非常に玄米食ということに対しても國民も関心を持ち、議員諸君も関心を持
つて、だんだんそれが宣伝せられつつあ
つて、明治神宮の表参道のところには、二本博士が特に出張されて、参拜者に安價にお奨めに
なつた。私は家内を連れて数囘試食したという経験を持
つております。又服部さんのお奨めによ
つて高圧釜という釜を買いまして、これを自分の家庭においてやつたこともあるのでありますが、これに対しましては、やはり炊事の方面においていろいろ支障もありまするし、又医学の方面から言いますると、玄米食必ずしも保健衛生上宜しくないという議論もあるのでございますが、これは服部さんの御希望のように、厚生省においてどの
程度に研究しておつたかということを、未だ私は調査しておりません。早速調査いたしまして、既に研究がこれこれにな
つてお
つて、これは弊害があるという結論を得ておるのか。或いは非常に有効であるという結論を得ておるのであるか。或いは実際研究が積んでいないのか。これらの点を早速取調べまして、適当の機会に発表をいたすことにいたしましよう。さよう
一つ御
了承を願いたいのであります。玄米食を國民がやることによ
つて、米が二割節約ができるというような御意見もあつたようでありまするが、果して二割の節約になるのか、それがために却て薪炭を沢山使
つて、燃料不足のときに、今日それがいいのであるか、どうであるかというようなことも、やはりこれは研究してみる必要があろうと思います。そういう点につきまして厚生省において長さ、研究したことをよく取調べまして、適当の機会に発表するということにいたしましよう。
一つ御
了承賜りたいのでります。
公衆風呂の不潔、これはもう私全然貴方と同じ考え、私は風呂に毎日入ります。毎日入るということは、そういうことであるかというと、私は風呂の中に手拭を持
つて入つたことがない。必ず体を綺麗に洗
つてしま
つて入
つて、風呂の中で数秒間温まりまして、それから外に出て、そうして体を綺麗にして又入
つて、二度入るのですが、手拭を使つたことがない。そうして上が
つて冷水浴をして綺麗にして着物を着るという習慣でございます。私は公衆風呂に余り入つたことはありませんが、併し公衆風呂に対する経験もいくらも持
つております。公衆風呂に参りますと、貴方の仰しやるように、風呂の中で頭の毛を洗い、甚だしきは嗽いをしておるというようなことがありまして、実に私は日本人が風呂に入
つておるとこをの作法というものを非常に実は憤慨をしておる一人、あなたと同じでございまするから、この自分の家にある風呂でも、風呂の中には手拭を持
つて入らないように、体を綺麗にしなければ入らないように、というまで家庭の者に言い附けてや
つておることでありまして、全くあなたと同感でございます。でございますが、厚生省という保健衛生の立場から、そういうことを全國の浴場に訓示するだとか、或いはそういうことをしなければならんという政令を出すとかいうようなことは、これはまあ少し行き過ぎじやないかと思いますが、場合によればそのくらいの必要があると私は考えておる。況や近頃の浴場は一週間に一遍か、或いは十日間に一遍でなければ、湯に入れないというところに行
つて見ると、もうまるで、「ごぼう」を洗うどころでない、片足入れたら片足は中に入らない。風呂の中では、どうも茶碗やいろいろなものを台所で洗つた水を放り込んだようなもので、つまり肥しのようなものであるというようなことは、確かに保健衛生上宜くありません。あなたの仰しやるように、世界の人が、日本の風呂というものに対して非常に非難攻撃しておるというのは、如何にも御尤もである。私も向うに洋行した時分に、それらの点をよく自分が見聞しておりまして、日本人の風呂の入り方ということについては、全くあなたと同じ考えでありますから、これらの点についても大いに
一つ浴場内の清潔運動というようなものを、国民運動を起こすとか、或いは保健衛生の立場から、いろいろな方法によ
つて、教育なり、或いは宗教なり、いろいろな運動なり、ラジオなり、新聞なり、演説なりということで、
一つこういうことを是正して見たいと予て考えておるのでありますから、あなたの御趣意は尊重いたしまして、できるだけこれが実現に
努力いたします。かようなことを
一つ申上げて、誤答弁に代えたいのであります。