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黒田英雄君 只今上程せられました各案につきまして、
委員会におきまする
審議の
経過並びに結果について御
報告をいたします。非常に沢山の
法案であるのでありまして、これを十分に
説明いたしまするには非常な時間を要するのでありまするが、
会期の終了も近
ずいておりますので、極く
簡單に
報告をいたしたいと思います。
先ず
政府に対する
不正手段による
支拂請求の
防止等に関する
法律案について申上げます。本年九月十二日
附連合軍最高司令官から
日本國政府に宛てられました
政府支出の
制減に関する指令は、
政府をして
闇値格と不当な高
賃金による支沸をなすことから免れしめ、当面しておりまする
財政の危機を打開せしめようとする厚意に出たものでありまするから、
政府としてあらゆる困難を克服して、非常な決心を以てこれに対しまする適切な
措置を講じなければならないことにな
つておるのでありまして、
工事の完成、
物資の生産、その他役務の提供に関しまする代金、又は報酬の國に対しまする支拂の請求につきましては、
公定價格のある
物品等の代償及び軽微なものを除きまして、
原則としてその
内容を
材料費、
労務費等に分けまして、おのおの
公定價格又は
労働大臣の定めておりまする
一般職種別賃金によりまして、
内訳を
提出させ、且つ
数量の面でも実際の
使用数量によらしめること等、不正を
防止して
財政支出の適正を期せんとするものであるのであります。そのために、その
内訳書は適法のものであるという
誓約書を
提出させることにいたしているのであります。尚この
措置は、
地方公共團体及び
公團にも準用することにな
つておるのであります。これにつきましては、いろいろ
質疑應答もございましたが、これは
速記録に護ることにお許しを願いたいと思うのであります。結果は後で纏めて申上げます。
次に
通貨発行審議会法案について御
説明を申上げます。
通貨の増発を抑制するためには、
政府としても
財政資金の放出をなるべく抑制することは必要でありまするから、その
健全化に極力
努力し、
資金の
融通にも必要な
規正を加えて、なるべく市中から吸収した
蓄積資金の範囲に限定をして
融通をしておるのでありますが、他面
通貨の
発行自体についても
規正を
図つて、その
発行量を我が國現在の経済的諸情勢に適合せしむるものとする必要があるのでありまして、これがために、先に制定されました
日本銀行法の一部を
改正する等の
法律に基ずきまする
通貨発行
審議会をして
通貨の発行限度等
通貨量の適正な
規正に参與せしめ、且つ
通貨金融政策等に関しまする、基本事項について
審議し、建議せしめることにいたしておるのであります。これは
日本銀行法によりまして、
主務大臣は
通貨発行
審議会の議決に
基ずいて閣議を経て
通貨発行限度を定めなければならんというような
規定があのるのであります。その他
日本銀行法に
規定しまする権限を與えておるのであります。これにつきましては
質疑應答の主なるものを一二申上げて置きたいと思います。
最も論議されましたのは
審議会の構成の問題であつたのであります。この
審議会は総理大臣、大藏大臣、安本長官、日銀総裁、その他学識経驗ある人が金融、銀行とか、その他から出ることにな
つておるのでありまするが、
通貨の膨脹は國の
財政に起因することが極めて多いのであります。その膨脹を阻止するところの、つまり
政府に対してブレーキをかけるところの役目であるところの
審議会の組織が、いかにも
政府の役人、そうして民間におきましても或いは銀行、金庫等を代表する者等が出るのでありまして、これらは皆
政府の任命にかかり、或いは
政府の息のかか
つておる者が多いのであります。そういうことで果してその機能を発揮することができるかどうかということの
質問があつたのであります。これに対しまして
政府は、成るべく廣く各界の
代表者によりまして、廣い知識によ
つてこれらのことを考究させる必要があ
つて、廣く各
方面から採るつもりである。或いは労働組合等を入れたらどうかというような
意見もあつたのでありますが、前申す
通りの
答弁があつたのであります。次に
日本銀行法ほ戰時中の
改正であるのでありまして、大藏大臣と日銀総裁との独善に流れ易いような
規定にな
つておるのであるから、
日本銀行法をこの場合根本的に
改正する意思があるかということの
質問に対しましては、大藏大臣から、他の特殊銀行等、或いは普通銀行等についても目下これらの
改正をいたすために
研究をいたしておるのであるが、
日本銀行につきましても、これを民主化するために目下
研究をしておる。併し國営にする
考えはないということであつたのであります。その他重要なる御
質問もあつたのでありまするが、これは
速記録に譲ることをお許しを願いたいと思います。
次に
政府職員に対する一時手当の支給に関する
法律案について申上げます。全逓その他の官公職員労働組合からの提訴にかかります生活補給金即時支給の要求につきましては、中央労働
委員貝の調停案か
提出されておるのでありまして、
政府はこれに対しまする
措置を目下鋭意
研究中であるのでありまするが、このままにして置きましては、現金の支給が遅延する虞れがありまするので、取敢えずこの際各職員に対してその現に受けておりまする
給與の一ヶ月分に相当する
金額を一時手当として支給しようというのであるのであります。これは
從來政府の
給與が月の初めに繰上げられて支給せられております
関係を是正しますと共に、中央労働
委員会の調停案に應じまする一部の
給與という意味もあるとのことであります。この
措置によりまして必要なる
金額は、
一般会計所属職員の分が十億四千九百余万円、特別会計所属職員の分が十九億七千三百余万四、
合計三十億二千二再余万円で、これは
補正予算に計上されておるので、あります。
次に
勧業債券の
割増金等に関する所得税の課税の特例こ関する
法律案について御
説明をいたします。現下の情勢におきましては、速かにインフレーシヨンを阻止し、経済秩序を安定し、経済再建を促進すること、貯蓄増強によ
つて浮動
資金を吸収することが必要であると
考えるのである。然るに今般所種税法の
改正によりまして、新たに各手の一時所得に課税せらるるように
なつたのでありまするが、
勧業債券とか臨時
資金調整法に基ずきまする証券又は貯蓄の割増金とか、当銭金というようなものにつきまして、当分の間所得税を課さないことにして、貯蓄の増強、浮動
資金の吸収に便にしまするために、この
法案を
提出したということであるのであります。これにつきましては、つまり目下賣出しておりますところの宝籤の百万円というようなものも、現金をかけますと七十万円くらいになるのでありまして、それでは國民の浮動
資金を吸収するのに不便であるから、これをかけないということであるのでありまするが、これに対しましては、こういうものにかけずともいいではないかというような御
質問もあつたのではありますが、今日のところこの浮動
資金を吸収するということは非常に必要であるのであ
つて、それにはこれらの
措置を講じなければその
目的を達せられないから、
かくのごとき
法案を
提出したということであつたのであります。
次に
船員保險特別会計法案につきまして御
説明をいたします。先に本
國会に
提出されまして先程御節明もあつたのでありまするが、
船員保險法の一部が
改正されまして、
船員失業保險及び手当
制度が創設されまして、
船員失業保險事業に関しまする歳入
歳出を特別に経理してその収支を明確にするためにこの特別会計を設けんとするのであります。
從來は
船員保險の事業は厚生保險特別会計、
船員勘定として経理しておつたのでありまするが、同特別会計には陸上労務者の保險事業が併せて経理されておるのでありまするから、この際特別会計の性質をいかにし、経理を容易にしまするために、
船員に関する社会保險を一体として運用するために、新たにこの特別会計を設けまして、
從來の
船員保險事業と今回の
船員失業保險の事業とをそれぞれ勘定を区分して併せて経理することにいたそうというのでありまして、
船員失業手当支給事業につきましても、その歳入
歳出の経理は、その性質上この会計で併せ行うことにいたしておるのであります。
次に
労働基準法等の
施行に伴う
政府職員に係る
給與の懸念
措置に関する
法律案について御
説明をいたします。新
憲法の下で
政府職員は
給與の基準的
法律で定めなければならないことにな
つておるのでありまするが、
現行の
政府職員に対する
給與の
制度は、
昭和二十二年
法律第七十二号及び同年
勅令の第百六十一号によりまして、新宝法の
施行の後も
経過的にそのまま本年十二月末まで存続することにな
つておるのでありまするが、
労働基準法等の
施行に伴いまして、その基準に達せしめまするために、
現行の
給與制度に一部
改正を加える必要を生じたのでありまして、それで包括的な
給與法案ができまするまでの暫定
措置として、少くとも
労働基準法の
規定によりまする最低基準まで
給與を増額支給するために
規定をしたのであります。尚從前の例によりまする
給與との調整、或いは支給手続に関しては、大藏大臣がこれを定めることにいたしておるのであります。この
法律が実施されました場合に、從前の絵興が
労働基準法等の定めより低いために、実際に
現行法の
給與より増額される主なるものは、時間外、休日又は深夜の勤務に対しまする超過勤務手当、公務に
基ずいて殉職し、又はは傷に罹つた場合の災害補償、退職手当等であるのでありまして、この
法律適用の時期は、時間外、休日及び深夜の超過勤務手当に対する
給與については
昭和二十二年七月一日以後、尚その他の
給與については同年九月一日以後、それから
失業保險法の給付に相当する
給與については同年十一月十一日以後にその
給與を支給すべき事由の生じた
給與について、これを
適用することにな
つておるのであります。
次に
大藏省預金部特別会計、国有鉄道事業特別会計、
通信事業特別会計並びに
簡易生命保險及び郵便年金特別会計の
保險勘定及び年令勘定の
昭和二十二年度における
歳入不足補填のための
一般会計からする繰入金に関する
法律案について御
説明をいたします。この
法案は
大藏省預金部特別会計におきまして、本年度新規歳入の不足額が七億八千七百十余万円を生じまして、これを借入金によ
つて補填することは、これらの会計が零細の
資金の集りであるような
関係から適当でないのであります。右の中、二億千六百三十余万円は積立金の中から補足することといたしまして、残額につきましては
一般会計から十億円を繰入れまして、これを補足しますると共に、差引四億二千九百十余万円につきましては、本会計におきまする
経費節約額二千八百余万円と合せまして、当初
予算におきまする不足額九億八千五百三十余万円の補填の借入金の減少に充てることにいたしました。又
國有鉄道事業特別会計及び
通信事業特別会計におきまして、当初
予算及び
補正予算を通じまして、歳入不足額が、鉄道会計におきまして百十一億九千百余万円、通信会計におきまして四十三億六千二百余万円に上
つておるので、差当り両会計におきまして、本年十一月以降、本年度一ぱいに生ずると見込まれておりまする歳入の不足額、鉄道会計五十億円、通信会計二十五億円を限度として、
一般会計からこれを繰入れることといたしました。又今回
政府職員に対しまして、特別の一時手当を支給することとなりましたので、右の三特別会計と
簡易生命保險及び郵便年金特別会計の収支の
現状に鑑みまして、その不足額を
一般会計から繰入れることといたしまして、預金部特別会計につきましては更に九千六百二十二万余円、鉄道会計につきましては更に九億九千三百余万円、通信会計につきましては更に五億二万円を繰入れますと共に、新たに
簡易生命保險及び郵便年金特別会計の
保險勘定につきまして八千八百七十八万余円を、
年金勘定につきまして二百五十九万余円を限度といたしまして繰入れることとし、以上の繰入金につきましては、今後適当な時期に当該特別会計から、それぞれ繰入
金額を
一般会計に返償することといたしたのであります。これが
本案の
内容であるのであります。次に
貿易資金特別会計法を
改正する
法律案について御
説明を申上げます。この
趣旨は、
貿易資金特別会計法の四條の
規定によりまして、貿易
資金の運用に上りまする利益又は損失の計算は、これを毎年度行うことにな
つておるのでありまするが、現在外貨請求権の評價及び輸入
物資の償格が計算困難の
状況にあるのでありまして、この
規定によりまする損益の計算も実行困難な状態にな
つておるのでありまするから、
昭和二十一年度から右の計算可能の状態になりまするまでの期間中は、各年度ことの計算を省略いたしまして、計算可能の状態に至るまでの全期間について損益の計算を行うことといたして、その期間中、毎年度貿易
資金の運用上生じまする円
資金の不足額を、一定の計算の下に
一般会計から補填する途を開くこととしたのであります。二十二年度の補填見込額は五十五億円にな
つておるのであります。又貿易
資金の運用範囲の
規定が現在一部を政令によ
つているのを
法律で定めますると共に、
貿易資金特別会計法の
規定内容を
財政法の
趣旨に適合せしめるために、所要の
改正を行
なつたのであります。これにつきましては先般
貿易資金特別会計法の一部を
改正、する
法律案を御
説明する際に申上げたのでありまするが、その時の御
趣旨にもあつた
通り、
政府ほ
將來配給
物資等の價格の問題につきまして
改正をするということがあつたのでありますが、本
法案においてそれが見込まれておるかという
質問がありましたが、これはこの
法案では解決していないのであります。
次に
特別都市計画法第四條の
規定による
國庫補助を国債証券の
交付により行う等の
法律案について御
説明を申上げます。
特別都市計画法に基ずきまする
土地区画整理事業は、戰災地再建の基礎を成し、又再建の前提となるものである、ますから、急を要し、又
経費も相当巨額に上るのであります。而も高率の
國庫補助が要る
関係と、國の
財政負担も巨額に上ると思われるのでありますから、事業の緊急性と
財政、金融の今日の
事情との調整を図る必要があるのであります。それ故に事業費の支出につきましてもインフレーシヨンの抑制の
措置を講じなければならないというこの見地からいたしまして、
特別都市計画法第四條に
規定しまする
土地区画整理事業に対する
國庫補助金の中で、同法の第十六條の
規定によ
つて、公共用地流域のため、私有地の減少が一割五分を超過する部分について、事業
施行者の
交付する補償金に対して
國庫の行う補助金につきましては、現在り
財政金融の
事情との調整を
考えまして、
國債証券を以てこれを行うことといたしますると共に、
土地所有者及び
関係者に
交付する減歩補償金の
交付についても、事業
施行者がその
交付を受けました
國債証券を以て補償金
交付の伏済をし得る途を開こうとするのであります。
次に
物品の
無償貸付及び讓與等に関する
法律案であります。この
法案は、
財政法の
施行に伴いまして、同法第九條の
規定によりまして、國の所有に属る財産の適正な対償を伴わない
貸付人は讓渡は、
法律の
規定に基ずくことを要することとな
つておるのであります。右の内、國有財産法の
適用を受けまする國有財産につきましては、同法中の
無償貸付及び讓與に関する
規定が置かれておるのでありまするが、
物品については、その
無償貸付、讓與等は大部分が
勅令等の
規定によ
つて行われておるのでありまして、今回新たに
法律を制定いたしまして、
物品の管理処分の適正を期しようとするのであります。
財政法第九條の
規定が本年四月一日から
施行されておりますのに伴いまして、
施行期日を本年四月一日に遡るものといたし、又地方自治法
施行の際都道府縣におきまして使用しておりまする国費を以て調弁した
物品は、この際当該都道府懸に讓與文は
無償貸付の
措置を講ずることといたしたものであるのであります。この
物品は、
憲法の第八十九條の
規定即ち「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは團体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に屬しない慈善、教育若しくは博愛の事来に對し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。」という
規定かありまするので、それらのものはこり
法律の
規定から除外する
規定に
なつおるのであります。そうして二條、二條におきまして、無償又は時價よりも低い対償で、
貸付けることのできるものは、
かくのごときものである。又は國以外のものに讓與し、又は時價よりも低い対償で讓渡することができるものは
かくのごときものであるということは、詳しく
規定をいたしておるのでありまするが、これは省略いたし、
速記録でその
質疑應答を御覽を願いたいと思います。次に
金融機関再建整備法の一部を
改正する
法律案について御
説明を申上げます。この
改正は、金融機関再建
整備に伴う損失の整理に当りまして、職員の退職金支拂財源として積立金の一部を留保しようとすることを
目的としておるものであります。先に本院において可決せられました企業再建
整備法等の一部
改正の際に
改正されました
趣旨と全然その
趣旨を同じうしておるものであります。即ち金融機関がその損失処理に際しまして退職金支給の財源に充てますために、任意積立金の三分の一と法定の退職手当積立金の
合計額の範囲内におきましてこれを留保することができるものといたしまして、新金融機関に事業を讓渡いたしました場合、旧金融機関から新金融機関に引継がれました職員は退職者として取扱わない。旧金融機関に在職中の在職期間は新金融機関に涌卸することとし、旧金融機関が職員を新金融機関に引継いだ場合、右により留保した積立金の全部又は一部を新金融機関に引継ごうといたすのであります。次に旧
日本銀行券の未回収発行残高に相当する
金額の一部を
國庫に納付するに伴う
日本銀行への
交付金に関する
法律案であります。
本案は
昭和二十一年
勅令第八十四号
日本銀行券預入令によりまして、同年三月七日以降強制通用力を失いました旧
日本銀行券につきましては、同令の第五條の
規定によりまして、同年三月三十一日現在におきまする未回収発行残高相当額を同年四月一日の発行高から引落しまして、その引落し額に相当する
日本銀行の財産仮受勘定として別途保留しておつたりでありまするが、同令第五條第三項の
規定によりまして、その処分については大藏大臣がこれを定めることにな
つておりまするので、本年九月三十日現有の旧券の引換未済残高は二十六億九千七百万円にな
つておりまするが、引揚者の持帰つた金の引換等のために今後引換を要するものを見込みまして、差引残高の内、結局引換を要しないと推定されまする
金額は約七億円であります。今般右の
金額の内、引換を要しないと推定される
金額を
國庫へ納付せしむることといたしまして、
將來日本銀行におきまする旧券の引換が予想外に多額に上
つて、その結果未回収残高が右の
國庫納付額よりも少額となりまするときには、その不足額に相当します
金額を
日本銀行に
交付しようとするものであります。これが
本案の
内容であります。
以上を以て只今上程されました十二
法律案についての大体の
提案の
理由並びに
内容、
質疑應答等の主なるものを御紹介いたしたのでありまするが、
かくてこれらの
法案はそれぞれ
質疑を終りまして、
討論に入り、
採決をいたしましたところ、
原案通り
全会一致を以て可決すべきものなりと決定いたしたのであります。これを以て
報告を終ります。(
拍手)