○石坂豊一君 只今論議されておりまする
住宅問題は実に深刻なる社会問題であります。すでに
政府の
説明により、同僚各位が入れ代り立ち代り
所見を開陳せられたので、これに対して私共全然賛意を表する次第でありますが、一言私は本論に入る前に、深刻な社会問題でありながら、我々はただ
政府を責めてばかりいてはいかんので、反省しなければならんと考えます。議会みずからもこの問題を國会開会以来三ヶ月余に亘
つて棚上げをしておりました。これは食糧危機
対策その他の
ために取り紛れて、遂に今日に至
つたことでありまするが、併し家なく罹災者二千万の方々から見るというと、國会は一体我我に同情がないのであるか、どうしてこの問題に関心を拂わないのであるかという怨嗟の声を放
つてもいたし方ないと考えます。併し今日遅しと雖もこの問題を取り上げまして、午前より午後に亘
つて論議を畫すということは、誠に私は感謝に堪えない次第であります。
次に私は
政府当局に対して申し上げたいことは、私の極く畏敬するところの芦田均君は、先に厚生大臣に就任せられました。その時に私は就任早々私も或る公職に就いてお
つた関係上会見をいたしまして、いろいろ意見を取り交わしましたが、同君は劈頭第一に、私の今日の考えは、どうして家なき罹災者をして越冬せしめるかということが、私の胸一ぱいであるということを言われました。私はさすがは芦田君である、厚生大臣として最も要点を把握しておられることを喜んだのであります。又片山君は、これ又先年私共と同じ政治上の行動を取
つておられたことがございます。同君は本年三月「民衆の幸福」という著述を公にせられた。これを読んで見ますと、全面に亘
つて國民の幸福を念願しておられるところの熱意に燃えておるのである。私はこれに対して大いに同君に敬意を表しておる。而して本日の新聞紙上に発表せられたるところの
國民の心得に対しましても、同君の誠意のあるところを窺うことができるのである。併しながらこの差迫れる不足せる
住宅問題に関して、同君は実際の上においてこの議場にも姿も見せず、ただ
復興院総裁の一官僚にこれを委託して足れりとしておられるがごとき感があることは頗る遺憾であります。(
拍手)片山君は総理である。芦田君は副総理でありますので、両君轡を並べて行
政府を督励しておられる今日の場合において、かくのごとき重大なる問題を等閑視せられるということは、実に奇怪千万と言わなければなりません。(
拍手)
さて私は今日この壇に立ちましたが、貴重なる時間を割愛して頂いて恐縮に存じますけれども、立たなければならん境遇にありましたる
ためにここに立
つたのであります。先刻
緑風会の田村君は、長岡市長としての体験を物語られましたが、私も
昭和二十年八月一日より二日にかけて、富山市長の職を奉じまして、同じく田村君の長岡と同じ時間において空襲に遭いまして、市役所前の防空壕において僅かに一命を支え得たのであります。私の直前におるところの二人が直撃彈によ
つて即死しました。その時に私は不思議にも私だけ助か
つた以上はこの罹災民の
ために一身を抛とうと決心をしたのであります。而して爾來私は政治家となるような考えを棄ててお
つたのであるますけれども、昨年十二月、戰爭前からの市長は一時身を引かなければならんというお触れによ
つて、十二月四日職を退いたのでありまして、はからずも参議院に來た
つて皆様と國事を談ずるようにな
つたのでありますが、それにしましても、私はこの深刻なる
住宅問題は第一に取上げて頂かなければ氣が済まないのであります。かるが故に、誠に皆様度々同じ議論をお聽きにな
つて、うるさいことでございはしようけれども、漸次御清聽を汚す次第であります。
私は
政府当局にお願いしたいことは、いや、お願いするのではない、求めるものは、戰災
復興に対して全國画一的に扱
つておられることであられることであります。これは誠に誤れるも甚だしいものである。先程もお話がありましたるがごとく、五
大都市、即ち東京、横濱、名古屋、大阪、神戸等のごとき五
大都市においては、
復興が至
つて遅々としておるのであります。何故そうかと申しますと、かくのごとき
都市におきましては、土著の人よりは借家住いの
勤労者が大多数を占めているのでありまするから、いかに
家屋を建てたい念願がありましてもできないのであります。又自力更正の力のある人は、恒久的
建物を要求せられておりまするが
ために、なかなか手を染めることができないのであります。かるが故に、全國の今の
建築復興の状態は二カ年の間に四十三万戸でありまして、これを全國百十九の戰災
都市に
平均して見まするというと、百戸に対し一九・一戸の
復興であるのに、この五
大都市は、横濱が一九・三戸、これだけが上廻りしておるだけで、あとの東京は一二・五戸、名古屋は一三戸、神戸は一一・五戸、大阪も一二・五戸というようなわけで、全部全國の
復興の下の方におるのであります。非常に遅々としておるのであります。これに反して全國の中小
都市に至りますると、一万戸以上燒けた中小
都市におきましては、非常な
復興振りを見ておるのでありまして、宇都宮といい、又長岡といい、又富山市といい、その他の
都市におきましては、よく行
つておるところは六〇・八戸惡い所でも三九・四戸とな
つておるのであります。その一万戸未満の
都市にいたりますると、もつと成績がよいのでありまして、沼津のごときは八〇戸以上にな
つております。約八〇%
復興いたしておるのであります。極く惡いところでも四二戸の
復興を見ておるのであります。これは即ち土著の人が多くして、自力
復興の可能性を持
つておるからであります。かような
関係でありまするから、自力
復興の可能な
都市と、その然らざる
都市とを振り分けて、これに対処するところの
建築方法を指導しなければならんのであります。その次はあまりにも中央集権的にいたしまして、自力
復興をいたさんとする者に対しては非常なる制限を加え、又賃貸のアパート等を
建築せんとする者に対しましても、先程
復興院総裁が言われましたが、
半額國庫補助をいたして、七億七千七百万円ばかりを投じておると仰せられるが、これらの
半額國庫補助というものは名ばかりでありまして、実際は
復興院の査定による
補助でありまするから、本來使
つたところの金の何分にしか当たらないのであります。こういうようなやり方では、貸長屋も十分に普及することができないし、自力
復興する者も亦頭を押えられておるという恪好にな
つておりまするから、かくのごとき
方法は全然振り捨てて、所要数の
家屋については、自力
復興のもの、又借家のもの、これらを悉く地方別に希望を取
つて、その希望数の
建物を各府縣、各市に
割当てて、知事なり、市長の全責任においてせしむるということの
方法を採
つた方がよろしいと私は考えるのであります。(
拍手)いわゆる中央
政府においては督励の位置に立
つてみずからその現業主義を採らないのであります。目下の
政府のやり方は、非常な制限を加えておるが
ために、
復興院が出店を各地に設けておられます。戰災
復興院出張所、これでまだ足りないで、最近農林省
資材調整事務所というものが又進出して來ました。この農林省
資材調整事務所なるものは、非常な制限を加えまして、殆んど手も足も出ないのであります。故に我々の要求するところは、速やかにかくのごとき出店を撤廃して、地方の自治に任せるという方針にして頂きたいのであります。これは又新憲法のいわゆる民主主義によ
つて完全なる地方自治に
なつた今日において、官治行政をどこまでも固守しておるという官僚主義に我々は絶対に服従ができないのでありまして、これを打破するのは実に皆様と共にわが國会の大なる責務と考えるのであります。(「ヒヤヒヤ」と呼ぶ者あり)かようにいたしましてこの
家屋の
復興に対してましては、
政府といわず、地方自治体といわず、また國會といわず、悉く手を取り携えまして、速やかに
復興を図ることでなか
つたならば、わが同胞の二千万以上の人は路頭に迷うのであります。浮浪の民を二千万以上擁して、何の
復興がございましようか。いかに
石炭増産を叫びましても、これの帰するところは
住宅問題が先決問題とな
つております。又貿易復活の今日におきましても、中小工業の
生産がなか
つたならば見返り品の輸出はできないのであります。中小工業社に
家屋を與えずして何によ
つて生産をいたしますか。又我々は民主主義憲法によ
つて教育の機会均等を叫ばれまして、既に六・三制の義務教育を
実施しております。併しながら兒童生徒を野放しにして、どうして教育の実際が挙がるのでありますか。(
拍手)彼を思い、これを思いますると、いわゆる産業の上にも、
経済の上にも、又教育の上にも、思想の上にも、
家屋を與えるということが何よりも先決問題とな
つております。どうか内閣諸公はこの点に留意せられまして、一段とこの不足
家屋の挽回に全力を注いで頂きたいのであります。
從つて先刻來
國家の支出金を二百億若しくは三百億に増すという御意見のごときは、全然私共は賛成するところであります。今遠來の外人を接待するが
ために止むを得ざる施設ではございますが、五つか六つのホテルを修繕するに五億円の金を使う追加
予算が出んとしつつあるのであります。我々二千万同胞が家なき窮乏
生活に苦しんでおるこの場合において、二百億や三百億の金を惜しんでは相成らんのであります。更に又この中央におきましての厚生省のごときは、地方における一浴場の回復につきましても厚生省の許可を要することにいたしております。厚生省のみならず、これは又戰災
復興という場合になりますと、
復興院の出張所の手を経なければならんということにな
つておりますので、私の住んでおるところの富山市のごときは、六月以來提出しておるところの浴場の許可がまだ下
つておらんという状態にな
つておりますから、この点は特に
当局に反省を願いたいのであります。而して最もこの
資材を獲得する
一つの
方法は、今日まで戰時中長い間抛擲されておりましたところの各府縣の道路橋梁、この
復興を速やかにいたしまして、
資材を
生産地より消費地に取寄せることの便宜を図らなければなりません。(「時間が過ぎましたよ」と呼ぶ者あり)又陸上におきましては鉄道の運行、海上においては海運につきましても、
家屋復興資材に対しては優先的に認めてこの取扱をなすということが、最も必要と考えます。さらに又
金融の問題におきましても、今日は
家屋の
建築に対して先程どなたか仰せられましたとおり第十三位において、なかなか融通して呉れないのであります。これらも眞先に優先的に
金融することにいたしまして、一日も早く、仮
住宅でも宜しい、一軒の住家でもよろしい、今日住家に悩んでおる者の
ために
住宅を與えるということが喫緊の要務であると確信いたすのであります。私は今日四百万戸の家が足らんというところの半面を時々調べて見ておりまするに、この頃は暖かい時でありますから野外に寝ても差支えないのでありまするけれども、堤防の上に一組、二組の丸太を持
つて來て蚊遣り線香で以て間に合わせている人を見ております。又三疊の間に四人の方々が、机を持
つて來て二つ並べて、上に寝る者と下に子供がもぐ
つているというような、非常にみじめな
生活をしておるということを見ております。かようなことでは決して我が國の健全なる
復興はできるものでないと考えます。何と申しましても
家屋の
復興については最も我々は注意を拂いまして、
政府当局を鞭撻して、ここ暫くの間に
住宅不足を一掃することが最も緊要なりと信ずるものであります。時間がございませんから、これを以て私の討論の挨拶といたします。
〔各派の
指名者、
発言者指名の許可を求む〕