○矢野酉雄君 この問題は、既に総理大臣に対しても、更に文部大臣には、もう耳にたこのできるように、更に大藏当局に対しても、安本当局に対しても、これは強く要望したのにも拘わらず行政府としては残念至極、僅かにその予定せられた、一旦閣議において内定したるその予算を半減したことに対して、実に遺憾千万であ
つて、内閣それ自体、殊に文教の責任者たる森戸君は、大いに責任を感じて、その善処方をこの前の
委員会においても強く私は要望しておきました。そこでこの問題を契機にして、私は打つ手が相当ありますが、一つの手としては、先ず排除すべきところの考え方、絶対に克服すべきところの思想は、この第一回の國会が開かれて以來、実に何十万となき民の声、それは國家が義務
教育を要求するならば、必ずその
費用というものは、國庫が全額負担すべしという、この要望である。ところがそれに対して、文教委員の中にも、反対の一つの思考を持
つておる人がある。この思想を根本的に、我々はこの機会に克服して行かなければならんということと。それから第二は、七億、既にこの予算が閣議において決定した、だからその後の七億は、この際己むを得ないというようなこの考えを、やはり文教関係の中にもお持ちの方がなきにしてもあらずやに、私は見てと
つておるのであります。この思想もこの機会に徹底的に是正して行かなければならないと、この問題については、一昨日緑風会所属の岡部常君が、総理大臣に向
つて質問をいたしましたところ、これに対して総理大臣は、削減せられたる七億は、必ず予備金の中からか、さもなければ更に財源を見出して、追加予算の形式かにおいて、必ず御期待に副う覚悟を持つおりますということを、これは天下に向
つて闡明したのである。これは國民に誓
つたものであると共に、いわゆる今羽仁君のお話の中にもあ
つた、我が國が憲法にも主張しておるような民主國家を具現するための、絶対的必須条件である民主
教育の実践のために、これだけの熱意を持
つておると、非常な財政上窮乏であるけれども、後の七億は、何らかの形において、これを復活するということを言明したことは、いわゆる民主
教育を世界に向
つて実践する、その意図を示したのであると言わなければなりません。今も窓外から聞えて來るところのあの熱烈なる声、蜿蜒里余を超えるところのこの長蛇の列は六・三制度に対するところの國民大運動である。そのいわゆる大運動のさなかに、この殿堂が、この問題について、実際に七億の文教費を復活せしめ得るだけの、そこに政治力を立法府として発揮し得ないならば、実に私は残念至極であると思うのであります。故に今羽仁君の提出せられました
意見に対しては、心から賛成するのでありますが、実を申しますというと、我々參議院並びに衆議院の國民代表の中の、文教に特に積極的に熱意を持ち、又信念を持
つておると自称しておる文教部のものが、殆ど総動員して、閣議を通過させることに対して、全力を傾倒したにも拘らず、内閣がいろんな事情のために、我らの要望に副わなか
つたということは、実に參衆両文教委員として、國民に対し、なかんずく
教育に熱意を持
つて、日夜その精励に努めておる
教育実際家に対しても、又小
学校の生徒に、二部制度、三部制度、間借りをしておるその
新制中学校のために、非常なる迷惑を蒙
つておるところのその小
学校の兒童、並びに直接実に悲惨極まる環境におかれて、勉強しておるところの將來の民主日本を建設する唯一のその少年少女たちである
新制中学校の生徒たちに対して、私たちはなんと答えるかと思うのであります。そうでありまするから、私は相当これに対しては、強い決意を以て臨まなければならんと思います。既に事前に打つべき手は、臨機應変の措置も恒久の措置もと
つたに拘わらず、こういう結論に達した以上は、いよいよ我々に與られたる予算の審議権という憲法の保障するその権限に則
つて、我々はこの
文教委員会が、一糸乱れざる歩調をここに共にして、そうして先ず現在予算の審議に当
つておる予算
委員会そのものに向
つて、我が参議院
文教委員会としての固き決意を
委員長初めその代表者がこれに傳えると、更にはこの政府当局に対しても、更にGHQの責任ある地位の
方々に対しても、眞に連合國が要求するその民主日本建設のためには、これこそ不可缺の要件であるからというような立場から、更に大いにこれに対して援助を與えて貰う、懇請をするような手を打
つたらば、いかがかと思うのであります。と共にくれぐれも私は申しますように、この機会に文教、文化の
費用が、この財政によ
つて一切始末をされて來た軍閥横暴時代の、あの貧弱なる文教文化の
費用に対する今までの國家の予算編成の常識というものを、三百六十度大轉換させるところの國民運動を私たちこの
文教委員会が中心と
なつて、展開すべきことを再言しておく次第であります。今羽仁さんが言われましたそのことに対して、御精神に満腔の賛意を表すると共に、直ちに、既に
論議の時代でなく
つて、実行の手を打つべきことを強調いたしまして、私の所信を述べて終る次第であります。