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政府委員(
山添利作君)
只今農林当局の御鞭撻を頂きましたが、この農業
生産調整法の方式を
実施いたしますにつきましては、前提として
食糧農産物の米麦等の
價格の適正を期し、又その
生産確保に必要なる
資材は、國力の許す範囲の最大限においてこれを供給するということが前提にな
つておるわけでございます。かような條件に対して
政府が努力することなく、農民にのみ
責任をかけるということは正しくないわけであります。こういう制度を実行いたしますにつきましては、
政府といたしまして御指摘になりました
價格、
資材という問題について、
責任は勿論從來もございまするけれども、一層加重されたということを痛感いたしておるのであります。
米の
價格につきましては、これは最もむずかしい問題であり、
農林大臣は絶えず苦労をされるのであります。特に現
大臣はこの
價格問題につきましては、強い
意見を持
つておられます。この実現について努力をされておりますが、我々
農林省におります者といたしましても、これらの点には固より十分に努力をいたすことは勿論であります。事務的に今の
價格の問題を
考えて見ますると、これは申すまでもなく、例のバリティー計算という方式でや
つております。これが若しすべてのものが公定
價格でのみ取引されるということを仮定をいたしますれば、そういう仮定の條件におきましては、バリティー計算は
農産物にと
つて十分であり過ぎることになるべき筈であります。然るに実際はそうじやない。そこで賃金等を
考えます場合に、
配給のものの外に、実際栄養補給のためのもの、それは闇で行く、そういうことが考慮される。米の場合におきましては、その点は考慮をされていない。况んや先程御指摘になりました農機具等の質の低下というようなことは考慮されていないのであります。昔五年使えた
農具が、今は二年であるというようなことが見込まれていない、そういうことが見込まれていないから、丸々米の方は割損かといえば、それは今の工業製品は僅かに三割前後の
生産である。米は戰前に近い
生産であるという事情の下においてバリティー計算を採
つております
関係から、そこは米の方についても
相当程度埋合せをされておるという
関係にな
つておると思います。いずれにいたしましても、このバリティー計算ということを根幹にして、その内容の改善を図
つて行くということは、どうしても必要だと
考えております。併しながらこれは御承知のようにむずかしい問題であります。
農林当局の立場といたしましては断えずこの事柄に努力し、又こういう制度を施行するについては一層の努力をいたしますという
考えでおるわけであります。
それから
資材の点につきましては、先ず以て手取早い増産といたしましては、科学
肥料を増産することにつきましては、來年の米は段当り硫安、窒素
肥料五貫目は
配給できる見込みであります。これを割ることはございませんと
考えます。この科学
肥料等については著々増産を図
つて参りたい。問題は
農具の点に
相当あるのであります。戰が済みましてから後に、軍用等のために持
つておりました
資材、或いは軍用であ
つた資材の用途轉換というようなことから、一時鋼材等も出廻りまして
生産も殖えたことがございます。そのために又非常に品質不良な
農具が沢山出た。ところが、そういう
資材も一巡使い果して、今年になりまして
物資需給
計画に基きます配当が非常に少い。本來からいえば鋼材にして年貫三万トンぐらいを要する。又戰の終り頃でも一万五千トンぐらいは使
つてお
つたのが、今年は僅かに六千トン、この鋼材が非常に少いということが癌にな
つておりまするが、これも石炭増産等と関聯して鉄鋼の方も、非常に貧弱でありますけれども、幾らか上向くという状況でありますので、
農具に関する問題は
資材が重点でありますからこの方面には十分の努力をいたしたい。
又その取引と申しまするか、
配給関係につきましては、一般の
物資と同様私的独占の撤廃に件いまして、切符制度によるところの割当制度にな
つたわけであります。これにつきましては消費者たる
農家の方が協同組合等を通じ、その團結の力によ
つて需要者と声を反映せしめ、そこに
相当の活動と迫力を持つというような動き方を希望をいたしております。
政府といたしましてのメーカーに対する監督、
配給業者に対する監督、これはもう十分いたすつもりでありますけれども、何と申しましても大勢のことで、手の届かない、目の届かないところも多々あります。農民諸君の團結によるところの且つ自主的な活動と相俟
つて、この方面の改善に努めて参りたいという
考えを持
つております。
それから北海道の農物産の
價格について、特別な
價格を認める必要があるという
意見につきましては、しばしば北海道の方からその
意見を伺
つております。私も合理性があると思います。併しながら
價格制度をとる以上、成る程
地域的価格ということも
考えられないことはありません。精密にやればそういうことになるわけでありますけれども、実行上そういうわけには行かない。そこで北海道に限りませんけれども、北海道その他單作地帶において、特別
生産費が余計掛かるという事情については、できるだけそれを埋合せるところの
措置をとりたい。一例を申しますれば農業保險——東北、北海道は冷害で非常にそういう損失が多いわけでありまするが、冷害を農業保險の対象に取り込む。又それに関するところの保險料は國が持つ。殊にこれは消費者に轉嫁になるわけでありますけれども、そういう
措置、これはすでにこの國会に
法案を提案して実現することにな
つております。その外にも、例えば御指摘になりましたような、特別にその
地方だけで米を
生産しようとすれば掛かるというような費用は、到底全國平均的に一本の米價を以てカバーし切れないのでありまして、財政事情等が許すならば、そういう
生産費の掛かる特別のものについては
補助を
考えるという
考え方を以て努力はいたしております。