○木下源吾君 ではお許しを得て
調査の
報告の概要を申上げます。去る十三日から十八日まで六日間に亙
つて埼玉縣、千葉縣に參りました。平沼さんと私と二人でございます。それでいずれプリントにしてお手許にお配りして、御覧を願いたいと思いますが、概要を
簡單に申上げます。
埼玉縣は、野菜の生産
状況につきましては、野菜の特産段別が約一萬八千
町歩を作
つております。その收穫量が六千三百九十萬貫でありますから、約六千四百萬貫の收穫量を見込まれております。そのうち加工竝に縣内消費量を除いた二千二百六十九萬貫、それだけは八大都市、消費
地域に移出される計畫にな
つております。東京都への出荷割當とその實績は、二十一年八月から二十二年三月に至る七ヶ月間で、その實績は六百七十四萬貫の割當に對して出荷量が六百八十三萬七千貫にな
つております。本年度の四月以降六月までの割當は百二十二萬六千貫でありますが、實際の出荷の成績は明らかにな
つておりません。戰前は埼玉縣においては二萬
町歩の畑で約一億萬貫を生産してお
つたそうでありますが、現在は先程申上げたような一萬八千
町歩で六千三百萬というような状態にな
つております。そうして一戸當り耕作面績は八段歩乃至一
町歩であります。そこで埼玉縣の南の方ですね、東京都に隣接しているこの方面の
生産物の大部分は、闇又は正規の
配給によ
つて東京都に供給されておると見られております。今年度の作柄は御案内のように、非常に旱天續きで、三割方の減收が豫想されておりまして、茄子において
影響が甚だしいのであります。農家の經濟
事情は段當實收約年額一
萬圓ぐらい收入があるというように推定されております。
その中の
經費でありますが、
肥料が約四千五百圓ぐらい掛か
つております。主なるものは、屎尿を使
つておるところの一例を申上げますと、一荷が百圓のものを約三十荷、これだけでも約三千圓を使
つておるような状態であります。
統制
状況につきましては、統制は有名無實という状態でございます。埼玉縣内の價格はすべてが東京價格によ
つて支配され、
影響されております。そうしていわゆる東京都のように公定價格の外に協力價格、協力費というものを加えて、そうして公然と賣買されております。埼玉縣内の主要都市は公營市場でありまして、これが縣内の集荷
配給の機關であり、東京都へは縣内の任意組織である園藝組合というのが各縣内を組織されまして取扱われております。輸送は東京都の荷受機關の貨物自動車によ
つてなされております。そうしてその費用は生産者の負擔となり、一臺一車、この一車は約八百貫を積載いたしまして、東京都の神田市場に特
つて來るのに三千圓の運賃が實際支拂われております。取締は非常に至難のようでありまして、實際には行われておらんというような
實状で、そこで埼玉縣當局の要望といたしましては、東京都と埼玉縣内との間に、このリンク制等における出荷奬勵の
方法が不均衡のため非常に困
つておるから、これを是正して貰わなければならん、これがいわゆる統制に對する非常な障害にな
つておるということを縣當局が言
つております。次に又縣當局では供出制度、統制の制度が頻繁に變るので全く適從に困難で、生産者も消費者も非常に迷惑をしておる、
從つて又縣當局も適從に迷うておるような次第である。縣と東京都の指定
地域、指定地のつまり差異というものを徹廢して貰いたい。殊に東京都と同一のいわゆる先程の
縣南地方だけでも、
實状に即して、東京都と同一の扱いをして貰いたい。甲
地域、乙
地域というような區分にな
つておるのが、そうではなくして貰いたい。
農林省は中小都市に對して、
肥料のリンクを曾て約束をしながら、これを實行しておらない、そこで縣では非常に縣民の不信を買
つておるような次第である。で、縣ではこの生産から統制に至る權限を知事に
一つ任して貰いたいというようなことの希望を持
つております。要するに東京都への集荷に重點を置く政策が、却
つて生産地を混亂に陷れて、その結果取締りの實行に大なる支障を來しておるというような
實状であります。
生産者の要望といたしましては、價格は現行協力價格を加算したところの價格を公定價格として貰いたい。その協力費というのは、現在の公定價格と約同一の價であります。
肥料公團などがどうも役人式でいけないという不平を持
つております。で、
肥料でありますが、これは現在段當約三貫目ぐらい、窒素その他を入れて三貫目ぐらいが
配給されておるのでありますが、實際は一作に約五貫欲しいのであるから、概算して見ますと、一段歩に三十貫はなければならない、さように申しております。
肥料の闇は徹底約に取締
つて貰いたい。
肥料でも、或いは報奬物資でも從來約束通れ實行していないので、全く信用ができないから、やるから出せというのではなく、できるなら今後は先に渡して貰
つて、そうして生産を計畫的にやらして貰
つて、我々は出したい。こういうふうに改めて欲しいという要望を持
つております。馬鈴薯、甘藷の芋会社の徹廢を叫んでおる所もありますが、要するに現在のままで
行つてもですね、供出完了の後は野菜なみに取扱
つて貰いたいという要望が埼玉
縣下にございます。農機具は
配給されるところの指定工場の品物は戰前の五分の一の性能よりないと言
つております。闇で一般にありまするのは高いけれども、それらは品物はいい。一般にはそういういいのがあるのに、どうしてこういうような
配給の物が惡いのであるかということを不審が
つております。農藥は不足のために非常に困
つております。それから畜力を利用するところの飼料は麥一俵を認めておるそうでありますが、殆どこれは食わされないで非常に困
つておるようなわけであります。衣料品は
配給品は全く少いので、働く人間の稼働用というものは絶無のような有樣で、子供やそういう方面に皆使われておるようなわけであります。例えば地下足袋のようなものは一戸一ヶ年に一足も割當てられていないというような實情であるのであります。丁度お盆でありましたが、蝋燭が一本八十錢だと
云つております。それは一寸五分くらいの細い蝋燭であります。鮮魚は一年に一囘も
配給がない。こういうような状態であ
つて、生産農民は勞力はあるから一切は極端に我慢するとしても、
肥料の面ではどうすることもできない。魚粕が十貫目で二千圓、二千五百圓で闇で買
つて使
つておる者もあるそうであります。十貫目で二千圓乃至二千五百圓。
配給業者の聲といたしましては、東京都に出るものは取締れ、縣内は自然によくなるから、こういうように言
つておりますので、今度の新規則も結局は永續きはしないだろう、こういうように
配給業者は言
つております。野菜は適當な時季に適當な價格でやるがいい。公定價格に幅を持たせろとか、こういうようなことを主張しております。殊にこの發送費でありますが、樽一個が三百圓乃至四百圓という價格で非常に業者も困
つておる。
次は千葉縣の
状況でありますが、野菜については大體埼玉縣と似寄
つておりますので、多少違
つた所がありまするけれども、これは省略いたします。
千葉縣の魚の點について少し申上げますが、千葉縣の海産物の一ヶ年の總收獲高は、すベての海産を入れまして、海草も皆入れまして約二千六百餘萬貫であります。戰前は約四千萬から五千萬貫の水揚げがあ
つたのであります。今日漁船の不足やその他の
事情のために減退しておるのであります。四萬五千萬貫取れてお
つたものが今二千六百萬貫、約半分そこそこのものであります。そこで千葉縣當局の水産に對する要望は、重油のリンクが東京都と埼玉縣との間に非常な差異がある。これは千葉縣もつまり東京都と縣とのハンデーがあるということに對して非常に不平を言
つております。すべてが縣と都とが同一歩調にできない根本
原因がここにある、こういうように言
つております。資材の點で申上げますと、從來資材は縣でや
つてお
つたのが、今度は
農林省の出先機關であるところのその方面でやることに
なつたそうでありますが、三月一日から資材
調整事務所というようなものができておりますけれども、人員の整備などはできていないで、漸く八月一日から仕事が始
つたような始末だ、而も生産者個人の申請の
關係や生産規模の査定などが今度要るのであ
つて、複雜過ぎて現物の受渡しが非常に遷延しておる、それで非常に困
つておるということを言
つております。それで價格は生産者の納得の行かない價格ではどうしても出せない、出せないだろう、
從つて取締りも非常に困難しておる、業者はこう言
つております。資材即ち油だとか容器だとか氷だとか燃料だとかその他運賃等の一切の價格が改定されて上が
つておるのだが、肝腎要めの魚價の決定がないので、これは非常に苦しんでおります。傳えられるところの魚の改定價格では到底困難だということを皆が申しておりまして、公價の三倍以上にもしてもらいたいというような或る所では要望があるのであります。珠に輸送面でありますが、これは小湊という所で私調べて見ましたところが、あそこは從來午後六時三十分に貨車を出して、中央市場にはその翌朝に著いてお
つたものが
改正されまして、今は午前十一時三十分發にな
つておるそうであります。それでも翌朝に著くというようなわけで、どうしても取れた魚が三日目でなければ賣りものにならない、どうしても三日は掛かるというようなわけで、これでは到底東京に入るところのものが、いかに正規に入
つても鮮魚ではないだろうというように言われております。珠に氷が非常に不足しておりますので、これは即時輸送面において改良してもらいたいというような希望を持
つております。
實際の生産漁民は買う物が非常に高いということを申しておりますが、又收入も相當にあるのであります。併しながら買う物の高いのに驚いている。綿絲は從來の質の點において半分當てである。二三十匁の一把の綿絲を四百圓くらい出して買
つているそうであります。今實際漁家はそれでもなければ困るから買うのだと言
つております。値段は、
自分の取
つた魚の價格は安かろうが高かろうがどうでもいい、安心して
自分たちが漁ができるように資材でも食糧でもくれて貰いたいのだ、
自分たちは一日四囘から食わなければ仕事はできないのである、併し實際に加配米もあるけれども、これは不規則に割當てられて、珠に切符が出ても食糧營團では現物がないというてくれないのだ、こういう泣き言をいうております。現に二人乘くらいの小船によ
つての小さい漁師は、一ヶ月五千圓程度の收入を得てお
つて、それで生活が樂ではないという實情であります。
以上は
簡單な實際の御
報告でありますが、我々この
調査の結果、多少の意見を附しておるのであります。それは要すれば、
青果物については
肥料を段當十貫の割合で、一遍でなくてもよろしいから、前渡しをしながら、生産縣と東京都、大藏省との間において協調をして、作付段別を決めて、計畫的に供出させる。これには實際生産者の側の園藝組合の諸君その他も非常に贊成しております。價格は現行の二倍です。それから大都市、東京都の中心に集めるという具體的な政策は可なり愼重に考えなければならない。先程申したような埼玉縣の南部、或いは千葉縣の北部というような
地方は、東京都と同一に取扱うということが望ましいと思います。それから集荷は今任意組合が行な
つておりますが、生産者自身の組織に法的根據を與えるということが
絶對に必要であると考えます。輸送機關は生産者側に責任を持たせて、燃料等はやはり重點
配給するというようにした方がいいと考えます。價格の決定は勿論急速になされなければならないと思います。そうして價格決定に際しましては、最も愼重に而も合理的になされなけれだならん。同時に魚については氷と輸送ということに最大の努力をすること、そうして魚の増産については、現在いわゆる大謀網と稱する定置漁業が一番主たるものでございまするが、これは非常にむらがあ
つていけません。取れるときと取れないとき、他に又
資料を持
つておりまするが、ここでは省略いたしますが、むらがあ
つていけない。そうして一事業に對する資本の額が非常に厖大に多く要るのと……それから同時にこの企業の形態が從來のような、やはり資本家的の形態が強くな
つているのであ
つて、そういう實際商賣において現在餘程休んでいるのがあります、そこで現在はそれならばそれ以下の漁をしているのはどんなものかというと、一人乘り二人乘りの小さな船で取
つておりますが、これは非常に自由でありますると同時に、半面非常に闇を、そういうことをやるのに非常に都合のよい連中であります。珠に餘り自由主義で放縱であ
つて、計畫等に載せられないところの業態であります。そこでここには船體は凡そ十七八人から二十人乘りの、馬力にすれば凡そ六十馬力くらいの漁船、このくらいの漁船で、いわゆる棒受網と稱するもの、「さば」、「さんま」、「かつお」等何でも取れるという、この漁船が二十艘乃至三十艘くらいはどうしてもあの地帶に造ることが必要だ、そうしてその經營主體は協同組合、これを
一つ政府が奬勵して増産計畫の際第一著手たらしめたがよかろうと考えます。このような漁船が非常に今日各漁村において要望されております。人的資源の點では、各港に、例えば富浦にしても、小湊にしましても、相當の働き手が現在おるのでありまして、約三十艘くらい出してもまだまだ十分なほどの人的資源があるのであ
つて、これに政府が力を入れてやりまするならば、協同組合的に相當發展する可能性があり、而も一艘の船で凡そ一ヶ年間十萬貫ぐらいの漁獲高が確實にあるということは、各所の漁民の聲で、我々はこれを感知することができるのであります。三十艘あるならば、年に三百萬貫というものが増産できると考えます。こういうようなことを我々が意見として附加えて申上げて置きます。
以上實情と
簡單な意見を附しまして御
報告申上げる次第でございます。