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政府委員(三堀參郎君) それでは先般の第一囘
委員會で提案
理由について相當詳しく御
説明申上げたつもりでありますけれども、更に從來の經過等を織りませまして、二、三新らしい點を申上げて御參考に供したいと思います。
大體公團制度を採用する決意を固めるに至りました經過といたしましては、現在のところでは御承知の
通り、戰時中から引續きまして統制
機關が國家總動員法によりまして、各
物資についてできてお
つたのであります。それが終戰によりまして昨年の九月末に、總動員法はいわゆる終戰後丸一年ということで失效いたしたのであります。それによ
つて直ぐ當時の經濟状態といたしまして、統制を解除してよろしいというわけには參りませんので、取敢えず臨時
物資需給
調整法が十月一日から施行にな
つたのであります。その際に
割當と配給を分離する原則が立てられまして、統制については切符制によること、
割當については
政府が行うということになりまして、一方その當時からいわゆる私的獨占の禁止、私的
機關による獨占は禁止されるという構想も、大體はつきりして來たのでありまして、臨時
物資需給
調整法に基ずく統制は一時的のもので、いずれはつきりした私的
機關による獨占禁止の建前によりまして、統制を必要とするものについては、法的な
機關によ
つて統制を續けるのであ
つて、それ以外のものは當然公團組織か、或いは官廰組織か、要するにそういう公的
機關によるもの以外には統制は續けられないという、大體の構想がまとま
つて來たのであります。
大體公的
機關による。
政府機關がやれば勿論問題がございませんけれども、いわゆる公的
機關、
政府の代行
機關というような公的
機關による統制は、イギリスにもアメリカにもその例があるのでありまして、特にアメリカの例を中心といたしまして今日までいろいろと研究を重ねて來たのであります。そうして、今日までに設立せられましたものといたしましては、先般の議會を通過いたしました石油、配炭、産業復興、船舶
價格調整の各公團でありまして、その外に特別
調整廰がございますし、又
肥料につきましては、これはいわゆる法律によらずに、GHQの特別な指令に基ずきまして、ポツダム處理が施行せられまして、いわゆる勅令によりまして
肥料につきましてはできたのであります。そうしてこれも私から申上げるのもいかがかと思いますが、或いは安本から申上げるのが然るべきと思いますが、公式的に申上げようと思いますが、今後設立するということを豫定しておりますのは、今ここに提案いたしております食料、衣料の外に、
農林省關係は鹽の關係が何れ正式に承認があり次第出て參るわけでございますし、主食につきましても現在問題にな
つております。又他の省におきましても、大藏省なり商工省におきましても、それぞれの公團の設立が問題にな
つておる。中には現在起案しておるものもあり、そういうようにいろいろな
物資について設立を見んとしつつありまするけれども、大體この公團を設立するかどうかということの基準を何に求めるかと申しますと、大體供給が
絶對に不足しておるということが
一つの非常に大きなモメントをなしております。供給が
絶對に不足しておるものでなければ、この公團方式による統制は必要としないわけであります。但し供給が
絶對的に不足しておるものは、現在の日本の經濟状態からいいまして勿論澤山ある。殆んど全部とい
つていいかも知れませんが、それらにつきまして全部公團の組織にしようということは勿論ないのでありまして、これが經濟再建なり或いは國民生活上に、是非必要な
物資たることも亦
一つの大きな要素にいたしておるのであります。今後の經濟再建なり或いは今後の國民生活の上に、是非必要なものでなければ、これ亦公團の對象
物資として取り上げるわけには行かないわけでありまして、
從つてそういう
意味からも公團を設立する
物資は極めて限定せられて參ります。
今の二つは極く抽象的な大ざつぱな
條件でございますけれども、その外細かく入
つて參りますと、公團を設立するもう
一つの
條件といたしましては、
價格或いは品質などについてプールを要する。
價格につきましてプールをする必要がある。これは全國的に産地が散らば
つておりまして、消費地も亦全國に散らば
つておるということになりますと、その間に輸送があるわけなんであります。輸送するということになりますと、當然
價格のプールをしなければならんわけでありますが、
價格のプールだけでありましたならば、或いはこれは
價格調整公團もできておりますから、その
方面だけでもよろしいわけでもありますけれども、その外品質のプールも考えておるのであります。例えば現に提案いたしております油糧などにつきましても、いろいろな性質の油が出て參りますけれども、これを例えば工業用に供給する場合に、原料としてどういうふうに使われる場合があるかというように、そういう油のようなものにつきましては、當然品質のプールをする必要が出て參りまして、これなどは、その極く典型的な一例と考えております。それから尚供給につきまして、
一定の計畫に
基ずいたいわゆる計畫配給をするという必要も、
一つの大きな
條件にな
つて參ります。
生産したから右から左にただ出せばよろしいというものであれば問題はありませんけれども、味噌、醤油にいたしましても、或いは砂糖にいたしましても、すべてこれは民間を通じた配給計畫を立てなければならないわけなんでありまして、當然その間に
一定期間ストツクを持ち、計畫的に貯藏をして、そうして初めて計畫的な配給ができるわけなんでありまして、こういうようなことは單なる
價格調整公團ではできないことなんでありまして、どうしても別途に配給に關する特別な公團を必要とするわけなんでありますが、そういうような計畫配給をする必要から、計畫的な貯藏を必要とするというような
物資につきましては、今後公團の設立を考えるわけなのであります。それからただ配給統制をするというだけでありますれば、これはクーポン制だけで勿論可能なわけなんであります。ただフリークーポンで考えられます
物資は、相當これは
生産關係もゆとりがありまして、切符制だけで消費者に迷惑がかからないということがどうしても必要にな
つて參ります。ところが現在の、今取上げておるような
物資につきましては、當然
生産關係も非常に窮屈でありまして、單なるフリークーポン制で統制を
實施するということになりますと、消費者に非常に迷惑がかかる。店に買いに行
つてもその店にはない、又他の店に行かなければならん、そこでもないと、一軒、二軒、三軒、四軒目に行
つて初めて物がある、全國的に見れば物があるけれども、果してどの店に物があるかということが容易に分らないというところに、實はフリー・クーポン制の大きな惱みがあるわけでありまして、
從つてフリー・クーポン制だけで統制を
實施しようというには、相當物にゆとりがあるということが大きな前提にな
つて參ると思います。
從つて今後この公團制を必要とする
物資には、フリー・クーポンだけでは統制の十分に行かないようなものということも、又
一つの大きな
條件にいたしておるのであります。こういうように供給の
絶對的な不足であるとか、生活上なり經濟再建上の必要
物資であるとか、或いは
價格なり品質なりについて或るプールを必要とするとか、貯藏もしなければならん、或いは單なるプール制だけでも配給統制がむずかしい、こういういろいろな各種の
條件を備えましたものについて、初めてこの公團制を採ろうというわけなのでありまして、現在我々の
考え方といたしましても、こういう官廳方式による統制というものを無暗に掲げて行こうというつもりは勿論ないのでありまして、極めて限定せられた
意味において考えて行くつもりでおるのであります。
そこでその次には、それでは一體公團と從來の統制方式との間にどういうような
違いが……これは衆議院でも實は昨日も御質問が出たわけなんでありますけれども、どういう點に長所があり、どういう
違いがあるのかと、そこに例えば人員の點なり、或いは配給段階の點なり、或いは
生産者に對し、或いは消費者に對する點などにおいて、何らか採るべき點があるのかというような
お話があ
つたわけなのでありますけれども、その點について極く簡單に申上げたいと思うのでありますけれども、大體統制の方式といたしましては、現在の統制會社なり、或いは統制組合なりの方式と、そんなに根本的な
違いはございません。統制會社なり統制組合が現在や
つておる統制方式が、統制の方式といたしましては大體そのままの形において公團においても採用せられることになるわけなのでありますが、從來におきましてはそれが或いは株式會社の形において、或いは組合の形において、私的の形において
實施せられてお
つたわけなのでありますが、それが公的のいわゆる
政府の
一つの別働
機關とする特別な方針の形において
實施せられることになるわけなのでありまして、例えば株式會社、いわゆる從來の統制會社といたしますと、大體その資本は
生産業者なり、或いは販賣業者の手から出ておるわけなのであります。ものによりましては
政府が一部出資するものもありますけれども、この現在問題にな
つております
食糧品關係につきましては、
政府出資は今はないわけでありますが、大體そういう民間出資が
基礎にな
つてお
つたわけであります。
從つて統制という機構におきましては、新らしく作ろうという公團におきましても、又現在や
つております統制會社の方式においても
違いはありませんが、一方はそれが民間の出資において、いわゆる營利形態において、株式會社というのは元來營利形態でありますが、營利形態において出資するということになるわけでありまして、それが今度はつきりした
政府金額出資という、
政府の全
責任の下において出資せられるというところに、大きな
違いが出て來ると思うのであります。株式會社の形において出資するということになりますと、例えば或る物を配給すると近頃のように
價格の關係が變動して參りますと、株式會社としますと、どうしても株主に對する配當、配當でなくても少くとも株主に對して損失をさせないということを考えなければならんわけでありまして、公的
機關でありながら一方においてはそういう營利的な株主に對する利害關係がどうしても離れない性質を、その性質として持たざるを得ないわけであります。それが公的な統制を行うという上において、非常な大きな弱點であることは、これはもう形式的に否定ができないと思うのであります。又總動員法の場合は別といたしまして、現在のように單なる株式會社組織による
機關となりますと、役員も全部株主總会……いわゆる資本の制約を受けると、その
經營も
從つて株主を總會の制肘を相當多分に受けるということになりまして、その間に公的な事業をや
つて行く上において、いろいろな弊害、或いは弊害とまでは行かなくても、その間に矛盾、ジレンマを持たざるを得ないわけでありまして、それが公團というはつきりした
政府の全額出資による
政府の全
責任の下における形になることによりまして、一應一擲されることになるわけでありまして、公團の大きな特徴はそこにあろうかと思います。ただ繰り返して申上げますと、統制を
實施して行く形におきましてはそう大きな實質的の
違いはございません。職員も、いずれ資料としてお配りいたしますけれども、公團の職員が、現在の統制會社の職員が、大體その形において公團に引繼がれるわけでありますから、人の面におきましても、又實際に物を動かす面におきましても、そんなに大きな
違いはございません。ただそれが形式的に割り切れた形において統制が行われると、まあ言えばそういうことが言えようかと思うのであります。それからこの公團になることによりまして、配給の段階の面でございますけれども、この公團を作ることによ
つて、從來の統制機構の場合と比べまして、段階は殖えることも減ることもございません。現在といたしましてはそのままの形において、これを公團に切り換えるというつもりでありまして、殖えも減りもいたしません。
具體的な例を申上げますと、味噌、醤油は現在地方の各地の製造業者から既往の統制會社が買いまして、そうしてこれを
中央の統制會社に更に賣りまして、そしてそれを今度は更に又一度地方の統制會社に賣り渡して、そして末端の小賣業者に渡すと、こういう恰好にな
つておりますが、今囘の公團にはその地方と
中央の統制會社が引繼がれることになりますので、今度は公團が製造業者から買
つて、そうして末端の小賣業者に賣るということで、
中央、地方を公團が引繼ぐ關係上、地方と
中央が
一つにな
つた公團の形で運營せられるわけでございまして、段階が殖えることも減ることもございません。又罐詰とか乳製品、砂糖なんかにつきましては、現在製造業者から
中央の統制
機關が買取
つて、これを
府縣ごとの卸賣
機關に渡して、御賣業者から小賣業者に渡すという段階を經ておりますが、その地方の統制
機關が公團になりますと、今度は公團がメーカーから買
つて、それを各
府縣の卸賣業者に渡す。そうして卸賣業者から小賣業者に渡すということになりますので、卸賣という段階だけは味噌、醤油より多いわけでありますけれども、それと現在がすでに多いのでありまして、公團になることによりまして、殖える、或いは減るということは生じて參りません。
從つて公團になるからとい
つて、段階が複雜になるとか、或いは公團になることによ
つて、從來の業者の仕事を奪
つて政府の統制機構が進出するというような形も起
つて參らないわけなんでございまして、
從つて例えば
價格上のマージンも從來と變りはありませんし、消費者に對する迷惑という點もなかろうかと思
つております。
それから尚この公團組織は、先程も
委員長から御指摘がございましたように、一歩進むと、いわゆる專賣組織、
政府專賣という形になるわけなんでございますけれども、
政府專賣は御存じの
通りに、いろいろと會計法規上その他のいわゆる日々の經濟行爲を行
つて參ります上においての、いろいろな複雜な手續に縛られまして、味噌、醤油、その他の日々の國民の生活
必需物資を扱うのには、なかなか十分でない。種々な不適當の點を含んでおりますから、これは恐らく取るべきではなかろうかと思
つております。それから尚專賣ということになりますと、これは勿論全部が純然たる
政府の官吏になるのでありまして、さなきだに問題にな
つております官吏が非常に多いという點が、一層かち合わさることになりまして、その點からも相當な問題かと思うのであります。
從つてそういう專賣という組織によらずに、取敢えず
政府の特別な
機關としての公團という組織によりまして、いろいろな或る
意味におきましては勿論弱點もございますけれども、その弱點を長所と比べました時に、秤では長所の方が重いのじやないかという點から、この公團の方式を取りまして、今囘御審議を煩わした次第なのであります。先般御要求になりました資料がもう間もなくできて參ると思います。或いは物の動き方なんかは、實際の物によ
つて御
説明すると尚分り易か
つたかと思いますが、取敢えず甚だまずい
説明でございますけれども、以上申上げまして、あとは御質問により申上げたいと思います。