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栗山良夫君 それでは僭越でございますが、
九州班を代表いたしまして私から
視察の結果の概要を御
報告申上げたいと思います。私共は今度
視察の對象といたしました各
火力發電所におきまして、それぞれの立場から
復興對策竝に當面なされつつあるところの非常な
努力及び
國會への
要望事項を具さに伺いましたが、ただ單にこれだけではなく、更に
大阪、中國、
九州の
各地區全般の
事業運營に關する諸般の問題につきまして、各
關係者即ち經營者、
勞働組合竝に
地方の
行政廳の係官の方より詳細且つ熱心な
状況報告竝に具申を受けることができました。特に
火力發電所につきましては技術的な問題に立ち至りまして、深く掘り下げた
説明を伺い、且つ詳細な
資料も
用意願つたわけであります。今日は時間の
關係もありますので、各點を綜合いたしまして順を遂うて要點を御
報告したいと思います。詳細な個々の點につきましては御
質問の折、又は今後の
電力問題の
調査研究の發展の過程において申上げたいと、こう存ずるのであります。又私の
報告の中で
十分意を盡さないような點、又は
報告の内容に脱落がございましたならば、
岡本竝に
西川兩委員より適宜御附言御補足を頂きたいとこう思うのであります。
最初に
日程竝に
派遣者の點を申上げます。九洲班といたしましては
岡本西川兩委員と私と三名、それに
事務局からは上田君、更に
日本發送電よりは
賠償部の
技術課長の
寺田重三郎君が參加せられまして
都合五名でございます。
最初の
豫定では八月の十五日に東京を立ちまして、二十三日の歸郷の
豫定を以ちまして、
九州大牟田市にありまする
港火力發電所竝に
大阪にありまする
尼崎火力發電所の
復興状況を
視察する、こういうことが主
目的でございましたけれども、その後
状況を調べて見まして、北
九州で今只最も困難な條件の下に
火力發電に從事し、重要な役割を果しております戸畑、小倉の
發電所竝に
大阪、
九州の
丁度中間に所在いたしまして、本州の
水力電氣の
九州への融通上極めて重要なる役割を果しておる中
國地方の
視察を除外視しては、今度の
視察の効果を半減するのではないかという見地からいたしまして、日數はそのままといたしましたが、旅程を變更いたしまして、
都合火力發電所といたしましては八ヶ所を
視察することにいたしたのであります。その
視察いたしました個所は、お
手許に御配布いたしました
視察火力發電所一覧表に極く概略的な要點を摘記いたしまして記述いたしておきましたので御覧を頂きたいと思います。
この
九州班の
視察の
目的について
ちよつと申上げたいと思うのでありますが、一般的の
目的は第一班、第二班と同じように院議で承認せられた
通りであります。ただ
九州班として特別な任務があ
つたように思いました。而もその任務は、今後
西日本の
電力問題の
調査竝に
對策の樹立上、この點明かにしておくことが極めて便利であろうと考えまして、一言附加えるわけであります。その第一は、
九州、中
國地區の
特異性であります。本州の電源が
水主火從で、
水力を常時、
火力を
補給用としておるのに反しまして、
九州におきましては
火主水從でございます。
九州の
電力對策は
火力發電で度外視しては、その
解決策は考えられないということであります。特に
日本の
火力發電所が一般的に同
一條件にありますけれども、分けても
年間運轉に終始いたしておる中
國以西に
火力發電設備は、長年の酷使によりまして、又最近の
石炭の
質竝に量の低下によりまして、その
發電量が極めて低下しておること。その第二は
大阪地區の
特異性でございます。
大阪は
西日本の六十サイクル系の負荷の
中心點でございまして、且つ六十サイクル系は、
關東の五十サイクル系と違いまして、
水主火從ではございますけれども、
貯水地によ
つて發電力調整の能力が低いのでございます。
補給用とは申しながら、
火力設備の
運營は
九州以上に重要なのであります。ところがその主力である
尼ヶ崎第一及び第二
發電所が戰災によりまして、相當大きな
被害を受けております。この
兩發電所の
復興が、
關西六十サイクル系の
電力の安定の鍵を握
つておるということがいえると思う。以上の二點を
現地視察によりましてその實情を詳かにし、
問題解決の足掛りを掴むのが、この
視察の要點ではなか
つたかと、こう考えるのであります。
次に
電力の
需要と
發電力の
關係でございますが、正確な數字とは申せませんが、極く大ざつばに申しまして、
電力の
需要は
九州において五十
萬キロ、中國において三十
萬キロワツト、
關西において九十
萬キロワツトというところでございまして、これに
應ずる發電力は、
水力及び
火力を動員いたしましても、
需要電力にマツチしないというのが現状でございます。と申しますことは、
水力發電は御
承知の
通りに
河川流量によりまして制約されております。
火力設備の損耗、戰災の
被害、炭質の
低下等によりまして、著しく
發電力が低下しておるためであります。今度
視察いたしました
火力發電所における
設備、
認可出力、竝に現在までの
出力の點は、只今お配りいたしました表の中にも掲げておきましたが、これだけでなく
つて、
西日本全體の出量を勘案いたしましても、
九州におきましては
主要火力發電所七ヶ所の
合計許可出力は、四十八萬五千
キロワツトに及ぶのでありますが、現在の
可能出力は、僅かに十四萬二千
キロワツトであります。只今急速に
復舊中のものを見込みましても、今年の冬でやつと二十四萬六千
キロワツトまでに囘復しただけだそうでございます。中國におきましても
合計許可出力は二十六萬四千
キロワツトに對しまして、
可能出力はざつと三分の一、約十
萬キロに過ぎないのであります。
大阪の尼崎第一及び第二
發電所の双方では實に六十一萬八千
キロワツトの厖大な
許可出力を持
つておるのに對しまして、只今のところでは八
萬キロワツトより出ない。今年の冬でもやつと二十七
萬キロワツトにまでしか囘復しない、こういう
状況にあることを
報告を受れて來たのであります。從いまして
石炭を現
可能發電力一ぱいに入手するといたしましても、
使用電力には遠く及ばないのであります。勿論今後の
渇水の
程度、
火力設備の
復舊状況、
石炭の質量の確保と、重大な
關係がありますけれども、今冬において相當嚴しい
電力の
制限は不可避的であろうと豫想せられるのであります。特に
九州におきましては、丁度私共が參りましたときには一般電燈は午後七時から午後十時まで一燈點火の
強度節電が行われておりました。これは今冬の
渇水對策といたしまして相當思い切
つた火力の
補修工事をやるたるに
火力設備の一部を
運轉休止してお
つたことと、全國的な夏の
渇水のたるに
水力發電能力が低下して來た理由によるものでありまして、八月十六日の如きは
所有電力五十
萬キロに對しまして、約三十二
萬キロに下
つておりました。
九州は御
承知の
通りに
石炭の全
國生産量の五十四%、
化學肥料は二十%、
セメント工業は二十三%等、
重要物資の生産のために
電力制限の不可能な
電力が大幅にありまして、このために總體の三十%弱に過ぎない
一般家庭用及び
小口電力に對して大幅の
制限が實施されておるのも止むお得ない實状にあるやに聞きました。中
國地方もほぼ同樣の
状況でありまして、要するに
西日本におきましては、力
復興の問題はいろいろありましようが、先ず第一に
火力發電所を急速に復舊いたしまして、
許可出力にできるだけ近く
發電可能出力を上げまして、これに
石炭を集中いたしまして
發電力を確保するという緊急措置を講ずることが焦眉の急であろうとこういう工合に考えたのであります。
ところで私共が
視察いたしました八ヶ所の
火力發電所は九地區で、港、小倉、大門、戸畑
發電所、中國地面におきまして坂
發電所、
大阪地區では尼崎第一、第二
發電所でございますが、これ等の
復興の要點にはそれぞれ特徴がございますが、これを極く大別いたしまして摘記いたしますと、大體五つの點に分類できるのじやないかと思うのであります。
發電所自體の復舊の
状況につきましては、一覧表の一番下の備考欄のところに、只今なされつつある大きな
程度の
状況を掲げておきました。先ずその第一
發電所のボイラーの
復興であります。ボイラーは適正炭を以ちまして余程綿密な年々の
補修をやりましても、若し
年間運轉をやるならばその壽命は十年を出ないという言われておるのです。然るに
九州、中國方面の
發電はボイラーをベストコンデイシヨンに置くような嚴正な
補修を加えず、いわゆる玉碎主業を以ちまして倒れるまで使用するというような
戰爭中の
運轉方針が
設備を極端な惡い條件にまで損傷せしめておりまして、非常に只今不安定な
運轉をや
つておる實情であります。私共が
視察いたしました中でも、港第一
發電所、戸畑
發電所、大門
發電所、坂
發電所等は全部これに屬するのでありまして、ボイラーのチユーブの取替等徹底的な修理が必要であり、現在計畫的に實行をされております。この表で
發電可能出力が現在と二十二年の、今年の冬との間に相當な差がございます。今年の冬は
電力が殖えるようにな
つておりますのは、こうい
つた、今なされつつある大きな修理
工事の完成を見越してのことであります。
その次に第二は適正炭の配給竝びに所有量の確保という問題であろうと思います。
發電所を最も能率よく
運轉するには申すまでもなく、その
發電所の特質に適合した、いわゆる設計炭を使用いたしまして、炭質においても、カロリーにおいても、完全を期することが建前であります。若し粗惡炭で
運轉いたしまするならば、
發電力は著しく減小するのでありまして、尼崎
發電所の
資料によりますると、六千カロリーの適性炭として使用せられた
發電所は、若し五千カロリーの
石炭を受けるならば、そのボイラー容量は半減すると、こういう工合に聞いたのであります。私共が
視察いたしました
發電所の中における、適正炭と現在配炭されておる炭とのカロリーの表をやはりその一覧表に掲げて置きました。只今設計炭の
通り納炭されておりまするのは小倉、それから
九州の大牟田の港第一、大體これだけでございます。即ち戸畑は五千五百カロリーに對しまして四千四百カロリー、坂は六千五百カロリーに對しまして四千八百カロリー、尼崎は六千五百カロリーに對しまして五千カロリーとい
つた工合でございます。どの
發電所でも異口同音に、若し適正炭が入手できるならば、現在のごとく緊急修理を行わなくとも、何とかして修理を行な
つたと同
程度の
發電力を維持することができる。こういう工合に炭を強質の改善を要望せられ、且その実情を強く私共に訴えられたのであります。又
石炭の納炭の
状況でございますが、本年春以來、
火力發電所向けの
石炭は若干好轉をいたしておりまして、
九州中國方面はほぼ割當量の九十パーセントぐらいのところまで行
つておるようであります。併し
關西の
補給用の炭は極めて貧弱でありまして、今冬までの見通しを取りましても、割當量の約半分ぐらい、こいうことでございます。そうして而もカロリーが六千五百カロリーを要求するのに五千と、こういうことでございまして、その能率の半減することを考えますと、
日發近畿支店の支店長の話によりますと、現在の
状態で行けば恐らく割當量に對して實際の炭の納炭量、これら還元いたしまするならば三分の一ぐらいになるであろう。從いまして
發電力もそこまで低下すると、こういうことをいわれたのであります。カロリーの向上を圖りますと共に、
發電所の要求する所要量の充足をするということが最も緊急な問題であろうかと思います。
第三番目は戰災
發電所の
復興の問題でございます。
大阪の尼崎
發電所は御
承知のように、その第一
發電所、第二
發電所を合しまして、總
出力は六十一萬八千
キロワツト、東洋第一の近代式
發電所でございましたが、戰災のために第一
發電所は
出力が三分の一、第二
發電所はその全部の機能を失
つたのであります。目下非常な
努力を以て復舊
工事が進められておりまするが、第一
發電所におきましては、只今やつと八
萬キロワツトを
發電しております。今年の冬は二十
萬キロという
状態であります。それから第二
發電所は今年の冬に七
萬キロ、明年の冬に十四
萬キロ、明後年の冬に二十
萬キロまで復舊するという計畫の下に進めております。併しながら
資材、勞務者等の
關係は非常に困難でありまして、この計畫
通りに果して進行し得るや否や非常な
努力を要するということを心配しておられましたが、この
復興計畫につきましては確實に實行できるような手を考えなければならないと考えて參りました。
次に第四の問題は、
九州、中國、
大阪地區を通じて勞働者の愬える意見でありますが、勞働問題について一言申述べたいと思います。
電氣勞働者の全般的な問題は別に述べるといたしまして、
火力發氣所
關係に重點を置いて進めます。
火力勤務の勞働者は
運轉中又
補修中を問わず二十四時間連續
運轉の性質上、又高熱且つ塵埃に滿ちた極めて不潔な場所で勤務をするのであります。
石炭、鐵鋼
關係の勞働者と何ら遜色のない重且つ惡勞働條件の下に置かれているのであります。今日までこれを遇する途は非常に薄か
つたのであります。この物的な諸惡條件が勞働者の奮起にも拘わらずその能率を擧げ得なか
つた重大なる障害とな
つてお
つたと思うのであります。先ず主食の問題でございますが、
電氣勞働者はすべて一合の加配を受けてお
つたのであります。併し
火力發電所のような重勞働をやるところではこれでは到底勞働に耐えないのでありまして、
石炭と同樣に特別加配を要求しておりましたが、やつと
九州及び山口地區に限り本年七月から十月までの暫定措置として二合の中央直配が許されてほつとしておりました。併しながら同じ中國方面におきましてもその主力
發電所でありますに拘わらず私共の
視察いたしました坂
發電所はその所在地が廣島縣にあるという理由だけで、現在二合配給がなく一合据置にな
つておりますので、この坂
發電所の從業員は非常な不滿を藏しておりました。このことは
日本の全
火力發電所に
關係のあることでありまして、來る十一月よりの新年度では根本的に加配米の問題が修正せられるやに聽いております。なんとかして
火力發電所の勞働者の主食加配米の問題はこの機會に解決をして頂きたいという要望を強くされております。
次に住居の問題でありますが、港
發電所及び尼崎
發電所は人員の
不足を補充するにも、又疎開者を勤務地に定著させるにも住宅問題で非常に苦しんでおりました。
發電所のごとく二十四時間勞務者を足止めしておかなければならないような勞働を要求するところでは、この勞働者の住宅問題は最も優先的に解決せねばならない問題であろうと思います。又
電氣勞働者に對する作業衣の配給も極めた惡いのでありますが、
火力發電所における作業衣の消耗は相當激しいのであります。これの確保ができるかできないかということは直ちに勤勞意欲の問題にも大きな繋がりをも
つておる一つであります。とにかく重要産業として國家的見地に立
つてこの第一級の重勞働者として
火力發電所勞働者の優遇の途を至急に講ぜられるべきではないかと痛切に認識をいたしたわけであります。
九州で伺
つた話でありますが、今春
食糧が窮迫して
火力の
運轉に支障を來たしたときに、
九州電産の勞働者はその
不足の
食糧の中から一握り獻納運動をやりまして、
火力發電所勤務員を助けた實例を
説明しまして、
九州電産の勞働者は意識的に勤勞意欲が低下しているのではないかという一般的な風評があるそうであります。それに對してその認識の
不足を愬えて嘆いておりました。我々は却
つてその眞面目な態度に心を打たれた次第であります。又大牟田では
石炭企業家からも
電氣勞働者は少くとも
石炭と同樣にみてやるべきではないか、かような意見も述べられたのであります。
第五といたしまして
資材の問題でございます。
火力發電所の修理には極めて多種多樣の重要な物資を必要としておりますが、これがなかなか思うように配給されない。又配給切符は得られても現物化に煩瑣な手續と多くの日時を要するのが現状であるようであります。幸い各
發電所共非常な
努力を以ちまして、この重要
資材の手當は一應目鼻が附いておるやに聞いておりましたが、併し全部を完了いたしますためには量は少くても非常に要重な物資であるというので間に合わないものが相當あるようであります。ここで一々その名前、數量の列擧は止めますが、多數種類の中には充足しなければならないということの
報告を受けました。特に私共が關心を以ちましたことは、先程第一班、第二班の
視察報告の中にもございましたが、この
發電所の
運轉にはどうしてもなくてはならないところの機械油、或いは電發絶縁物、こういうものがどの
發電所も非常に缺乏しておりました。もう一歩進むならば恐らくこの油の面から
運轉ができなくなるのではないかという
状態に入
つております。油は勿論國内では賄われない性質なものでありますが、なんとかして聯合軍にでも愬えまして輸入の途を講じなければならない重要な問題であろうかと、こう考えるのであります。
次に
九州、中國を通じての
電力の安定方策について私共の聞きましたこと竝びにこれに對する私共としての意見を申上げたいと思います。今まで申上げたことで極く概略ではありましたが、一應各
火力設備の復舊の
状況と申しますか、復舊過程にある要點について、且つその
資料について
報告をいたしましたが、
九州及び中國方面の
電力安定の方策として取り上げるべき重大な點が二三あるように伺いました。その第一は
九州は現在
日發の
火力發電所の外に自家用
發電と申しまして、
石炭その他の各企業家で所有しておられる
火力發電所が約二
萬キロあるそうであります。そうしてこの
發電所は
石炭さえあれば、そうしてその
運轉をする時の經費負擔の問題だけが解決するならば何らの修理を要することなく直ちに
發電し得るものだそうであります。すでにいろいろ手は打たれておるようでございますが、根本的な
運轉に至るまでの問題の解決がつかないために
運轉に入
つていないようであります。至急に手を打つべきではないかと思います。第二といたしましては、
火力發電所は完全
補修を續けなければ今日のようなこの憐れな
状態に
發電力が低下することは當然でありまして、完全
補修をどうしてもやらなければならない。そうして完全
補修をやるためには
發電所を全部停電して根本的な處置をしなければならないのであります。然るに現状におきましてはどの
發電所も
年間運轉をや
つておりまして、到底全停電をや
つて修理をするというようなことは思いもよらないことなのであります。從
つて少くとも豐水期におきまして本州の豐かな
水力電氣を
九州まで延長いたしまして、中國及び
九州地方の
火力の
補修と
電力の安定を期するために、緊急に大送電幹線を
大阪より延長すべきである。このことはすでに
日發においても計
畫中と聞いておりますが、一刻も早く實現されることを
希望するのであります。又これと竝行いたしまして、
九州は五十サイクル系の
電力と六十サイクル系の
電力とがほぼ半半にな
つておるのであります。このことが
九州全體の
電力の能率的運用上非常な障害にな
つておるようであります。サイクルの
九州における統一も是非斷行しなければならん一つであろうと思うのであります。
その次に
大阪、中國及び
九州方面の
電氣事業全般の問題につきましては、それぞれの地區の代表の方から伺いました。例えば金融難打開の問題、
資材確保の問題、
電源開發の問題、特に戰時中著手いたしまして未竣工の
發電所の完成促進の問題、或いは
電氣勞働者の勞賃及び厚生
關係改善安定の問題、
電力制限竝びに
電氣盗電防止の問題等に關しまして、熱心なる而も
建設的な御意見を伺
つたわけでありますけれども、これらの問題はただ單に
大阪以西の
電氣事業の問題ではないのでありまして、すでに
電氣事業者との懇談會の席上でも、實状が
報告せられまして、それぞれ
國會の問題にまで發展せしめ得るような
状況下にあるようでございますので、省略をいたします。ここでただ一言だけ申上げたいことは、これは各地區の代表者からも聞き、私共も意見は一致しておるのでありますが、
電氣事業自體が只今完全なマル公營業をや
つておる、そうして而もこれに加えまして販賣
電力の一割と想定せられるところの盗電
電力すらありまして、そうして頗る彈力性の乏しい
事業、言換えれば眞面目な企業であると言うことが
電氣事業には言うことができるのであります。然るにも拘わらずあらゆる面で
電氣事業育成のために、特別の行政的な措置が講ぜられていないということが、非常に遺憾であります。このことが
電氣事業を今日のような
状態に陷れた根本的な原因ではなかろうかと考えるのであります。又電産の勞働者からも各地で現在給與について生活苦から來る苦況打開の愬えがございましたが、これも要するに
電氣事業自體がマル公營業であると同樣に、
電氣勞働者も雜給與その他現物給與の途の開かれていない窮屈な給與で、而も主食、作業用必需品等の配給は極めて乏しい
状況でありまして、これを打開しなければどうしても職場に挺身し難いというような見地から、只今熱心なる運動をや
つておるのでありますが、
電氣事業の再建のためにも、この勞働者の問題を眞劔に而も眞面目に取上げて解決せられるべきではないかというようなことを感じたわけであります。
最後に結論といたしまして、以上
報告いたしましたことを綜合いたしますると、
電源開發、
火力設備の増強の問題にいたしましても、金融
資材等の問題にいたしましても、又勞働問題にいたしましても、現在
電氣事業が逢著しておる難問題は決して、個々の問題の個別解決を圖
つても、拔本的でないのであ
つて、これが根本的な解決は、綜合的な問題として大きく取上げて解決することが必要であろう、こういう結論に達したのであります。最も健全な企業として信用せられておりましたところの
電氣事業も、今日では縮小再生産の過程に入
つてしま
つたのであります。これは
電氣行政の弱體、
電力運營機構の不完全等の根本的な原因もありましようが、要するに
電氣事業が本當に我が國産業の
復興のために、
石炭と共に、絶對的に育成すべきであるということが確認せられまするならば、その民主的發展のために、
石炭企業と同格の重點産業として、重點的な措置が講ぜられなければならないと信ずるのであります。從いまして
國會は、特に
電力委員會は、
電力復興の問題につきまして、愼重に且つ迅速に當面の問題を取上げ、
電力政行機構の強化、
電力機構の民主的再編の問題をも含めまして、最善の
對策を樹立せらるべきであるということを、今囘の
視察の機會にますますその信念を深めた次第であります。以上を以ちまして極く概略ではありましたが、
九州班の
視察概要
報告を終ります。