○田村文吉君
総理におかれましては時局艱難の場合に非常に御苦心でおられることと考えております。その点につきまして私共は深い同情と敬意を表しておる次第でございますが、私は今日の差迫
つて参りますインフレーシヨンを克服いたします途は一に
電力問題の
解決にあるとこういうことを考えておるのであります。それはいかなる金融上の措置をいたしましても、物が
不足いたしておりましたのでは、到底このインフレーシヨンを克服するということはできないのであります。でありますから、今日は何とい
つても
生産第一主義で、将來よりは今年、明年よりは今年というように
生産が殖えるというところに
國民は安心して、そうして物價の将來の値上りというものに対する懸念を拂拭して、そこで財界が安定する、こういうふうに私は考えておりますので何とい
つても
生産第一主義でなければならん。
從つて政府におかれましても
石炭に対しては特殊のお考を持
つておやりにな
つて、現在問題も出ておるのでありますが、私は余りに目先の問題に囚われすぎまして、無論
石炭の重要なことは勿論でありますけれども、
石炭よりはもつと重大な問題がネグレクトされておるのは
電力の問題である、こう私は考えております。私の永年の産業人としての経驗からいたしまして、又今日
鉱工業の
委員の一人といたしまして、非常に誤りが
政府において考えられておるじやないか、本日も頂きました
閣議決定事項の第二の要領には、資材の入手等については
石炭に次いで優先的に取扱う。こういうふうにな
つておりまするように、
石炭が第一でその次が
電力だ。こういうふうにな
つておるのでありますが、産業人の経驗から申しますると、実は熱がなくても紡績機械は廻るのであります。又肥料もできるのであります。又機械工業もできるのであります。無論若干の
燃料を必要とする場合もあるのでありまするけれども、大部分の今日の平和産業の工業は、熱がなくてもやり得る産業が多いのであります。況んや
電氣がありますれば、これを熱に変えて仕事を進めることもでき得るのでありますから、一番大切な物は
電力であるのでありまするが、たまたま終戰後、
電力が非常に余る恰好にあるという非常な不幸な誤認からいたしまして、
電力問題についてはすべてがこれをネグレクトして参
つた。こういうために過去慎重な二ヶ年間をみすみすこの
電力に対して看過し去
つたということが、今日のインフレの根本に又な
つておるかと考えるのでありまして、この問題が
解決されない限りは、到底今後のインフレを
解決せしめるという
方法はないのである。それほどこの
電力の問題が何よりも必要な
状況にな
つて、差当りのインフレを克服いたしまするにも、亦今後の
日本を再建いたしまするにも、すべてが
電力によ
つて初めてできる。而もこの
電力というものは、御承知のように限られた資源ではないのでありまして、恐らくは
日本の國内の水力
電氣を全部開発いたしまするなれば二千万キロぐらいは出る。こういうふうにいわれておるのでありまして、漸く今日は水力
電氣が四百万か六百万、多くて六百万キロぐらいまでしかないのでありますが、そういう未開発の資源を持
つておるのでありますから、先ず何よりもその点に向
つて進んで行くということが、即ち産業界の安定となり、
從つて物資の沢山
生産されることになりまして、インフレに対する問題も
解決する。こういうふうに考えておるのでありますが、これに対して、
電力に対しては過去においてどうもこれを軽視されておるような点が甚だ遺憾に考えておるのであります。私共はこの
電力問題が、今後の
日本の再建の全く基準であり、又差迫る経済
危機を突破する唯一の
方法であるということを考えまする点から行きまして、この点について
政府ではどういうふうにお考えにな
つておられますか、この点を第一にお伺いいたしたい。
次にこの
電力の問題が今申したような非常に重要な問題でありまするので、既設の発送電会社及び配電会社がございまするが、この会社を國家が買収して、國有にいたしまして、又はこれを公有にいたしまして御経営なさる御
方針がありますかどうか、お考えを伺いたいのであります。発送電会社及び配電会社の資本金は、私は計算を寄せたこともございませんからしつかりしたことは分りませんけれども、恐らくは七十億か百億近くの金がありましたならば買収ができるのではないか。今日の株の値段等から推算いたしまして、さようなものではなかろうか。而も今日の株主の
状態から申しますると、殆んど配当もないような
状況に相成
つておるのでありますから、これに対して
政府が相当の利潤の附く公債を発行することによりますならば、必ずしも持
つておる人たちも大なる不平もなかろうかと考えるのであります。尚この國有の問題につきましては、
石炭やその他の企業とは性質が違いまして、今日は一方キロの発電所を造るにも何十億という金が要るような
状態に相成
つておるのでありますから、今後の
電力の開発はどうしても國家、或いは公共團体等によ
つて経営されねばならない点があると思うのでありますることからしもて、現在の既設設備を國家がこれを國有にするということについてのお考えがあるかどうか。從いまして國家は今後の
電力の開発について、大規模のものは所詮國家が或いは公有により公営によ
つてやらなければならんのでありまするが、それに対するお考えはどうでありましようか。伺ふところによりますると、
電力の開発についてはその筋から余り望ましくないようなことも伺
つてお
つたのでありまするが、こういう点につきまして、できるならば我々は一日も早く
電力の大きな開発が必要な点からいたしまして希望しておる次第でありまするが、その点についての事情をお伺いしたいのであります。
それからもう一つは、この大きな発電所もさることでありまするが、今日の應急
対策といたしましては、縣或いは村、町等にございまする小さな水力を利用いたしまして小発電所を市営でも、自家用でも、或いは公營にいたしても構いませんが、三百キロでも五百キロでも、水車を廻し電燈を點け、或いは精米機を運轉できるというような、小さな発電所を開発することについてのお考えがおありになりますかどうかということをお伺いいたしたいのであります。尚
綜合対策等につきましてお示しに
なつた点もありまするが、先刻も御
質問があ
つたように甚だ漠といたしておりまして、あれもやる、これもやる、これもする、あれもするというようなことを仰しや
つておいでになるのでありまするけれども、どうもぴ
つたりとその仕事が地に附いてこない。こういうことが非常に
國民が憂慮いたしておりまする問題でありまするが、その
綜合対策をお立てになりまして、強力に御遂行なさる御意思をお持ちにな
つておりまするかどうか。この点を
総理にお伺いいたしたいのであります。