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國務大臣(
三木武夫君)
中労委の
裁定は必らずこれを守らなければならんかというお尋ねでありましたが、この点は労働問題を平和的に処理いたします
ためには、
中労委の権威を認めて、できる限りその
裁定案というものには
尊重をして行く態度であります。併しながら
必らずしも守らなければならないかという問題につきましては、
尊重はいたしますが、場合によればどうしても
中労委の
調停に服し難い場合があることは止むを得ないと思います。
原則的には
尊重をして行くという
立場で、その線を沿うてできるだけ
檢討して行く。併し場合によれば、そのまま
裁定案の
通りにこちらが受諾ができ難い場合も起り得る。
一般論としては、さように申上げるより外にないと思います。
特定局の問題に対して、
中労委の
調停案が出ましたことは御
承知の
通りでありますが、それは四
ヶ條に分れておりますが。第一は、
当局は
特定局制度廃止の
方針を決定すること、第二は、その実施については
予算その他の
事情を勘案し、期限を
限つて逐次これを実施する
ため具体的計画を立てること、第三は、
地理的事情その他
普通局を置き難い特殊の
事情ある個所については、例外として
特定局を置き得ることとするが、その場合、
局舍の設備その他
労働者の利害に
関係ある事項については、在來のごとき弊害を生ぜしめない
ため、予め適当な
規定をなし
置ぐこと、第四は、右第二及び第三の
事柄を定めるについては、
経営協議会に附議すること、こういう勧告を受けたわけでありますがこの
特定局制度と申しますものは、
一体特定局制度というものは、どういうものであるかということは各位御
承知のことと思いますが、この
特定局制度の
一つの
内容は請負の
制度にな
つておること、まあ
経費等も
局長に対して渡し切りで、そうして
局舍等も十分の家屋を提供して請負う
制度にな
つておるということと、
局長の任用が、そういうふうな
局舍等の提供の
義務も從來持
つておりましたし、或いは資産的な制限もありました。そういうふうな
一つの
義務を負うた自由任用制の形にな
つておる。これが
特定局制度の主だ
つた内容であろうと思うのです。だから
特定局というこの名前が問題でなくして、この
特定局制度という、この
制度を形作
つておるこういうふうな請負
制度とか、自由任用
制度とかいうことに
特定局の
制度の問題があるわけであります。ところがこの請負
制度につきましては、まだ
切手の割引、賣捌の方法、即ち
切手とか葉書とかいうものを先に
局長に買
つて貰
つて、それを賣
つたら四分の
手数料をつけておる。こういうのがまだ残
つておるのでありますが、その他は大体において請負
制度でなくて、公の
予算に切替えられておるわけであります。この請負
制度はただ
局舍の問題でありますが、これを一遍に國の何と申しますか、國が
郵便局の
局舍を全部持つということも、俄かにやるということは、
予算も託しませんが、そういうこともできませんので、これはこれから新らしくできる
郵便局については、
局舍の提供の
義務というものを負わさないで、國がこれを借上げて行く。或いは又必要な場合には、國が直接建築する場合もあるでしよう。又從來の
局舍を提供しておるものに対しても、
方針としては漸次國が借りて行く。或いは借家料を拂
つてこれを借上げて行く。
局舍提供の
義務というものをなくして行こうという
方針であります。そこで
特定局制度の中の大きな
制度上の要素である請負
制度というものは、もう殆んどなくなりかか
つておるわけなんであります。又もう
一つの大きな要素である自由任用
制度という問題も、これは從來は
局舍提供の
義務があ
つたから、家と人間というものが結付いたわけでありますが、
局舍提供の
義務というものがなくな
つて参りますし、又國家公務員法が、こういう公務員の任用に対して、御
承知のごとく新らしい
基準を設けようとしておりますから、この國家公務員法に則
つて、
局長の自由任用制というものも新らしい形に
変つて來ると思うのです。かようにな
つて参りますと、
特定局制度の
内容をなしてお
つたものは、殆んど今日では形は変
つておる。こういう意味からいうと、從來の
特定局制度というものは、從來のような
特定局制度はなくなりかか
つておるのだ。こういうことを申上げることが適当かと思われるように変
つておるので、何と申しますか、從來のような
特定局制度というものはなくな
つて行く
方針に向
つておることは事実なんです。ところが、そんならこういうふうな
調停案にあるように、
特定局制度廃止、こういう眞向うからこういうことにいたして参りまして、これを直ちに具体化する。そういうような
制度を
廃止する。而もそれを直ちに短期間の時間を
限つて具体化する、ということにな
つて來ると、それは
局舍の問題等も行き詰
つて参ります。そうしてそういうことにな
つて参りますと、非常な衝動を全國の
特定局に與える結果にな
つて参りますので、大体の今までの
特定局の中にあ
つて弊害があるといわれておるものは、改善をして、殆んどなくな
つておるのでありまして、殊に今度問題に
なつたのは、結局
中労委はこの労働問題が中心でありまするから、
特定局の労働條件を問題にしてこういう案が出たに違いない。純然たる政策ということにな
つて來ると、これは純然たる政策について
中労委がいろいろ決定なさるということについては、私もいろいろ
意見があるのであります。これは純然たる政策ということでなくして、
特定局制度に含まれておる労働條件というものが中心にな
つて、労働條件を改善する
ために、
特定局制度そのものが問題に
なつたと思うのです。その労働條件というものについては、これは從來は請負
制度であるからして、金を
局長に渡して、その金で
局長が人も傭
つて來る、そして又
経費も賄
つて行く、いろいろな設備もやるということから、自然働いておる人は
局長の個人的使用人見たいな形にな
つてお
つた。そういう状態ですから、十分な設備もできなか
つたという点もあ
つたので、今後はそれをこういう公経済に切替えて行きますし、働いておる人の費用も直轄にな
つていますから、こういう点は改められて來たのであります。今後
局舍の設備というものについても、
局舍は
政府が借上げると同時に、そうして本省の方で
局舍の設備というものも
責任を持
つて行こう。例えば寢具のごときものですが、これも今度
予算に組んで、今までのような請負みたいな形で
局長が寢具も用意するということでありますと、十分ではございませんから、これは
逓信省が寢具を渡す。それから多少の改善等も
逓信省がや
つて、いわゆる
局舍の設備ということについても、でき得る限りの改善を加えて行きたい。それから又勤務時間の問題ですが、これもできる限り
普通局の
基準によ
つてや
つて行きたい。ただ小さな局ですから、
普通局と同じように何係、何係と小さく分けては、却
つて能率の上からい
つても惡いし、経済的にい
つても惡いので、やはり綜合的にや
つて行くような工夫をしなければいかんと思うのであります。末端の田舍の
郵便局も、都会の
郵便局と同じような機構を以てやれということは、却
つて合理的な
経営にならない。それはやり方にはそういう相違があるが、労働條件としては
普通局と同じような形にして行きたい。こういうことで、
中労委が御心配にな
つておる労働條件の面から來る点も、これも改善をして行きたい。
予算的な処置も講じて行きたい
方針であります。こう
考えて参りますと、從來いわれた
特定局制度というものの
内容は、もう今日では殆んど変
つておるのでありまして、從
つて私たちとしては、この
中労委の
調停案はこれから
檢討いたしたいと思
つておりますが、併し大きな
考え方としては、さまで矛盾をしないのではないか。ただ併しここで
特定局制度撤廃、これは非常に政治的な問題にもな
つておりますので、こういうことになります結果、それが一般には今申したように
特定局とは何ぞやとい
つて、その
内容というものがよく分
つて、呑み込んで頂ければ、この問題に対してよく御理解が願えるのですが、頭から
特定局廃止だ。こういうことにな
つて参りますと、不必要な衝撃を各
特定局に與える結果になりますので、私たちとしては、今までのように
特定局の
制度の中に含まれておるものを次第次第に改善して行
つておる。だから今日では昔のような
特定局制度というものは殆んどなくな
つておるのだ。こういう限りにおいては、次第に今までのような
特定局制度は
廃止の
方針にな
つておるのだが、併し局舎その他いろいろな從來の
特定局制度の要素にな
つておる問題を具体的に今直ぐにこれを全部やめてしまうのだということは、現実はそういうことはできない。從
つてこれは相当な時間をかけて、そうして
特定局に対しても摩擦と不必要な刺戟を與えない方法によ
つて、この
特定局問題を解決しの行かなければならない。こういう
考え方をいたしておる次第であります。