○委員外議員(矢野酉雄君) 發言さして頂きまして有難うございます。
只今政府委員から私が御願いを申上げたいと思いましたことについて實は御
説明がありましたので、或いはこれは屋上屋を重ねるの弊に陷るかと存じますが、率直に申上げますというと、
大臣にしてもその他の
政府委員の方がここでお仰しやつたことでも實は必ずしもそれが行われないことがしばしばあります。過般も私は私の同僚の岡部常君を通して總理
大臣に對して六・三制の
追加豫算についての言質を本會議で取りましたけれ
ども、御覧の
通りに六・三制
追加豫算七億圓の豫算を繰込むことができなかつた。文部
大臣自體も言質を與えてこれを實行していない。これらの事實に即しましてどうも
政府委員の仰しやつたことだけではまだなんだか心細く感じますので、私の衷情を披瀝する次第であります。
實は一昨々日特別
委員會の者は東京を中心といたしました
引揚者の一時寮竝びに定著しております各寮をお見舞し、又視察をさせて頂きましたが、實に言葉に絶する窮状でございます。例えば新聞にもよく報道されましたあの國分寺の寮の如き、それは何千坪という建物と、それから何十萬坪という、總計六十萬坪はありますが、土地がそのままにな
つておりますのに、こんな
一つの建物を與えられておるところの
引揚者達は、全く窓もございません。私動亂の滿洲で、あの掠奪の後の倉庫の中に多くの、北安その他北方から、或いは東邊道から避難して來た諸君を收容したことがありますが、恰もその動亂の最中の奉天の一時收容所の如き慘澹たる姿でございます。三田の寮の如き、その光線の工合から、濕度の關係から、遊ぶ所
一つも持たない子供たちの保健の立場から
考えて見まして、同じこの敗戰後の
日本に生を營みながら、かくも隔たりの多いかを
考えたら、實にその晩私は到頭御飯も食べられないくらいでございました。私事を申上げて恐縮でございますが、矢野の次男は遠くウクライナにおいてドロシーコーフの病院で亡くなりましたのを知りましたが、これは國家から頂くのは恐らく葬式料四十圓でございます。過般の水害において公務員が亡く
なつたのは一時金として十數
萬圓貰
つておる。(「二十
萬圓貰つた」と呼ぶ者あり)こういうことを
考えたときに、或いは又戰災を受けた人々が一ケ年間免税を受けたのに、全く裸のままで還
つて來た
引揚者はなんらの免税という恩典にも浴しない。一昨々日でありましたか、皆さんが御
審議下さいました
地方税の
改正法律案が通過して、更に
只今御
審議中と聞きましたこの
住民税は、やはり等しく
引揚者に對してもこれは課税されるのでございましよう。
引揚者約六百萬、その兩親、子供、兄弟、從兄弟總計しますと約三十萬と思
つております。この人々が祖國に還つた喜びと肉親に合つた喜びに奮いながら、民主
日本の建設のために協力してくれますならば、必ずや社會黨の現首班内閣が唱える
一つの高度民主主義の國家が建設せられるでありましようが、逆にこの諸君がいよいよ
生活に窮して最前お話申しましたところの國分寺の寮の寮長が申しましたのに、ちよつとした注意が私共が足らなかつたために一家五人全部が飢え死をしているのです、ついこの間。こういう現實に直面いたしましたときに、
戰爭犠牲の公正なる負擔こそ民主
日本建設のこれは第一義的な原則であらねばならんと思いますのに、有らゆる面から見まして、過般も私達が
審議いたしました
失業手當法案に失業者中の失業者は二年半強制勞働に服して
歸つて來てあの港に上陸したあの失業者中の失業者と私は思いますのに拘らず、あの
手當法案の恩典に浴することは斷じてできません。私はその際勞働
大臣に對して何らかの
處置に出る言質を本會議において與えられて引揚げて來ておるところの諸君に對しては何らかの光明を與えて頂きたいということを申しましたのに對しまして、勞働
大臣は本會議席上において、御
承知の如く言明を與えてくれました。翼くばこの
法案は同じ我が
日本の兄弟の公務員諸君の何か恐らく
手當か何かに充當されるでありましよう。その公務員諸君の
生活の困難であることも私は十分存じておりますから、皆さま權威ある
委員會の方々でこの
改正法律案を御可決にな
つて然るべきと存じます。而かもその御可決になりましたその
法律において是非とも
引揚者は、勿論初めから引揚げて來た全部とは申しません。何か適當に當局においては立案せられまして、是非
生活に困難しておるこの
引揚者諸君に對して免税の恩典を、而も寛大に與えて頂くような確實なる
措置をこの機會にお願いすると共に、又
委員長初め尊敬する委員皆さまが私のこのお願いに對して是非御支持願いますように貴い御時間を割いて頂いたような次第であります。何分ともよろしく御願いいたします。