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政府委員(林敬三君) 只今の小野
委員からのお尋にお答え申上げたいと存じます。お尋の第一点は、
地方自治法第百七十二條に関する点でございます。百七十二條におきましては、この
地方公共團体の吏員は「職階制、試驗、任免、
給與、能率、分限、懲戒、保障服務その他身分取扱に関しては、この法律及びこの法律に基く政令に定めるものを除く外、別に普通
地方公共團体の
職員に関して規定する法律の定めるところによる」。こういたしまして、新たに
地方公共團体の
職員に対する職階制を近き將來においてやる。必らず法律で以て決めるということを明らかにいたしたわけでございまするし、而もこれは明年の四月一日までには必らずこの法律を作るという態度を明かにしたわけでございます。そこでその公務員制度
確立についての構想でございますが、これは目下國の公務員制度の出來栄えというものとも睨み合せながら、言わば
地方自治法の最も重要な補足的法典といたしまして、
政府といたしましても、もう非常に勉強をし、
研究をいたしておるところでございます。狙いといたしましては申すまでもなくここに書いてあります
ようなことを
確立いたしまして、優秀なる
職員をして安んじて
地方公共團体の職務に專念せしめ、又その能率を挙げる
ために人格が立派で能率の高い吏員はどんどんと上に引上げて行く。こういう制度を立てることを狙いといたしております。そこで
地方自治の進展上こういうことをやることは非常に大きな異議を持
つておるものと考えるのであります。今
お話しもありました
ように、如何に組織、制度ができましても、そこの中で働くところの
職員というものが優秀であり、又安んじて熱心にその職に從事するのでなければ、いわゆる佛を造
つて魂を入れないという状態になるわけでありまして、この点の制度を
確立することが最も異義のあることと考えております。又もう一面
地方公共團体の吏員はやはり國の官吏と同じ
ように
地方公共の
事務及び法律で
地方に委任されましたところの國の
事務、それを行うわけであります。
從つてその職務に本質的な区別があるとは考えられません。單に職務対象を國家から任命されておるか、
地方團体から任命されておるかということに止まるものでありまして、内容については殆ど変りないのであります。
從つて任用資格とか、殊に
給與などについては両者取扱を同一にすることが國政及び
地方自治の運用上特に必要である。又その運用の妙を発揮する所以であるとも考えるのであります。殊に都道府縣ぐらいの單位自治体になりますと、或いは五大市程度の單位自治体の
職員になりますと、官吏と
給與その他の制度を異にするということが却て実際に反するとも考えられるのであります。又両者の間の適切なる交流を阻害する結果にもなると思います。又優秀なる人材が喜んで
地方の團体の吏員にな
つて行くという
ような風習の助長の上にも非常に役に立つと考えられるのでありまして、この
給與その他の任用制度についても、
地方公共團体の今後作らるべき公務員制度は官吏制度とでき得る限り内容的にも連繋を持ち、少くもその内容に官吏制度と共通することが
相当多いことに作
つて参りたいと、か
ように考えておるのであります。それから大体対象としては私共のところの目下の
研究では、いわゆる府縣の部長以下の者を対象とする。併し極く小さい田舍のほんの役場の吏員で、十人ぐらいいるという
ような小さな村のところまでも、嚴重に國家の
職員や或いは府縣大都市の
職員と同じ
ような規則を以て縛るということは、これは避けて行く
ようにいたしたいということを考えてや
つております。又それと同時の
地方には
地方の
実情がありますから、國家の
職員をあまりにも模倣をし過ぎまして、それが
ために却て適切な運用を阻害する。或いは能率を阻害するということもない
ように考えてや
つております。今度の國家公務員制度は
從來の制度を根本的に改め、新しい構想を以て提案され、それが通過を見た
ような次第でありまするが、
地方公務員の制度につきましても、これに即應いたしまして、殊に都道府縣、或いは五大都市という
ようなところにおいては、
給與、その他の必要なものについては、官吏と差別待遇をすることのない
ような制度にしてや
つて行きたい。而も僻陬の山奥の吏員にまで画一的にこれを及ぼして、それが
ための
弊害を生ずることのない
ようにやらせて行きたい。か
ように考えて今いろいろ
研究をいたしておるわけでありますが、まだ草案として發稿するに至
つておりません。
從つて極く大雜把な氣持を申上げて御了承を得たいと存ずるわけでございます。それから第二のお尋の点は府縣の機構組織の問題であります。
地方公共團体の組織機構の問題でありまして、これは
地方自治法の百五十八條にいわゆる基準的などういう部を設けるかという基準が出ております。そうして今
お話がありました
ように但書が付いております。「必要があるときは、條例で、局部を分合し又は
事務の配分を変更することができる。」ということが書いてあるのであります。この規定はいわゆる
一つの基準規定でありまして、これによらなければならないという趣旨ではございませんことは、今お述べにもなり、又私が但書について申上げるところを以て御了承願えると思うのであります。
一つのモデルを示しまして、そうしてこれを法律に掲げたわけであります。それからこの意図の中にはいわゆる更に突き進んで申しますならば、都道府縣というものの
仕事というものが、第二條に極めて抽象的に書かれておるわけでありますが、そこで具体的にはどういう
仕事があるかということを、やはりこの百五十八條の裏から解釈しますと大体こういうことを都道府縣では扱うのだということを逆に明確にして置きたか
つた。先程御
報告がありました特別
官廰の問題などと関連いたしまして第二條の
ような抽象的な書き方では、次第に都道府
縣知事の職務というものが蚕食されて行くのではないか。それで部制を作
つて、その部の基準を明かにするということと、併せてその部でどういうことをや
つて行くかということを明かにして行きたか
つたということ。これが府
縣廰の
仕事だと大体この法律は考えておるのだということをここに示して置きたか
つた。か
ような氣持もあるわけでございます。それでなぜこういう画一的な基準を作
つたかということになりますと、これはやはり都道府
縣廰というものは都道府縣の
機関でありますが、同時にこれは國家の
事務を非常に委任して行わせる
役所でもございます。それから
從つて中央政府の各省が、できるだけ都道府縣というものを使うのにも使い易くする。先程御
報告がありました
通り、綜合行政ということが叫ばれておりますが、仮令
地方自治團体の
仕事でありませんでも純粹の國の
仕事でありましても、これを末端において実施するときは、成るべく都道府
縣廰を通じて実施をして行くことが、最も綜合的な妙味を発揮する。又民主的に國の
事務が執行される所以ではないか。か
ように考える点もありまして、
中央政府が都道府
縣廰を使いますときに、できるだけ使い易くする
ような形にして置く必要もあるのではないか。これはいろいろ縣によ
つて独創を発揮してあまりにもばらばらな珍らしい、その縣だけから考えれば便利であろうけれども、
中央各廰が使うときはあまりにもまちまちな組織にな
つておるということは、現在の日本の
ように
中央と
地方というものは行政が密接に相関連しておりまして、相交錯しておるという
ようなところでは、あまりにも
地方廰がただその
地方廰だけの
立場で独自の組織、機構を作りますと、
中央で
中央の行政をそこに委任する、そうしてそこで行な
つて行くという
ような場合にも、非常に不便を來すのではないか。御
承知の
ように大体知事の行な
つておる
仕事の半分くらいは、
中央政府の國の
事務を團体か、或いは團体の長か、どちらかに委任されて行な
つておる
事務を、や
つておる
ような
実情にも鑑みまして、
一つのモデルを示して、成るべくこれに從
つたらどうだ。併しながら
地方々々の
実情があり、大きな縣もあり、小さな縣もある。或種の産業の非常に発達した縣もある。そういう所は
地方の自主性を認めまして、いわゆる條例で当該議会の承認を経れば、これを変更することができるというふうにいたしてあるのです。現に経済部あたりを農林部と商工部に分けておる所が
相当ある。むしろ半分以上そうなりつつある
ような状態であります。或いは衞生部を設けておる所もあります。或いは山林部を設けておる所もあります。それから教育と民生は逆に一緒にしておる所もある状態であります。それで小野さんが御心配になりました
ような
地方に即應して
地方の自治体の側から見て能率的に
仕事をやり得る
ように、その点は考慮して取扱
つておりますし、又実際においてもそういう形にな
つております。併し私の方の氣持としては、できるだけ
地方の自治に委せて行きたい。こういう基準を示して、大体この線に沿いながらも、その
地方々々の
実情をこれに加味して、適切なものを考えて貰いたい。併しあまりにも人の
ために部を設け、或いは殆ど部と云われるだけの人数もなければ、
仕事の分量もないものを、何かの
地方的
理由でただ部にして行きたい。或いはあまりにも複雜怪奇な櫓を組み上げた
ような部制とか、局制とか複雜なものを作り上げる。そういう所に対してはこちらで当該府縣と御懇談をいたしまして、成るべく他の府縣と歩調の合い、
中央政府としてもこれにいろいろの
仕事を頼み易いものにする
ように
お話をして、その間の不合理のない
ように努めておる次第であります。