○
説明員(瀧澤勝司君)
只今いろいろ
收容力の問題、
事故の問題、或いは仮出獄の問題につきまして、御質問がございましたが、
只今持
つております資料の
範囲でお答えいたしまして、尚詳しい表につきましては、後刻お届けしてもよろしいと思いますが、先ず第一の
刑務所で
一体收容がどれだけできるか、
收容力の問題でございます。実は戰爭前におきましては、六万八千人の
收容力があ
つたのであります。ところが戰爭によりまして、全國大小五十二ケ所の
刑務所が、多かれ少なかれ
戰災に遭いまして、終戰当時におきましての
收容力は約三分の一を喪失いたしまして、四万四千二百人、この
程度に減少したのであります。その後御
承知のように、巣鴨
刑務所を接收され、尚豊多摩の
刑務所を接收されまして、合計三千何百人の
收容力を失いましたので、四万人そこそこの
收容力しかないのであります。その後陸海軍
刑務所を多少接收いたしましたり、或いは
戰災後の復旧によりまして、多少回復したのでありますが、なかなかこれも思うように回復いたしません
ために、非常な過剩
拘禁を來たしておるような
状況なんであります。実はこの四万何千人と申しますのは、戰爭前の、午前中も
局長からちよつと触れましたように、〇・五乃至〇・九坪を標準としたものでありましたが、これでは到底
收容定員として廣過ぎる、まあ廣過ぎるというと語弊がありますが、先ず一坪に二人という標準にこの
定員を改定いたしまして、各所に收容させよう、こういうことで計算をし直しました。ところが大体二十一年度の、昨年度の末におきましては五万六千一百人、こういうふうに
定員が変
つて來たのでございます。ところが今申しましたように、一坪に二人、こういうことでございまするので、
定員とは申しながら、或いはこれがもうこれ以上入らん。最大收容能力とい
つた方がよいかも知れませんが、この
程度に計算いたしましても、五万六千人しか入らんのであります。ところが現在何名收容しておるかと申しますると、大体全國の未決、既決の囚人が、合計いたしまして八万人をちよつと突破しておるのであります。これは先月の末でございます。ところがこの八万人の中には構外
作業と申しまして、
刑務所の
設備外に出ていろいろ仕事をしておるのが一万人ばかりおりますので、約七万人というものが、この新らしい
定員によ
つて計算いたしました五万六千人の中に詰め込まれておるというわけであります。しかもその
定員と申しますると、北海道の隅から九州の果てまで、而も本所、支所と、こういうところに散在しておるのを入れますので、実際問題といたしましては、東京、大阪、神戸、京都と、こういうところに入
つて参ります
收容者を、直ちに平均して入れるということはできないような
状況なんであります。即ち北海道等におきましては、或る
程度、
設備の
定員が
定員に比して少いというところも出て來るのでございますので、殊に被告の
收容者はよそへ送ることはできませんので、現実の問題といたしましては、東京、大阪、神戸或いは京都というような場所におきましては、
定員の倍以上を
拘禁しなければならぬというような
状況にな
つておるのであります。比率で申しますると、これは六月の末でございますが、京都の如きは二・四一倍、大阪の拘置所におきましては一・七倍、而もこの大阪の拘置所におきましては、昨年も集團
逃走を起しまして、非常な過剩
拘禁でありますので、一万千五百人というものは大阪の拘置所でなしに、大阪の境市にあります拘置所の方に入れておるのであります。この一万千五百人というものは除いて、現在大阪の拘置所にあります者が一・七倍、京都もこれも一部は
刑務所に入れ、尚且つ
警察にも置いて貰う。全く話は逆なんでありますが、
刑務所に入れ切れないで、
警察に入れて貰うという
状況まで呈しておるのでありますが、これも現在入
つておる者にありましては約二倍の者が入
つておるという
状況にな
つておるのであります。大体の
状況といたしましては、
只今申しました
通りの
状況でありまして、具体的の
靜岡の問題につきましては、午前中の話のように、二疊に三人入れておるというのが現状なんであります。何しろ五万六千しか入らん所に七万入れる、而も切り詰めた
定員でありますので、実際問題としては、もうこれ以上はどうしても入らんというのが現状だと思うのであります。これにつきましては、
相当沢山の
收容力を増すような
刑務所を増設しなければ解決できない問題なんであります。現在までのところ、でき得る限り詰めて來たのでありますが、恐らく現在
程度がもうマキシマムのマキシマムだろうと思いますので、これ以上は入れませんから、どうしてもこの建築をしなければならんということにな
つておるのであります。
当局といたしましては、ここまで追い詰めたことにつきまして、誠に
責任を感じておるのであります。実は終戰直後におきましては、少しく
收容者が減りまして、大体
收容力と同じような
程度であ
つたのでありますが、二十年度の末から逐次
受刑者、
收容者が
増加して参りますので、できるだけ軍の
遊休施設というようなものを手に入れると同時に、中の復興建築も促進して行きたいと、こういうような
方針で参
つて、軍の
遊休施設等につきましても、数ケ所候補地を選定いたしまして、或いは財務局或いは縣廳等と交渉して來たのでありますが、実は
刑務所をそこへ移轉するということにつきましては、
現地では挙
つて反対なんであります。是非來てくれという所は何処にもないのであります。大体話が決まりまして、さて
現地の人と話してみますと、成る程あなた方のお立場はよく分りますけれども、強いてここに持
つて來なくても外にあるでしよう。これが昔でありましたならば、縣廳或いは大藏省等の天下りの命令で、命令と申しますといけませんかも知れませんが、否應がなか
つたのだろうと思いますが、現在はやはり住民大会とか何とか大会を開きまして、結局反対されまして、実際手に入れることのできましたのは宇都宮の
刑務所が一ケ所、その他一、二ケ所小さい所は手に入
つたのでありますが、全体の
收容力として手に入りましたのは二千人もないという
状況なのであります。一方、
所内の復興建築におきましても予算の制約、資材の制約等を受けまして、本年度の予定建築につきましてもまあ六千人
程度の回復しかできないだろうと考えておるのであります。しかし一方、こういう時勢でございますので、犯罪人はどんどん殖える、
刑務所がないからとい
つて檢挙の手を止めるわけには行かないのが
実情なのであります。そういうような結果どんどん檢挙されて入
つて來る、
刑務所は超滿員になる、こういうような
状況が現状であるのであります。結論と申しまして、この時勢に対應するような
行刑の態勢を整備しなか
つた、つまり
收容力を増す、
警備力を
増加する、増強する、こういう対策をとらなか
つたことが我々の
責任とは考えるのでありまするが、何と申しましても、
行刑の仕事は金の問題、物の問題、同時に人の問題ということに相成りまして、極めてむつかしい問題でありますので、今日のような
状況に追い込んでしま
つたのであります。大体
靜岡の問題にいたしましても、午前中の
局長の
説明にもありましたように、極めて
職員並びに
物的設備の
警備力というものは弱ま
つた、こういう点にあると思うのであります。從來でありますならば、
職員が、
相当質の良い
職員が入
つて來る、又
相当長い勤続をしてお
つて事務にも精通した
職員が入
つて來る、一方建物の方もしつかりしておる、又入
つて來る
收容者の方におきましても、一遍惡いことをして入
つて來るのだからという謹愼の情が多いのであります。ところが終戰後におきましては
靜岡の如きは大半を燒失してしま
つた、物的の
警備力というものは極めて薄弱に
なつた、加うるに
職員の方におきましては新しく拜命した者が非常に多い、しかもこれが
行刑の仕事に興味があるからというので入
つて來るのではありません、生活の
ために入
つて來る者が多いのであります。現在のこの頽廃した世の中の失業者、というと語弊があるかも知れませんが、そういう中から結局安い月給で傭わなければならん
看守にこの重大な
警備力を背負せなくちやならんのであります。五十三人の
看守の中に、三十六人は一年未滿の
看守なのであります。全國の平均から申しますると大体八千八百人ありまするが、この約半数に亘る四千七十五人、これが一年未滿の
職員なのであります。こういう
職員がこの
設備で
收容者に対するのでありますので、この
收容者たるや終戰後誤
つた民主主義に支配された自由放埓を
民主主義の如く考える世の中の一番惡い連中を結果として集めたのがこの收容所なのであります、しかも何と申しますか、一番頽廃した一番自由民主というものを履き間違えた連中を集めて
刑務所の方で処遇しなければならんのであります。この連中が自由或いは平等というものを無
責任に
要求する、これに対して從來のような戰爭前のような圧制というものは禁ぜられておるのであります。殊に憲法発布……施行されまして、この憲法というものが、有らゆる人権を尊重しなくちやならん、こういうことは勿論でありまするが、この人権の尊重ということを彼等は口に唱えまして、必要な、適当な規則の励行すらこれを拒む、これに対して
職員が押え切れない、これが段々昂じまして、結局今まで
刑務所の組織力と申しまするか、
刑務所の組織による
警備の力が自由平等を間違えた
受刑者の勢力に負けたというのが今度の
靜岡事件の
眞相だろうと思うのであります。即に一定の
刑務所の
警備力の限界点に達して、たまたま
看守の失言によ
つてその氣運を作
つて、遂に
刑務所が負けた、こういうことに存すると思うのでありまして、今度の
事件も決して偶発的な
事件ではないのでありまして、我々としてはこれに対して拔本的な、根本的な対策を講じなければ、悔いを後日に残すものじやなかろうかと考えておるのであります、誠に
当局といたしましても無
責任のようなことでございまするが、今後かかる
事故が絶対にない、我々は勿論こういうことのないようにできるだけの力を盡す積りでありまするが、こういうような
原因に対して発生したこの種の
事故が絶対にないということは確言できないような
状況が今日の
状況なんであります。どうかこの点につきましても十分御了察願いまして、
司法当局を鞭撻され、しかも予算等が議会に
提出されました場合には、十分酌んで頂きたいと思うのであります。
それからその次は、現在の
刑務所における各種の
事故、
逃走事故というものはどういう
程度にな
つておるか、こういう御質問のようにお伺いいたしましたが、実は終戰後におきましては、非常に
刑務所の
事故が
逃走の
事故が、殖えて來ておるのであります。これを表で申上げますと、昭和十八年には、全國の
刑務所における脱走
事件が八十二件で、この人員が九十四名であります。昭和十九年におきまして百三十九件の百四十二名という数字を示しております。二十年におきましては、これが非常に
増加いたしまして四百三十二件の五百六十二名と、昭和二十一年に参りましては、更に殖えまして、四百六十四件の九百九十三名という数にな
つております。二十一年に特に件数に比較いたしまして人員の多いのは、御
承知かも知れませんが、大阪の拘置所の脱走
事件、集團脱走
事件或いはその他各所における集團
逃走事故が非常に多か
つたので、この
通りな数字を示しておるのであります。本年の統計を見ますると、半年……トータルがちよつと出ておりませんので……、大体昨年度の件数と同じくらいな件数にな
つております。この二十一年度の
逃走の件数の内訳を見ますると、
刑務所の外で起
つた、つまり
刑務所の塀の外へ泊り込みをいたしまして、
作業をしておる構外
作業と、
刑務所の内において仕事をしておる者が逃げた、こういう者との件数がほぼ相半々にな
つておるのであります。二百二十六件の構内と、二百三十八件の構外と、こういうような表にな
つております。而も最近に起きますところの
刑務所の
事故というものは非常に惡質にな
つて來ておるのであります。御
承知のように最近は非常に凶惡な犯罪が世の中には多いのであります。集團強盜をやる、ピストルを持
つて集團強盜をやる、こういうような非常に凶惡な犯人が殖えて参りました。数字から申しますと、二十年の四月には千六百人しかおりませんでした強盜が二十二年の五月には四千五百九十六人、三倍以上も入
つておる、こういうような
状況なんであります。而もこの凶惡な強盜犯人が中で徒党を組んで
当局に挑戰するという例は少なくないのであります。殊に神戸、大阪の如きはこの事例がときどき発生いたしまして、
刑務所長以下常に武裝してこれに対処しなければならん事例が沢山あ
つたのであります。有名な……でないかも知れませんが、神戸の國際ギャング
事件という
事件の
首謀者が神戸拘置
所内外相呼應して、
脱獄を図ろうとした
ために、非常な苦労をしたと申しまするか、危險な目を冒しまして、常に武裝して
刑務所長以下これに対処してお
つた。又外部におきましてもこれを阻止する
ために武裝警官が常に配置されてお
つた、これが神戸におきましては遂に
脱獄もできず、大阪の方へ控訴の
ために送られまして、大阪の拘置所に現在入
つておるのでありますが、これが最近又再び
脱獄を図りまして、遂に一
看守が決死になりまして、
本人の指を噛みつきまして、とうとう脱走を防いだというような例もあるのであります。又これも神戸の例でありますが、某
看守長の如きは
工場におきまして巡回中薪割りを以て致死させられたというような例も少なくないのでありまして、こういう場合に
当局といたしましても、殉職に対してはできるだけ手を盡さなければならんのでありますが、最近まではこの殉職に対しても特に
國家が予算を出すということはできないような
状況であ
つたのであります。たまたま先般大藏省
関係の某関税課長が殉職したのを
機会にいたしまして、近くこれが
國家の予算から出るという話でございますが、
刑務所の
職員が殉職した、これに対しても
國家としては一文も特別に余計出すということは特に弔慰金としてできないような建前であ
つたのであります。今日の時勢におきまして、常に危險な囚人を眼の前にして働いている、
看守諸君の
士氣を昂揚する
ためには、万一その
ために死亡したならば、君達の後は見てやるぞという、これだけの
國家が情を持ち、それだけのことをしてやらなければならんと思うのであります。然らずしてただ徒らに、危險な場合があ
つたら命を的にしてやれ、死ねということは、余りに過酷じやないかと考えておるのであります。幸い今後そういうことが
制度化されたので、
看守の
士氣を鼓舞することには、大いに役立つことと考えておるのであります。
それからこれに関連したことでございますが、
職員の
士氣の昂揚の
ために、
看守の教養訓練というものを考えなければならんのであります。而も先程も申しましたように、大半が新拜命の者である。更に近く労働基準法が適用されたのでありまするが、これに要する
職員も
相当増員しなければならんのであります。まあこうしますと新しい
看守が
相当はい
つてくる。これに
收容者以上の力を與える
ためには、教習をうんとしなければならんのでありますが、この
ための
看守の練習所も、本年度初めて
國家の予算で計上されたような
状況であります。昨年度迄は私設團体でありますところの刑務協会が、この
看守の教養をや
つてお
つたのであります。こういうような
状況が
職員を教養する
ために極めて不十分であ
つたということを御了承願いたいと思うのであります。
更にその次の御質問に対して申上げたいのは仮出獄の問題でありますが、最近御
承知のように非常に仮出獄が多いのであります。又この仮出獄をする理由につきましても、過剩
拘禁の問題を関連いたしまして、從來よりも
程度を低めるというか、標準を下げていたしておることは事実であります。大体昨年度の
仮釈放は昨年六月から本年五月迄約三万六千人いたしておるのであります。月に三千人
程度の仮出獄をしておるのであります。これは從來の例に比較しますと非常に多い数であります。戰爭前等の如きは、四千人ぐらいの者が一年に仮出獄にな
つてお
つたのでありまするが、一躍月に三千人も仮出獄をするというような
状況にな
つておるのであります。これにつきまして詳しい先程の御質問の表は、いずれ
調査の上差上げたいと思うのでありまするが、從
つて仮出獄を取消される、取消されないまでも仮出獄をされた者が、再び犯罪をするということが非常に大きな数にな
つておるのであります。これにつきましては後刻詳細正確なものを
調査した上差上げたいと思うのでありますが、本來の仮出獄の、実際つまり善く教化された、再犯の虞れがないという確信をも
つて出すのでなくして、ある
程度標準を低めたという点につきましては、過剩
拘禁の
ためにそういうふうにしたということは、御了察願いたいと思うのであります。我々はもつとできるならば施設があり人間があるならば、もつと執行しなければならんという者まで、過剩
拘禁の
ためになるべく出せということを指令しなければならんような
状況であるのであります。その
ために非常に
警察或いは
檢事局方面からも、非難は受けておるのでありまするが、これも止むを得ない事態だと考えておるのであります。
大体御質問に対しましてはこの
程度だと思いますが、若し不十分な點がありますれば、更にお答えいたします。