○
政府委員(
奧野健一君) まず第二章につきましては、只今申上げましたように、旧來の七百三十
二條から七百六十四條、即ち「
戸主及ヒ家族」というものを全部削除いたしましたのであります。
七百三十
一條というのが旧七百六十
五條に該当いたします。旧七百六十
五條でも
婚姻年齢を男は十七才、女は十五才とありましたのを、男を十八才、女を十六才ということに一つずつ繰上げたわけであります。これはいろいろ
外國の
立法例等を参酌いたしまして、殊に
米國の大多数の習慣が満十八才と満十六才とにな
つております。それのみではありませんが、他の
外國の
立法例等も鑑みましてこういたしたのであります。と申しますのは、大体
日本におきましても晩婚の風潮でありますのと、
婚姻すれば成年に達した者というふうにみなすことにいたします。即ちもう
婚姻すれば一人前に
扱つていいのではないか。
未成年者としていろいろ
法律行爲をやるにしても、或いは
親権に服するとか、或いは
法定代理人の
同意を得なければならん、
法定代理人によ
つて代理されるということでは面白くないのじやないか。
婚姻すれば一人前ということにするには、やはり実質の一人前の
内容を備えたということが望ましいというふうに
考えまして、十分近項の
日本の
婚姻の
年齢等も
考え、そういう
外國の
立法例等も
考えまして、一年ずつ上げた次第であります。この点につきまして、男が十八才、女が十六才というふうに
差別特遇をすることは、
男女平等の
憲法の
趣旨に反するのではないかということも
考えられるのでありますが、やはりこれは
生理上、或いは
両性の間にそうい
つたような発育上の
生理的なことからして、まあ女の方が相当早熟というようなことも
考えられまするし、各國の
立法例も、全然平等の所もありますが、多く区別をいたしておりますので、要するに
男女の本質的な平等ということには牴触しない、こういうような
生理的意味で
差別を附けるということは、
男女の間の本質的な平等を害するものではないという
考えから、やはり
現行法と同じように、その間の
年齢の差を設けて行くということにいたしたのであります。
次の七百三十
二條は
現行法七百六十六條と全然同樣であります。
次の七百三十三條は
現行法の七百六十
七條と全然同樣であります。この点も女のみが前婚の解消後六カ月の間は再婚ができないということは、
男女平等の原則に反する、
憲法違反の
規定ではないかという
議論もあるのでありますが、これもやはり女が妊娠をするという特殊な
生理的な
関係からして、誰の
子供であるかということが混乱する、そういうような
優生学上の
見地からこういうふうにな
つておるのでありまして、この点はやはりそういう
生理的な
見地からこういう取扱いを別にするということも、
男女の本質的な平等を害するものではないのだというふうに
考えまして、
從來通り七百三十三條を置いたのであります。
次に
現行法の七百六十
八條、いわゆる
姦通によ
つて離婚又は刑の宣告を受けた者は
相姦者と
婚姻することができないという
規定を削除いたしました。これは
姦通罪の
規定を
刑法から除かれた、併しそれに代
つて離婚の
原因といたしまして、七百七十條の第一号を「
配偶者に不貞な
行爲があ
つたとき」、こういうふうに変えまして、
夫婦の一方、男でも不貞な
行爲がありますれば
離婚の
原因ということにいたしまして、
姦通は勿論これによ
つて置き代わることに
なつたわけでありますが、然らば不貞の
行爲があ
つた者同士の
婚姻を禁止してはどうかということになりますが、これはいろいろ
考えましたが、元
來相姦者の
婚姻を禁止するということは、実は
離婚して、而も
相姦者との
婚姻を禁止するということは、報復、復讐の
観念が相当入
つておるわけでありますが、特にそういう場合にその間でできた
子供に罪がないのに、どうしても嫡出の
子供になれないということにもなりますし、そうして
姦通罪というものがなくなれば、判決で
姦通の
相手方をはつきりするというようなことでなくなりますので、
相姦者という
相手方が明確に出て來ないというようにもなりまするし、もうすでに
離婚してしま
つた後で、
相姦者を報復的に、復讎的に
婚姻を禁止するということもいかがと
考え、又殊にその間に
子供ができたような場合、その
子供のことも
考えまして、むしろ
相姦者の
婚姻の禁止ということを止めるのが適当ではないかと
考えまして、
現行法の七百六十
八條を止めたわけであります。
次の七百三十四條と申しますのは、
現行法の七百六十九條と全然
同一であります。
次の七百三十
五條は
現行法の七百七十條と全然
同一であります。
次の七百三十六條は
現行法の七百七十
一條と全然
同一であります。
次の七百三十
七條というのが新らしい
規定でありまして、
憲法の
趣旨によりまして、旧來の七百七十
二條という
規定を変更いたしたのであります。即ち子が
婚姻するにはその家にある
父母の
同意を必要とする。ただ男が三十才、女が二十五才に達した場合にはこの限りでないというのでありますが、
憲法第二十四條によりまして、
婚姻は
両性の
合意のみによ
つて成立するんだということから行きますと、
両性の
合意の外に
父母の
同意というようなものを必要とするということは、
憲法に牴触するというふうに
考えまして、
父母の
同意を要しないものといたしたのであります。併しながら未
成熟ないわゆる
未成年の者が
婚姻するというような場合も、全然親の
同意も必要としないということは、むしろ
子供の
保護という建前、
子供の
思想分別の足らざる所を補うという
意味で、やはり
未成年の
子供の
婚姻だけには
父母の
同意を要するものにしてはどうかというふうに
考えまして、この点だけは
未成年の
子供の
婚姻だけについて
例外を設けたのであります。これは要するに
憲法の
趣旨が、
夫婦になろうとする者の
本当の自由なる
意思の結合によ
つてよいので、外の者の干渉は許さないというだけの
趣旨でありまして、未
成熟の
子供の
保護のために
父母がその足らざる思慮を補うということは、
憲法の
趣旨に戻るものではないということに
考えまして、
未成年の子だけについて
例外を設けました。併しながらこれも実はできるだけ遠慮深くいたす方がよろしいと
考えまして、第二項に
父母の一方が
同意しなければ他の一方の
同意だけで足りるということにいたしました。要するに
父母の一方でもよろしいというだけの承認を與える
結婚であれば、それはもうよいというふうに
考えたのであります尚ここで御注意申上げたいことは、若し仮に七百三十
七條に違反して
婚姻届を出して、これが受附けられたというようなことになりました場合におきましては、その
婚姻は違法であるのでありますが、これを
取消すことができることにすべきかどうかということは
考えものでありまして、この案ではこれは
取消の
原因とはいたさなか
つたわけであります。即ち七百四十三條で七百三十
七條違反を
取消の中に入れなか
つたわけであります。それで七百三十
七條で
現行法の七百七十
二條をそういうふうに変更いたしたのであります。
次に七百三十
八條でありますが、これは
現行法の第七百七十四條そのままであります。尤もその前に、
現行法の七百七十三條の「
継父母又
ハ嫡母カ子ノ
婚姻ニ同意」
云々ということは、
親子関係を認めないことにいたしました
関係上削除いたしたのであります。
七百三十
八條は現在の七百七十四條に該当いたします。
それから次の七百三十九條というのが、大体におきまして
現行法の七百七十
五條に該当いたすのであります。この点につきまして申上げなければならないと思うのでありますが、先ず第一に
憲法二十四條によると、
婚姻は
両性の
合意のみに基いて成立するというのであるから、
届出によ
つて効力を生ずるというようなことはすでに
憲法違反ではないかという
議論があるわけでありますが、この点は、要するに
届出という
形式を備えた自由なる
意思の合致によ
つて婚姻が成立するのだ、本來
外國の
立法例でも
戸籍吏の面前へ二人が出て、そこで
婚姻の
意思あることを
お互いに発表するという
形式を履むことを必要としておるのであります。我が國におきまして、そういうふうなことをするのは余り煩瑣であ
つて書面による
婚姻届出で十分ではないか、一々
戸籍吏の前で
お互いが
本当に
婚姻する
意思のあることを、その
自由意思から出たことを発表せしむるというまでの必要はないということで、
從來通り
届出によ
つて効力を生ずるということにいたしたのであります。まあ大体各國の
立法例もこうい
つたような
形式を必要といたしておるし、又そういう
意味で
届出という
形式による
意思の発表を必要とすることは、何ら
憲法に違反しないというように
考えました。ところで、問題になりますことは、然らばいわゆる事実婚、これは現在では
婚姻と認めませんが、
苟くも結婚式を挙げれば
届出しなくても
婚姻と認めていいんではないか、事実婚を
認むべきではないかという
議論があるのであります。この点は実は古くから
法制審議会において研究をいたして、事実婚を認めたらどうかという意見もあるのでありますが、なかなかこれはむずかしい問題でありまして、結局いつ
婚姻ができたのかということを、
届出というような
形式で抑えないとなかなかむずかしい、而も
婚姻ということは第三者との
関係におきましても重要な問題で、その時期を明確にせしむる必要があるということからと、それから今まで
本当に
結婚して置きながら
婚姻の
届出を怠
つてお
つたということは、実は
父母の
同意が得られなか
つたとか、
戸主の
同意が得られないとか、或いはその者が
法定推定家督相続人であるが故に、廃嫡の
手続を取らなければ
婚姻ができない、
戸籍の上で
戸主にな
つてお
つたのが
養子でも迎えて自分が外に出るとか、或いは隠居をするとか、そうい
つたような
法律上の
手続を履まなければ、
婚姻届出が出せないということで、
婚姻届出ができなくて、
意思に反して事実
婚——婚姻予約の状態であ
つたというのが多い例でありますが、それらの制限はこの
法律によ
つて、全部撤廃されて、
婚姻届出さえ出せば自由に
婚姻ができることにな
つたのでありますから、そういう障害が全部取除かれたということと、それから
日本は段々
文化國家として
法律的な
思想も発達し、
届出がなければ正式な
婚姻にならんということは
一般常識として大体認められて参
つたので、今事実婚を
婚姻として認めて行くということは、むしろ
法律の逆行で、奬励すべきことではないので、むしろ
一般の
法律思想の向上を期待しながら、やはり
從來通り
届出という
形式主義を採用いたしたのであります。ただ事実婚の問題につきましては、
將來全般的に
改正を試みます際には十分研究いたしたいと
考えとおりますが、早急の問題でありましたので、事実婚をここに持
つて來るだけの確信を得なか
つたがために
從來通りといたしたのであります。
それから次の七百四十條は現在の七百七十六條と大体同樣であります。ただ
條文の整理をいたしましたのみであります。
次の七百四十
一條と申しますのは、現在の七百七十
七條と全然
同一でありますが、ただ「
大使」という言葉を入れたのであります。これは今の
民法制定の当時においては「
大使」ということがなか
つたようでありまして、これは
大使というのを入れたに過ぎないのであります。
次の七百四十
二條と申しますのは、現在の七百七十
八條と全然同樣でございます。
それから次の七百四十三條は、現在の七百七十九條と全然
同一でありますが、
條文が変
つて参
つた関係上、
條文の整理をいたしたのであります。
それから次の七百四十四條は現在の七百八十條と、
條文が変
つておるだけで、全然
同一であります。尤も
父母の
同意がなか
つたような場合の、
取消というようなことはなくなりました。又
戸主の
取消権というふうなものもなく
なつたわけであります。そういう
意味で
條文並にそうい
つた整理をいたしたのが七百七十四條であります。
次の七百七十
五條、これは
現行法の七百八十
一條と全然
同一であります。
次の七百四十六條は
現行法の七百八十
二條と全然
同一であります。
次の七百四十
七條、これは
現行法の七百八十
五條と全然同樣であります。
それから次の七百四十
八條、これは現在の七百八十
七條と全然
同一であります。
その以前に現在の七百八十六條というふうなのが削除にな
つております。これは婿
養子縁組というような場合の、
離婚に
なつたが
養子縁組はどうなるか、というような問題の
規定でありますが、これは婿
養子縁組というのは止めました
関係から、即ち婿
養子縁組というのは家を
相続するために、自分の娘に壻
養子するというのでありますが、これは止めて、ただその場合には
養子をし、それから娘と
婚姻させればよいのでありますから、特に婿
養子というような
制度を認める必要はないということで、婿
養子、縁組というのを止しました
関係から、
現行法の七百八十六條の
規定を削除いたしたのであります。
それから七百四十九條、これは
婚姻の
取消の場合即ち
離婚の場合に、
子供の処置或いは財産の分與、或いは系図等をどう処置するかという点につきまして
離婚の場合と同樣な取扱いをするというのが七百四十九條であります。
次に「第二節
婚姻の
効力」の場合であります。
婚姻の
効力につきまして、大体
現行法が夫にいろいろの
権限を與えて、
男女平等でなか
つたものを、徹底的に
男女平等を原則にいたしたわけであります。現在におきましては、例えば居住権、同居権といいますか、それはやはり夫が妻を同居せしむる、夫の所へ妻が同居しなければならないという建前にな
つておるのを改め、並びに妻の財産について夫が管理権を持ち、收益権を持ち、使用権を持つというふうな建前にな
つておりますのを改めて、自分の財産は自分のもの、自分で管理する、
お互いに管理するということにして、一方は夫が妻の財産を管理し、使用收益するという建前を止めたのであります。それから又妻は夫の家に入る、而してその夫の氏を称すということにな
つておりましたのを改めた次第であります。
即ち、七百五十條、これは
婚姻すれば、その際に夫の氏を名乗るか、妻の氏を名乗るかは、
お互いの協議で決めてよろしい、尤も必ず夫か妻どちらかの氏を称する建前でありまして、第三者の氏を勝手に称してよいというのではありませんが、必ず夫の氏を称しなければならないという
現行法を改めまして、平等の形にいたしたわけであります。
それから七百五十
一條という
規定は、
夫婦の一方が死亡した場合に、現在におきましては、家を去るという場合に
姻族関係がなくなりますが、そのときに氏が変る、元の氏に復するということでありましたが、今度は
夫婦の一方が死亡したときは、
生存配偶者即ち未亡人が元の氏に復するかどうかは自由にいたしたのであります。これは
從來自分が協議或いは裁判によ
つて離婚した場合には、氏は当然元の氏に還えることを建前といたしましたが、
夫婦の一方が死亡した場合におきましては、当然氏が復するということにしないで、氏を復するかどうかの自由を認めることにいたしたのであります。
七百五十
一條の第二項は、これは
婚姻の中で系譜、祭祀、墳墓の所有権を承継をいたしました場合に、氏を從前の氏に復するという場合にはやはりその始末を付けて置けという
規定でありまして、これは
離婚の場合に七百六十九條でその始末を付けなければならないことにな
つておりますが、やはり
生存配偶者の復氏の場合にも同樣な必要があるので、その
規定を準用いたしたわけであります。その復氏の場合のみならず、七百二十
八條の
婚姻関係終了の
意思表示をした場合も同樣の問題が起きますので、第二項の場合にも準用することといたしたのであります。
次に七百五十
二條、これは現在におきましては先程申しましたように夫は妻を同居せしめなければならない、「妻ハ夫ト同居スル
義務ヲ負フ」、ということにな
つておりますのを、
夫婦平等の原則に從いまして、それを廃めまして、「
夫婦は同居し、互に協力し扶助しなければならない。」、これは同居
義務というような言葉を
夫婦に間において使うのは水臭い、又現在は
扶養の
義務を負うということにな
つておりますが、
扶養の
義務より以上のものが
夫婦の間においてあるというような
考えから、勿論
扶養の
義務があることを呑んで、その上にむしろ経済的並びに精神的な結合であることを強く現わすために「
夫婦は同居し、互に協力し扶助しなければならない。」というふうに、やや精神的な
意味を加味した表現を用いたのであります。これは勿論同居の
義務並びに
扶養の
義務を包含いたして、而もそれのみならず精神的な協力の
義務のあることを現わしたつもりであります。
次の七百五十三條は、先程ちよつと触れましたように、
未成年者でも
婚姻すれば一人前にな
つて成年に達したものと認めて、
法律行爲について、
親権に服する、或いは法定代理、後見に服するとい
つたようなことなくして、一人前に取扱う。これはスイス
民法でありまするとか、
米國の
民法等にその
立法例が多数ありますので、現在
未成年であるというために、
親権或いは後見というふうな問題が起きいろいろ複雑な
法律関係があるのを廃めて、
婚姻すれば成年にみなすという主義を採
つたのであります。
次に七百五十四條、これは
現行法の七百九十
二條と全然同じであります。
それから次に「
夫婦財産制」であります。縁則は
夫婦財産契約についての
規定であります。これは実は
婚姻の
届出前に
夫婦財産について特別な契約をして、それについて登記をするというふうな
制度であります。実はこれは殆ど行われていないので、むしろこれを全部削除してはどうかという
議論を相当ありましたが、今後まあ
夫婦の間も
男女平等ということになりますと、或いはこういうことが大いに利用されるようになるかも知れないというふうな
考えと、それからいずれ根本的な
改正のときに再
檢討を加えるという
意味で大体現行のままにいたしたのであります。
七百五十
五條は現在の七百九十三條の通りであります。
次の七百五十六條は現在の七百九十四條のそのままであります。
それから七百五十
七條は現在の七百九十
五條そのままであります。
次の七百五十
八條、これは大体
現行法の七百九十六條その儘でありますが、「裁判所」とあるのを「
家事審判所」に改めたという程度であります。
それから七百五十九條は現在の七百九十
七條のそのままであります。
次に「法定財産制」でありますが、これは先程申しましたように、夫が妻の財産の管理、使用、收益権を持
つておるという
制度を改めたことが主であります。そういう
意味で、
現行法の七百九十九條から八百三條迄の
規定を削除して、七百六十條から七百六十
二條までの三ケ條によ
つてこれに代ることといたしたいのであります。
先ず最初に七百六十條でありますが
現行法では七百九十
八條で「夫ハ
婚姻ヨリ生スル一切ノ費用ヲ負担ス」とありまして、夫が
婚姻の費用を全部負担することにな
つておりますが、これは
夫婦平等の原則から見ますと不公平であります故に、
夫婦が結局共同して負担する、共同とい
つてもその半分ずつ出すという
意味ではなくて、自らその資産收入一切の事情を考慮して分担するということにいたしたいのであります。これはまあ
婚姻中であれば殆ど問題が起らないわけでありますが、要するに夫が費用を負担するという
意味ではなく、その者の働き或いは財産に應じて
婚姻費用を負担するということにいたしたのであります。
次に七百六十
一條、これは
現行法の八百四條に該当いたします。八百四條では「日常ノ家事ニ付テハ妻ハ夫ノ代理人トナ看做ス、夫ハ前項ノ代理権ノ全部又ハ一部ヲ否認スルコトヲ得但之ヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス」ということにいたしております。妻は夫の代理人であるといあことはやはり
男女の平等の建前から多少問題がありますので、
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と
法律行爲をした場合には連帶債務を負担する、
夫婦が連帶して債務を負担する、必ずしも妻が夫の代理人、夫が妻の代理人というのではなくて、一方が家事について
法律行爲の結果債務を負担すれば、平等に連帶して債務を負担するというふうに
規定いたしたものが七百六十
一條であまりす。
次に七百六十
二條、これは大体現在の八百
七條と同樣でありまして、その第一項は「妻又ハ入夫カ
婚姻前ヨリ有セル財産及ヒ
婚姻中自己ノ名ニ於テ得タル財産ハ其特有財産トス」ということにな
つておりますけれども、「
夫婦の一方が
婚姻前から有する財産及び
婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産とする」というので、妻のことを特に書いておるのを、「
夫婦の一方が」というふうに改めましたのと、第二項は現在の八百
七條第二項では、
夫婦の何れに属するか分明ならざる財産は夫の財産と推定しておりますが、これはやはり
夫婦平等の原則から適当ではないと
考えまして、そういうものは共有に属するものと推定をする「推定」とありますから、実は夫のものであ
つたということが証明がつけば夫のものになるのでありますが、不明である場合は共有ということにして、
男女平等の原則を貫いたわけであります。
次は「
離婚」でありますが、
夫婦が話合いで別れたいという場合に協議上の
離婚を
現行法は認めております。これをそのまま踏襲して協議上の
離婚というものを認めたのであります。この点で特に御注意をお願いたしたいのは
夫婦別れをする場合に多く一時の感情或いは又無理矢理に
夫婦別れをさせられることも
考えられるので、すべてこれは裁判所或いは
家事審判所の確認を経ることにしてはどうかという
議論があるのであります。
本当に別れるのかということを
家事審判所が一應念を押して確認をして初めて
離婚ということにすべきで、ただ当事者同士で
届出をしたというだけで別れしむるのではやはり追い出し
離婚が行われるのではないかという
議論があるのであります。併しながら現在でも別れ話と
届出を出すまでの間においては、相当の時日上の期間もありますので、一時の感情で
届出を出すというふうなことも間々あるまい。それから
男女平等にな
つて女の地位が向上したので、そんなに無理矢理に追い出されるというようなことも事実あるまい。それから一々
家事審判所にその眞爲を確かめしめるということは非常に手数もかかり、
家事審判所の現在の予算の機構ではそれもなかなかむつかしいではないか。殊にお互に
離婚をしたいというものを、それを一々審判所が確かめるということは、むしろ
離婚の自由ということから見て適当ではないというふうに
考えまして、一應は現行通り協議
離婚を認めることにいたしたいのでありますが、この点は特に御
審議を願いたいと思います。でありますからこの七百六十三條というのは
現行法の八百
八條と全然同樣であります。
それから
現行法の八百九條という
規定、これは
離婚について
父母の
同意を必要とするという
規定でありますが、
婚姻について
同意を必要としないことになりましたので、
離婚についてもその
同意を必要としないということにいたしまして、八百九條をやめたのであります。尤もこの場合に末成年者の
離婚について
父母の
同意を必要としてはどいかという
議論もありますが、末成年者の
婚姻については余程愼重にする
意味で、
保護の
意味から
父母の
同意を必要としておりますが、すでに
婚姻によ
つて成年者と認められておるのでありますから、
離婚の際は
父母の
同意を必要としないというふうに
考えまして、その点の
規定を特に置かなか
つたわけであります。
七百六十四條は八百十條の
條文の整理をいたしただけであります。
それから七百六十
五條は大体
現行法の八百十
一條そのままであります。
それから七百六十六條は
現行法の八百十
二條と大体の
趣旨を
同一にするわけであります。要するに協議
離婚の場合に
子供の監護を誰が見るか、現在では父が監護するということにな
つておりますが、父が必ず監護者になるということは、
男女平等の原則に反しますので、その場合は協議してどちらかに決める。協議ができなければ
家事審判所が決めるということにいたしたのが七百六十六條であります。
次に七百六十
七條でありますが、これは先程申しましたように、
離婚すれば、
婚姻の際に氏を改めた方が元の氏に還る、還ることができるものというふうに自由にしてはどうかという
議論がありまして、特に衆議院等におきましても、女代議士等でも、すでに名前を賣
つておる者が
離婚して、姓を変えなければならないということは非常に困る、そういう場合に姓を変えるか変えないかは自由にして貰いたいという意向もあります。併しながら
日本の
國民感情といたしまして、
離婚してしま
つたのにまだ前と同じ姓を名乘るということは、非常に混乱を生じますので、やはり
國民感情からい
つて、
離婚すれば元の氏に還るということにしていいのではないかというように
考えまして、七百六十
七條を置いたのであります。
次に七百六十
八條でありますが、これは新らしい
規定であります。協議上の
離婚した場合に、
相手方に対して財産の分與を請求する際、女からでも男からでも、どちらとも
規定はありません。
男女平等の原則から、財産分與の請求権を認めたわけであります。これは要するに
夫婦の財産というものは、
夫婦の協力によ
つて得たものであるから、
夫婦別れをする場合には、その財産を分割するという
思想と、それからやはり
扶養料の請求を認めるべきであるという
議論、或いは又
離婚の
原因を與えた方に制裁的といいますか、慰藉の
意味で、そういうものを請求せしむることを認めていいといういろいろな
意味も含めまして、財産分與の請求権を認めることにな
つたのであります。勿論この場合に協議が調わなければ、
家事審判所がいろいろな一切の事情を斟酌して、分與の額、方法等、方法としとは年金のような方法、或いは一時金のような方法で、財産分與を認めるということが
考えられるのであります。
次に七百六十九條、これは八百九十
七條の系譜、祭具、墳墓の所有権を承継してお
つた者が、
離婚によ
つて元の氏に帰
つて行くという場合には、承継者を決める必要がある。その者が出て行
つたが、誰がそういう後を見るか、先祖の祭祀を誰が主宰するか決めて置く必要がありますので、そういう場合に決まらなければならない、尤も決まらなければ、
家事審判所が決めるということにいたしたのであります。
これが「協議上の
離婚」でありますが、大体協議上の
離婚の
関係につきましては、裁判上の
離婚の場合も、同樣に七百七十
一條で準用いたしております。
次に「裁判上の
離婚」でもありますが、その
原因につきまして、現在は八百十三條にいろいろな
規定がありますが、こういうふうに画一的に
規定を設けるよりも、結局これに該当しないで、どうしてもやはり
離婚を認めて置かなければならないという場合が相当ありますので、一應第七百七十條に一号から四号まで列挙をいたしたのであります。而して五号において「その他
婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」には
離婚の請求がてきるというふうにいたしたのであります。要するに一号から四号まではその例を挙げたに過ぎないというふうに御承知置きを願いたいと思うのであります。
而して第一号というのは、
姦通罪の
規定が、女のみを罪して男を罪しないのは不公平であるというので廃止しようという案が出ております。これが通りますと、
姦通罪は廃止に
なつたが、やはりそういう場合には
離婚の
原因を與えるのが適当でありますで、これは妻のみならず、夫も
姦通するような場合には同樣
離婚の
原因にすべきであるという
考えから、廣く
配偶者の一方に不貞な
行爲があ
つた場合ということにしまして、重婚の場合とか、或いは
姦通の場合とか、或いは姦淫罪に該当するような場合すべてを含めて、而も女のみならず男の場合でも同樣、
配偶者の一方に不貞の
行爲があ
つた場合ということにいたしたのであります。
それから新らしく加わ
つたのは、四号の「強度の精神病にかかり、回復の見込がないとき」、これはアメリカ等の
立法例に多くありますので、この際そういうことを入れるのもよかろうと
考えまして入れたわけであります。
要するにその他に
婚姻を継続し難い重要な事項がある場合、これは大体
現行法の八百十三條の各号に
規定しておるようなことが、恐らくこれに皆含まれることになるつもりであります。尚そういう各号に当る場合であ
つても、これはやはり
婚姻の継続を相当と認める場合においては、裁判所は
離婚の請求の棄却をすることができる。要するに精神病に罹
つてお
つたからとい
つても、必ずしも別れさせなければならないものとも思えない、そういう事情があるような場合、むしろ
婚姻の継続を正当と認めるというような場合は、裁判所に、それを採り上げないことの、裁量権を認めたが七百七十條の第二項であります。
それから七百七十
一條は、大体この別れた後の
子供の監護の
関係、或いは氏が元に還る
関係、或いは財産の分與の
関係、或いは系譜、祭具等の祖先の祭祀を誰が見るかということについて、協議上の
離婚の場合の
規定を準用いたしたのが七百七十
一條であります。