○政府委員(國宗榮君) 只今の御
質問にお答えいたします。拘禁者が非常に殖えて参りまして、刑務所における処遇が犯罪者を更に養成する。又その処遇自体が人道的に見て非常に面白くない。こういう御意見につきまして、大変に御心配を頂きましたことにつきましては、政府といたしまして非常に感謝に堪えない次第でございます。刑事局の
関係といたしましては、努めて拘禁をすることを差控えまして、必要最少限度において犯罪者、殊に未決拘禁者を扱
つて行くということを立前といたしておるのでございまするが、最近の終戰以來の犯罪情勢と申すのは急激に増加して参りまして、これを手許にございます統計によ
つて御説明を申上げますと、
昭和十二年におきましては檢事局で……檢事局と申しはしても区と地方の檢事局でありますから、第一審の檢事局で受理いたしはした犯罪の総数は、
昭和十二年におきまして四十五万九千八百一件でございます。これは
昭和十二年の総計でございまして、これが
昭和十九年になりますと三十八万五千九百二十八件、
昭和二十一年になりますと五十一万一千七百五十一件、
昭和二十二年はまだ計数が出ておりませんけれども、大体一月から四月までの間を
考えまして犯罪の状況をずつと比例にいたしまして
昭和二十二年度の推定をいたしまするというと、大体七十四万になると思います。かように犯罪が非常に増加して参りましたことが、同時に拘禁する未決囚が殖えて來た原因の
一つにな
つておるかとも
考えるのであります。のみならず第一審の有罪判決の言渡、この統計によりますると、
昭和十一年におきましては十八万八千二百三、
昭和十六年におきましては十九万六千二百五十四、更に
昭和二十年の九月一日から二十一年の八月末日まで、大体終戰後一年間の統計でございますが、これは十五万二千七百四十五、更に二十一年の九月一日から本年の二月末日まで六ケ月間の統計によりますと、第一審で有罪の判決を受けた者が十六万四千九百三十三、非常な増加を示しておる訳でございます。半年間におきまして大体終戰当時から昨年の八月末日までの間に有罪判決を受けた者よりも数が殖えております。
昭和十六年の一年間の計数よりは多少減
つておりますけれども、この情勢で参りますと、第一審の有罪判決を受ける者は非常に多くなるということが言い得ると思うのでございます。かように犯罪が非常に殖えて参りましたのみならず、有罪の判決を受けました者の罪質におきまして、非常な違いを示しておるのでございまして、
昭和十一年におきましては、窃盜の罪で一年間に処罰を受けた者が二万五百七十四、
昭和十六年一年間は一万五千八百八十一、更に
昭和二十年九月一日終戰から二十一年八月末日までの一年間が急に殖えまして、五万四千百七十四、更に昨年の九月一日から本年の二月末日までの間におきましては三万八千六百九、半年間に約四万近に窃盜の有罪の言渡を受けた者があるわけであります。更に強盜の罪に至りましては非常な増加を示しておりまして、
昭和十一年に一審で有罪の判決を受けた者が七百八十五名、
昭和十六年が四百四名、二十年の九月一日から二十一年九月末日までが千百七十六名、昨年の九月一日から今年の二月末日までが三千四百二十四名、一面、賭博罪等は数を減じておるのでございまして、有罪の判決を受けた数が減じておるのでございまして、
昭和十一年には六万七百十三名、十六年が七万四千三百六十四名、二十年九月一日から二十一年八月末日までが三万六千四百三十六名、二十一年九月一日から二十二年二月末日までが二万五千五百八十二、これも
相当増加するものて思
つております。強窃盜の数が非常に増加しておるということは、同時に又拘禁者の数が非常に殖えるということに相成
つて來るのではないかと
考えております。併しながら御説の通りに刑務所の收容能力、設備には限度がございます。犯罪はどんどん殖えて参り、拘束を必要とする者は殖えて参りますけれども、刑務所の施設その他に應じまして適当な措置をとらなければ、却
つて逆效果を生ずる虞れがありますので、從來の檢察の扱い方を昨年以來改めまして、起訴する場合におきまして、拘束を必要としない者は成るべく拘束しない。勿論必要としない者はしないのでありますが、併しながら拘束しなくとも証憑湮滅或いは逃走等の虞れのない者には成るべく寛容にいたしまして、拘束を少なくするということを、本省といたしましても各檢察廳にその趣旨を傳えておる次第でございます。併しながら何と申しましても犯罪が非常に上昇の状況にありますので、これを減少することはなかなか現在といたしましてはむずかしい問題にな
つております。これを解決いたしますのには、刑務所の施設を物的、人的共に改善いたしまして、増強するということが最も適切なことと
考えられるのでありますけれども、いろいろ國家財政の点その他の事情からいたしまして、早急にはこれを望むことはむずかしい問題だろうと
考えるのであります。然らばこの拘禁者をなくする、少くとも拘禁の日数を短縮するということに心掛けをいたしまするならば、保釈の制度を活用するということも十分に採るように、本省といたしましては各廳にこれを傳えております。更に施設の問題を離れまして、裁判、檢察の面から
考えますると、裁判、檢察の人員の充足、更に裁判所、檢察廳の施設の完備ということが、やはり審理を促進いたしまして、勾留期間を短縮し、同時に勾留者の数を少なくするということが
考えられるのでありまするが、この判事、檢事の増員ということは十分心掛けておりまするけれども、現在甚だその給源に窮しておるわけでございます。同時に又裁判所の施設のことも本省といたしましては十分な努力をいたしておりまするけれども、今日のいろいろな状況によりまして、やはり資材、物資、予算等の
関係からいたしまして思うようには捗
つていないと思います。併しながらこういう状況におきましても、尚且つ拘禁者の数を少なくいたしまして、御心配のような人道的に見まして誠に申訳ない
状態を排除し、更に再び罪を犯す、犯罪者を養成するような道からこれをなくするというようなことを
考えますると、どうしても審理を促進するということが一番大切ではないかというふうに
考えまして、裁判所に対しまして、私共の方といたしましては先ず裁判所の努力をお願いする。審理についての努力をお願いする。更に勾留、
事件の優先的な審理をお願いする。尚又十分とは申しませんけれども、できるだけ空いた部屋を利用いたしまして、法廷を増設いたしまして審理の促進を図る。更に裁判所の民事の係の判事を刑事の方に轉用して頂く。尚且つ書類の作成、或いは訴訟記録の整備その他に関しまして、一層裁判所の職員に対しまする行政的な監督を嚴格にして頂くという趣旨のことを裁判所にお願いして、そうして少なくとも審理の促進を図りたい。
更に檢事側におきましては、各主任檢事の
責任におきまして、担当の裁判官に対しまして審理の遅延しておる
事件については、檢事の方から審理の促進方を申し入れるように取計らう。毎月未決勾留の状況と審理の状況とを見合せまして、それに関しまする檢事の要望事項というものを檢察廳から裁判所に
提出する。更に司法省におきましては、この状況に應じまして、全國的な未決の勾留状況その他の具体的事例を最高裁判所に通知いたしまして、最高裁判所に審理促進のための行政監督権を発動して貰う。尚且つ保釈の問題につきましては、檢察官におきまして保釈の請求のあ
つた場合には愼重に
考えまして、できるだけ保釈の途をとるように取計らうという方策をと
つて、施設並びに人員の恒久的な問題は先ず別途といたしましても、緊急当面いたしましてこれだけの措置を講じて行こうというように実は
考えておる次第でございます。
この問題は私共の方も最近の実情に鑑みまして、実は裁判所、檢察廳とのお集まりを願
つて、特に審理促進をいたしまして、そうして未決拘禁者の数を少なくするということを最近督励いたしておる次第でございます。
尚司法当局といたしましては、根本的問題といたしまして、刑事局に関する限りにおきましては、簡易裁判所の整備、区檢察廳の整備、それから檢察官の増員、これらの問題につきましてできるだけの努力をいたそう。こういたしまして先ず審理の促進を図るということが未決拘禁を少なくする先決問題であろうというふうに
考えた次第でございます。
今日多くの者が未決囚として拘束されておりますけれども、その大部分は先程申上げましたように強窃盗等の犯罪人でありまして、或いは保釈をするに不適当な者が多いのではないかというふうにも
考えております。そういう者につきましては先程來申上げましたように、何といたしましても審理を促進いたしまして、そうして未決勾留期間を短縮する以外に方策はないというふうに、当面の問題としては
考えておる次第でございます。尚今後の方針如何という御
質問でございましたが、今後の方針といたしましても、根本的な施設の整備の問題、人員の整備の問題これはできるだけの努力をいたして参ろうと思
つております。尚これによりまして法制的な措置を必要とするものがあれば、これも
考えて行きたいと思
つております。併しこの問題を待
つておる中に未決囚が殖えて参りますので、これに対します対策といたしましては、只今申上げましたような当面の対策というものは、單に今日限りでなく、引続きましてこれを推し進めて行
つて、そうして未決拘禁者の数を少なくするということを図
つて見たいというように
考えております。
尚次に板橋の少年者の処遇につきましての意見如何ということでございました。この点につきましては、これは私共の管轄に属すべきかどうかと思いますけれども、これらの者がやはり多かれ少なかれ犯罪との関聯を持つものと
考えますので、青少年犯罪者の対策の一環といたしまして、この点を十分に
考えて行きたいと思
つております。