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小川友三君 八十三條から八十六條までにつきまして
削除せられておりますが、これは大きな欠陷であると思いますので
指摘いたしたいと思
つております。八十三條から申上げますが、旧法におきましては「敵國ヲ利スル爲メ要塞、陣營、艦船、兵器、彈藥、汽車、電車、鐵道、電線其他軍用ニ供スル場所又ハ物ヲ損壞シ若クハ使用スルコト能ハサルニ至ラシメタル者ハ
死刑又
ハ無期懲役ニ處ス」という項目でありますが、現行法にはこれを
削除せられているのでありますが、これは大きな誤りであると思います。それは
日本は現在連合軍の
占領下にあり、將來は國際委任管理
國家、委任統治というような何らかの形態をとられる状態に入るのであろうということが想像されるのでありまして、その場合、その
連合國の或いは管理國の要塞或いは陣營、艦船兵器、彈藥、飛行機、飛行場、汽車、電車、鉄道、電線というものが、軍用に供するものが沢山ある筈でありまして、それを
日本國人が破壞し、若しくは使用すること能わざるに至らしめた者は、
死刑又は
無期懲役に処すということが必要であろうと思うのでありまして、
占領軍或いは管理國のものを壞わした者は、
日本國では
処罰ができないというような感を抱かしめるのでありまして、管理國或いは
占領連合國のものを壞わして、
日本の
法律でこれを処断するという
法律を作
つて置くことが、
日本國として、法治國として、正しいのであると私は思うのであります。
それから八十四條も削られているので申上げたいと思
つております。八十四條は、旧法は「帝國ノ軍用ニ供セサル兵器、彈藥其他直接ニ戰鬪ノ用ニ供ス可キ物ヲ敵國ニ交付シタル者
ハ無期又ハ三年以上ノ
懲役ニ處ス」という項目を全く削
つてありますので、それは信託管理國或いは
占領連合國等の軍用に供せられる兵器、彈藥、その他直接戰鬪の用に供すべきものを敵國に交付したる者は、
無期又は三年以上の
懲役に処すということにした方がいいと思うのであります。それは、御承知の
通り、今
連合國は
占領しておりまするが
日本の警察又は警察協力補助員というものに対しまして、相当
連合國が
占領しておるところの兵器を
日本人に管理さしておるのでありまして、その例は枚挙に暇ない程あるのであります。一例を申上げましたならば、関東地区に満洲から駐屯した何千台かの戰車隊があ
つたのでありまして、その戰車の大部分が現在埼玉縣にも現存しておるのであります。
占領当初は、
占領軍が参りまして、それを監視しておりましたけれども、お引揚げになり、御移動になりまして、現在は特に埼玉縣北埼玉郡志多見村の元拓部隊の戰車は、警察の依頼によりまして、民間の青年團がこれを管理いたしておるのでありますそこに沢山の子供が遊びに來て、或いは青年が遊びに來ておりまして、殆ど警備は形式だけの警備でありますのでそうした戰車の部品を取外し、又戰車の機密を知り、いろいろその戰車の
連合國の所有に属しておりますものを紛失する、盜むという危險が非常に多いのでございますが、その被害にあつた場合には、
日本國の
法律でこれを処断するのが当然でありまして、一々そうした被害があつた場合に
連合國軍の軍事裁判に廻すということは、
立法國の建前でないと私は信じますので第八十四條には申上げた
通りの
條項を入れて貰いたいと私は思うのでありますが、
政府の御
意見をお伺いいたします。
それから八十五條も全く削られております。これも又削らないで加えて貰いたい
條項を申上げます。八十五條は「敵國ノ爲メニ間諜ヲ爲シ又は敵國ノ間諜ヲ幇助
シタル者ハ死刑又
ハ無期若クハ五年以上ノ
懲役ニ處ス軍事上ノ機密ヲ敵國ニ漏泄シタル者亦同シ」と書いてありますが、
日本國信託管理國、或いは
占領連合國が今後できるのでありまして、相当長期間に亙
つてあるのでありますから、この
日本を含む國際信託管理國又は
占領連合國に不利な間諜をなし、又はこれらのことを敵國に機密を教えた者は、
死刑又は
無期若しくは五年以上の
懲役に処すということをお入れ頂いた方が、
立法國としてよろしいのではないかと思いますが、お伺いいたします。
又、八十六條も削られております。八十六條の旧法は、「前五條ニ記載シタル以外ノ方法ヲ以テ敵國ニ軍事上ノ利益ヲ與ヘ又ハ帝國ノ軍事上ノ利益ヲ害シタル者ハ二年以上ノ有期
懲役ニ處ス」という項目であります。
日本において駐屯しておりますところの國際信託連合管理國の軍隊又は
占領連合軍と申しますか、その軍隊に対しまして、前五條に記載したる以外の方法を以て、敵國に軍事上の利益を與え……敵國というのは國際管理國に入
つていない國を指すのでありますが、又おりましても脱退をして戰爭をやつた場合の敵國であります。その敵國に利益を與えた者は五年以上の有期
懲役に処すということをお入れ頂いた方がいいと思いますけれども、
政府当局の御
意見をお伺いいたします。