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政府委員(山添利作君) 突き進めて申しますると、結局
日本ではこれから失業人口が多くなる。現在の人口が、明治の初年に比べますると、約倍近くな
つておる。而して
農家一戸当り、
農家の戸數も当時から見て殆んど變りなく、やはり五百五十万、
經営段別も一
町歩までで、人口が倍にな
つて、それだけの者がどこへ行
つたか、ここに
日本の国が工業化された、そういうことで、
農村の
次男三男はともかくどこかへ職を求めたということ、そういうことが行われない徳川時代は
ちよつと我々が口にするのに
工合の悪は次第であ
つた。然らばこれからの
日本において
次男三男の問題をどうするか、これは非常に深刻な問題であります。これはこの
法律にも
關係がございまするけれども、この
法律を超越いたしまして、廣い視野を以て
考えなければならん所の大問題だと思います。その事柄は併しどういうところで救われるであろうか、これは私が別に
意見を述べたところで大して重きをなしませんから、申述べることを差し控えたいと思いまするが、そういう問題について
農村自體としては、
農村工業並びに開拓等の事柄に重點を置く。然し問題は結局
農村工業を含めた
意味における廣
意味の国業の回復又發展ということなくしては、都市においても、
農村においても、人口と食糧の問題は片が附かないわけであります。然らば非常にそういういい見通しであるわけではない時期に、
農業資産の相
續特例法のごときを出せば、結局
次男三男を
土地から排除すをことになり、若しその人が
農村に残
つておる場合には、可成り惨めなと申しますか、愉快でない境遇に置かれることになるではないであろうか。こういう御
意見のようであります。この點につきましては、私共といたしましても、
日本がそういう運命に置かれておると、又方方でそれに類するような人が澤山でるであろうということには痛心をいたしておるのであります。併し問題の取上げ方といたしましては、あくまでも楽觀するというわけではありませんけれども、物事を合理的に進めるという方向に行くべきでありまして、
日本の
農業を健全に維持し發達せしめる、
日本の
農業が維持され發達されるということは、又
日本の國民經済全般、その他の重要部門である工業又商業も発展するゆえんであり、両々相俟
つて、又世界經済の中に
農業自身が行くわけでありませんが、國民經済として伸びるというわけでありまして、そいういう積極的に物事を能率をよくするという
建前において、今の大きな問題の解決というよりも、解決に資する方向に持
つて行くことがいいのである、かように
考えておるのであります。その
意味から申しますれば、
農業部面におきましても、人が余
つておるならば、皆細分して、或いは細分しないでも、
共同經營という形におきまして食い繋いで置いたらよいのじやないかというよりも、
農業は
農業として進めるだけのやはり地盤を確保して行く、その事柄が又國民經済全般として人口と職業との問題を解決すべき方向に合致している。こういう
考えを以ていたしているのでありまして、
農業事情は繰返して申すまでもなくよく御存じの通り、この小さい
農業經營の中に數家族を包容すると言いましても、これは永續きする問題ではありません。
日本で相当大きな家族を維持してお
つた地方におきましても、現在ではそれが殆どなくなるか、例えば飛騨のなんとか部落或いは茨木県のある地方にあるごとき大きな家族
制度というようなものは崩壊しているのであります。新しい
憲法の
精神等が浸潤すればする程やはり大きな家族ということは
考えるに困難であり、それとは逆の方向に向
つて行くと思うのであります。從
つて一面から見ますれば、人を
土地から離すという議論がありましようけれども、全體としての
日本の
農業の
現状、又國民經済の中における
農業の進み方といたしましては、この
法律の狙
つている方向が正しいと、かように
考えておるのであります。ただ問題は相当大きな
農業を營む、その場合に十分にや
つていけるというようなケースがなきにしもあらず、その場合までをこの
法律でも
つて抑えるということはいかがであろうか。ゆとりを持たせる方が適当であるという御
意見でありますが、この御
意見は甚だ御尤ものように思うのでありますが、この
法律全體の構成は家産法とは趣きを異にいたしまして、例えば
兄弟が獨立する、今までの言葉で申しますれば、分家をするというような場合における
資産の贈與等で一
町歩なら一
町歩分けてやるというようなことは何ら制限をいたしているわけではございません。
家庭的な、社会的な状況に基ずいて
農業資産が分化した經營になるということは予想もいたしておるのであります。これはこの
法律とは
關係のない、それは社会的
資産としてそのままに認める。ただ相續が起るという事柄によ
つて現に成立しているところの
農業經營が機械的に
分割されるということを防ぐのでありまして、且つそれは物として
分割されることを防ぐだけでは先程申ましたような
理由で足りないので、そこに特別相
續分というものを認めたのであります。これを
共同して保有するということを認めれば、この
法律の
考えておりますことを損なうということが一點と、又假に善意に
考えましても、
共同というものは今の
日本の状態を基礎に
考えるときに、これは永續性をも
つたものではない、
法律上認めるのに適切ではない、こういう見解にな
つてゐるのであります。