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政府委員(小坂善太郎君) いろいろ御尤もな御
意見でありますが、一体租税の大原則と申しまするのは、入るを計
つて出るを制すると申しますか、大体國家財政における
收入の限度を計りまして、歳出を見合せて行くというのが原則でございましようが、この長い間の縮小再生産、而もその後に來ました
敗戰という
現実からいたしまして、我々は余りにも多くのやらなければならないものを持
つております。これをしも手をつけんで置きまする場合には、やはり全体の
國民心理の上から申しまして、
敗戰後の再建というものはできないのじやないかということが瀰漫して参りますれば、我々はその後において何をなしても、
國民の氣持に明るさがない以上、國家の再建というものは望めなくなるというような見地から、止むを得ざる支出も考えて行かなければならない、その限度において止むを得ざる
收入、今あなたの仰せられましたような、そうした納得行きがたいが併し止むを得なかろうという
收入もまた考えて行かなければならないと思うのであります。例えば今回におきまする煙草の値上、或いは酒税の増徴、こういうものはこれまた止むを得ないことであると私どもは考えておるのであります。そういう際にも
政府といたしましては、何とかしてインフレーシヨンを撲滅したいということを第一義に考えておるわけであります。ただこのインフレーシヨンを撲滅するやり方にも
相当ドラスチツクな、例えば人工的な恐慌を作るというようなやり方を考えることもできます。併しこういつた人工的な恐慌現象を作るということは、又その半面においては非常ないわゆるリアクシヨンを伴います。例えば新円の封鎖を伴うような、
國民の
所得を洗いざらいに出して行
つて、そうしてその上での
所得の吸收というようなことも、一方から見ますれば、通貨に対する信任というものを
國民が失う危險がありますし、こういういわゆる荒療治というものが
相当に今、十数年も無理な経済状態が引続いて來た後の日本において、果して適切であるかどうかということは、
相当愼重に考えて見なければならないと思
つておるのであります。これは國内のことでありまするが、一方國際経済の中に今日本が回復して入
つて行こうという状態にな
つておるのであります。國際的な目から見まして、日本が立ち直りつつあるという印象を與えるか、或いは日本は絶望的な足掻きをや
つておるかという印象を與えるかということも、
相当に
考慮しなければならない問題だと思うのであります。我々
予算を編成する際に一番
考慮いたしましたことは、この世界的な規模から見た日本の財成をどう持
つて行くかということでありまして、我々といたしましてこの際取りましたのは、バランスト・バゼツト、均衡を得た
予算をここに作るということであ
つたのであります。日本自体といたしまして、日本國内の総力を結集して、そうして日本の再建を図ることは固よりでありまするが、これは日本單独ではなし得ませんし、どうしても外國の好意ある援助を期待しなければならん。或いは資金の面において、資材の面において、その援助を期待しなければならん面が多分にございますので、私どもといたしましては、第一歩といたしましていわゆるバランスト・バゼツトを強行する、そうしてその建前の下において
國民に協力して耐乏してこの固難な時機を切り拔けて頂く、こういうことを申しておるわけであります。第二段階といたしましては、恐らく私どもは今度は更に國内的な経済界に目を注ぎまして、今回或いは我々の手の足りないために等閑されたようなものを拾い上げて、そうしてこれから財源を見付けて行くということが、今後の課題であろうと思うのであります。我々の目的というものは、飽くまでインフレーシヨンの撲滅することであります。併しながらこれはあらゆる見地からいろいろと綜合的に見なければならないことでありますし、又一氣呵成になし得ないことであるのであります。私どもはこの際におきましても、更に
來年度の本
予算を組むことを課題としております。この本
予算を組む際におきましては、十分今森下さんのお述べになりましたような考え方を
考慮に入れて参りたいと思
つております。ただ飽くまでもその際に通貨の信用を堅持するということだけは、私どれは堅持して行く氣持でありますから、我々の技術面の許す限りにおいて、
國民所得を正確に捕捉して行くということをや
つて参りたいと思います。これは
一つの例でありますが、
只今國民所得は、生産
國民所得におきまして大体九千億と言われておるようなわけであります。又
國民総資力の観点から見ますると、これは一兆億を超えると思われるのであります。こういう際においてそれだけ税源として捕捉し得れば、これは著しく
大衆の
負担というものは軽減されるわけであろうと思います。勿論九千億そのままを捕捉することは困難でありまして、流通過程にある
所得というものも
相当あるのでありますから、少くとも現在我々が捕捉し得ると考えられますものよりも、もつともつと技術面においてこれを專念し、或いは
努力を増強することによりまして我々は捕捉面を拡大することができる。こう思
つて、そのような方向に進みたいとこう思
つておるわけであります。