○中西功君 私はこの
金融機關再建整備法の一部改正案に對して反對なんであります。これは日本共産黨として反對なんであります。反對の骨子は、この改正案が
銀行の
増資を認めておるというところにあるのであり、又それが確定損を負擔しないというところにあるわけでありますが、これは一口に言
つてしまえば全く
銀行資本の單なる擁護に過ぎない。こう思われるのであります。
増資を許可する理由として、
政府委員の方では二つの理由が擧げられておつたと思います。それは
一つは、評價
基準が急に變つたという新しい事情が生れたこと、もう
一つは、最近
インフレの昂進があ
つて、そうしてどうしても
金融機關の
信用を付けて貯蓄を増強する必要があるという、この二つを擧げられたと私は理解しておりますが、この二つながらおかしいと思うのです。一番問題なのは、結局は評價
基準の問題は、以前この
法律がなかつたときには、大體時價評價というふうなことが
一般の常識にな
つておつたために、まあこの
法律を通しても大體
銀行は救濟されるという目途で、こういう規定を特別に設けられなかつたと思うのですが、併しそれが急に變つたために非常に慌ててなくなる
銀行を救濟するという理由が出て來たこと、而も殆んど決定的な理由はこれであ
つて、
金融機關の
信用を囘復してどうこうするという問題は、むしろこの整備を徹底的に行な
つて、不良資産やそうしたものは全部
整理し、そうしてそういうふうな中途半端な救濟をやるのではなくて、徹底的に
整理することによ
つて、初めて
金融機關に對する本當の
大衆の信頼が殖えて來ると思うのです。その上に今度の整備によ
つて、
政府委員の説明にもありますように、
銀行は七割以上の
資本金を喪失いたしまして、而も七割といえば、いわば五、六億の
資本金でしようが、その五、六億の
資本金で以て……これは個人の所有する
資本金でありますが、その
資本金によ
つて二千七百億の
預金、或いは貸付、そうしたものを支配しておるというふうな矛盾が非常によくはつきり出て來ます。即ちもう
國民の
預金或いは又その貸付業務、これは非常に公共的な
事業であります。それを僅かに五、六億の
資本金で以て動かしておるというふうな、その矛盾が、この整備によ
つて非常にはつきりして來たわけであります。同時にもう
一つの問題があります。それは現在の日本の
金融關係が非常に危機的な状況を呈しておるという問題でありますが、そのために結局重要な
産業への
融資、そうしたものは
復興金融金庫というふうなものを
作つてやらなければならん。
國家の負擔においてやらなければならないという
状態にな
つておる。而も巨大な
預金を擁しておるところの市中
銀行は、そういう
國家的な
事業のために何ら盡していない。盡し得ないような現状にな
つて來ておる。盡し得ないだけじやなくして、この
金融機關整備に當
つても、現に二百十億、新らしく四十億が追加されるという話でありますが、そういう尨大な
資金を
政府がとにかく保證をして、やつと
金融界を維持しておるというふうな現状であり、同時に又市中
銀行自身が、今日の説明にもありましたように、種々の形で
國家資金に依存しておる。こういう點を見ましても、市中
銀行の役割たるものは如何に意味のない存在であるかということがわかる。徒らに澤山な
預金は擁しておりながらも、而も殆んど役に立たない
状態にな
つておる。而も又市中
銀行自身が今までや
つて來たやり方は、私は先きに申しましたが、儲かる所には金を貸すが、儲からない所には金を貸さないというような原則で、結局今までの闇と
インフレ、そういう
世相に對して非常に迎合して來て、却
つてそういう面からも非常に無責任な
融資をして闇を煽
つておつたという
傾向は顯著であつたわけであります。結局何ら役に立
つていない。それだけではなくしてこういう
罪惡をしておるということもはつきり過去の事情から見てわかるわけだと思います。こういう時にこの
銀行資本を
増資させて、そうしてこれを
資本的に強化したからとい
つて、日本の
金融界は決して立直るものでも何でもない。却
つてそれは非常に惡い。反對に現在
金融機關の整備として何をなすべきかといえば、これは非常にはつきりしております。現に日本の
金融界は尨大な
國家資本、
資金によ
つてしかもう何も動き得ないことも客觀的な事實にな
つておる。それならばはつきりとすべての
金融機關を統合して、そうしてこれを
國有にし、民主的に運營する。そうして必要な場所に、必要な時期に、必要な量をはつきりと供給して行くという態勢をとることが日本再建の基本だと思います。
もつといろいろな事情があると思いますが、我々はこの
再建整備によ
つて銀行資本が七割或いは九割と減らざるを得ないような時期、こういう時期こそ
金融機關を本當に
國家的に運營し、
國有にする絶好のチヤンスだと思います。これをおいて外に時期はないと思われる程絶好のチヤンスだと思います。こういう一時的に
銀行資本を救濟するというのでなく、斷乎として
國有とされますことを我々は希望するのであります。こういう思想は、我々日本共産黨の
考え方だけではなくして、社會黨の綱領にもはつきり書いてあるのであります。私はそういう點では、社會党の人々にもう一度こういう問題をよく
考えて貰うことを希望しておるわけでありますが、時間も經ちますので、以上そういうふうな理由によりまして、我々日本共産黨は、この
金融機關再建整備法案に對して斷乎反對する次第であります。