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政府委員(
福田赳夫君)
日本銀行は御説の
通り、この戰爭によりまして、非常に多くの
損害を受けるのであります。これは先般
金融機關再建整備を
考えるという際におきまして、
日本銀行だけは
再建整備から除外いたしたのでありまするが、これは他の
金融機關の親
金融機關たる地位にあるのでありまして、そうして他の
金融機關の
整理の尻というものが相
當日本銀行にその處置が集中して來るのであります。他の
金融機關の處置というものがどうあるかによりまして、
日本銀行の蒙むるところの打撃というものにも非常な大きな變動があるわけであります。さようなことで、他の
銀行と同列にこれを
再建整備するということも如何かと思うような
見地から、金般の
金融機關の
再建整備におきましては、これを除外いたまして、後廻しということにいたしたわけであります。その時機は國際
關係との
關係もございますし、又他の
金融機關の
再建整備の
措置の進行の
状況という
關係もありまして、國内、國外の情勢を睨み合わせまして、成るべく早い
機會に
日本銀行の
整理を行いまして、かたがたこれと同時に新
日本銀行、即ち
日本銀行の機構につきましても再
檢討をする必要があるのではないかというふうに
考えておるのであります。今般の
再建整備によりまして、普通の
金融機關におきましては株主も、それから
預金者その他
債權者も非常な
損害を蒙
つたわけであります。
日本銀行を
整理するに當りましても、全くこれに適用せらるべき原理は適用を受けなければならん、即ち今日
日本銀行というものは重大なる犠牲を分擔しなければならん。又各種の
債權者におきましてもそれ相當の犠牲を負擔しなければならないというふうなことにならなければならんというふうには
考えております。次に
興業債券の問題でありまするが、
興業債券のみならず、
金融機關の發行いたしておりましたところの債券、いわゆる
金融債券というものは、先般の
金融緊急
措置、竝びに
金融機關の經理應急
措置法、
金融機關の
再建整備法の取扱上、どういう扱いをすべきものであるかということは非常にむずかしい問題として
考えたのであります。ということは、これは一體
預金であるのか、債券でおるのか、普通の社債であるのか、これが見方によりましていろいろ違
つて來るのでありまするが、
只今採用しておりますところの結論は、
金融機關が
興業債券というものを持
つておる場合におきましては、これは普通の
預金と同じに見まして普通の
預金につきましては、
金融機關間の
預金はいわゆる新
勘定にこれを入れまして、そうして
預金を保護しておるわけであります。それと同樣の
措置を
金融機關が持
つておるところの
興業債券につきましても採りまして、
金融機關が、例えば
東京銀行が
興業債券を持
つておるという際には、これは新
勘定に計上いたしまして、そうして
興業債券の
債權を保護するという建前を採
つておるのであります。理論的根據といたしましては、これを
預金、
預金ならば當然そうな
つたのであります。
興業債券というものは
預金と一緒の形態でなか
つたかというような
考え方でさようなことにいたしたのであります。それから個人が持
つておる場合にはどういたしますかという問題でありまするが、これ又非常にむずかしい問題で、結論は實は得ておらないのであります。
金融機關が持
つておるものが新
勘定において
預金同樣の保護を受けるならば、個人の持
つておる
興業債券も、個人が持
つてお
つたところの
預金同樣の、即ち一萬五千圓乃至三萬二千圓の
範圍内において保護を受けるのが當然じやないかという結論も出て來るのであります。ところが
預金につきましては名寄せというような仕組ができるのでありまするが、
興業債券については、一體誰が持
つておるのか見當がつかない、これの登録を假りにさして見ても、皆登録の際に分散をするというようなことにもなるのでありまして、假りに一萬五千圓乃至三萬二千圓を保護するといえば全部を保護をするというようなことになるわけでありまして、一體これをどうするかというむずかしい問題に逢著しておりまして、未だに個人が持
つておる分につきましては結論を得ておらないのであります。それから
金融機關が持
つておる
興業債券が舊
勘定に假りに入れられるということになりますと、個人が持
つておるところの
興業債券、それから
金融機關が持
つておるところの
興業債券、共に同じ扱いを受ける、同じ扱いを受けまする結果、大體切捨率というものは六割ぐらいの切捨率であります。四割は助かるのです。ところが
金融機關が持
つておるところの
興業債券を新
勘定に入れるという
措置をいたしますと、
金融機關が持
つておる
興業債券は助かるけれども、個人の持
つておるのは一文も
補償を受けないという計算になるのであります。そこで問題はますますむずかしく相成
つて來ておるので、成るべく早い
機會に結論を得たいというふうに
考えております。
それから
企業集中排除法というものが、
政府において
考えられておるということを承知しておるのでありますが、これが
金融機關にどう響くかというお尋ねと拜承したのであります。この
考えられておる
法案が、形式上、
金融機關に適用があるかないかということは、まだ私共は決定しておるというふうに
考えておりません。併しながらこの
金融機關が、あの
企業集中排除
法案に盛られんとしておるところの思想竝びに方法によりまして、同じ扱いを受くべきものであるかというとさようには
考えておりません。
金融機關は
企業とは別個の形態の扱いを受くべきものであるというふうに
考えておるのであります。勿論この
金融機關の中には、財閥的の色彩の極めて濃厚であ
つたいわゆる四大
銀行というようなものもあるわけでありますが、これらにつきましては、すでに人事の
關係の處置は大體終了しておるのであります。それから株主構成、これも殆ど財閥色拂拭の
措置が採られて完了しつつあるのであります。それから尚
財閥銀行が融資をする、その財閥系統の
銀行の融資をする融資先につきましても、別途
企業の方の解體に伴いまして
整備が進捗しつつあるのであります。さような點で未だ足らざる點は更に補足するにいたしましても、又財閥の名前を表示するがごとき、名稱の問題、こういう問題も
考えて行く必要があるのではないかというふうにも
考えるのでありまするが、
企業集中排除のあれと同じ
實體のものが
金融機關に適用せらるべきものであるというふうには
考えておらないのであります。
金融機關は成るべく
信用鞏固、
基礎鞏固のもの程宜いというふうに
考えるわけであります。ただこれが獨占的に
なつちやいかんといふ點だけにつきまして、十分なる規正を加えることを
考えれば十分ではないかというふうに
考えております。