○波多野鼎君 それでは暫く時間を拜借いたしまして、七月二十三日に
大藏大臣が新聞記者に発表されました円通貨の問題に関する談話でありますが、これについて若干
質問をさしていただきます。参議院の本会議の自由討議の場合に、この問題に私が触れた
関係上、この
質問をさして戴く訳でありますが、あの場合にも
政府則からは、この円の通貨の價値の問題につきましては、纏まつた御答弁がなかつたために、その後又いろいろの臆説なり、流説なりが行われておるということは事実であつたと思います。
從つて二十三日の
大藏大臣の声明に
なつたと、こう私は解釈しておりますが、あの声明をお出しに
なつたにいたしましても、通價の價値の問題に関する臆説は、まだ一掃されるに至
つておりません。何故かならば、あの御声明は、まだ問題の核心にたいして何らお答えにな
つておらないからであります。御
承知のように、この通價の不安は通價の價値に関する不安でありまして、この通貨の價値が一体現在どうな
つておるのか、或いは今後どうなるかということに関する不安であります。そうしてそういう不安が、たとえば平價切下説、平價切下ということをいう人は、いろいろの
内容をそれに者
つておりまして、必ずしも統一的な
考えを持
つておる訳じやありませんが、兎に角平價切下措置といつたような、妙な流説とな
つて現われて來る訳であります。
簡單に具体的に申し上げますと、問題はこういうところにあると私は思う。
昭和九年乃至十一年頃におきまして、金一匁の平均價格が大体八円見当だつたと思いますが、これは
一つの事実であります。そうしますと当時の円の價値は、大体八分の一匁の金と等しい價値を持
つておつたということになる。ところが今日はどうであるか、去る七月十五日に
政府は金の買上價格を大幅に引上げました。一グラム七十五円、一匁に直しますと二百八十一円二十五銭、こういうふうに引上げた、これは新聞に発表したところであります。これは何であるかといえば、今日の一円の價値は、約二百八十分の一匁の金の價値しかないということを、意味するものだと私は思う。即ち、円の價値は
昭和九年、十一年頃の八分の一匁の金の價値から二百八十分の一匁の金の價値、約三十五分の一切下
つておるということを意味するのではないか、尚金の闇相場、これは巷間いろいろ傳えておりますが、これは大体一匁千円見当だとい
つておりますが、これは信用はなりませんけれども、一匁千円見当なんということをいいますと、円の價値は、
昭和九年頃に比較して、百二十五分の一に切下
つておるということを意味するのであります。もう
一つ、問題を別の面から
考えますと、
政府が新らしい物價体系におきまして、物價の安定帶を
昭和九年、十年の六十五倍ということに決めたのであります。このことは基準年次において、一円で買えたと同じ品物を今買うためには、六十五円出さなければならんということなんであります。円の購買力の價値と申しますれば、円の購買力は、國内においては六十五分の一に切下つたということだろうと思います。このことを人々は、円の位が下つた、お金の位が下つたという言葉で皆申しております。このように金との
関係においては、まあ金の公定價格の
関係において約三十五分の一、公定物價の
関係において六十五分の一、このくらいに円の價値は下つたと解釈されるのです。この事実を
政府はどのように解釈しているのか。この事実からいろいろの臆説が生れて來る。これを円の價値の切下と言わないならば、これを何と見るのだ。これをお伺いしたいのであります。こういう事実があるに拘わらず、即ち平價、パリテイの切下は行わないとか、或いはそんなことは問題にならんと申されるために、ますます何のことか國民は分らなくな
つて來るのであります。余りにも國民の常識とかけ離れた声明を出されるということが不安を大きくする
原因の
一つではないかと私は憂いているのであります。私は実は片山内閣が率直にこの円の價値の問題について纏つた見解を発表される必要があると思うのです。そうして國民の疑惑を一掃される必要がある。そうして片山内閣の政策としては円の價値が今までにこれだけに下
つているのだけれども、今後はこの價値のこれ以上の切下を極力防止するのだという決意を表明されることの方が大事であ
つて、円の平價の切下を行わぬといつたような言葉で今まで切下げられている事実を隠蔽するということは私は欺瞞政策だと思います。國民が円に対する信任を傷つけるようなことをしないと言われる。これは確かにその通でなくてはならんと思います。ところがその信任というのは百の價値のあるものを百として認めて貰う。十の價値のあるものを十として認めて貰うということであ
つて、十の價値しかないところを百の價値として認めろということは、決して國民の円に対する信任をつなぐ所以ではないと私は思う。物價の問題につきましては
政府は極めて大胆な政策を採られた。ああいう大胆な政策を採る以上、私はそれに附随していろいろな手を打たなければならんと
思つている。にも拘わらず円の價値の問題に一度問題がかかりますと、実にはがゆいほど臆病であります。なぜも
つて率直に國民にお知らせにな
つて、そうして國民と共に円の價値のこれ以上の切下を防止するという運動をされないか。この点を
大藏大臣にお伺いをしたい。以上で私の
質問は終ります。