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國務大臣(一松定吉君) 途中から參りましたので、詳しいことは間違
つておるかも分りませんが、小林
委員の御
質問は
海外引揚同胞が内地に著いた時に、僅かに三百圓ぐらいの金を與えて、而も間もなくそういう金がなくな
つてしもう、何とかして救いの手を延ばさなければならんという趣旨であつたと思う。
中平委員の御
質問は、そういうふうにして國家が救濟の手を延ばすというのに、それを内地に著いたその
場所においてそういうことをすれば、同じ國家の救援の手が、その内地に上陸したその瞬間において、そういうことになれば、それらの人の氣持も違うし、救援の度も非常に厚くなるから、そういうような方針を探
つてはどうか、要するに丁寧深切にや
つてはどうかという御趣旨のように
思つたのでありますが、
引揚同胞の皆様が、小林
委員の仰せになりましたように、多年の間
海外に出まして、そうして第一線に活躍をして、我が國のために働いた方が、戰に負けたがために、俄かに第二の故郷とまで
考えて働いておつた
場所を振り捨てて、そうして故國に歸らなければならん、而も歸る時には、持
つておつた財産というものは悉くこれを取上げられ、若しくはそこに置いて歸らなければならんということにな
つて、そうして内地に著いた時に、そういうような悲惨な
状況だとすれば誠に濟まんじやないかといふ御
意見、御尤もです。でありまするからそういう點については、厚生省といたしましては、
引揚者に關しまする救援の手を徹底的に延ばすように、
引揚者の援護院という特別の機關を設けまして、そういうような方面に對する皆さんのお氣の毒なことを救濟して、幾分でもそれらの人を慰安しようというような手を差延べておるのでありますが、何分にも御
承知のように委くの人が
引揚げて參りました。國家には財政に限りがあるということのために、最初の間は一人三千圓というような一時の金を差上げておつたのでありますが、そういうような金は、もうわけもなく、直ちになくな
つてしまうじやないかというような
輿論に鑑みまして、厚生省は三千圓からこれを五千圃に引上げまして、そうしてそれらの人に幾分でも慰安を與えるという
方法を講じたばかりではありません。今日五千圓ぐらいの金がこの物價高の時に何になるという非難に鑑みまして、今度連帶して十人ならば五萬圃、百人ならば五十萬圓の金に依
つて、それらの人が厚生資金にそれを活用することができるというような
方法を
考えまして、そういうことを今第一線のこれら
關係官聽に向
つて指示いたしまして、成るたけ便宜に、成るたけ簡便に、そういう方の更生の途の拓けるようにせよ、ということを訓示しておるのでありまするが、どうもその
海外引揚者諸君が私に面會しての
陳情によりますると、そういうことがどうも徹底していない、どうも
引揚援護院等に行
つて見て、そういうような話もするからして、それじやというて、どういう
手續をすればよいかというと、いやああでもない、こうでもないとうまいことを言
つて、採り上げて呉れない。それがためにこちらはしびれを切らしてしま
つて、もういいわというようなことを言
つて救濟のお願いを取り上げてしもうというようなことで、誠に殘念でたまらんという
陳情がありますからして、そういうようなことがあ
つては誠に相濟まんものだということで、私は全國に檄しまして、民生
委員、それから教育民生部長というような者を、昨日から本日にかけて、全國の者を本省に招集いたしまして、それらの點について丁寧深切に私の
考えを話して、又それらの人の實情について一々これを聽取して、惡いところは徹底的にこれを改めるということを昨日から今日にかけて、今もや
つております、そうしてそういうような怨嗟の聲は絶對にあ
つてはならん、尚それでもまだ
只今十分のことができないのであるが故に、こうしたらよからう、ああしたらよからうというよい方策があれば、遠慮なく申出ろ、そうすれば今の豫算の許す限りにおいて、現在の
引揚援護に關する費用というものは十何億というものがあるから、それでも尚足りないということであれば、又第二準備金その他の
方法に依
つて救濟することできるような
方法を講じようぢやないか、これからも丁寧深切に諸君なさいよ、それは部長諸君だけでなく、君方の下にある、直接そういう人に接觸する人々が深切でないという態度のために、いろいろ誤解を受けるのだから、そういうことのないようにせよということを私は昨日などは一時間に且
つて訓示をいたしました。そうして尚且つよく
質問應答等にえており、本日もまだ現に赤十字社において全國のそれらの教育民生部長を集めてや
つておりますから、成るだけ御期待に副うようにして、それ等の御同情すべき人に向
つては、國としても成るだけ救いの手を伸ばして更生の道を講じよう、尚。それでも足りないという方面に對しては、御
承知の
通りに生活保護法の規定等も運用いたしまして、できるだけ、それらの人が尖
つて、どうも我々が折角
海外で働いて歸
つて、こういう冷淡な態度をとるとは怪しからんというようなことのないようにせよということに意を用いさせることにしてりおますから、今まで足りないところは
一つ私からもお詑びいたしますが、
將來はそういうことのないように
努力いたしたい、かように
考えておる次第であります。