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原口忠次郎君 開墾と洪水と非常に
関係があるということが一般の輿論に
なつておりますが、その
意味はいろいろあると思うのです。今日
耕地と洪水に関するパンフレットを頂きました。これは余り洪水に
関係ないという議論になるらしいのですが、それで私は思うのです。
耕地そのものがどうこうするというのではなく、一般に云われておるのはこういうことだろうと思うのです。今まで
耕地でなかつた所が開墾されると、そこは雨が降るとどうしても早く水を退かせるような
施設をする。折角
耕地にして、そうして水を冠
つてもじつとしておる農家はない。早く水を退かせるようにするので、結局川へ放流するのが早いことになる。それから林草地帶である所が開墾されると、畔を作り、いろいろの
施設をしますから、どうしても水の流れが早くなり、早く川へ出て來る。「
耕地と洪水」のこの論文を見ますと、
耕地そのものは洪水の際に土砂は持
つて來ない。日本のいろいろな土質によ
つて洪水に
耕地から土砂が流れることはないという議論ですが、これは
耕地そのものはそうでしようけれども、降つた雨が
耕地を通る時間と、草木或いは濕地帶を通る時間とでは、
耕地に
なつた場合の時間が非常に早い。それがために
河川に非常に早く出て來る。こういうことになると思います。もう一つ、例えば四十三年と今年と比較すると、四十三年には日本の人口が恐らく五千万内外しかなかつたが、今日は八千万の人口がありますから、それだけの人口が川の上流下流に居住しておるわけであります。從
つて洪水が出て來ると、四十三年に比較して各地に三千万人も多いのですから、どうしても
被害が大きくなる。ですから四十三年の
被害と今年の関東の
被害とを比較して、今年は非常に多いように云
つておりますが、四十三年には十八万
町歩冠水し、今年は十二万
町歩しか冠水していない。こういうことですけれども実は今度の
被害が非常に大きい。これは結局人口に比例し、又雨の量にも比例するが、結局段々人間が殖えて來ると、上流地区或いは昔の濕地帶へ開墾する人が入
つて行く。そうすると水が長く溜
つておることを皆嫌う。これが開墾すると非常に早く水が出る原因だろうと思います。このパンフレットの議論は、
耕地そのものから土砂を出すか出さんかということに非常に重きを置いておられるが、
耕地が壊れなければ
耕地そのものから土砂は出て來ないと思いますけれども、
耕地が造られたために、元はそこが一時的な貯水場であつたものが、水が冠
つては困るから冠らないように、百姓が水が早く川へ流れて行く工作をする。そのために開墾を非常にやると水が一度に
河川へ流れ込む。こういうことがありますので、先程御
説明なさつたような
施設を開墾せられる時になさ
つて、一遍に川へ出て行かないような工夫をして頂く。成るだけでどこか暫く遊水させる。こういうふうなことを開拓局の方で特にお考え願えれば非常に結構だと思うのですが、その点は特にお願い申上げて置きます。一遍に川に水が出て來ますと、どうしても大きな水に
なつてしまいますし、四十三年頃は上流に遊水地帶が非常に多かつた。それが今日は利根川にしても、上流に遊水地帶がなく
なつた。なく
なつたのは、皆開墾して、百姓が皆水路を掘
つて放流する。こういうことに
なつておりますから、段々川の水というものが下に來る時間が非常に早くなると思います。こういう点につきましては、開拓局の
耕地課の方では
耕地と洪水ということに御心配頂きましてや
つて頂くということが第一だと思います。こういうパンフレットも非常に結構だと思いますが、このパンフレットを大体拜見しますと、
耕地と洪水には
関係がないということが議論の主のように
なつておりますが、或いはそういうことも言われるかも知れないのですけれども、水が早く出るということが
耕地を開拓することに困るのではないか。その点は特に御留意願いたいと思います。