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堀末治君 私実は今日いろいろと私は私だけに
考えましてお尋ね申上げたい。実はか
ように用意して参つたのであります。先刻來
岩木委員からち
ようど私がお尋ね申上げたいという大部分を頗る透徹した御
意見でいろいろお尋ね頂きました。尚又それに対して
大臣初め
政府当局からいろいろと御深切なる御答弁を頂いて非常に参考に
なつた次第であります。その中にもいろいろと、私まだ納得できにくい問題がありまして、又岩木さんの
お話の
通り、岩木さんの納得のいかんといつたことは私もまだ納得がいかんのでありますが、それらのことは、取りあえず
あと廻しといたしまして、他の方面で
一つお尋ね申上げたいと存じます。
それは私思いますのに、この
石炭の
増産ということは、大部分は人的要素にかか
つておるものと思います。先般來、
政府当局から、たびたび
お話がありました
通り、七〇%はいわゆる労務者の
関係である。か
ようなことで、なんといたしましても、いわゆる人的要素が大部分な問題をなしておるのでありますから、どうしても、いわゆるこの人的要素において私共は十分の檢討を加えると同時に、この方面に全力を盡さなければ、いかにこの法律が立派にでき上
つても、
増産の目的は達成することができないのでなかろうかと、か
ように存ずるのであります。現下の日本の状況を眺めまするというと、いわゆる経済危機、これはもう毎日々々身を以て味わ
つておることでございますので、國を挙げてこの危機突破に盡力狂奔しておるという
ような状況でございますが、尚一方を眺めますのに、その経済危機に平行して、私は今精神危機とでも申しますか、或いは思想危機とでも申しまし
ようか、いわゆる道義の廃頽によ
つて、
政府の企図するあらゆる施策が悉く破れており、現に闇の横行の如き、
政府が折角流通秩序の確主
要綱を出して、これを呼びかけておりますけれども、なかなか以てこの流通秩序の確立ができない、次から次へと、闇の撲滅に対しては、司令部のあの強力な援助を得て、抑えにかか
つておるけれども、これを抑えることができない。か
ようなことで、私は経済危機に平行して、この思想混乱、いわゆる道義の頽廃、さ
ような精神問題も、どうしてもこれを平行してやらなければならないのではなかろうかと、私はか
ように思うのであります。今度この敗戰の憂き目を見まして、私共最も痛切に
感じたことは、いわゆる物質文化が極端に劣
つていることも、まざまざと戰爭中、あの爆撃に出会うて見て、そうして身を以て味わつた次第でありますが、いよいよ戰爭が終
つて、靜かに
考えて見ますと、私共日本人全体が、いわゆる精神文化が非常に劣
つている。精神文化において、遠く彼らに及びなんだということを痛切に
感じもいたしましたし、又あらゆる機会において見せつけられたのでありますが、その後に至りまして、日本には、いわゆる目に見えない大きな革命が行われている。憲法が変えられ、私共今まで
考えておつた、天皇中心、忠君愛國、か
ようないわゆる思想が根抵から崩されまして、いわゆる主権在民、か
ような憲法が布かれ、同時に又その憲法の中には、一切の軍備を棄てて、はだかにな
つて、これから文化國家、いわゆる平和國家を築いて行く。か
ようなことを全世界に宣言して、私共は今その仕事に邁進しておるのでありますが、この大
事業を遂行するにつきましても、私はどうしても、いわゆる精神革命がなされなければならん。この点につきまして、私深く
感じておつたのでありますが、幸いに、片山内閣が成立すると同時に、首相は、
議会の初の御演説において、どうしても精神革命が行われなければならない。か
ようなことを絶叫されましたので、私非常に共鳴を
感じて、一日も早くそういう施策が
政府として行われることを待
つておつたのであります。思うに、その
労働問題の如きも、この精神革命が行われるのでなければ、いかに法律ができても、決して
生産意欲が発揮されるものではない。要するに私共全般が、深い宗教的信念に根ざした、高い廣い知性によ
つて教養を受けた、いわゆる人生観乃至は世界観というものをしつかりと確立するのでなければ、私本当に日本人が目醒めた、文化民族とか、平和民族となり得ないものと、実はか
ように思うのでありますが、これらも結局この
労働問題の根抵をなすものだと、実はか
ように思うのであります。然るに当内閣においては、精神革命は、片山首相があらゆる機会において申されておりまするけれども、他の閣僚諸公からはこれらの問題に対して一言半句も承ることできないのを非常に心淋しく思うておるものであります。殊にこの商工行章のごとき、
石炭のごときはすでに七十%人的要素においてなされる。又その他の諸工業も、悉くこの人的要素が元とな
つてなされなければならない。さ
ような行政官廳であるにも拘らず、今まで惜しいかなその所管
大臣の水谷さんからは、これらの問題について一言も承る機会のないことを、私非常に遺憾に思うのでございまするが、先ず第一にこれらの問題に対して、
商工大臣は如何にお
考え遊ばされておられるか、この機会に先ず以て承りたいと思うのであります。