○細川嘉六君
水谷商工大臣に二三お聽きしたいと思います。大體前囘にも私
意見を述べましたが、今度は
修正案が出ておる。前には
原案について
質問したのでありまするが、
修正案が出た今日水谷君は
管理について
原案の場合と實質的には何も異
つたものはないというように述べられた。
實際は
修正案においては
原案になか
つた炭鑛主側の立場というものは相當大幅に自由になされて來ておるのであります。それに拘わらず先程も他の
委員からも申されたこの
法案の最も重要な點だと思われる
生産協議會、それの地位というものは段々狭められておる。
現場管理者の地位も弱められら來ておる。それでこういう變化があるにも拘わらず、水谷君が
原案とは質的にそう變
つていないと言われるのは、解し兼ねるのであります。今度の
修正案というものは、即ち
衆議院で、十分な、亂鬪騒ぎまでしたことではあるが、
炭鑛主側の地位を大幅に自由にさした、殆ど言われる
通りに
炭鑛主側の
目的は達せられたと思うのであります。もうこの
法案は、業主側のためには最も有利に
なつた
法案である。それにも拘わらず、今度又
炭鑛主側を
代表される、或いはそれに追随される方達がここで又ひどく揉み合うということは、どうかと思うのであります。これは
炭鑛主側にと
つては誠に有利な案である。現に今日の
炭鑛というものは、拂込資本は二十億にも足らない。それにも拘わらず、國家の財政から百億以上の金をつぎ込まれておる。そうでなければ成り立
つて行かんというような
炭鑛であります。そこへ持
つて來て
炭鑛というものの主なるものは、出炭量の七、八割というものは、今度の戰爭
責任にも間われて解體されておる財閥
炭鑛であります。こういうように今日
自分の足では立
つて行けない
炭鑛が、澤山の金を國民の負擔においてつぎ込んで貰
つておる。そういう状態において、更に資金はつぎ込まれ、資材はもつとつぎ込まれる、そういう勝手なことを要求しておるが、
實際そうな
つて來ると、これは或る種の
管理は必要に
つて來る。金や資材はいくらでも要求するが、或る種の
管理を受けることは反對だということは、世の中の道理に合わないことであります。そうかとい
つて、私は今日の
法案に言う
國家管理が正しいと言うのではありません。これはもつと民主
主義的に
組織されて、官吏の獨斷專行をや
つて來た惡習は取り去らなければならんと思います。中央
管理委員會とか、地方
管理委員會、それらのことについては、逐條のときに申したいと思いますが、
現状のままでは、これは非常な官吏の獨斷が更に依然として行われるということになります。この點において
炭鑛主側も非常な反對をや
つておる。それから
勞働者側は無論反對しております。この官吏統制については、もう戰時中業主側も勤勞者側もひどい目に遭
つて來ておる。この點は直さなければなりませんが、民主的な
管理というものは、これは必要である。こんな大きな資金資材をつぎ込んでおるのであるから、
管理は必要である。併しながら、それは極めて民主的な
組織によ
つてこれを
管理して行くということが必要であります。そこで今日のこの案は、水谷君はその邊りをもう
一つ直すということはできませんか。これでは官僚の獨斷專行を許すようなことになりますから、これはもう鑛主側も、
勞働者側も、その他の勞務員も、反對しておるところであります。ここも
一つ直せんものでありましようか。更に社會黨から出ておる
水谷商工大臣に申したいのは、
一つここではつきりと、この
國管案はイデオロギーではない、社會
主義的の何ものもないということをはつきり言い切
つたらどうでしよう。一般
質問においていつも問題になる點は、イデオロギーでないか、イデオロギーでないかという點にあるのであります。ここにイデオロギーというのは、社會
主義政策の何か入
つておらんかということの心配から來ておることは無論であると思います。この案に少しも社會
主義的な要素はない。それであるから、きつぱりとこれは社會
主義でも何でもないと、水谷君は勿論、この
國管案は
増産を
目的にしておるのだと
言つておられるが、それでは他の
委員諸君は承知しない。この案は、見られる
通りに、全く社會
主義的な要素を持たない。これは全く鑛主側、資本家側の案であります。ここで今日本において一般國民が一番心配しておることは、先程來話がありましたが、何を心配しておるかというと、この
炭鑛の
國管案において、これ以上の負擔を又背負わされて、
石炭が本當に出るのか出ないのかを一番心配しておるのであります。それであるから、ここで我々
參議院では、今澤山の議論をやらずに、はつきりと資本家側の場面に有利な案であるとして早く片づけた方がよくはないかと思うのであります。社會
主義でもなんでもない。イデオロギーでいろいろ議論をなされるけれ
ども、イデオロギーを出す方は、資本家的なイデオロギーで
言つておる。社會
主義的なイデオロギーは、社會黨だけが持
つておるのではない。何が一番
増産するかという點が、イデオロギーの爭いの點です。ここを我々は忘れ
ちやならん。人のことをイデオロギーだ、イデオロギーだと言いながら、
自分が資本家的なイデオロギーに立
つておる。本當に一番
増産できるというのが、最も優れたイデオロギーである。それで世界の例から見まして、日本の
現状から見まして、今日の日本の經濟の
根本になる動力である炭業も、これは三菱にしても二億かそこらでしよう。それ程の小資本では駄目なのである。或いは一億何千萬かの資本では駄目なのである。ここで思い切
つた資本で、即ち今百億からつぎ込んでおる
炭鑛である。この百億なり二百億の國の資本で大經營をやる、そうして思い切
つた世界的水準の技術を以て、新鑛の開發であるとか、その他鑛區の廢合、そんな問題を一遍に解決してしまう、それくらいなことをしなければ、今日の日本では産業の中心になる炭業というものは十分な力を出し得ない。現に終戰後から
炭鑛が
自分の力ではや
つて行けないということははつきりして來た。それであるからこそ、國民の負擔において十幾億の金が今つぎ込まれておる。それでも尚且つ効果が出ない。ここで本當に技術的に最も進歩したことを大仕掛にやるというのには、大資本、即ち國の資本で、それで更にこれは鐵道事業や遞信事業と違
つて、人民
管理をして全體が國民綜合的にな
つて、この大きな事業をやるということにならなければ本當の
増産はできない。今日日本の今までにないひどい状態にな
つておる危機、これを打開する途は立ち得ない。そこが即ちイデオロギーである。これが本當のイデオロギーである。イギリスにおいて
炭鑛が今勞働黨の手によ
つて國有にな
つておる。これが從來のイギリスの
炭鑛では、あの小資本の、そうして分裂したあのやり方では、到底經濟の基礎にな
つておるあの
炭鑛はや
つて行けないというので、全頑固な保守的なイギリスの保守側も國有にしてしま
つた。これはまあイデオロギーの力である。そうしなければや
つて行けない。僅かの埋藏量を持
つておるこの日本で、こういう大困難を所に落込んだ日本では、これはイギリス以上のことをやらなければ本當の
増産はできない。それにはどうしても炭價の七割ぐらいを占める賃金を拂う
炭鑛では勤勞者を
相談させなければならない、これが本である。これが水谷君の屬しておられる社會黨があの社會
主義政策を
炭鑛に用いようとした、これが當然今日の時代にあ
つては適應策である。それが今まで自由黨やその他の各黨で締めつけられ、抑えつけられて妙なものにな
つてしま
つた。そうして今にな
つて尚イデオロギーだイデオロギーだと言わしめられておる。ことんことはないはずだ。社會黨は段々負けて、お終いに何にもないのに、まだイデオロギーではないかと言われる。水谷君は勇氣を出してイデオロギーでも何でもないとはつきりして見なさい。
實際何にもかの中にもイデオロギーはない。私の言うのが本當のイデオロギーである。今まで世界が進歩して來たイデオロギーはそれである。それこそ
増産である。現に御覧なさい、チエツコにしても、ポーランドにしても、
石炭業について御覧なさい、もう戰前の水準を超えておる。これはやりよう次第によ
つてできる。やりよう次第というのは、人民の各層の勢力を集中して、
自分らの
炭鑛である、これによ
つて經濟の再建ができるのだということを意識してかかればできる。それで水谷君、ここではつきりと、これは社會
主義でも何でもありません。資本家のための
國家管理案であると、こうはつきりいいなさい。いい加減なことを
言つてお
つたのでは誰も承知しない。イデオロギーとい
つても何もない。私は
石炭業者の惡口をいうのじやないが、
一ついいことがある。
原案を我々が
質問してお
つたときから大分日が經
つておる。そこで
一つ先程も話が出たが、技術者とか、官吏だとか、おまけにG・H・Qの技術部も參加して、各
炭鑛を今調べるという、
石炭増産の隘路はどこにあるか調べるという、これはなかなかいいことである。この前
増産對策について話合
つたときに、私は何故早く技術屋を動員してどこの
炭鑛がどういう妨害をや
つておるか、サボ
つておるか調べたらいいではないかと私は水谷君に述べたことがある。今日それがどこに何の隘路があるかということを探究されることは非常にいいと思う。
それから更に水谷君にこの問題について所見を伺いたいのだが、これに何故
勞働者側の
代表者を入れないのか、十分に
勞働者の意向をその中に入れるようにしないと、これは結局
勞働者の強度の搾取、勞働時間の
延長だとか、惡條件を
勞働者に課することになり、罪は皆
勞働者にあるということになる、その危險があるから
勞働者側の
代表を澤山入れて有力に發言させるようにすべきじやないかと思う。それについて水谷君のお考はどうか。
それからもう
一つお聽きしたいのは、緊急對策において決められた勞働條件を守らない
炭鑛には金を貸さないというようにな
つておると私
ども記憶しております。そういう場合には結局勞働條件について、いわゆる
勞働者側と
炭鑛主側との
意見が一致すればいいが、一致しない場合がある。その時に
炭鑛主は勞働條件の苛酷なものを
勞働者に要求して、そうして金融の
理由で
勞働者側を更に抑壓して行くそういうような危險はないか、それについても水谷君の
意見をお聽きしたいのであります。