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公述人(田中卓二君) 私は
臨時石炭鉱業管理法案につきまして、私の拙い
意見を皆様のお許しを得まして申上げたいと思います。
先ず第一番に本
法案に対しますところの私の述べまするところの
項目を初めに申上げて、以下
項目について
お話を申上げたいと思います。
先ず第一番に私の本
法案に対しまするところの
一般的考察、二番目には
民間、
國家両
経営に対する比較檢討、三番目は
本案に対する
結論として、私の賛成か
不賛成か、尚私案といたしまして、増炭案の私の私案を申上げたいと思います。
一般的考察について申上げますれば、
終戰後二ケ年を経てまだお互いの氣持も落着かない、勿論こういう点もありましようが、何としてもこの
石炭管理法案を中心として、これを審議せねばならないところの我が國会に、
一つの大きなこれは悲劇であると思うのであります。こういうことは取りも直さず今次の戰爭の悲劇の結果である、こう私は思うのであります。
政府、或いは企業家、或いは
労働者の人達の不誠意と無
責任、こういう点があつて、こういう
法案ができた、こういうふうに私は考えるのであります。而もこの
法案の成立、不成立は、やがて
日本全
産業に與えるところの影響が大であります。仮に本
法案が成立した場合においては、恐らく氣にくわないというところの企業者たちは、サボるのじやなかろうか、私はそう思うのであります。又これが不成立であ
つた場合には、
労働者の方のサボがあるのじやなかろうか。いずれにしてもこれは重大なる
法案であります。こういう
法案は実際、余程愼重に考えた後に成立、不成立を決定しなければならん、私はそう思うのであります。即ち全
産業に影響するということは、私も
一つの小さな
会社の
生産を掌つております。勿論小使兼
労働者兼重役という小さなのであります。その他一面において私は、御
承知のことと思うのでありますが、
日本の潜水業界を網羅しておりまするところの、社團法人
日本潜水協会の理事としてやつておるのであります。いろいろ考えてみまするに、この
石炭は食糧と二つ大きな問題でありまして、若しもこの
法案によつて今のような状態が激化されたならば、
産業人は全く日干に
なつてしまうのであります。私はかような点からして、私の
立場から考えても、例えばゴム
産業においてそうでありまするが、自治團体から貰うところの配給は、比較的
話合でたやすく貰えるのであります。ところが現在ゴム
産業中で最も必要なところの、熱処理として
石炭が必要であります。例えばゴム長靴とか或いは地下足袋の底とか、こういうものはどうしても
石炭によつて熱処理をしなければうまく行かないのであります。こういう場合において
石炭、ガソリン、配合剤、電力こういうものが全部相マツチして初めて
生産が挙るのでありますが、その
一つが欠けた場合においては
生産は停るのであります。然らばお前はどうしておるか、そういう場合は止むを得ず、電力で処理し得るものの方へ人を廻して、そうしてその一部の
仕事をしておる。電力が停
つた場合はどうするか。その場合は、配合剤を以てやるところの
仕事に全工員を集中せしめる。こういうようにしまして、
仕事の面で非常に不
能率、
能率が挙らない
仕事をしておるのであります。これが全部揃
つた場合にどんどん流れるがごとく作業ができるのであります。これが
一つ石炭のゴム工業に及ぼすところの影響を述べたのでありますが、現在ゴム工業者の要求の四分の一ぐらいしか
石炭が廻
つて來ない。これは一トンの
石炭を獲得するのに、役所に百遍も二百遍も通つて、初めて決まるような状態であつて、その間厭な思いをいたします。何遍も役人に頭を下げて、そうして
石炭を貰
つて來る。こういうような考えを持つときに、私は
官僚統制或いは曾て軍需
管理工場、監督工場として、さんざん厭な思いをして参
つたのであります。いわゆる官営が是か、自治体の統制が是かについては、賢明なる皆様においては、おのずから
結論が生れて來ると思うのであります。一体私といたしましては、
産業は
國家がタツチすべきではない。これが私の根本であります。
民間人に放任しておく。そうしてそこに自由競爭を現出せしめる。
從つてそこに自由競爭が始ま
つたところに
生産昂揚も考えられる。需要者へのサービス、我々
石炭で言えば、我々は
石炭の需要者でありますが、サービスとか或いは山元からじかに我々の工場に來る、こういう点において、非常にスムースに行くのでありますが、その間公團とか役所とか何々
組合とか、そういうところをはんこが二百も三百もついて、そうして初めて一トンの
石炭が工場に廻る、こういうようなことが現在の
状況であります。若しこれが官営に
なつた場合においては、恐らく同じようなことが繰返されるのではないか、
從つて自由にこれを委した場合においては、價格の低減を來すことも考えられるのであります。又
経営の改良ということも考えられるのであります。かように考えますときに、企業はやつぱり経済人にできるだけ任しておく、こういう点が私の考えであります。
先般私的独占禁止法の発布をみましたが、なんとなく、我々は考えますと、独占禁止法を一方に立てておいて、そうして
政府みずからが率先して独占禁止法を破つて、自分が独占する、
政府企業独占こういう印象を與えるのでありますが、しろうとの人はそういうことを言つておるのであります。先般私は横濱の商工会議所で、或る人にいろいろ話した結果、どうも最近
政府は自分の都合の
惡い、例えば收入が
減つたから、煙草の値上をするとか、或いは市電、都電、汽車、その他のいろいろな
政府企業の値段を勝手に上げる。こういうことをしていいのか、若し
政府がそういうことをやつていいならば、我々も採算が取れない場合には、勝手に上げていいのだなというようなことを洩してお
つたのであります。これは
一つの皮肉でありましようけれども、
一つの輿論、パブリック・オッピニヨンとして私共は考えなければならんと思うのであります。殊に
政府企業をどしどし殖して行くということは、憲法二十二條の営業の自由とこういう企業の自由というものを國民から奪うことになるのでありまして、いくら民主主義的な憲法を作つておつても、これにそぐわないところの、これに背反するところの法律案制定ということは、これは断乎止めなければならない。これがあつて初めて民主主義
國家が具現されるのであります。
曾て我々は戰爭中に、憲法違反という、旧憲法三十一條によつて違反とされたところの
國家総動員法が通
つたためにどういう結果に
なつたか。これを想起するときに、我々はうたた慄然たるものを感ずるのであります。かように私は考えるときに、やがてこの
法案の通過した曉においては、
官僚の
産業独占、独裁、こういう方向に移行しつつ、或いは戰爭中におけるところの軍官の例の監督工場、
管理工場、ああいうような形態につき進んで行くのではなかろうかということを懸念する者の一人であります。
管理工場、監督工場で、若い中尉とか大尉とか、そういうものが、我々、殊に私は潜水機具を造つておる工場でありますが、なんら
経驗がないのに拘わらず、知
つたかぶりをして、そうして干渉して來る。それならばといつて、具体的なことについて質問しても、なんら知らん。馬のことについては、博労がよく知つております。
石炭のことについては山元におるところの工員、
経営者、これらがよく知つております。役人なんかにも分りません。例えば役所に入つても、大学を出て高文を通つて、伸びるには高文を通
つた者でなくては、絶対に伸びないのであります。少くとも馬のことについて、私は馬の産地の岩手でありますから、馬のことについて本当に分るのは三年かかります。そういう三年かかつて初めて一人前になる。それがどんどん替
つて來る。何ら知識のない者が、どうしてそういう業者を監督し得るか、この点を考えて頂きたいのであります。今日
國家経営企業として成功している、或いは成功したものが一体幾何あ
つたか、鉄道
事業、逓信
事業專賣
事業、都電、市電の
事業、各種配給
事業、各種公團、瓦斯、水道、
電氣こういうものは半官半民の
仕事でありまするが、何れも市民
生活或いは國民
生活に、余り好い結果を與えておらんのであります。劍もほろほろの、いわゆる役人式の
仕事であつて、
皆さん自身がすでにこういう点に、苦いところの日常の
生活をしておられると思うのであります。私はこういう点からして、
結論として自分の態度が決まるのであります。
以上は
一般的の私の
意見でありまするが、然らば
民間と
國家とが
経営した場合において、どの面が
國家が優位で、どの面が
民間経営が優位か、この点を大雜把に羅列して檢討して見たいのであります。
先ず第一番に、
経営全般に対して考えまする時に、
経営は何と申しましても
民間に歩があるのであります。現在各種の大きな
会社、或いは小さな
会社経営をしておりますが、何とか彼とか仰しやつておる。ところが
政府の企業となると間に合わなくなれば値段を上げるのであります。これは一番誰でもやりいいのであります。都電なり或いは汽車賃なりが、收支がアンバランスに
なつた場合においては上げればいいのであります。これは
簡單であります。これは小学校の生徒でもできることであります。
從つて経営全般に対しては、何としても
民間側の方がうまいのであります。
次に資金関係であります。資金関係においては、これは
國家管理の方が歩があるように思はれるのでありますが、併し実際考えて見ますると、トン当りの價格を考えました時に、
政府がどしどしお入用お構いなしに、即ち戰爭中の
管理工場、監督工場がお入用お構いなしに
國家の予算を使
つたように、トン当りの單價がお入用お構いなしに
なつた場合は上るのであります。トン当りのコストが上
つて來る。こうな
つて來ると、
石炭のトン当りのコストが上
つた場合においては他の
生産に及ぼす、いわゆる原價計算に及ぼすところの影響が大であります。
從つて生産に対しては非常に高いものが
生産されねばならんということであります。ですから、無制限の
國家管理に
なつたから、無制限に資金を注入するということは、いわゆる経済学の初歩にいうところの限界効用の規則に制約されまして、結局これは駄目になるのであります。かように考える時に、ちよつと考えるというと
國家管理の方が資金面においては非常にいいように思われますが、
却つてそういう現象になりはしないかと思うのであります。
次に
生産資材関係について比較しますと、
民間経営者は苦労人が多い。長い長い間、いろいろ
経営の苦心をやつておりまして、若干の
政府のカバーさえあ
つたならば、うまく
資材を入手して、そうして山を動かして行ける、こういう点であります。一方若しこれが
國家管理と
なつた場合においては、相も変らず各省が繩張り爭いをやつておりまして、安本において和田さんが頭から湯氣を上げて騷いだところにしても、各省はがつちり自分の
資材というものを握つてなかなか離さんのであります。最近私は
復興院に知つている人がありますが、
復興院の某大官が曰く、どうも
商工省、農林省、こういう方面からの制約があつて、自分の
復興計画はうまく行かないということを漏らしている者がありまするが、何れもこれは繩張りを以てしている。ところが
民間においてはこういう点においては、例えば厚生関係においては米窪さんに頼む。
資材に対しては
商工省に頼む。こういうふうにして各省をうまく連絡せしめて、そうして
資材を獲得することができますから、
從つてむしろ
生産資材の獲得においては
民間側の方がうまく行く。私はこういうふうに考えるのであります。これは私が小さな工場を、或いは現在潜水機具を造る工場を、
方々関係している関係上、現実に体驗している次第であります。
然らば次に労務者に対する賃金関係は如何、これを檢討して見ますと、
民間会社は現実に即して、そうして給與をやる
方法を発明しております。いろいろな名目において、よく働く工員には、よく働く重役に対しては適当に給與をやつているのであります。ところが
國家管理に
なつた場合においては恐らくあの條文を見ましても、亦外の賃金の法令によつても、劃一的に
なつて、そこにうま味がないのであります。一体人間はうま味のないところに棲息のできない人間であります。即ち戰爭中には右に列えと言
つたら全部右に列ら
つた。これでは人間性がない。或る場合は本能に走り、或る場合は慾に走り、或る場合はピユーリタリズムになる。これが人間の性質であります。かように考えまする時に、賃金問題に関しましては一律主義より
民間経営のうま味のあるところの企業によつて
生産意欲を昂揚して行く。その点に優位なところがあると思うのであります。
次に雇傭関係について檢討して見たいと思います。雇傭関係について、役所においてはどうしても、官営になると、今の逓信、專賣、こういう
事業を見ても命令服從であります。そうして自分の使われている人がいつでも役所の一片の辞令によつて替わる。
管理監督も結局そういうものによつて行われる。法規一点張りであります。お前は法規第何條によつて休職を命ずる。退職金はこれだけだ、明日から來ないでもよい。結核なら明日から療養せい。法規一点張りであります。ところが
民間においてはそこに使われている人でも、共々曾ては同輩の者もありましよう。重役も亦同輩の者もあります。從業員から重役にもなれるのであります。決して
労働者は重役になれないことはないのであります。いつでもなれるのでありますから、そこに
一つのうま味がある。こういう点を考える時に、これは官業の方より
民間側の方に歩がある。
その他厚生施設においては、これは
設備の点においては何といつても官業の方に、
國家管理の方に優位な点があるのでありまして、先程も
九州の前弁士によつて指摘されたように、炭坑工夫が非常な悲惨な
生活をしている。住居の問題もそうである。これが問題であります。官業の方はこういう点は優位かも知れません。かように数
項目につきまして私が險討して見ますと、結局四対二を以て
民間経営の方がよいのであります。かような私の
結論に到達したのであります。
尚私は各山元にはその山元としての立地條件、これがいろいろ異
なつております。又労務者の獲得においても土地の
状況によつて
九州と北海道、それぞれの労務獲得の條件が違います。又交通の便、不便、鉱区の新旧、或いは各山元の
設備が各々差違があるのであります。かような場合においては、いずれもその山元の
経営者がその欠点長所をうまく差繰り合つて、そうして
生産能力を挙げて行く。これを
國家管理によつて劃一的にやつて行く場合においては、先程申上げたところのいろいろな
弊害が起きて來るのではなかろうかと思うのであります。かように考えて來るときに、
民間経営の方が
國家管理よりも優位であるということが
結論づけられるのであります。よしこれを一歩譲りまして
國家管理とした場合においてどうか、恐らく法律の力によつては物の
生産というものは挙らないのは事実であります。法律万能は……私は元々法律を專攻したのでありますが、殺人罪を犯して人を殺した場合、それ以前において道義によつて人を殺さないことこれが大事なのであります。人が死んでしまつてから百万遍法律を持
つて來てもこれは人間は生きはしないのであります。かように考えるときに、法律の力によつてのみ
生産が挙つて行くとは考えられないのであります。若し
政府の当路者が企業家と労務者と共々、三者が熱意を持つて眞にこの
石炭問題を解決しなか
つたならば、
日本全
産業が破滅に陥いるという、こういう考を持つて行
つたならば、必ず現場のままにおいてもこれが解決し得ると思うのであります。本
法案の内容について瞥見しますると
管理委員会とか
生産協議会とかいろいろなことが書いてあります。これは会議の濫立であります。今まで我々は会議会議と日を送
つて來たところの過去の政治家、或いは過去の
政府、今の
政府、こういうものには厭き厭きしておりますが、何の会議を開いたところでちつとも
能率は挙がらない。固よりこれを無視するわけではありません。適当なるところの会議、理論闘爭も必要であります。併しこういう点において日を暮すということは甚はだ以て現在の窮迫したところの
日本の実情におきまして無駄なことと思うのであります。
以上におきまして私は私の
結論としては本
法案に対して反対せざるを得ないところの以上の理論構成に到達したのであります。然らば次に
石炭増産の私案として私は申上げたいのであります。AとBに分けまして、現下の政策と恒久策と、この二つについて
お話を申し上げて最後としたいのであります。
先ず第一番に先程から私が申し上げましたように、山元の
経営の特異性を活かすこと、そしてこれによつて
政府が食糧と
石炭について全力を挙げてそうしてカバーをする。特に
石炭は工業家にとつて非常に大切なものでありますから、積極的に資金の面、或いはその他の面において面倒を見てやる。こういう点を私ども強調したいのであります。
第二番目においては、
石炭三千万トン必要だということを、これはマッカーサー司令部、GHQの要求を俟つまでもなく、
石炭の問題が解決した場合において、当然他の
産業が旺盛になり、振うのでありますが、最近の樣子を見ますと、閣僚がお互いに割拠し合つて、そうして自分の省を可愛がる。これは止むを得ない人情の当然でありましようけれども、先ず第一番に
石炭と食糧に関するところの主務官應に対しては、少くとも優位の地位を與えて置く、こうい点が私は必要だと思うのであります。殊に新憲法において内閣総理大臣は他の大臣を何時でもディ・スミスさせることができるのでありますから、その点を強い意思をもつてやつて行く、こういうふうに私は要望する。百方美人主義、或いは
資本主義に阿諛し、或ときは
労働者の人氣を取る、こういうことは飽き飽きした。自分の信念に向つて断々乎として進むところの首相を私は求むる。こういう首相であれと私は望むのであります。百方美人主義では、
生産能率は下つても上らんのであります。
次に私は企業者、労務者を包含するところの増炭懸賞金制度というものを作つて貰いたい、こねであります。年二期に分けて山分に対して
目的の
増産が達成できた場合には思い切つて懸賞金を出す、これであります。
資本家といえども、企業者といえども、又労務者といえども、欲は無限であります。我々は物質に生きないとか、
イデオロギーに生きるとか言つておりますが、結局何を言つても我々の
生活を考えますときに、問題は唯物的に賃金が余計欲しいのであります。こういう点に考えを及ぼすときに、懸賞金によるところの
採炭競爭を行わしめる。例えば
目的に達した所には三億とか五億とかを出して、そうしてその分配
方法については飽くまで
労働者と企業者とが平等に分ける。こういうふうに私は考えるのであります。増炭競爭、これは景氣がよくて面白そうであります。そうして、お前はそんなことを言つてその資金はどこから出るか、これについては私は増炭懸賞金の資金としては、増炭籖、或いは増炭三角籖というようなものを作るのであります。そうしますとこの籖の販賣によつて
一般國民は増炭の意識を昂揚する。成る程、
石炭はこれ程、街頭に出て三角籖を賣らなければならない程困るのか、その意識を昂揚すると同時に、大衆の余剩金をもつて負担せしめる。こういう結果になりますから、一向
政府の懐が痛まなくて、大衆負担によつてなし得る。こういうふうに考えるのであります。
私は以上現下の増炭の私案として申し上げましたが、恒久策として申し上げます。先ず第一番に河川沼沢を利用して小型の発電所を作り、
石炭の需要をカヴァーする、この点であります。すでに御
承知の
通り森林の濫伐によつて洪水が盛んに起きております。これらを除くためにダムを造る。そうして小型の発電所を作つて
石炭の需要を代替する。例えば私共の方の潜水衣具を造る場合においても、工場には電熱を使う。或いは燃料の節約をする。こういうふうに
石炭は電力で代替し得ると同時に電力の不足を補うためにどしどし小型の発電所を作れば
日本の治水、利水或いはその他についても大きな役割をなすのでありますから、一石三鳥になるのであります。
第二は、私は現在全
日本の潜水業者、サルヴエージ、沈没船引揚げ、或いは潜水漁業……潜水漁業によつて貝を採
つたり、或いは眞珠を採
つたりするわけでありますが、これらの協会を昭和十五年に作つて、現在では約七万というところの会員を持つております。これらの者に海底における資源、いわゆる海底にあるところの
石炭の露頭を発見せしめる。地上にある
石炭の露頭なり、或いはその他の鉱物の露頭があつて掘つて行くと同じように、海中にも
石炭その他の鉱物の露頭があるに相違ありません。現にあるのであります。現にリサーチした事実があるのであります。これに対するところの施設を行なう、例えば大きな暗渠式のものを作つて縱坑を以て
石炭を発掘していく。現に
九州地方において海底
採炭の問題が起きているようでありますが、
日本の優秀なるところの潜水
技術を活かして海底の
石炭を
採掘するということを私は
委員の
方々にもお願いしてやつて頂きたいと思うのであります。勿論潜水
技術者は現在海沒炭といつて例の潜水鑑その他によつて沈沒したところの海沒炭をどしどし引揚げて山から掘つているものをカバーしておりますが、かようにして潜水
技術の優秀な点を石
炭鉱業面に利用して頂く、その他新規に新鉱脈を発見してこれを発掘する、こういう点もありましよう。
以上私は述べましたが、関係筋から尻をひつぱたかれるまでもなく、我々は
労働者も、官も民も対立でなくして、いわゆる協力、
從來のように対立されては
生産は挙りません。又感情でなくして実利、こういう考えを以てこれらの三者が一体と
なつてや
つたならば、現在の機構において十分やつていける。九月には
採炭が少し上
つたようでありますが、十月において又下
つたというような
状況であります。どうぞこの点に十分
委員の
方々も思いをいたされまして、我が國
産業振興のために、
石炭問題を一日も早く解決して頂くことをお願いいたしまして、私の
お話を終ることにいたします。先程から私の拙い
お話を
委員の
方々その他聽いて下さ
つたことを深く御礼申上げます。