○
政府委員(
渡邊誠君) それではこれから前囘に引續いて
石炭非常對策要綱を御
説明申上げます。
只今方針の第四について、そこから始めよとの
お話しでございましたが、この
方針の一應
具體的に
なつた項目が
要領の方に出て參りますので、
要領の方で四に該當するところの御
説明を申上げることにいたしたいと思います。そういう
意味で
要領に入らして頂きたいと思います。第二
要領の一の二十四時間制の
推進。これは
切羽の
遊休時間を
有效に使うということにあ
つて出炭力を増そう。
遊休と申しますか、
つまり切羽で、堀り場で以て
作業していない。炭が堀られていないという時間が一日の中であるのを、その時間を堀れる、或いは堀る
準備をする時間に全部を使うようにいたしたい。それからもう
一つは、
切羽の
進行速度を殖やしたい。
採炭をいたして參りまして、順次堀りますから、前進をいたして參るわけでありますが、現在のところ大體これを
平均いたしまして
長壁式の拂等では、一ケ所の
堀進が〇・九メートル
程度、これを一・二メートル
程度に
差當り延びるようにいたしたい。こういうことを考えておるわけであります。
それから
作業の
正常化による
能率の
向上を圖る。こういうようなことをして、
作業の無駄といるものがないようにして行く。大體
炭鑛の
通常の姿といたしましては、三
交替の形で行くというのが普通の姿で、中には二
交替を
適當とするものもあると思いますが、大體は三
交替の姿でこの
切羽を遊ばせないということで、そういう
意味で二十四時間制の内三
交替を採ることにしたわけであります。で、三
交替制と申しまするが、
炭鑛の堀り場の
關係上、三
交替の中の二
交替だけは
採炭をする。全部
採炭をやればよさそうでありますが、どうしても先程申し上げましたように、一メートル程の
進行をいたしますので、
炭鑛を御覧にな
つて御
承知と思いますが、堀られた炭を
コンベヤーに
積込という
作業をいたしまするのに、堀
つておる
場所と
コンベヤーのある
場所とがあまりに
距離が離れて參りますると、シヤベルで
積込むのに無理が來るというような
關係上、
切羽の
採炭が
進行して行くのに連れて、
適當な時期に
運搬設備である
コンベヤーを
切羽に近い所に
移轉するということをどうしてもやらなければなりませんので、
通常の
やり方といたしましては二方堀りまして、一方次の
堀つた炭を運ぶ
準備のために
コンベヤーの
移轉、
竝びに天井を落ちないように坑木をそれに入れるというような
作業をする。
つまり三
交替の中二方が掘
つて、一方はそういう
移轉、
採炭準備をやる。こういうふうにいたしたい。同時に掘る方の
速度が早くなりまするので、掘られた炭が
炭車に積み込まれて運び出されるためにございます
運搬坑道、
つまりカタバと申しますか、掘られた炭がコンベアから送り出されて
炭車に積まれるという、その
炭車を運轉いたしておりまする
運搬坑道の
進行も早くなければ、掘方だけが先に行くというわけには行かない。從いまして現在若し一方
採炭であるのが、二方になるようなことがあれば、勿論
坑道を
堀進する方も三
交替で
堀進をやる、二方
堀進ということにしなければならないというので、これは二方
採炭、二方
堀進というのは相關連しておるところであります。そういうふうな
やり方をしたい。これに必要な
資材資金は配當したい、こういうことであります。この
資金や
資材を送りまするのには、
從來と多少趣を異にいたしまして、
能率の
向上して行く
炭鑛という方に對して優先的に行くようにやりたい。尚三
交替制を實施すると申しまするが、現在三
交替制を採用しておる
炭鑛も多數あるわけでございまして、まだや
つていないようなところは三
交替制にしようと、こういうわけでございます。そこでや
つていないところが三
交替になりまするとすれば、一應それに應じた一方だけ
増加された
人員は、
採炭堀進というような直接夫の
人員の
増加を圖らなければならないというのは、これは當然の歸結だろうと思います。そこでその
増加する
人員、これは山の
實情によ
つてそれぞれ
違つて參りますから、三
交替をやらないところも出て來ると思いますが、大體これを
大掴みに掴みまして、三
萬程度の
増加、圖らなくちやならないのではないかと思
つております。それに對しまして、どういうふうにして
坑内の直接夫を殖やすかという
方法につきまして、それはただ
人員を募集すればよかろうという
行き方ではいけない。それは現在
炭鑛の
住宅はもう一杯である。そうして
住宅を今
増加しつつございますが、その家はなかなか
資材資金等の面からい
つて、殘念ながら制約を受けております。
炭鑛の
住宅を優先的に建てると
言つておるが、その
住宅さえも非常な制限を受けて、十分に滿足することができないという
實情にあるので、同時に又急に家を建てるということは時間的に考えましても、やはり六ケ月乃至七ケ月、八ケ月というような期間を要する。從いまいて、先ず三
萬人程の
人員を充足するといたしました場合、
住宅を殖やさないで何か智惠を出して、少しでも充足する
方法はないかということを考えなければならん。そのために
坑内夫の増員は
原則として
職場轉換等の強力な
推進により補う。先ず第一に
坑外夫から
坑内夫に轉換する餘地はないか、又轉換できるかどうかという點を考えるのが、妥當ではないか。これにつきましては、長年の過去の
記録實績等から見まして、まあ
戰爭當初或いは戰爭前頃には、
坑内夫が七割を占めてお
つた。それに對して、現在は五割六分しか
坑内夫がおらない。大
體坑外夫の方が、非常に
坑内夫に對する率が
從來の
状態に比べて多い、いろいろ現在の炭質が落ちたから
坑外夫が要るのだという説もございますが、兎に
角炭鑛の
状態を知
つておる
人たちはみんな
坑外夫と
坑内夫の比率がこれではいけないということを
承知しておるのでありますから、どうしてもできるならば先ず第一に
坑外夫を
坑内夫に換えるというような處置を講じて、この
資材、
資金等を逼迫しておる
國情のなかで、
坑内夫を殖やして
増産を圖るという
手段を先ず採るべきである。その他に例えば
切羽の集約というようなことも考えられる。それはどういうことかと申しますと、
坑内の
人員が足りませんために、例えば五ケ所の掘り場がある。その五ケ所の掘り場は、一ケ所に百人なら百人の
採炭夫が要るというところで、どうしても
坑内夫、
採炭夫が足りないために、百人要るところを七十人でや
つておるというような、
はんぱな作業をしながら
切羽を各所に分散させて持
つておるというような場合に、當面の
措置としては、そのうちの一ケ所を保存しておいて、その方から浮いて來た
人員を他の殘りの方の
切羽へ集中して、そうして
充實を圖るというようなことをすれば、
切羽の數が
減つても、一時的には現在よりも
能率が上
つて行くと同時に、三
交替制を採
つて行くこともできるというような
場所もあると思われますので、そういうところは又そういうような
創意工夫をそれに應じて凝らすというようなことをして、尚且つ
切羽があるに拘わらず
人員が足りないとか、或は
住宅もゆとりがあるというようなところには、それに應じまして
坑内夫の
充實を圖
つて行く。こういうふうにしたい。そういうことを、一番末尾のところで、
原則として
職場轉換等の強力な
推進によ
つて補う、こういうことが書いてあります。そういう順序で行くべきであるということを
言つておるわけであります。
それから第二の(ニ)は、
勞働時間に關して、次のような
作業方式のいずれかを採るように
勞働協約でや
つて欲しい。これは今申上げましたように、
住宅も少い、而も炭を出さなければいけない。三
交替制をやりたいけれども、
人員が足りない、それを入れるには家がないというような現状を見まして、
差し當つての
手段としては、(ニ)に書いてある
現場、
作業場に八時間、そうして
現場、掘り場で
交替する。そうして三
交替をやる。その代り現在行われておる七日目に一日、
つまり一週間のうち六日働いて七日目に休むという
行き方を、むしろ四日働いて五日目に一遍休むというような
やり方に切り替えてでも、こういう
切羽をあかさないような
やり方を考えてはどうかという
一つの姿を示しております。(ロ)は
坑口から入
つて坑口へ出て來るまで、現在は八時間ということにな
つておりますが、これを
國情に鑑みて、三
交替で一時間を延ばす。それから(ハ)は、諸般の
事情からい
つて、三
交替を今採ることはできない、或いはそのやまの
特殊性からい
つて炭層の條件とか、その他の
自然的條件等から見まして尤も二
交替の方が
能率がいい。三
交替やることは却
つて惡いのだというようなこともあると思いますし、又現在直ぐに三
交替制の(イ)或いはこの(ロ)というような
方法を取ることが現實にできない。而も何とかして
増産をしようというときに甚だ苦しい
勞働の強化であるけれども十時間に延長して、そうして二
交替制で行くというような
方法、こういうような
種類の
方法を
是非經營者竝びに勞働者の救國の
熱意に訴えて
一つ勞働協約によ
つてそういうことをや
つて行きたい。これは現在の
勞働基準法では
坑内の
作業につきましては
坑口へ入
つてから出て來るまでを八時間、
拘束八時間ということにな
つておりまして、この
勞働協約によ
つて整つた場合には、二時間までは延長することができるというふうに決められておるわけであります。その二時間と申しますと、八時間でございますから、(ハ)に書いてある十時間がマキシマムだということになります。
現場八時間と申しますのも、これは
作業場で八時間
作業をするわけでありまして、
坑口から
作業場へ行き或いは戻る時間が、若し片道で一時間以上か
往復一時間以上かかるいうことになりますれば、この八時間制というのではできないわけです、現在の
基準法に基きますと。又八時間やりまして
往復一時間というところは
現場八時間をやりまして、三
交替で
坑口からの時間は九時間ということになる。この三つのものを選んであるのは、その山の
實情に應じて最も良い
方法をお取りに
なつたらよかろう。選んだらいいではないか、そういうふうにや
つて欲しいということを言うておるわけでありまして、劃一的にただ一時間延長しろとか、二時間延長しろということを要望しておるのではない。併しまあ何れも延長を要望しておることは明かに要望しておる、時間を延長することを。
右方式の
誠實な實行をなす
坑内直接夫(
採炭、充填、掘進、仕繰夫)でございますが、こういうような
種類の直接の
人たち及びそこに從事しておる
坑内の
現場係員に對しましては、現在行なわれておる
現場給食を繼續する。尚本
方式を實行することによ
つて能率の
向上が圖られて行くであろう。それには
所得も殖えて來るであろう。そういう
所得に對しては
一定の
基準以上に達した場合には、その
所得税について又
持別の
措置を講ずる。特別の
措置とはどういうことかという點については、
只今私はまだ
説明いたし兼ねると思います。それは
關係方面の方も御檢討を
願つておるような次第でありまして、
只今これを
はつきり申上げられないことであります。これはまあそういう
現場給食の方は、現在までに
坑内夫に關しまして六合、三合という
平均の
炭鑛の
主食の配給の外に、或る
一定のそれぞれ指示された
一定の目標を達成するために、或いは時間を延長し、或いは非常な努力をするという必要があるであろう、そういう場合に、
作業現場でもう一時間頑張るには腹が
減つて力が出ないというところに、丁度一合に相當する
乾パンを配給しておるわけであります。その一合に相當する
乾パンのことを
現場給食と
言つておるわけであります。その
現場給食が、中には
坑外の方に使用されるというようなことがあ
つたりするように見られまするので、そういう點も
はつきりこの際いたさなければならない、こういうことを
言つております。
職場規律の
確立と
給與制度の
改善。
職場秩序を
確立して
作業の
正常化を圖る、これは
職場規律、
秩序と申しますのに、いろいろの面があると思います。職員が正しい
保安上又は
生産上やるべきことを十分徹底して、その
現場の勞務者に言えない、そうしてやるべきことが、紊れておるというようなものもございましようし、又
勞働協約を結んで
一定の八時間の、
拘束八時間なら八時間の
勞働をやる、それに對してそれに應じた
賃銀を
受取つておりますから、それだけの約束をしておる、
責任を持
つた作業を果さないというような場合もある、又逆に果さないに拘わらず、そういう
賃銀を取
つておるというようなこともあります。そういうことは拂
つてる方もいけないし、
受取つている方もいけない、そういうことは明確にきちんと
秩序を立てなければならない、これは
保安の問題、
生産の問題、いずれから
言つても重大な點であ
つて、而も
保安に關する點等に
至つては、生命にも關する問題だから、人命に關する問題だから、
はつきりさせなければいけない。非常にこれは順次よくなりつつありまするが、
はつきりここで皆反省し合
つてやり直そうではないかという、こういうことでありまして、そのためには
就業に對する
規則というものを
はつきり
炭坑毎に定めて、それに反するような、或いはおのおのが
責任を果しておらないような場合、或いはそれに反するものとしては、その
炭坑のそれぞれの
懲罰委員會、その他で處分いたされることが必要ではないか、こういうことを
言つてるわけでありまして、この點は
内容の點になりますると、今
勞働省の方で
準備を進めておりまするので、私のところから、ちよつと
就業規則とはどういうものかということについても、
内容は私には御
説明できません。
それから右による
誠實な
勤勞に對しては、その
熱意と效果に相應する報酬を與えるように
賃銀制度を
合理化する。この點についても今そういう研究と申しますか、
準備を進めております。併しながらこういう問題は、
從來から
勞資の間で全體としては全國の
團體で
大掴みな相談を、協約をなさなければならないと存じまするが、個々のやまの
賃銀委員會というようなところでやはりどうしても
増産をや
つて行く上には、かくあるべしという
制度を
具體的にお決めにな
つて、そうして納得し合
つて行くようにしなければ
いかん。ただみずからの都合がいいということで、せつかく全體が困
つておるこの
石炭状態に對して無關心でいるというようなこともいけない。こういうようなことも含まれて來るわけであります。この
賃金制度の
合理化というのは、昔はいろいろな
手當々々で、もう
受取る方も働いておる人も一體自分はいくら貰えるのか分らん、取れるのか分らんという
状態にあり、拂う方の人も
複雜で徒らに手間が掛かり、人手も要したということでありますが、それも相當全國の
勞働組合の
代表者と
經營者側の
代表者との間に整理をされまして、餘程すつきりしたものにな
つておりますが、やはり今度のこの對策の根幹をなすものは、やはり
能率を上げて行く以外に
方法はないという所から來ておりますので、
能率的給與というものについての點をここで檢討される、こういうことにな
つております。
それから第三、
炭鑛從事者に對する
生活物資、これの
特配分というものにつきましては、
特配分と申しますと、例えば
主食ならば二合五勺、これは普通の成年であります。それが
平均六合ということにな
つておりますから、三合五勺が
特配分に相當するわけです。家族につきましては二合五勺の所を三合というので、五勺が
特配分であります。又酒についても、
國民として皆が頂いてる酒の超過分というような
種類のもの、そういうふうなものは徒らに惡平等に配ることなく、やはり
特配というのは
國民の貴重な、非常に苦しい中から割出されて、そうして炭を掘
つて貰いたいからこそ、割いて、期待をして、我慢をしておる。
受取る方も、渡す方も、その點を
眞劍に考えて、すつきりした配り方をして、それが炭にな
つて行くような、又な
つたのを裏づけするような
やり方にしなければ
いかん、これは當り前のことでありまするが、現在やはり亂れておるという所もある。ここで
はつきり
勞働組合も
經營者側も又
官廳側も、ここで反省して、新たな氣持で徹底的にこれを、その
目的に合わないものは是正するように
勇氣を持
つて進めて行かなければならない。こういうようなことであります。