○中川以良君 私は北海道の方に參りました者でございまして、本院からは私の外に一二御同行を願う筈でございましたが、いろいろな支障がございまして、私一人が參
つておりましたのでございますが、衆議院の方からは岡田、谷口、三好三代議士が參りまして、これらと一緒に行動をいたしました次第でございます。
七月の十二日に東京を出發いたしまして、十四日に札幌に到着をいたしました。商工局といろいろ打合せをいたしまして、直ちに
炭鑛に向いまして、最初に東幌内、それから美唄、奔別、砂川、芦別の五箇所を
視察をいたしまして、この間十七日には三井砂川におきまして商工大臣一行と共になりまして、北海道
石炭復興
會議に臨んだ次第でございます。二十一日に
炭鑛視察の後、小樽の港灣
施設を見まして、二十一日に札幌に歸
つて參りまして、札幌の商工局におきまして、金融
關係、或いは
資材關係、
勞務關係、
食糧關係、その他保安
關係等の各
關係の官民のお方にお集りを戴きまして、私
どもが
視察をいたしました結果をいろいろお話を申上げ、各
方面の御意見等を承りまして、大體私
どもも
視察の結果の裏附をいたしまして、結論を纏めたような次第でございます。二十二日に出發をいたしまして、歸
つたのでございますが、途中丁度東北のあの水害に遭いまして、まる二晝夜東北で以て止められまして、二十五日にやつと東京に歸
つたようなことでございます。
北海道の
出炭量は三千
萬トン、出炭に對しまして本年の
割當は八百四十三萬六千トンでございまして、實に三千
萬トンに對しまして二八%の
割當を受けておるのでございます。これに對しまして本年の第一・
四半期の結果を申上げますると、目標が百八十一萬六千五百トンでございまして、これに對しまして出炭は百六十八萬一千二十九トン、九二・五%にな
つております。これに對しまして北海道の
石炭復興
會議は、これでは申譯ない、是非とも第二・
四半期においてこの
不足分を取返す、更に第二・
四半期の目標を是非突破しようという意氣込で、只今懸命なる努力をいたしておる次第でございます。で第二・
四半期の七月の上旬の
成績を申上げますると、七月の上旬におきましては、目標數に對しまして九七%九まで向上をしております。それから中旬におきましては九七%に落ちたのでございますが、まだ百%まで行
つていないという點は甚だ遺憾に存ずるのでございます。
私
どもが北海道の
炭鑛を見まするにつきまして、まず北海道の
炭鑛の特異性ということに對しましていろいろ檢討を加えたのでございまするが、北海道におきましては只今五十五の
炭鑛がございます。これが
九州においては二十一
年度では百五十九の
炭鑛があることにな
つておりまするが、この一
炭鑛當りの昨
年度の
出炭量を見ますると、北海道は大體十萬五千トン、
九州は七萬七千トンにな
つておりまして、北海道の方が大體粒が揃
つて、相當な規模を持
つておる
炭鑛が多いようでございます。ただ北海道は
炭鑛が山間僻地にございまして、非常な急斜面を利用されておりますので、
炭鑛の諸
施設の
不足、その他建設につきましては非常なる困難が伴
つておるのでございます。それから炭層におきましても非常に急傾斜の炭層が多うございまして、甚しきは七十度乃至八十度の急斜を持
つた炭層がございます。これが
ために出炭の採炭
作業というものは極めてこれ又困難を伴
つておるような現状でございます。それから炭
坑内におきましては、これは
九州常磐等とは違いまして、ガスが非常に多い。それからガス突出、それから炭塵、
石炭のほこりでございますが、これが非常に多いので、これに伴いまする爆發が頻発にある。
九州常磐と違いまして保安上に特別の注意を要する特段のいろいろな
施設を要するという點が異
つておる點であると存じます。それから又北海道は御承知のごとく、冬の期間が非常に長いので、他の地區と違いまして、
作業その他
輸送面におきまして、この季節の
關係上いろいろと制約を受けておるという點を考えなければならんと存じます。但し北海道は御承知のごとく非常に埋藏量が多く、且つ又處女
炭鑛が多いのでございまして、今後日本の
石炭増産におきまする北海道の擔いまするところの役割というものは非常に廣大であるのでございまして、この點は、北海道に今後大いに力を入れなけれどならんと存ずるのでございます。いろいろこういうような北海道特異の事情があり、これが
ために、生産上の
隘路等もございまして、他の
地方とは又別の困難性も伴
つておるのでございます。こういうような見地からいたしまして、いろいろ特別な處置を、北海道には講ずる必要があるように存じます。かような點をまず考えまして、逐次各事項につきまして
調査を進めたのでございます。
まず、
資金の問題でございますが、これは先程來お話がありまするごとく、
資金は極めて窮屈でございまして、國全體から申しましても、北海道の
炭鑛の
資金、これに伴いまする関發の
資金というようなものは、或る
程度他の
炭鑛より特異性を認めまして、額を殖やすべきではないかと考えられるのでございます。それから
資金の決定が非常に遲れておる、これが
ために今日まで
増産を妨げておるのでございまして、すべての點、計畫をいたしましても、
資金がない
ために、仕事が非常に停頓をして、いろいろな計畫上の齟齬を來しておるという點は各所にこれが認められるのでございます。
一つの例を申上げますると、北海道
炭鑛汽船、いわゆる北炭におきましては、只今夕張地區ほか
四つの鑛山を持
つておるのでございまするが、これに對しまして支拂の未濟代金というようなものが一億一千五百
萬圓ございます。その中事業用品が二千百五十
萬圓、木材が四千五百
萬圓、需用品代千五百
萬圓というようなことにな
つておりまして、折角いろいろな
資材を見ながら金がない
ために
増産ができない。殊に
勞働組合が一生懸命で
増産をすると、もう直きに坑木の點において行き詰まるというような大きな矛盾を來しております。この四月におきまするこの会社の
資金等も大體一億二千
萬圓の送金を見込んでお
つたのでございまするが、七千四百
萬圓しか來ない。それが
ために計畫が非常に狂
つたというような例がございまして、こういうことは三井、三菱、その他住友の
炭鑛においても皆同じ例を見ております。こういうような譯で當初の
資金の繋ぎなんかも、地元銀行でも、中央で以て額が決定しないが
ために、どうしても出してやれない。折角いろいろな
配給物があ
つても買えないというような本當に私共想像もつかないような馬鹿げた現状が各地に見られるのでございます。それから
資金のルートが非常にまちまちでございまして、たとえて申しますると、坑木とか或いは
炭鑛の機械とかいうようなものは、
資金が甲の二にな
つておりまして、他のものと併行して
資金の融通が行われない。これが
ために
炭鑛の
作業がちぐはぐになる。それから
炭鑛住宅の建設にいたしましても、住宅の
資金は出ても、これに附隨いたしますところの學校の
施設とか、或いは水道の敷設費とかいうようなものが、全部
資金の枠が別の
ために、
炭鑛住宅というものが一貫して宏成ができないというような誠に矛盾した結果を招いております。
それから炭價の問題でございますが、炭價は、先程もお話がございましたごとく、從來は後決の炭價であ
つたために、これが生産を阻害した大きな原因であ
つたのであります。この赤字金融が十分ついていない。今日やつと前決め炭價にな
つたので、各
炭鑛は非常にこれに對しまして安心をし歡迎をしておるのでございますが、ただ從來の赤字
資金の始末がどうなるかという點は、まだ皆目判然といたしておりません。これも
はつきり結末をつける必要があるのではないかと存じます。それから、折角今度は先決めの新
公定價格が決めるのでございますが、各
炭鑛別、炭種別、
地方別の炭價がまだ今以て決
つておりません。
石炭全體の
價格というものが示されましたけれ
ども、
各地區の
價格が決
つておらない。一月にもな
つて決
つていないということは、非常に生産意欲を阻害しておるように存じます。こういうことは、政府は一刻も早く手を打
つて、早く決めてや
つて安心感を與え、
増産に邁進させなければならんのじやないかというふうに考えるのでございます。
それから
資金につきましては、更に新鑛開發に對しまする
資金は、これは北海道においては、たとえば三菱の芦別、三井の芦別、或いは幌内等は非常に有望な新鑛でありまして、こういうものに對しましては、十分に
割當を別箇に考慮をすべきように考えるのであります。
次は食糧問題でございますが、糧食につきましては、北海道は今日百日になんなんとする遲配があるのでございますが、
炭鑛從業員竝びにその家族に限
つては、遲配は
絶對にないのでありまして、大體九月末までの食糧は、今日
炭鑛關係は確保されております。併し九月以降につきましては、まだ見通しが全然つきませんので、これに對しまする不安を各
從業員は感じておるのでございまして、これも早く手を打ちまして、それ以後の食糧に對しまして、萬全の策を講ずる必要があるように存ぜられるのでございます。
主食はかように大變いいのでございますが、副食につきましては、たとえて申しますると魚介類とか或いは調味料の味噌、醤油、それから鹽等は、まだ十分に行
つていないように感じます。殊に北海道は、鹽は漬物の時期には相當量が要りますので、こういう時期を誤らないように、こういう物が
配給される必要があると存じます。それから酒につきましては、
炭鑛勞務者は非常に酒を喜んで
配給を受けておるのでありますが、
割當がありましても、これの現物化がなかなか容易ではない。これは各釀造所等に對しまして
石炭その他の
資材の
割當が別に行
つていない
ために、思うようにできないというような結果があるようでございまして、これは
一つ現物化するようにいたしたいものと考えるのでございます。尚味噌、醤油につきましては、北海道の道廳において特別の考慮を拂いまして、
炭鑛用としてこれを特配をいたしておるのでございますが、
炭鑛の協同組合の方におきまして、各
炭鑛に
資金がない
ために組合費が拂えない、その
ために、これは毎月三百五十
萬圓程の味噌、醤油に對する仕込費用が要るのでありますが、この金が十分に行かない
ために、折角のそういう特段の考慮を拂
つても
味噌醤油が
炭鑛に廻らない。これも
資金に絡み合いまして非常に殘念なる現状でございます。
次は
炭鑛住宅の問題でございますが、只今北海道は各
方面にこの
炭鑛住宅の計畫的建設が著手されておるのでございます。御承知のごとく、北海道は、もはや十月になりますと、寒い
關係上工事が出來ないのであります。それにも拘わらず、
炭鑛の住宅の計畫が中央において決定をいたしましたのが四月の中頃でございまして、これが北海道の復興院の出張所において道内の
割當をしましたのが五月の初め、これに對しまするところの所要の
資金、第一・
四半期に要しまする
資金が來たのが、もはや六月の半ば過ぎというような状態で、これも
資金計畫がうまく行かない
ために、
炭鑛住宅の建設もいろいろと困難を來しておるというような現状でございます。これは北海道は氣候の
關係上、是非第一
竝びに第二・
四半期において全部宏成させるように、他の
常磐、
九州は多でもできるのでございますから、北海道の方に先ず最初にそういう枠を廻して、實質的に成果を擧げるようにいたされたいものと思います。それから
炭鑛住宅が折角できましても、先程も申しましたごとく、これに附隨いたしまするところの學校とか、水道の
施設とか、病院だとか、或いは購買所とか、浴場、娯樂場、集會所、又私設
鐵道の驛というようなものが、みな
資金が別でございますので、一緒に並行して建設が進まないのであります。例えて申しまするというと、三井の芦別のごときは集團的に住宅を建てておりますが、學校ができない、水道
施設がない
ために、そこに無理に
從業員を入れることができないというような結果を招いております。こういう點は、なんとか政府において考慮すれば、直ちに改善ができるのではないかというふうに考えられたのであります。尚
炭鑛住宅に附隨いたしまする建物の補修、増築等につきましては、これが一々臨時建築物制限令に引かかりまして、その手續の
ために非常に無駄な時間を使う。こういう手續は料理屋とか、その他不急不用の建築物を建てる
ための制限令でありますので、
炭鑛關係は一刻を爭うのですから、こういうものを法的に改正する特別の處置が採らるべきであろうと考えるものであります。それから北海道の
炭鑛住宅建設に當りましては、やはり非常な急斜面を利用して建ててあるところが多いのでございまして、
從つて、これに對する建設費も他よりは餘計みなければ無理があると存じます。尚この
炭鑛住宅の建設に當りまして、用地の確保でございまするが、これが最近非常にむずかしくなりまして、いわゆる農地調整法によりまして、農地
委員會にかかります
關係上、
委員會ではなかなか承知しない、これは何としても法的に
解決の手段がないのでありまして、ただ行政的に道廳なり商工省が間に入
つて纒めるというようなことで、非常に長い日數がかかるのであります。こういうようなことは
一つ何か法制的の處置を、
炭鑛の用地買收については、講ずる必要があるのではないかというふうに考えられたのでございます。
次は勞働
關係でございますが、先ず給與の問題につきましては、只今のところ新物價體系が發表されまして、これに基きまするところの實質
賃金が果して得られるかどうかというところに、非常た不安と疑念を持
つておるように考えられます。政府はこの實質
賃金の約束を勵行するように一段の努力を要すべきではないかと考えられます。
それから現行の所得税法によりまして、六
萬圓以上の年收の者には綜合課税がかけられます。こういうことは
炭鑛の
勞務者は全然知らなか
つたのでありますが、この度そういうことが分りまして、非常に各
方面ともシヨツクを受けまして、馬鹿らしいから毎月五千圓
程度働いた方がよいというような者が各
方面に出て參
つております。これは何とか
一つ免税點の引上げ等の考慮を一應研究する餘地もないのではないかというふうに考えられます。甚しきは勤勞所得税も撤廢しろと言
つておりますが、これは當然國民が負いますところの義務でございまして、これまで云々をするのは、これは無理であろうかと存ぜられるのであります。
それから
炭鑛におきまして、從來
石炭を各家庭に現物給與をいたしております。最近税務署の方から現物給與に對しても課税をするという通諜が各
炭鑛に廻りましたので、これ又非常なセンセーシヨンを起しまして、勞務
從業員側は、これは大變だ、
石炭が今度は値上げにな
つてトン少なくも千二百圓以上になる、こういう冬においては食糧より大事な
石炭を、從來
炭鑛から支給を受けてお
つたのが、課税をされるということになると、我々としても考えなければならんということでいろいろな議論が出ておりました。これをこのまま放置をいたしますると、今度は盜炭——炭を盜み出すというような結果になるのではないかというふうに憂慮をされております。この點は札幌の税務署
關係のお方にもお話をいたしまして、十分善處して戴くようにお願いをして參
つた次第であります。大藏省の方にも一應札幌の方から紹介をされて、できるだけ善處をしようというふうなことに只今いたしておりまするようでございます。
次は
職場規律の問題でございますが、
職場規律に關しましては、
勞働組合の健全なる成長によりまして、最近は非常に自粛反省をされまして、よい結果のように私共は見受けまして非常に意を強ういたした次第でございます。ただ最近そういうふうに各組合がございまして不良な者、十分に働かないような者はこれを解雇をしておるのでございまするが、その解雇をされました者が
炭鑛住宅を占據をいたしましてなかなか出ない、
炭鑛住宅におりまするというと、ともかくも一般民の
配給は遲配がないということで、そこに頑張
つております。而もその人間は今度は
炭鑛住宅を相手に闇商人とな
つて闇をする、或いは賭博をする、こういう者は、善良なるところの
從業員を段々惡くしておるというような傾向がございます。この點は非常に遺憾に存ずる次第でございまするが、特に甚しき例は、三井の芦別におきましてこういうような者が三十世帶ほどございまして、段々とその住宅地帶の風紀を惡くする、これに對しては
勞働組合におきましても、
經營者側においても、度々
石炭廳長官が來たときも
陳情し、又先般は水谷商工大臣にも
陳情をしたのでありますが、道廳にも、商工局にも、又警察部にも言うが、一向埓があかん、強制的に立退きをさせる
方法がないということで以て、假にこれを何處かに家を作りまして、大きな立退料をや
つて立退かした場合には、それに味をしめた場合には大勢が眞似をするというようなヂレンマに陷
つておりまして、何とかこれを國の力で
解決して貰いたい、今日の警察力を以てしても何ともならんということは非常に遺憾だということを言われておりまして、これが
解決ができたならば、
職場規律も明朗にな
つて、恐らく二三割方の
増産ができるということを、
勞働組合長自身が申してお
つたような次第でございます。
それから暴力團の跳梁でございますが、これは北海道は
九州ほどまだひどくはないように考えますが、上歌志内の
炭鑛あたりでは、相當こういう暴力團がおりまして困
つておるようでございます。この根絶につきましては、
九州で執られた處置同様に、やはり強力な處置を講ずる必要があるように考えておる次第であります。
それから
勞務者に對しまする
炭鑛の指導員、いわゆる係員の統制力がないという點を認められるのであります。それは學校を出たての技術者等は、やはり戰爭中は十分な勉強もしておりません
ために、どうも勞務員に馬鹿にされる、これを十分指導して行くだけの技能もないというような點がありまするので、こういうものに對しましては、今後技能の再教育をいたして、立派な指導者を作
つて行く必要があるであらうと存ぜられるのであります。
次は
資材關係でございまするが、大體
資材につきましては、北海道においては、終戰後只今まで一番順調に行
つておるようでございます。いろいろな困難はございまするが、大體順調に行
つてるようでございます。ただ問題は、その
資金の面と
輸送の面に制約をされまして、それが實際化することができないという難點がございます。坑材、その他坑木にいたしましても、室蘭その他
各地區に相當帶貨があるという状態でございます。坑木については、大體各山とも一ケ月分位のものは持
つておりまするが、しかし適材適所の物がやはり乏しいので、所によると、そういう特別な坑木は最早四五日分しかないという所もあります。これはやはり
輸送の面において特段の改善が必要のように考えられます。それから坑木の値段も、從來マル公は無理があ
つたので十分出廻らなか
つたという點がございますが、これは近く改善されるというので、恐らく
圓滑に行くのではないかというふうに考えられるのでございます。
尚只今北海道で困
つておりますのはセメントでございまするが、北海道ではセメント工場が
一つだけございまして、このセメントの生産量の約五割というものが大體
炭鑛に
割當られておるのでございますが、最近現物化されておりますのは、それの約三割位しか現物化しておりません。このセメントはいろいろの新規の建設にも要りますが、北海道は先程申した如く、瓦斯爆發等もございますので、炭
坑内の通氣を良くする
ために、密閉
作業等も始終やらなければなりませんので、どうしてもこれは
絶對必要なものであるように考えられます。これらもセメントの
増産をいたしまして、
炭鑛の
増産に協力をすべきであらうと考えられます。
それから電力の問題でございまするが、只今北海道の井別の發電所は賠償に指定されておるので、近く撤去されると思います。これが撤去された曉は、相當電力が
不足して參りますので、各
炭鑛の自家發電をできるだけ活用しなければならんと存じます。ところが、自家發電の
設備が古くな
つておりまするので、これの補修復舊に對しましては相當な
資材が要る、これが又容易に
資材が廻
つて來ておりません。こういう特別な、こういう發電裝置に對しまする
資材を、支障なく迅速に北海道には廻す必営があるように考えられます。
その他炭車が相當
不足しておりますので、これに對する
資材、新車
竝びに補修に要するもの
竝びに薄板とか、ゴム製品、それからパイプ、ケーブル等これは相當にやはり困難を感じております。こういうものも迅速に廻してやりたいものと考えておるのであります。
次は
輸送の問題でございまするが、北海道におきましては、
輸送は陸上の
鐵道輸送が非常に大きな
隘路にな
つております。海上
關係は小樽の港灣
施設も
視察をしたのでありますが、只今のところでは十分ゆとりがございます。陸上の
鐵道輸送能力は只今所要のものは一月に百八十
萬トン要するのでありまするが、これに對して現在百二十乃至百三十
萬トンの能力しかないのであります。全線各驛に滯貨をしておりまする荷物は、約百四十
萬トンございます。この中木材が、これは殆ど
坑木關係でございまするが、百
萬トンからあるのでございまして、三年前に出した木材がまだ驛に積み重ねてあるというような所が各地に見受けられるのでありまして、この
石炭の
輸送に關しては、札幌
鐵道局は他の
物資を犠牲にいたしましても、優先的にこれを取扱
つておるのでありますが、この
輸送の必然的にできるところのアン・バランスが、これが却
つて綜合的に北海道におけるところの經濟上の破綻を來しまして、結局
石炭の
増産にも非常な支障を來しておるというような状態でございます。現に北海道札幌
鐵道局に保有しておりまするところの機關車は、七百あるのでありまするが、この七百輛のうち二百三十輛は修繕工場に入
つております。又貨車は九千輛ありまするが、九千輌のうち昨年の十一月には七百輛だけが修繕工場に入
つてお
つたのでありまするが、現在のところは實に二千五百輛が修繕工場に入
つております。而もこれは札幌の苗穗の工機部におきましては、非常に能率が惡くて、聞くところによりますると、その
從業員の殆ど六割位が職場を放棄しておるというような誠に殘念な状態でございまして、國營事業であるところの
鐵道の現状は
石炭の
増産に對しましてもつともつと革新をして貰
つて、協力をして貰わなければならんように痛切に感じたのであります。この状態は全國に比べまして、札幌
鐵道局が一番惡いようでございます。只今貸車が全國で十一萬輛あるそうですが、そのうち修繕をしておるのは約一萬輛だそうです。その一萬輛のうち二十五%が北海道のものだという、實に驚くべき
數字が出ております。これはでき得べくば、今後北海道の
増産がだんだん進行いたしますに連れまして、この
輸送で以
つて非常に行詰りが參ります。例へて申しますると、本年の末には
石炭公團の
調査によりますると、
貯炭は六十八
萬トン位になるのじやないか、
山元貯炭が六十八
萬トン位になるのじやないか、こういうことになりますと、折角
炭鑛で一生懸命に働きましても、生産意欲きいうものはどうしてもこれは落ちるのであります。これは
鐵道の運輸の刷新を是非ともしなければならんと考えます。これについては鑛工業
委員會でなく、運輸交通
委員會の方にも通知いたしまして、一應特に北海道の
鐵道の
鐵道輸送の點を專門的に檢討して貰う必要が私にはあるように思われるのであります。
それから技術の問題でございまするが、北海道の
炭鑛は、先ほどお話申しましたごとく、ガス、炭塵等の自然發火がございまして、非常に危險性が多いのであります。技術的に保安の確保ということを第一
條件にしなければならんのでございまするが、それがまだ十分に行
つておりません。
炭坑の中には炭塵の爆發を防止をいたしまする
ために岩粉、粉なんでありますが、岩粉を撒いております。これは大體
石炭一トンに對しまして、只今二キロ
程度を撒いておりまするが、專門家の技術者に言わせますると、どうしても六キロを撒かなければ危險でそうであります。この岩粉は取得がなかなか容易でなく、一本千五百
圓位するものがなかなか取れませんので、この岩粉工場を夕張、岩見澤、瀧川邊に是非作るべきでないかということが檢討されたのであります。
それから坑外の
施設はいろいろ技術的に改善されておりまするが、
坑内の切羽の延長は只今一萬三千メートルあるようでございまするがこれほ技術的に見まして一萬八千メートルに是非ともすべきであるだろうと存じます。尚進行速度は只今七十五センチであるようでございまするが、これを理想的にいたしまするならば、一メートル二十までには是非とも引上げる必要がある。尚坑道の總延長に對しまするところの切羽總延長の比率は、只今一・四パーセントでございまするが、これは是非とも三%を目標に取らなければならんと存ずるのであります。尚
坑内に使
つておりますところのワイヤーロープ、ベアリング、チエーン等が非常に最近は品質が落ちておりまして、この
ために事故が頻發をしております。從來十年も持つものが最近は一年や二年で以てもう故障が起きる、これは關連産業が本當に精神のこも
つた製品を造
つてない證據でありまして、
石炭の
増産を圖るとすれば、關連産業も是非とも立派な製品を造
つて、
石炭の産業に送るべきであろうと考えます。
それから
坑内の片磐運搬の裝置が北海道は概して非常に非能率的でございますので、これらは是非とも機械化をする必要がある。これも
資材その他
資金の制約を受けてなかなかうまく行かないようでございますが、良くする必要があると思います。
それから炭
坑内における人道でございますが、これが北海道は概してよく
設備ができていない。戰爭中荒れたままにな
つております。殊に人車の
設備等が餘り見受けられません。これは是非とも人車を作りまして、その
設備を増して、能率を高めるようにすべきであると存じます。現在三井砂川のごときは、約二十度位の傾斜を三キロ以上も歩かなければ
現場に到達しないというような有樣で、往復に非常な時間を費さなければならんというような現状に置かれております。
次は福利厚生
施設の問題でありますが、これは醫療
關係が、北海道はどうも山間僻地に
炭鑛がございますので、うまく行
つておりません。醫者の数がどうも足りないように存じます。例えて申しますと、三菱美唄のごときは、一人の醫者で毎日六十五人から八十二人の人を診ているという状態でありまして、全國平均で申しますと、一人の醫者で二十七八名だそうであります。こういうような有樣で、病院のごときは廊下に患者を收容しているような状態であります。
それから
作業衣、
軍手、地下足袋、こういうような衣料品は、北海道は氣候の
關係上冬季が長いのと、
坑内も
常磐地方と違
つて凉しいのでありまして、はだかで以て仕事ができない。こうい
つた點で、こうい
つた衣料品を或る
程度潤澤に供給しなければならんと思います。この衣料品についても、最近當てがわれるところの
作業衣のごときは、實にひどい品物が渡
つて參りまして、その寸法も切り詰め、又品質も惡くな
つて、折角もら
つたけれ
ども、どうも窮屈で着られない、又直ぐ裂ける、足袋なんか直ぐ裂けるというようなことを到る所で耳にいたしました、これも坑材の製品を同じように。やはり良心的な氣持で繊維
關係でも是非造
つて戴きたいと念願するのであります。
それから住宅の中の疊とか、その他の
資材でありますが、北海道はやはり寒い時期が長いので、屋内で生活する期間が長期に亙りますので、是非この疊の補修材料とか、その他に特段の注意を拂う必要があります。消費用のDDT等も或る
程度多量に供給する必要があると思います。
それからやはり病人も相當おりますのですが、只今
炭鑛の療養所というものが殆ど見受けられない。北海道には
温泉地帶もございますので、
温泉地方にやはり療養所を設けるべきだと思います。
更にこれは山の中でございますので、書籍雜誌等もなかなか手に入らない、都會まで行くのは大變である、この
從業員、勞務省の向上心を滿足させます上において、こうい
つたような雜誌、書籍等を或る
程度特別に
配給してもろうような御
配慮が必要ではないかと考えられたのであります。
その他、北海道で最近問題にな
つておりますのは、家庭用の炭であります。これは大體本年は百七十五
萬トン位を
配給する
豫定でありますが、最近その筋の話等もございまして、
石炭の
増産ができなければ、家庭用の炭は
配給しないというような噂が傳りまして、各
方面に非常な問題を起しております。冬は食糧よりも燃料の方が北海道では大切でありまして、むしろ食はなくても死なないが、燃料がなくては凍えてしまうという現状でありますので、これは何とかしなければ、一般道民の
石炭増産に協力する態度を鈍らせるというようなことになりはせんかと考えております。殊に只今まではこの家庭用の炭は大體上半期におきまして半分位は
配給してお
つたのでありますが、本年は漸く七・九%しかまだ
配給をしておりません。そういたしますると、寒くな
つて配給をいたしますと、農作物の出廻期になり、又
石炭の
増産されたものを運ぶとか、いろいろな面に
鐵道輸送がますます
隘路をきたすようになり、非常に憂慮されているのであります。
それから行政の面におきましては、やはり行政の一元化ということが各
方面に要望されておりまして、大藏省、厚生省、復興院、又
石炭廳といろいろとまちまちにな
つている困る。これらは是非簡素なものにして貰いたいということでありました。殊に最近勞働省ができますと、勞働基準局が
各地區にできまして、勤勞行政と保安行政がそちらに移りますと、
石炭の
増産の推進責任機關としての
石炭廳が、勤勞行政を手放して果してうまくいくかということに、非常に懸念をも
つているような次第であります。
それからもう
一つは、これは全國的に申されるのでありますが、大體主要なる
炭鑛はすべて財閥企業の傘下にな
つております
關係上、制限會社としてのいろいろな制約を受けまして、
資金の面やその他計畫の面におきまして、一々許可に日數を要しまして、思うようにいかない、これがやはり非常に
隘路とな
つておりますので、こういう點は最近殆どよくなるようでありますが、政府當局が司令部の方にも十分現状を話して折衝いたしまして、こうい
つた手續が簡素に適時に迅速に執られるようにされたいものであると存じたのであります。
最後に
國管の問題でありますが、これは各地の意向を大體綜合いたしますると、
經營者側は、これは今日の政府案と稱せらるる、新聞その他等が見えておりますものに對しましては反對を唱えております。
勞働者側は、大體産別系統の者は、これはむしろ國營まで行くべしという積極的な意思表示をいたしております。その他の
勞働組合等はまだ
國管の内容というものが十分に示されていないので、研究もできていないので、判然と態度が決められないように見受けられたのであります。ただ各地の
職員組合におきましては、大體今の
國管政府案というものではどうも非常に心配だ、少くも
國管をするならば、經營の民主化を阻害しないこと、それから
官僚統制の弊に陷らぬこと、尚
勞働者の自主的勤勞意欲の昂揚を招來するような機構がほしいというようなことを申しております。
私
ども大體以上のように觀て廻
つたのでありますが、尚政府案に對しましては、各
方面において、これが實際に三千
萬トンの
増産に直接繋がりがあるかどうか、どうも直接繋がりがなさそうに見えるというようなことが、各
方面で聽かれたのでありまして、少くも政府案を作るからには、
地方石炭復興
會議とか、政府が多大の費用を拂いまして、
石炭關係の專門家を集めておりますところの
石炭増産協力會等に正式に諮問をして、もつと愼重に案を練るべきではなか
つたであろうかという叫びがございました。
尚、
石炭の
増産につきましては、
國管案を考えますると共に、私
どもはただ
國管案を論議して、それに浮身をやつしておる間に、刻々に
石炭の
増産は進んで行くのでありますから、打つべき焦眉の急の問題は、
國管案とは一應切り離しまして、今どんどんその手は打ちまして、毎日の
石炭の
増産に支障を來さないように努力をじなければならんということを考へるのであります。それと同時に消費者の面におきまして、例えば
鐵道の消費量等も最近は非常に蒿んでおりますが、從來は投炭競爭等を催うしておりましたのが、最近は炭質が惡いという名目の下に、そういう技術的の面が考慮されていないのであります。こうい
つた消費の面におきましても
鐵道に限らず、一般工場、會社等におきましても、この
石炭の消費の節約という點につきましても、もつと強力なる施策が講せられなければならんではないかというように考えられた次第であります。
甚だ簡單ですが、以上を以て御
報告といたす次第でございます。