○
政府委員(
米澤常道君)
只今草葉委員の御
質問にお答え申し上げます。第一にこの
兒童福祉法の
制定に対する
態度について
お尋ねがあ
つたのでありますが、勿論我々といたしましても、この
戰後の大きな
兒童対策という
考え方から出発いたしておることは申すまでもないのであります。ただ今日の
実情或いはその他の
関係からいたしまして俄かに全部を満足する
程度のものにできない点は勿論一、二あるのでありますけれども、大きなそういう根本的な
態度に立
つて、先を見ながらできるだけの現状に即して
規定をいたしたつもりであるのであります。それにつきまして、いろいろ御
意見があ
つたのでありますが、
先づ第一に
司法保護と
少年教護との
関係について
お尋ねであります。これは誠にいろいろ御
承知の通り問題のある点であるのでございますが、私はつまり
司法保護と
少年教護との間にはつきりとした
一つの線を引くとか、或いは又明確にこれをはつきり区別するということが果してよいのかどうかということもこれは十分檢討すべき問題であろうかと
考えるのであります。勿論この問題につきますいろいろな実際の從事する人々からは、いろいろその
取扱上の問題なり、その他について
十分話も我々聞いております。又そのことの非常に困難であることにつきまして、
中央として足りない点もあるとは思うのでありますけれども、これをはつきりと区別して白と黒とに分けてしまうことが果してできるかどうか、又それがよいのかどうかということはこれは十分檢討すべき問題であると私は
考えておるのであります。少くともこの
福祉法におきまして合理的な形におきましては、勿論從前の
教護法或いは
少年法等の各項において、
年齢がここに十八歳に延びただけでありまして、その線を引くか否かということにつきましては、はつきりした解釈を與えておらんのでありますけれども、これはやはりこういう
二つの
考え方が私はあると信じております。
犯罪性の極めて顯著なる
兒童に対する扱いと、それからそうではないそれよりやや低い、まあいわゆる不良というような
程度の子供に対する國の
態度、こういうものにはやはり扱い方がおのずから異
つて來るのでありまして、併しその粉更するところは極めてデリケートな問題でありますので、実際扱う末端、第一線においては非常な苦労があると思うのであります、併しこれらの点につきましては、例えば今後
兒童相談所というようなものを活用しまして、又
兒童委員、有給の
兒童委員、或いはいろいろの
方面のそういうソシアル・ワークというようなものの活用によりまして、できるだけ円滑に進んで行くことを期待しておるのであります。
以上申し上げましたように、まあ
少年法との
関係において別に新らしいはつきりした線を引いてはありませんけれども、これはまあ今後この運用によ
つていろいろな
相談所その他の
活動等によりまして、緊密な連絡をと
つて行きますなれば、十分にお互いにそれぞれの
立場から効果を期待し得るものと私は信じておるのであります。
次に施策について何か
考えがあるかという
お話でありましたが、これは、例へばクリツペルの
施設でありますとか、
精神薄弱兒の
施設でありますとか或いは又女子の
教護院とい
つたような
相当特殊なもの、そうして極めて入所する
兒童が全國的に亘つでおるというようなもの等につきましては、今日の
実情からいたしまして、
政府の方で直接に
運営する方がいいのではないか又そうしなくては
地方の
財政その他においては
相当困難と思われますので、そうい
つた特殊な
施設につきましては
國立のものをできるだけ欲しい、こういうふうに
考えておるのでありまして、これは今後
財政当局とも十分折衝いたしまして、そういうふうな方向へ話を進めたいと
考えております。
地方のいろいろな
施設につきましては、これはそれぞれ
地方の
財政の
関係もありますが、全体的に見まして、
施設の数全体がそれ程不足しておるとも
考えていないのでありまして、今後
施設の
内容の拡充或いは整理とか、そうい
つた問題がむしろ大きな問題ではないか、これはまあ
施設全体に対する
一つの
方針としてそういうふうな
考えを持
つておるのであります。
次に
保育所の
お話でありますか、これも先程の
お話のように、根本的な
解決点を見出していないのではないかというふうな御
意見のようでありますが、
保育所につきましてむしろ法制の上で取り上げたのはこれが御
承知の通り初めてであります。このことによ
つて保育所というものをできるだけ整備して強化して行きたいと
考えておるのでありますが現在の段階におきまして私はやはり
幼稚園というものもそれだけの存在の
理由が十分あると見ております。又
保育所につきましては、特に今日の
戰後のいろいろな
状態、或いは働く婦人の解放と申しますか、そういうふうな点から
考えましても、
保育所も亦これは非常に大きな
理由を特に今日において深められておると信ずるのであります。でありますから、現在の実状において、私はここに
保育所を法制的な面にまで取り上げまして、
一つの今後の
両者の
解決点に向うものと
考えるのでありまして、これをすぐ
両者を一元化するというふうなことは、今日の
状態では必ずしも急いでそこまで決定する必要はないのではないかというふうに
考えておるのであります。それからこの
福祉法全體が他の
法律に先行するかというような御
意見でありましたが、これは
兒童の
福祉という点からは、この
福祉法は
綜合法律といたしましてこの第一條、第二條、第三
條等にも掲げておりますように、
兒童の
福祉という点からは、この
法律が最も
兒童に関する根本的な立法であるというふうに
考えておるのでありまして、その他にいろいろな
兒童に関する
法令がありましても、それは
福祉に関する限りはこの
法律に対しては
特別法の形を取るものと
考えておるのであります。
次にこの
法律の
施行によ
つて、
官公営の
社会事業と
私設の
社会事業との
関係がどうであるか、むしろ
私設が衰えて來るのではないかという御
意見であります。決してこの
法律におきましては
官公営を第一にする、或いは
私設を第二義にするというふうな
考え方は全然ありません。官営も
私営も共に大きな
社会事業という理想に向
つて、それぞれの
立場においてそれぞれの特色を発揮して今後拡充されて行くことを期待して止まないのでありますが、
経費その他の点におきまして、
私設の
事業におきましては、今日のこのインフレの時代におきましては非常に困難な点があると信ずるのであります。又その点につきましては、非常に我々としても苦慮いたしておるのでありますが、決して
法律の上において
官公営と
私営とどちらを優先するというふうなことは全然
考えておらないのであります。
官公営、
私営相共に進んで行くように期待しておる次第であります。
それからこの
福祉委員会等の
実情につきまして御
意見がありまして、今日のこの
法案の
規定では、恐らく今までと同じではないかというふうな御
意見であ
つたのであります。これは單に
兒童福祉委員会のみならず、今後のいろいろな
委員会について当嵌まる
意見だと私は思うのでありますが、今後の
委員会というものは、できるだけ
行政の
民主化という点からいたしましても十分に活用されて行かなくてはなりませんので、この
法案の立案に当りましてもできるだけ
委員会に、そういうふうな
意味の今までのような
余り名前だけと申しては語弊があるかも知れませんが、そうい
つたことではなしに、
委員会自体に有権的な何かを是非や
つて頂きたいというふうに
考えまして、例えば
最低基準の作成でありますとか、或いは又
福祉施設に対する
事業の停止その他につきましても
委員会の
意見を聞くと、こういうふうにできるだけ
委員会にも
法律の上からも有権的なものにしたいというふうな氣持で作
つておるのでありまして、これは今後の
委員会のそれぞれの
運営に是非期待したいと
考えておるのであります。
次に
民生委員と
兒童委員の
関係について
お話かあ
つたのでありますが、これは非常にむづかしい問題であるのでありまして、
民生委員がそのまま
兒童委員に果して適任かどうかという御
意見は、御尤もだと
考えるのであります。併しいろいろこの
社会事業方面の
委員として
考えまして、或いは
兒童委員、或いは
民生委員、いろいろなそうい
つた委員ができること
自体につきましても、これは十分研究しなくちやならん問題でありますし、又
兒童委員は、勿論この
兒童問題についてのまあ
適任者と申しますものの、やはり
家庭を離れての
兒童の問題ということは少しどうかと思われる点もありまするので、どうしてもやはり
家庭という問題と
兒童という問題を離して
考えることはできないと
考えるのであります。こういうような
意味におきまして、すでに十三万という
民生委員もある今日、いろいろ
委員を更に殖やすというようなことよりも、この
民生委員をこういうふうな
兒童委員として、その
方面で更に働いて頂きたいというつもりで、こういうふうな措置を採ることにいたしたのでありまするが、今後の
民生委員の改造その他の際におきまして、
民生委員の中に
兒童委員としてより適当な人ができるだけ沢山出て來られるようにして頂きたいということは、これは厚生省といたしましても十分
考えておりまするので、できるだけそういうふうな方向に持
つて行きたいと
考えておるのであります。
それから
兒童相談所と
保健所との
関係についてのお尋でありますが、これは
兒童相談所は勿論健康の面が非常に大きな仕事であると
考えます。できれば
兒童相談所を
保健所その他におきましても共に附設いたしまして、
保健所との連絡を極めて緊密なものにいたしたいと
考えておるのであります。併し
兒童相談所自体といたしましては、やはり
兒童相談所としての
兒童の
福祉に関する相談、或いは鑑別というような
兒童相談所自体の本來の使命というものはやはりあるのでありまして、一應
兒童相談所という制度を採
つたのでありますが、
保健所との連絡につきましては、できるだけ緊密に
両者が相助けあ
つて運営されていきますように、是非いたして行きたいと
考えておるのであります。
それから
乳兒の問題につきましてミルクの
配給の
お話があ
つたのでありますが、これは誠に御尤もな
お尋ねであります。今日の
乳兒の問題で
牛乳の問題がまあ一番大事な問題であるのでありますが、
法律といたしましては、ここにその
牛乳その他の物資のことを取り上げるということは、この
法律の全体の組立その他からもいたしましてこれを避けたのでありまして、
牛乳の
配給その他につきましては、これは農林省その他と十分連絡をいたしまして、できるだけ今後の措置を図
つて行きたいと
考えておるのであります。例えば御
承知のように今日のあの育兒食の
配給等につきましても、そろそろ製造に着手いたしておりますし、もうすぐ
配給ができるかと
考えておるのでありますが、これは農林省において十分資材その他の心配をなさ
つて、でき上りつつあるのでありまして、ミルクその他の
乳兒の栄養の問題につきましては、厚生省としましても、お母さんなり子供の
立場からできるだけの協力をして行きたいと
考えておるのであります。四十條の
精神薄弱兒の
施設でありますが、これに「獨立自活に必要な知識技能」という字句についての
お尋ねであ
つたのでありますけれども、これはなんと申しますか、この言葉は惡いのでありますが、まあ馬鹿は馬鹿なりと申しますか、こういうふうな
意味の獨立自活ということであるのでありまして、その
意味で御了解を願いたいと
考えるのであります。
母子寮について
お話しがあ
つたのであります。最初立案当初におきまして母子寮のことも十分臣究いたしてお
つたのでありますけれども、今日の実状をいろいろ研究いたしました結果、母子寮の方は母の生活という点が、今日の母子寮の
実情から最も大きな点にな
つておりますので、これは
生活保護法の保護
施設として置いた方がより今日の実状によく合うのではないかということで、これは取り上げなか
つたような次第であります。以上簡單でありますが御了承願いたいと思います。