○
政府委員(
米澤常道君) それではこの法案の大体の輪廓と申しますか、構想につきまして簡單に
條文を
逐つて御説明を申上げたいと思います。
御覧の通り第一章から第五章まで、第一章が総則、第二章が
福祉の措置及び保障、第三章が
兒童福祉施設、第四章が費用、第五章が雑則ということにな
つております。
第一章の総則でありますが、節に入ります前に、第
一條から第二條、第三條、この三
條文におきまして、
兒童福祉の原理というようなものを書いてあるのであります。これは前文ということも初めいろいろ考えてお
つたのでありますが、その後いろいろな他の法令との形式上の関係もありまして、第一章の節に入る前にこの三條を掲げたのであります。
第一節は定義でありますが、第四條におきまして先ず
兒童についての定義を掲げております。第五條は
妊産婦、第六條では
保護者、第七條では
兒童福祉施設、これらにつきまして、それぞれ定義を書いておるのでございます。第二節は
兒童福祉委員会に関する
規定であります。第三節は
兒童委員に関する
規定、第四節が
兒童相談所に関する
規定、この四節で第一章総則ということに相成
つておりますが、建前といたしまして
兒童保護に関する機構と申しますか、要
保護兒童を早期に発見いたしまして、それぞれの処置をするそのための機関というものが現在の行政としては殆どありませんので、これが今日の
兒童保護行政の大きな欠陥であらうと考えております。そのために或いは
兒童福祉委員会、或いは
兒童委員、更に
兒童相談所、こういう機構を整備いたしまして、要
保護兒童を早期に発見いたしまして、これにそれぞれ適應した処置を講ずるという考であります。
第二節の
兒童福祉委員会はこれは中央に
中央兒童福祉委員会、各都道府縣にそれぞれ
地方兒童福祉委員会が設置されることにな
つております。この
委員にはそれぞれの
学識経驗の方々、或いは実際に事業をおやりにな
つておいでになる方、その他
兒童問題に関する権威の方々の御参集を願いまして、
中央地方相共に
兒童福祉のための基本的ないろいろなことについて
調査審議をお願いしたいと考えるのであります。それから
委員会自体といたしましても後の
條文に出て参りますが、
最低基準の設定でありますとか、或いは
兒童福祉施設に対する
強制設置命令でありますとか、そういう場合には
委員会の意見を聽くという、
委員会自体の権限も後の
條文にいろいろ出て参ります。
第三節の
兒童委員でありますが、これは第十
一條の二項に書いてありますように「
兒童委員は、
兒童及び妊産婦の
保護、保健その他
福祉に関する事項について、相談に應じ、必要な注意を與える等これらの者の
福祉増進に努める。」ということに相成
つております。この
兒童委員は十二
條十三條でお分りになると思いますが、有給の
兒童委員と
名誉職の
兒童委員と二本建に相成
つております。有給の
兒童委員は地方のそれぞれの吏員でありまして、十
一條の末項にありますように、
事務吏員或いは
技術吏員を以てこれに充てるということに相成
つております。吏員ではありますけれども、從前の考えの役所の机の上で仕事をするというふうな考え方を全然廃めまして、現地に出まして実際に
兒童或いは
妊産婦の
福祉に関しまして仕事をする、いわゆるケース・ウワーカーと申しますか、本当の街に出て仕事をして貰うということを狙いといたしておりますので、これは
兒童吏員という名称でありながら、而も今までの制度とは非常に
変つた新らしい形であるのであります。この有給の
兒童吏員と
名誉職の
兒童吏員とが、緊密に連絡されまして、知事の監督の下に
兒童の
福祉の増進のために、第一線においてできるだけの仕事をして頂くというのが
兒童吏員の狙いであります。
第四節の
兒童相談所でありますが、今までの
兒童の
保護機関といたしまして、いろいろな收容の
施設はそれぞれ相当の歴史もありまして、できてはおりますけれども、その
施設に
子供を容れますレールと申しますか、こういつたものが不完全でありまして、必ずしも適当な
子供が收容されていないという欠点があるのであります。それで各都道府縣に
兒童相談所を作りまして、そこにはお医者さん或いは
心理学の專門家その他
社会事業の
経驗者というような專任の職員を置きまして、
兒童の
福祉施設について相談に
應ずる。更に又必要があります場合には、
兒童の鑑別をいたしまして、それぞれの処置をする。この
相談所を全國に作りまして
兒童保護行政の中樞機関というふうな役割を果させたいと考えておるのであります。
以上この第一章総則におきましては
福祉委員会、
兒童吏員、
兒童相談所、こういうように謂わば行政上の
兒童保護機関というようなものにつきまして第一章に
規定をいたしたのであります。
第二章は
福祉の措置及び保障ということに相成
つております。これは第十九
條妊産婦、
乳兒或いは幼兒の
保健指導の問題であります。二十條は
妊産婦届出の
規定であります。二十
一條はその届出に基きまして、
母子手帳を交付する。現在や
つております
妊産婦手帳これは
厚生省令でや
つておるのでありまするが、この
妊産婦手帳を
子供にまで延ばしまして、
母子手帳ということにいたしまして、二十
一條の
法律に基いたものにするという積りであります以上十九條、二十條、二十
一條は
乳兒妊産婦の保健の面を採り上げた
規定であるのであります。二十二條は助産の
規定でありまして、二十三條は
保育所に関する
規定であります。助産及び
保育所に関しましては、これは
当該市町村長が最も実情をよく把握して
おいでになりますので、或いは
助産施設に入れる或いは
保育所に入れるというような処置は、
市町村長にお願いするというために二十二條、二十三條をここに
規定いたしたのであります。二十四條二十五條、二十六條、この
規定はいわゆる
兒童相談所に関係する
規定でありますが、二十四條におきまして「
保護者のない
兒童又は
保護者に監護させることが不適当であると認める
兒童を発見した者は、これを
兒童相談所又はその職員に通告しなければならない。」要
保護者を発見いたしました者は、もちろん自分の子のみならず他人のお子さんでありましても、國民全部がそれを
兒童相談所に通告するという制度を採りまして、
兒童の問題を公共的に、社会的に採り上げたわけであります。勿論通告しないとい
つてそれに対する罰則といつたようなものは考えておりませんけれども、國民全体が不適当な
子供を認めた場合は
兒童相談所その他に通告する國民の義務を
規定いたしたのであります。二十五條はその通告を受けました
兒童相談所がその
子供をそれぞれ措置をするという
規定であります。二十六條は
兒童相談所がそれぞれ
子供を鑑別いたしまして、いろいろな結果を知事に報告することにな
つております。その結果に基きまして知事がそれぞれ
子供に対して正式な処置をすることになるのであります。第一号が「
兒童又はその
保護者に訓戒を加え、又は
誓約書を提出させること。」第二号が「
兒童又はその
保護者を
兒童委員に指導させること。」三が「
兒童を里親(
保護者のない
兒童又は
保護者を監護させることが不適当であると認められる
兒童を養育することを希望する者であ
つて、都道府
縣知事が、適当と認める者をいう。以下同じ。)に委託し、又は
乳兒院、
養護施設、
精神薄弱兒施設、
療育施設若しくは
教護院に入所させること。」これがいわゆる本法にい
つております
兒童福祉施設でありますが、二十四條、二十五條、二十六條によりまして、こういう
施設に入れますいろいろな
兒童に対する通報が
兒童相談所に入
つてくる。それによ
つて兒童相談所がその
兒童をよく観まして、適当な科学的な鑑別をし、その結果に基いて知事がこれをいろいろな
保護施設に收容いたしましたり、又その必要のない者は
兒童委員に指導させる、かような措置をする
規定であります。二十七條はこれも同じ措置ではありますが、特別の場合でありまして、
兒童が非常に虐待をされている。そのためにその
保護者が
刑罰法令に触れるというような場合には知事が
保護者から強制的にその
兒童を引離すことができるという
規定であります。これは
現行法の
少年虐待防止法にある
規定でございます。二十八條は二十七條に関連いたしまして、
当該官吏が
兒童のところに行きましていろいろ調査をするための
規定であります。二十九條は里親に関する
規定でありまして、
里親制度というものをこの
法律におきまして今後できるだけ合理的に科学的なものにいたしまして開拓していきたいと考えておるのでありますが、その
兒童についていろいろ里親から報告させる
規定であります。三十條は、大体十八歳までというのが本法の建前でありますけれども、特に必要があります場合におきましては、或いは
精神薄弱兒施設、
療育施設、又は
教護院等におきましては、二十歳に達するまでこれを置くことができるという
規定であります。三十
一條は都道府
縣知事の権限を
兒童相談所長に委任することができる
規定であります。三十二條は一時
保護の
規定でありまして、
兒童相談所において
子供を暫く預
つてこれを鑑別するというような場合、その他必要のある場合にはやはり暫く
兒童相談所において一時
保護する必要がありますので、それに関する
規定であります。三十三條は御覧のような、
不具奇形の
兒童を公衆の観覧に供した
行爲でありますとか、
兒童に
こじきをさせ又は
兒童を利用し
てこじきをする
行爲その他ここに列挙してありますが、これらはどちらかと申しますと、刑法の
規定とその
法律的な精神としましては殆ど同じでありますが、ただ刑法におきましてはあまりこういう点にまで
規定することが困難でありますので、ここに
規定いたしたわけでありますが、これらの
兒童虐待の
行爲を禁止するための
規定でありまして、つまり
兒童の
福祉と申しますよりも、
福祉のための保障というような関係の
規定であると考えるのであります。
以上が大体、第二章の説明でありますが、三十三條のような
規定もありますので、第二章の名前を「
福祉の措置及び保障」というように付けたのであります。この第二章はつまり
兒童福祉のためにいろいろ
施設に收容してやる措置と、
施設に收容しないでそれぞれ
行政機関、その他においてやる
福祉の措置とがあるわけでありまして、
收容施設によらない
福祉の措置をこの第二章に書いたのであります。
第三章は
兒童福祉施設ということにな
つております。これも勿論、
福祉の措置の内容でありますけれども、いわゆる
福祉施設に関するものを全部こちらに纒めたのであります。第三十四條においては「國及び都道府縣は、命令の定めるところにより、
兒童福祉施設を設置しなければならない。」第二項においては、
市町村その他の者が
行政聽の認可を得て、
兒童福祉施設を設置することができる。明らかに
認可主義を採ることにいたしたのであります。第三項においては、必要がある場合には
地方兒童福祉委員会の意見を聽いて知事が
市町村に対して
兒童福祉施設の設置を命ずることができることにな
つております。三十五條以下はそれぞれの
施設の定義と申しますか、機能について
規定いたしたのであります。三十五條は
助産施設でありまして、本法に申しまする
助産施設は保健上必要があるにもかかわらず、経済的な理由によ
つて、そういう
施設に入院して助産を受けることができない
妊産婦を収容してお産をさせる、こういう
規定であります。三十六條は
乳兒院の
規定でありますが、必要がある場合には、更に二歳まで
乳兒院に継続しておくことができるということにな
つております。三十七條は
保育所に関する
規定であります。
保育所とは本法においてはいわゆる一般の
子供を対象とする
施設でありまして、相当大きな役割を本法においてなしておるものと考えております。三十八條は
兒童厚生施設でありまして或いは
兒童遊園、
兒童館等子供のための健全な遊び場と申しますか、そういうものを
規定いたしておるのであります。三十九條は
養護施設でありましてこれは今までの一般的な
育兒施設と申しますか、孤兒とか、
保護者のない
兒童とか、虐待されている
兒童とか、その他環境上養護を要する
兒童、こういう者を入れる
育兒施設であります。四十條は
精神薄弱兒の
施設でありまして智能の低い
兒童を特に収容いたしまして、
獨立自活に必要な
知識技能を與えることを目的とする
施設としようとするのであります。四十
一條は
療育施設でありまして、
虚弱兒童の
収容所、或いは
身体機能の不自由な
兒童……クリツペルと申しますか、こういう
兒童の
収容施設であります。四十二條は現在の
教護院に関する
規定であります。
以上がこの
法律に申しますいわゆる
兒童福祉施設なるものにつきまして、それぞれ
助産施設から
教護院に関するまでその
目的機能というものを鮮明いたしたのであります。
四十三條は、「
厚生大臣は、
中央兒童福祉委員会の意見を聞き、
兒童福祉施設の設備及び運営について、
最低基準を定めなければならない。」これも本法におきまして一つの大きな狙いであるのでありますけれども、
兒童福祉施設が
認可制度を採りますと同時に、この
兒童福祉施設にその設備及び運営につきまして最低の基準を決めまして、是非この基準を護りたい。勿論この基準の設定につきましては、
兒童福祉委員会の意見、その他
専門家の御調査によりまして十分な調査をし、又今日の日本の実情その他も十分勘案いたしまして、基準が設定されることと考えております。四十四條はその基準の監督についての
規定であります。四十五條は親権に関する
規定であります。四十六條は教育との関係の
規定でありまして
養護施設、
精神薄弱兒施設及び
療育施設に入所中の
兒童のうち、
義務教育の年齢に相当するものにつきましては、これは
学校教育法の定めるところによるということを
規定いたしておるのであります。四十七條は最後の締括りといたしまして、「この
法律案で定めるものの外、
兒童福祉施設の職員その他
兒童福祉施設に関し必要な事項は、命令でこれを定める。」と、以上極く簡單でありますが、第三章は
つまり施設に関する
規定、各
施設につきまして目的、機能を明らかにし、更にその
施設の設置につきまして、或いは
認可制度を採るとか或いは
最低基準を設定するこういうふうな
規定を
作つたのであります。この第三章の
兒童福祉施設及び第二章の
福祉の措置及び保障、第二章及び第三章によ
つて、或いは
施設によ
つて又その他の
行政機関、その他によ
つて兒童の
福祉を増進するという建前に相成
つております。第四章は、費用の
規定であります。四十八條におきましては、都道府縣の負担すべき費用を全部挙げております。ここにあります費用は、第三章までにそれぞれ出て來る費用でありますが、これらの費用の
負担部分といたしまして、都道府縣の負担とするということを書いております。四十九條は
市町村の負担する費用について
規定いたしておるのであります。五十條と五十
一條は、四十八條及び四十九條によ
つて都道府縣、
市町村の負担する費用につきまして、國庫がいくらか助成をするかということを書いております。それぞれ一分の一の補助をするものもありますし、又は五十
一條の十分の八の補助をするものもあります。これらはそれぞれ各号によ
つて違いますので、五十條と五十
一條とに分けまして
規定をいたしたのであります。五十二條は都道府縣が
市町村に更に又補助するというための
規定であります。五十三條も同様でございます。五十四條はこの
法律といたしましては必ずしも
貧困要件のみを挙げておりませんで、勿論本人或いは扶養の
義務者において資力のある方もあるのであります。從いましてそういう場合におきまして本人から実費を徴収するための
規定でございます。これが大体第四章の
費用負担区分に関する
規定であるのであります。第五章は雜則といたしまして、第五十五條の免税に関する
規定であります。或いは五十六條の認可の取消しに関する
規定、或いは五十七條の訴願に関する
規定、或いは五十八條の罰則に関する
規定、これは三十三條のいろいろな
虐待防止に関する行為をした者に対する罰則の
規定であります。五十九條は
秘密漏洩に関する
規定でありまして、
兒童の補導に関する仕事に從事する者において秘密を知得する場合がありますので、これに対する罰則であります。六十條は、調査に参ります
当該吏員の職務の執行を容易ならし
むるための規定であります。以上が雜則に
規定いたしたのでありますがあとの六十
一條から六十九條までは附則でございますが、六十
一條にありますように、「この
法律施行の期日は、各
規定につき、政令でこれを定める。」これは、この
法律は先程申し上げましたように、或いは
最低基準の設定とかいろいろな今後に残された問題がありますので、全面的に直ちに全部一時に施行するということはできない建前に相成
つておりますので、
條文の中に一部を直ぐ施行できないものがありますためにこういう
規定をいたしたのであります。六十二條は
兒童虐待防止法或いは
少年教護法の廃止に関する
規定でありまして、六十三條は又それに関連いたしましての附則に関する
規定であります。六十四條も
少年教護法に関係します附則の
規定であります。六十五條も
少年教護法に関係します教育に関する附則の
規定であります。六十六條は
生活保護法との関係を
規定いたしております。六十七條は現在ありますいろいろな
兒童関係の
施設を、この
法律による
兒童福祉施設とみなすための
経過規定であります。六十八條は東京都の特別区に関する特別の
規定であります。六十九條は
義務教育の過渡的な現在の関係もありますので、十四才以上の
兒童であ
つて義務教育を終えた者がありますので、これに関する
特別経過規定をいたしたのであります。以上極く概略を御説明申し上げたのでありますけれども、第一章総則におきまして
兒童福祉委員会、或いは
兒童委員、
兒童相談所、こういつたような
兒童保護に関する機関と申しますか、行政的な機構と申しますか、そういうものについて
規定をいたし、第二章におきましては
福祉の措置といたしまして
收容施設によらないものについての
福祉の
相談方法を書いたのであります。第三章は
收容施設について
規定いたしたのであります。第四章は負担の関係でありまして、第五章はその他の雑則ということに相成
つております。極めて簡單でありますけれども、一應御説明申し上げます。