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國務大臣(
鈴木義男君) 御
質問の點は誠に大切な御
質問でありまして、詳細お答えいたしたいのでありまするが、
司法委員會の方ですでに詳細お答をいたしたのでありますから、ここでは極く縮約して申上げて置きたいと思いまするが、第一の
死刑廢止につきましては、世界的にこれは
廢止論が有力でありまして、現にそれを實行しておる國もあるのでありまするが、私も理論的には
死刑というものは刑罰の
目的からい
つて、その相手方を抹殺してしまうということは意義をなさんことでありまして、
廢止すべきものであるという考に傾いておるのでありまするが、併し今これをすぐ我が國において
廢止するのは
適當であろうかということになりますると、
社會情勢その他とも睨み合せまして、可なりデリケートな考慮を必要とするように考えるのであります。これは
積年戰爭の餘弊とでも申しましようか、非常に
人命を輕んずる傾向が強くありまして、殊に素人の強盗というようなものが横行いたしまして、
人命を誠に
簡單に扱
つてしまう。これをどういうことがあ
つても
死刑はしないということを今この混亂のさ中にやりますと、いろいろ御
議論もありまするが、非常に
犯罪を助長する方に役立つのではないか、
死刑は必ずしもそういう
兇惡犯罪を威嚇によ
つて絶滅させるという力はないという説も、相當有力ではありまするが、併しとも角もこれはどうもややもすれば、
死刑になるという脅威が存在いたしますれば、若干これを仰止することはできるのではないか。それでもう少し我が
國情の治まるのを待
つて、
死刑の
存廢を論じても遅くないだろう。こういうようなことで、
只今留保されておる形にな
つておるというふうに御了承願いたいのであります。
第二の、
司法職員が、他の
職員に比して
待遇が
劣つてお
つたということは、
事實であります。判、
檢事等にありましては、
檢事はそうでもありませんが、
判事はいわゆる
終身職でありまするために、定年に達するまでは、特別の過失がなければ、安心してその職におることができると、そういう場合は、通常の
行政官よりも
待遇は惡くても、最後に
行つて同じくなればよいわけである。そうであるからして、又そう早く昇給をさしてしまえば、
國家負擔が多くなるし、だんだん
給與を増さなければならんというような
理由から、過去におきましては、いわゆる
司法職員という者が、外の
職員よりも平均して、同じ年度、
年配等をと
つて見ますると、低か
つたのであります。併しそういうことは、今日では
理由にならんと思うのでありまして、どんなに若くとも、苛も
判事、
檢事というような
立場において仕事をして行きまするためには、又これを助けてや
つて行きまする書記、
事務官という者も、
社會に向
つて信用を維持し、いやしいことをしないというだけの矜持を持たせまするためには、他の
職員よりも、遥かに
優遇をしなければならないということは、これは殆ど常識にな
つておると存ずるのでありまして、その見地から、兩院の
司法委員會におかれましては、特に司法官の
優遇決議案というものをお出し下さいまして、それに動かされまして、著しく
待遇を上げることにな
つたのであります。ところが
公務員給與法案というようなものがまだ通過いたしませんために、現實には上げることができませんので、
臨時手當式方法で、いくらか上げておるというような形でありまするが、
只今では、ほぼ他の
行政官吏と同じところまでは漕ぎ著けたのであります。ただ
筆墨代等は、
從來自費で購入させる。どうもこれは無暗に
官給品をやると、それを又持
つて歸つて、横に流すというような弊害もあるということからいたしてお
つたようでありまするが、併し實際この
物價高のときに、
筆墨まで自費でやらせることは、誠に忍びないことでありまするから、これはやはり
筆墨費として、相當額を支給して、そうしてや
つて行くようにいたしつつあるのであります。尚幸いに
國家公務員法が通過いたしますれば、
司法職員の
待遇というものは、著しくよくなる。まあ
行政官吏に比して、
一段上になる。こういう豫想でありまするから、御了承を願いたいと存ずるのであります。