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政府委員(淺井清君)
職階制について御
説明を申上げます。
職階制と申しますることが、いろいろ取沙汰をされておりまして、この
國家公務員法におきましても、この
職階制ということをその基礎にいたしておるわけでございまするから、最も重要なる基礎
観念の
一つにな
つておかます。併しながらこれは決してむずかしいことではなくして、極めて簡單なことであろうと存じます。若しむずかしいことがありといたしますならば、これを実際に
如何にして行くかという点に帰著するものと存じます。そこで先ず第一にどういうわけで
職階制というものが採用せられ、なければならないかという要請について、一言で申上げますると、現在
日本の
官廳の内部におきましては一人々々の
公務員が担当いたしておりまする
事務というものは、科学的に正しく分
つていないということに帰するだろうと存じます。勿論或
官廳が、若しくはその
官廳の一部の
部分的な機構がどういう仕事を司
つておるかと申しますることは、或いは官制なり或いは分課規程なりによ
つて明らかでございまするけれども、そこまでのことでございまして、一人々々の
公務員が、どのような仕事を朝から晩までいたし、どのような仕事の流れにおいて、これを流しておるかということは明かにせられておらないのでございまするが、一体それでよろしいものでございましようか。
官吏が國民の公僕でございまするならば、その
官吏が能率が上
つておるかどうか。どういう仕事の仕振りをいたしておるかということは、これは國民として無関心ではおれないと存じまするし、その
官吏に支給いたしまするところの莫大なる
給與というものは國民の懷から出るものでございまするのでタツクス・ペイヤーとしての國民といたしましても無関心であり得ないものでございます。そこでそういうことを明かにいたしまして、仕事の能率を上げて参るということが、この
職階制の採用ということに相成
つて参るのでございまして、要するに一言で申しますれば、一人々々の
公務員の持
つておる仕事を精密に分析をいたし、これを合理的に組立てるということに相成
つて参ると存じます。ただ問題はどのようにしてこれを分類をいたし、どのようにして組立てるかということに帰着すると存じまするが、これは
一つ碁盤の目のようなものを御想像願いたいのでありまして、要するにお手許に差上げてありまする資料にもございまするが、第一に職群及び職團一覽表というものが差上げてあると思います。それから第二に
等級の
定義というものが差上げてあるのでありますが、要するにこの二つが丁度碁盤の目の縦の線と横の線に交叉いたしまして、
職階制が築き上げられるものでございます。
先ず第一にこの職群及び職團一覽表を御覽願いたいのでありますが、つまりこの一番上にグループという表示がございまして、その下にセリーズという表示がございまするが、要するに現在の
官廳の中で各人が担当いたしておりまする
職務をこのグループという大枠、セリーズという小枠に分ければ大体かようになる。こういうことでございます。これは空に考えましたものではございませんで、行政調査部で実施いたしました三千四百人余を対象として試驗調査の結果や
つたものでございます。即ちこの三千四百人の一人一人に調査表を配付いたしまして、毎日、朝から晩までどのような仕事をどのような仕事の流れによ
つてやるかということを詳細に書き出させまして、それを集めましてこのような分類にいたしたわけであります。そこでこの
法案にありまするところの
職種によ
つて分けるということは、要するにこの職群及び職團の一覽表による分類と相成
つて参るのでありまして、
職種と
法案に申しておりますのは職群及び職團のいずれにも通ずる
観念と御承知を願いたいと思います。即ち將來グループの
程度に分けますか。或いはセリーズの
程度にもつと詳しく分けますかは明白でございませんので、
職種と申しておりますが、それはそのいずれにも通ずる
観念と御承知を願いたい。即ち大体
職員のや
つております仕事がこのような種類に分けられる。つまり碁盤で申しますればこれが縦の線にな
つて來るわけでございます。ところがこれらの
職種の中におきましても、各人が担当いたしておりますものは、極めて單純なる繰返し
事務から、大きな局の局長として最も重要で困難な責任ある
地位にある仕事をいたしておる者もあるわけであります。それがつまり碁盤で申しますれば横の線にな
つて現われて來るのでありまして、その
等級の
定義と申しましたものに一級から十四級に分
つてこれを並べてございます。この横の
等級と縦の
職種の二つの分類が交わりました碁盤の目のようなものが
職階制の基礎となるのでございまして、その
職階制ができ上りますと、
官吏の持
つております
地位というものはこの
職階制のどこかの目に編入せられるわけにな
つて参ります。この
法案で官職を格付けすると申しておるのはこのことでございます。そこで
職階制と申しまするものは、大体そのようにして一人々々の
公務員の持
つておりまする仕事を明確に
一つの職階に組織立てをする。これによ
つて官廳の内部が
一つの流れ作業のように動いて行くという。こういうことに帰着するのであります。そこで問題はこのような
職階制を採用いたすと、
從來とどこが違
つて來るかという点に帰着いたすのでございまするが、先ず第一に
官吏の專門化と申すことが言われるだろうと思います。即ち
政党政治が確立しまする今日におきましては、
政治と行政というものは、これは正しく分離せられなければならないものでございまして、私共は
政治に対して、行政に対する強き指導性と
政治の躍進を期待いたしますると共に行政に対しましては、至誠と正義に対して從順なよき補助者たることを期待しておるものでございますからして、将來
職階制が行政面に
適用いたされますると、
官吏は
政治のよき補助者として專門化されて参ることになるわけでございます。そこで、
從來の如くあらゆる部署を横に轉々いたしますることが出世ではなくして、
一つの
職種を、順次に下の一級から上へ上
つて行くということによ
つて、その昇進の道を見出すべきである。これが
只今の行政
官吏の行くべき道ということにな
つて参るわけでございます。
第二に、この
職階制を採用いたしますることによ
つて、
人事の公正ということが保てるだろうと思います。
民主主義政治の下におきまする
一つの要請は、私は公正ということであろうと存じます。この公正の
観念を除き去りましては、一國の行政というものは保てないと存じます。
そこでこの
職階制が採用いたされますと、この
職階制のどの
職種にもどの
等級にも、それぞれどれくらいの能力を持てばこの
地位につけるかということが、正しく
定義されて來るわけでございますからして、この能力の証明せられない者は、この
地位にはつけないということになります。これがいわゆる試驗制度を採用するという
意味でございます。試驗制度を採用すると言いましても、昔中國の人士を苦しめました科挙の制度の如き形にするということではございません。ただそれは、この
法案にもありまするように、この
職種と職群の
地位につける能力を実証的に証明する。これが新しい試驗制度というものにな
つて参る。
從つて情実による任命はこれを嚴に排斥するということが
一つの要請でございます。
第三といたしましては、
給與というものがこの職階に結びついて参る、即ち仕事に
相当した
給與というものが與えられることになるだろうと存じます。但し、これはこの
法案にも書いてございまするように、
只今のような生活給というものを全然無視した
観念ではございませんが、ただその基本となるところは、自分の仕事に正しく公正に判定せられた
給與がついて参る。こういうことになるのでございます。
大体、
職階制を採用いたしまして、これを基礎といたしますると、そのようにな
つて参る。そうしてこのような科学的な、誰が見ても頷けるような公正な
方法でこれらの
公務員制度を動かして参る。こういう考え方がこの
職階制に取
つて現われて参るわけでございます。一面におきましてこの
職階制というものは、アメリカにおいて採用せられました動機といたしましては、
政党の猟官ということが極めて盛んになりまして、この弊害を除去するために採用せられたということもございまするが、それはいわば消極的な面でございまして、その積極的な面におきましては、
只今申しましたように、一國の行政というものの能率を発揮いたし、
公務員としてふさわしきものにして行く。こういう積極的な狙いも持
つておるものでございます。極めて簡單でございまするが、
職階制について御
説明を申上げました、